盛岡タイムス Web News 2015年  7月 21日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉及川彩子 第231話 リンドウの山道


     
   
     

 南アルプス高原に位置する、ここアジアゴに、一年で最も美しい季節が訪れました。標高千メートルに広がる緑の丘陵地、森の道では、可愛いらしい高山植物が出迎えてくれます。森林浴、ハイキング、バーベキューから本格的なトレッキングまで、山の楽しみ方はさまざまです[写真]。

  日常の疲れを吹き飛ばしてくれる、何よりのごちそうは、美味しい空気と花々の鮮やかな色彩。フワフワ生地の星形花びらが愛らしいエーデルワイスの白、「アルプスのバラ(アルペンローゼ)」と呼ばれるかれんなシャくナゲの赤、そして釣鐘状に花をつけたゼンチアナ(リンドウ)の藍色…これらは、アルプスの三大名花と呼ばれます。

  中でも、一番人気は、歩きながらでも見つけ易い、目の覚めるような青いリンドウ。日本では秋の花ですが、こちらは今が旬。標高千メートル以上、石灰岩質の半蔭地に自生し、雪解けとともに咲き始め、7月まで楽しませてくれます。

  激しい温度差や強風の中、一般的に背丈が低く、地下茎が発達してきた高山植物。苦味のあるリンドウの根は、日本でも竜胆と呼ばれ、胃薬の生薬として有名ですが、イタリアでは、紀元前、すでにその効果が確認され、使用されてきたと言われます。

  また、強い紫外線に対抗して生まれるポリフェノール(色素)が、あの深い藍色を創り出し、その鮮やかさゆえに集まる蜂たちによって、短期間の受粉が可能になるのだとか。

  今年は、第一次大戦から100年の記念の年。オーストリアとの国境線で、激しい戦場となったアジアゴでは、多くの追悼行事が行われています。

  「アルプス高原に散った若き命たち。咲き乱れるリンドウが真っ赤に染まったあの日から、また青の風景がよみがえり、平和を告げている」と記された記念カレンダー。今年のリンドウの道は、格別な思いです。


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