盛岡タイムス Web News 2016年  7月 27日 (水)

       

■  〈口ずさむとき〉498 伊藤幸子 「テレビ草創期」


 正座して月を眺めていたりけり
                    小沢昭一

 東北はまだ梅雨明けもしていない7月11日夜のニュースで、永六輔さんの訃を知った。7日に亡くなられ、12日のテレビ「徹子の部屋」では、永さんの40年の名場面から緊急追悼する特集が組まれた。昭和8年、東京浅草の浄土真宗「最尊寺」に生まれる。早稲田大学在学中に次々と作品を書き、放送作家、司会者、ルポライターとして本も出され、草創期のテレビ番組製作を支えた。

  私などは、東京オリンピックのころにやっとテレビが家に入り、テレビ座席が定着した。「ヤン坊ニン坊トン坊」や「夢であいましょう」が欠かさず見入る番組だった。黒柳徹子さんの早口トークはすばらしく、女性スターたちの最新のファッションに憧れた。

  その頃の歌謡番組に必ず聞かされた名前が、坂本九、永六輔、中村八大さんらの音楽家。小沢昭一、渥美清さんもなつかしい。

  ありとあらゆる分野に及ぶ永さんの著書で、今また「職人」を読み返している。寅さん映画の話。「オレが縁日で、曲尺(かねじゃく)、鯨尺(くじらじゃく)を売っている。そこへ取締りにくる警官が永さんってのはどうだろう」と渥美さん。永さんはずっと尺貫法復権運動に取り組み、計量法違反といわれながらも、日本中の老人や職人衆からの絶大な支持を受けた。

  また、バイオリンの話。これは楓(かえで)の木から作るがその木を育てた地形や風や雨の匂いを知らないといい音色が出ないとのこと。将棋盤や碁盤は榧(かや)の木、カンナ屑は腕のいい大工さんが削ると本体の板より長くなるという。

  いい仕事をしていくと「職人」が「作家」になる。作家の物は作品だから物品税がかからないが、職人が作った物は税がかかるというくだりは少々わかりにくい。今は物品税は廃止され、消費税になったが、日本の法律は職人が生きにくいような仕組みになっているという永さんの見解は説得力がある。

  京都の一澤帆布店主さんとの対談。昔はテントとかそういうもんは全部「日覆(ひおい)」といった。後白河法皇の「年中行事絵巻」に出ている「黄瀬川の陣」のことまで、思わず一澤さん、永さんと呼びかけたくなって、ひとつだけ持っている私の赤い一澤バッグを肩にかけてみた。

  こうしている間に、今度は20日、大橋巨泉さんの訃が報じられた。12日夜、82歳で亡くなられた由。お二人ともお盆の特番製作に急なお呼びがかかったのだろうか―。
 
(八幡平市、歌人)



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