盛岡タイムス Web News 2016年  12月  13日 (火)

       

■  素粒子で内部構造探る 岩手山の噴火予知に共同研究 県立大やKEKなど試み


     
  ミューオンを使った岩手山内部探査開始を記念したワークショップ  
  ミューオンを使った岩手山内部探査開始を記念したワークショップ
 

 県立大や岩手大、高エネルギー加速器研究機構(KEK)などは、素粒子「ミューオン」を使って岩手山の内部構造を探る共同研究を始めている。10月から滝沢市内に計測装置が設置され、データが収集されている。これを記念して12日に盛岡市内でワークショップが開かれ、鈴木厚人県立大学長ら素粒子や防災の専門家ら約30人が参加。データの蓄積を通じて、水蒸気爆発の予知や噴火活動終息を予測できると関係者は期待している。

  共同研究は、物体への透過強度で透過しにくいと硬く、透過しやすいと軟らかく変化するミューオンの性質を利用。変化を継続計測し、データを蓄積することで地下水の存在やその経路を特定したり、密度の変化で地下のマグマの活動状態を突き止めたりできると期待される。

  滝沢市後地内の国立岩手山青少年交流の家敷地に計測装置1基が設置されている。距離は東岩手の火口から直線で約6・5`。10月14日から計測が始められている。現在装置に温度変化はなく、安定した状態だという。

  これまでの計測から山体の北と南の縁の岩盤で密度に違いが生じている。ただ、計測過程でたくさんあるミューオンのバックグラウンドを除去しないと、正確なデータの収集にならないことから、今後改善が求められる。

  12日のワークショップは、火山透視技術の生みの親である永嶺謙忠KEK名誉教授が基調講演。研究リーダーの伊藤英之県立大総合政策学部教授、首都大学東京の角野秀一理工学研究科准教授らが共同研究について紹介した。岩手県の火山活動に関する検討会の齋藤徳美座長、同委員の土井宣夫岩手大教授も参加した。

  永嶺名誉教授は1999年に、98年から火山活動が活発化した岩手山西側の黒倉山│姥倉でミューオンを使って探査を実施。当時噴気の立ち上っていた黒倉山について、変化のない姥倉に対して、山体が膨らんだ形跡があったと指摘した。

  ミューオンは自然界で宇宙線の中にあり、加速器を使って大量に生成もできる。「質量が軽く、寿命は素粒子としては長く使いやすい」と特徴を説明。「ミューオンなら絶対値の密度が分かる」と、角野准教授が紹介した約2カ月間のデータの精度向上に期待した。

  岩手山では火山活動活発後、人工で地震を発生させ、その震動の到達速度で内部構造の探査も行われた。東岩手地下の流体(マグマ)が西側へ移動したとの解析結果が出された。齋藤座長は「前回の岩手山での試みから、どの程度技術が改善されたか見てみたい」と研究に注目している。

  伊藤教授は10年以上にわたるデータ収集を構想。「現在は東岩手だが、最終的には複数設置して西岩手を見たい。西岩手は水蒸気爆発で、御嶽山の噴火も水蒸気爆発。地下水や地下にたまっている熱水がミューオンで見ることができれば、予知ができるかもしれない」と期待を込めた。1基追加設置できれば構造の3次元化も可能だという。


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