盛岡タイムス Web News 2015年  8月 22日 (土)

       

■ 〈体感思観〉 「海渡り時超える伝統文化」 編集局 戸塚航祐


  近年、伝統文化の欧州への紹介が活発化している。県内ではさんさ踊りがイタリア・ミラノで公演。15日に、滝沢市などのチャグチャグ馬コ文化がフランスでデビューした。9月には、八幡平市の安比塗の漆器が北欧フィンランドで紹介されるなど、日本の伝統の一翼を担う文化が海外で注目を集めている。

  次々と県内の伝統文化が欧州デビューする中、取材で訪れたアニメとコラボレーションする日本刀展で衝撃を受けた。山形県の刀鍛冶として有名な、月山一門の刀鍛冶も同展に参加していた。彼は伝統と画期的な試みの間で葛藤したという。師匠の父親に怒られないか悩んでいたが、刀を見た父親は「おもしろいことやっているなぁ」と逆に理解と興味を示したという。

  記者は葛藤していた刀鍛冶と同様に、怒られると考えていた。真逆の反応に度肝を抜かれたというのが、素直な感想だった。説明をした装剣金工師は「きちんとした製法で作っているからこその理解だと思う。同時に、このままでは自分たちの技術が廃れていくという強い危機感もある」と語った。

  刀鍛冶は、100年から200年先に使われることを想定して刀を作るという。自分たちの作ったものが、後世に残ることを確信しての言葉だが、現実に後世でも日本刀として通用しなくてはならない。ハードルは非常に高いと言えるだろう。

  日本文化の発信と言えば、2010年ころから始まったクールジャパンが思い浮かぶ。これまでは、漫画などサブカルチャーの分野で注目を集めてきた。スペインでは日本の首相名を知らない人も、ボールと友達のサッカー漫画の主人公の名前は誰でも知っている。花札を作っているゲーム会社の新作では、世界中から作り直しを要求する署名が、2日で1万2千人以上集まるなど常に注目されている。忍者の人気は、世界レベルと言ってもいい。

  サブカルや日本の伝統文化に限らず、欧州にはない文化に、現地の人は素直な反応を返したという。おそらく、県内の伝統文化も同様の反応を受けたか、これから受けるだろう。刀鍛冶たちが話す、後世でも使われることを想定した伝統の技。異文化と融合し、これまでに例のない技へ昇華される姿に、今から興奮を隠せない。


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