盛岡タイムス Web News 2015年  8月 18日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉233 及川彩子 青の町シャウエン


 この夏のバカンスを利用して、私たち家族は、北アフリカのモロッコを旅しました。真っ先に訪ねたのは、人里離れた山合いの町シャウエン。各民家が真っ青に塗られた、世界的にも珍しい「青の町」として知られます。

  北モロッコの「京都」と言われる世界遺産の古都フェズから、ローカルバスで北へ4時間余り。果てしないオリーブや麦畑を抜け、坂道の続く山や谷を越えると、小高い山の急斜面に、青色の町が現れたのでした。

  バスを降りた私たちは、車体もブルーのタクシーを拾い、町の中心へ急ぎました。旧市街は、フェズ同様、細い路地が入り組む迷宮です。でも、あえて迷い込みたい衝動に駆られるのでした。

     
   
     


  誰が、なぜ、こんな山間に、青の町を築いたのか…。中世、スペインから逃れてきたたイスラム教徒によって発展したこの町は、20世紀に至るまで、異教徒に閉ざされていた、正にイスラムの聖地とも言うべき秘境でした。青は、ユダヤの聖なる色。信仰の隠れ家のようなこの町が、好奇心の観光客を受け入れ始めたのは、わずか数十年前のことです。

  そんな敬虔(けいけん)な地ですが、あっちの青い路地、こっちの青の広場、家の扉、窓と、青の絶景[写真]にカメラ片手に闊歩(かっぽ)する私たちにさえ、大らかに感じられる町の人々のまなざし。すべてが一色であることに、こんなにもひきつけられるものなのかと、逆に驚きです。

  大型ホテルなどない、この町の宿は、共同トイレに共同台所の改造民家。長期滞在の旅人も多く、私たちが向かった日も大入り満員。一泊数百円の屋上の雑魚寝コーナーは、寝袋を背負う世界各地のバックパッカーであふれ、さまざまな言語が飛び交っていました。

  酒、たばこ、ディスコも何もない、けれども「こんなに居心地のいい村は、世界中探してもないよ」と、北欧から来た若者たち。

  現代社会の自由競争が捨てた統一の美、一色を守る民族の心に癒やされるのでした。

 


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