盛岡タイムス Web News   2017年  8月  26日 (土)

       

■ 〈体感思観〉 編集局 飯森歩 青森ねぶた祭りに学ぶ


 

 岩手を代表する祭り「盛岡さんさ踊り」を毎年取材している者として、東北で最も集客力のある祭りを見ておかねばと考え、今年は「青森ねぶた祭り」に見に向かった。観客数130万と290万人の違いは何なのかを、知りたかったからだ。ねぶたを見るのは大学生以来で、10年以上ぶり。あの頃より、商業寄りの視点で祭りや町並みを楽しめた。

  青森市に午後3時前に着き、会場周辺の商店街をぶらぶら。シャッターの下りている店舗が少なく、専門店など小さな店が元気に営業していた。祭りムードの街中で目を引いたのは、一式3千円と手頃な「ハネトのレンタル衣装」の看板。公式ホームページでは、衣裳の着方や購入方法、レンタルができる店が一覧で紹介されており、観光客の誘導がうまいと感じた。特定の店が秀でることなく、街が一つになって祭りを商売の契機にしている。街づくりには、こうした姿勢が大切なのだと思った。

  会場の沿道にはパイプいすが3〜6列、隙間なく並べられていた。価格は1席3千円。7日間の収益を勘定したら……というよりも、こうした指定席は観客にとってありがたいものである。さんさ踊りの会場は、シートで陣取りをする早いもの勝ち形式で、観光客に親切とは言えない。場所取りに時間を取られる分、街中を周遊する機会=経済効果を失うし、地べたに座るのが難しい年配者にも優しくない。観客に寄り添った収益の生み出し方は、青森市の手腕と感じた。

  日が沈み、大型山車パレードがいよいよスタート。観覧するまで、ただ跳ねるだけの踊りと巨大な山車が、なぜそれほど大勢を引きつけるか分からなかった。それなら優美な踊りを見せるさんさ踊りの方が、ずっと楽しいだろうと。しかし今回の観覧で、集客に一番必要なのは「形に捉われず、全員が楽しむこと」だと学んだ。

  波のようにうねりながら進み、観客に迫るように動く山車はもちろん、地元人、観光客が一緒に飛び跳ね、声を上げる姿に心が踊った。整列など皆無で、統一感や華やかさでいえば、さんさ踊りの方が格段に勝る。それでも、ねぶたの方が印象深いのは、参加者が心から祭りを楽しんでいて、その熱気が観客にも伝わるからだ。

  さんさ踊りはすぐ踊れると言っても、練習を重ねなければ見栄えは良くならず、審査でも整列や型を求められるため、楽しむより踊りに意識が集中してしまう。さんさ踊りにさらに人を呼び込むには、誰もが思い切り楽しめる工夫が必要となるだろう。

  盛岡の良さも発見できた。商売力は劣るかもしれないが、盛岡人は損得勘定なく親切だ。さんさ踊り開催時は、会場に近い学校が駐車場として開放されるが、青森市ではそれがなかった。無料駐車場は遠く、会場から近い臨時駐車場は1`ほど離れた野原。1回500円。高くはないが、ここまで商売気を出さねばならないのか、と思ったのも否めない。

  ミスに関しても、盛岡さんさ踊りの方が上と言い切れる。美しさの比較ではない。まずは、高級車から降りて、歩きながら手を振ってはいかがかと思う。

  連れだった友人にねぶたの起源がおもしろいと薦められたが、ネットだけでは理解しきれなかったので、来年はしっかりと事前勉強をした上で挑みたい。


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