盛岡タイムス Web News 2016年  7月 12日 (火)

       

■  〈イタリアンチロルの昼下がり〉255 及川彩子 マルゲリータの入園


     
   
     

 ここアルプス高原の街アジアゴの幼稚園の音楽講師を勤めて早15年。先日、初めて中国人の3歳の女の子が入園してきました。観光地として、移民や外国人労働者を規制しているアジアゴでは珍しい東洋人です。

  真っ黒なおかっぱ頭に、粒らな漆黒の瞳。「マルゲリータ」と、イタリア名を付けられたその子は、登園から終始泣きっぱなし。「マンマ、マンマ(ママ、ママ)…」とイタリア語で叫びながら、抱かれた保母さんの腕の中で暴れ回り、結局、家に電話をする羽目に。

  飛んで来たお母さんはイタリア人。聞くと、ベトナム国境近くから、孤児を養子として迎えて数カ月、片言のイタリア語をしゃべり出したばかりだとか。「早くなじんでほしい」と目を潤ませ、子を抱きしめるのでした。

  イタリアでは、こうした養子縁組は珍しい事ではありません。さまざまな問題も耳にしますが、大らかなイタリア人、それでも苦労を買って出る人は後を絶たないそうです。

  そうした人種共存の環境が広がれば、新たな世界観が築かれるに違いありませんが、その一方で、外国人労働者や移民政策に伴い、都市では、イタリアであってイタリアでない様な地帯の発生が問題視されているのです。

  住み心地がいいと、親戚中を呼び寄せてしまう中国人やアフリカ人。生活習慣の違う異国では、同人種が集うのは自然な事ですが、差別や隔離まがいの醜聞も横行とか。

  ある週刊誌で、作家の曾野綾子氏が「移民との共存は難しい」と、黒人・白人など住み分けを支持する発言をし、南アフリカのアパルトヘイト賞賛だと批判を浴びたそうですが、曾野氏が反論したように、差別・隔離と区別の意味の混同こそが危険、国も人も、区別されるからこそ存在の意義があると思うのです。

  マルゲリータの幸せと、以前訪ねた南アフリカの黒人労働者地区の子どもたち[写真]の環境も人種も、「個性」と尊重された、伸び伸びとした将来を願うばかりです。


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