盛岡タイムス Web News 2015年  8月 25日 (火)

       

■  〈詩人のポスト〉 「夏おちる」 かしわばらくみこ



牧場や畑から悲鳴があがる
サイカチの莢が青いまま枯れていく
ただれる熱気
わたしからも立ちあがる陽炎
景色が揺れる
アスファルトを這う蟻のかたまりは
憐れカブト虫
の 純正部分はアメーバ運動さながらに
巣穴のシマツ部屋に運ばれていく
  (始末が未だ終っていないわたしもこの国も)
微小な蟻が猛暑のさなかにたんたん
と 冬支度
ぶきような脳がふと、捉える
  (これは、秋)
と 空をあおぐ
と 鰯雲のひろがり
木陰に逃げるわたしの脇かすめるように
銀ヤンマ、昔少年のあこがれが低空飛行する
立つ風
足もとに栗の青い毬(いが)
  (これを 初秋とよんでも)
鼓膜をふるわせ、毛穴にまで沁みわたる

の カスケードシャワー
  ようこそ ツクツクボウシ
と 翡翠いろのお皿に水をはり
エノコロ草とアキメヒシバをいけ
毬をふたつならべる
天は あした夜半に雨を降らせるという
流れ去る草いきれ
虫の音(ね)ころがる叢
送り盆の夜明けには
花火より寂しい音(おと)たて
                  スコン
と 墜ちて返るだろう
みんなが耐えた戦後七十年の夏
あとは なにもかもうまく飛んでいけ
 


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