盛岡タイムス Web News 2017年  5月 19日 (金)

       

■  変化する葬送スタイル(上) 慣習にとらわれない新潮流 当世葬儀事情 見送りたい人と温度差も


     
   盛岡市内で開かれた「東北葬儀供養ビジネスフェア」。現代のライフスタイルを反映した葬祭、供養品が並んだ  
   盛岡市内で開かれた「東北葬儀供養ビジネスフェア」。現代のライフスタイルを反映した葬祭、供養品が並んだ
 

 少子高齢化や価値観の多様化で、故人との別れや弔いのスタイルに変化が生じている。盛岡地域でも近親者のみで故人を送るいわゆる「家族葬」やホテルでの葬儀、お別れ会など、これまでのしきたりにとらわれずに故人を送るケースが目に付くようになった。葬祭に関わる業者やホテルも変化を先読みし、品ぞろえやサービスに工夫を凝らす。(2回続き上)

■葬祭供養品も多様化

  盛岡市内のホテルで先月、東北最大規模の葬儀供養ビジネスフェアが開かれた。全国80社が協賛。デザイン性の高いろうそくや線香、プリザーブド仏花、ペットのための仏壇、手元に遺骨を残して供養したい人のための「手元供養品」など、現代のライフスタイルを反映した葬祭供養品が並び、業界関係者約300人が訪れた。

  出展した石川県のある仏具業者は、洋風デザインの線香立てやフォトスタンドなどを展示。「保守的な盛岡ではまだ売れないと分かっているが、先々を読んで紹介していくことが大事。仏壇や仏具もインテリアの一つとして家具の全国チェーン店などが本格参入してくる日は近い」と話した。

  フェアを主催しているのは、県内唯一の葬祭供養品専門卸の坂本屋(盛岡市中野1丁目、坂本雄太郎社長)。毎年、この見本市に取り組み、取り引き先との関係を深める一助としている。同じ会場で、遺族へのグリーフサポートなどをテーマにした葬祭スタッフ向けの無料講座も開いており、好評という。

  長年、同社を率いる坂本幸一会長(66)は「人口が減り、宗教心や生活様式が多様化する中、生き残っていくには、これまで以上に成長市場を探し出し、進化し続けていかなければいけない」と気を引き締める。

  坂本会長の目からも葬祭や供養をめぐる近年の変化は著しい。少子高齢化で親子が離れて暮らし、身内に不幸があった際、よりどころとする寺などが決まっていない家庭も珍しくない。自身が亡くなった後の墓の管理や遺品整理を不安に思う高齢者が目立ち、個人的に、その種の相談を持ち掛けられることも増えている。

  「お葬式は人生の卒業式。自身の得た友人、知人の縁を次世代に引き継ぐ場でもあると思う。葬儀を簡略化するあまり、故人をお見送りしたいと駆け付ける人を、初めから閉ざすようなやり方は感心しない」と坂本会長。「親しい人の『死』を受け止め、乗り越えていくためには死をかみしめる時間も大切。宗教者はもちろん、この業界に関わってきた年長者が、あるべき姿を伝えていくべきなのかもしれない」と話した。

■故人の遺志大事に

  1877(明治10)年創業、盛岡の葬祭事情に詳しい駒木葬祭(盛岡市南大通2丁目)の駒木進社長によると、葬儀の縮小傾向は、本家に一族が集まり、正月や盆を過ごすような親戚づきあいや近所づきあいが減っている影響が大きい。首都圏では通夜や告別式などを省略する「直葬」も見られるが、盛岡では、まれ。ただ、「葬儀は近親者のみで」といった相談が増えているのは事実だ。

  「送る側の事情で、故人の遺志ではないと思う。故人とお別れしたい人は必ずいる。参列者が少なくても一般的な葬儀を開くのが本来の姿と説明すると、8割の人は分かってくれる」と駒木社長。小規模でも一般の葬儀を営めば、一定の数の弔問客はあり、持ち出す費用も近親者に限った場合と大差ないことが多いという。

  希望者を無料で招待する同社主催の「生き住きセミナー」は12回を数えた。住職らを講師に、安心して最期を迎えるための心構えや葬儀の知識などを学ぶ機会を提供。市民の関心や悩みに応えることで、社の信用につなげる狙いもある。

  「地域で長年、葬祭業を営んできた歴史と寺社との信頼関係が老舗の強み。変化に、あらがえない部分はあるが、社員の質を高め、お客さまの懐に飛び込むような仕事をしていくしかない」と語った。(馬場恵)


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