盛岡タイムス Web News 2015年  7月 20日 (月)

       

■  〈幸遊記〉236 照井顕 片岡泰英の音楽の尊さ


 1カ月に2週間、地方のデパートイベントで、食品販売の仕事をしている片岡泰英さん(通称・敏“ビン”57)は「今回宮城の物産“アナゴの一本巻”を売りに、数年ぶりに盛岡に来ました。新しいジョニー音が良くて、和めるなあ」そう言いながら、ジャズとウイスキーを楽しんでくれた彼。

  そういえば、その数年前「このスピーカー何とかなりますかね」と彼は“腐ってもタイ”のJBLスピーカーを店に運んできた。箱はふやけて使える状態になくスピーカーのエッジは風化でボロボロ、ダンパーはゆがみ、磁石はさびて外れ、箱の中に落ちていた。それでもコイルは生きていたので直してみたが、正常に動かぬ音割れで諦めかけ、そのまま数年間放置した。ところが最近、お客さんから頼まれた古いスピーカーの修理をしたついでに、再度挑戦し直したらこれが何とよみがえり、良い音なので店のSPに追加して鳴らし始めたところに彼はやって来た。すごいタイミング!。そして音とその修理話に涙を流した。

  彼は、地方のジャズ喫茶歩きが大好きで、盛岡に来れば必ず僕の店にも寄ってくれるのだ。生まれは名古屋、祖父から泰の字、母から姓。父方の親戚のいる宮城で育ち仙台育英学園高校を卒業して東京農大へ入ろうとしたが2浪。予備校に通いながら運送会社で夜中の仕分仕事に従事、その後、新聞広告で1日2万円のスーパー店頭販売に飛びついて頑張り、あの名車コルベットを買い、父とマンションも買ったりはしたが「お金は音楽に使うのが一番尊いということが分かった」という。

  昔日に、家にあったアンサンブルステレオで両親が聴いていた、美空ひばりのジャズやアート・ブレイキーのバードランドの夜などが記憶の中にあり、それがもとでジャズを聴くようになった。東京の葛飾に住んでいた時、金町にあった「ジャズ38」に通っていたら、マスターの故・早井敏成さんが、照れながら「穐吉敏子さんが来る。やっと店も一流になれる」と、本当に幸せそうに言って泣いたという。「その穐吉さんが入って来た瞬間、彼女の放つ素粒子のオーラに包まれ視線までが光っていた。ギュウギュウ詰めで聴いたそのライブは最高でした」。以来彼は穐吉ファンになり、時折、穐吉さんの好きなビンテージワインを持参して聴きにいく。(カフェジャズ開運橋のジョニー店主)


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