盛岡タイムス Web News   2018年   5月  10日 (木)

       

■  コミュニティーに着目 吉田直美法人事務局長に聞く 生活困窮者支援の今後 あすくら盛岡


     
   あすくら・つながるサロン活動で参加者と話し合う吉田直美事務局長  
   あすくら・つながるサロン活動で参加者と話し合う吉田直美事務局長
 

 NPO法人くらしのサポーターズ(松本良啓理事長)が運営する、あすからのくらし相談室・盛岡(盛岡市茶畑2の11の5)は、生活困窮者らに寄り添い、地域資源と連携し、自立まで継続して支える伴走型の相談支援活動に取り組んでいる。面接相談など2017年度の活動件数は、宮古市社会福祉協議会から委託を受けた「くらしネットみやこ」の活動と合わせ、6285件だった。パーソナルサポートの先駆けとして活動を展開してきたが、公の相談体制が整ってきたこともあり、18年度限りで、いったん事業に区切りを付ける。「ソーシャルワーク」と「コミュニティーワーク」の重要性を説く同法人の吉田直美事務局長(51)に、今後の活動の方向性を聞いた。(馬場恵)

  ―ソーシャルワークとコミュニティーワークの違いは。

  ソーシャルワークは、その人の困りごとに対して社会福祉的な援助の手を差し伸べ、問題解決に当たる。住む場所がなければ、一緒に住む場所を探し、経済的に困窮していれば、就労や生活保護受給の手続きを助けるといった対処療法的なイメージ。コミュニティーワークは地域の人の力を借りて、その人にとっての居場所や役割、良質な人間関係を生み出す作業。介護分野の地域包括ケアはこれに近い。制度の縦割りではなく、両方を総合的に進められる基盤づくりが求められる。

  ―コミュニティーを意識した支援活動で得た成果は。

  児童養護施設出身者らを受け入れ、自立を支援するシェアハウスの入居者で、コミュニケーションが取れず、働くのは難しいとみていた若者が、職を得て20万円近く給料をもらってくるようになった例がある。きっかけは良質な人間関係。支援員との関係づくりがうまくいった。

  恵まれない家庭環境に育ち、大人はみんな敵だと思っていたのが、心を開ける大人が身近にできたことで、ものすごいエンパワメントを発揮した。いわゆる普通の家庭に育った子は、苦労しなくても、良質な人間関係を手に入れられる。しかし、そうでない子にとっては宝物。早い時期に手に入れば、不遇な人生を送らずに済む。ある意味、コミュニティーワークはソーシャルワーク以上に重要。

  ―活動を進めるには、地域を知った上で、問題を分析し、総合的な支援体制を整えられる人材が必要になる。

  ソーシャルワーカーとコミュニティーワーカーの両方が必要。県立大でも毎年、社会福祉士が養成されているが、需要はさらに高まると思う。人材をどこで養成するかは行政に考えてもらうしかないが、人材をどう育てるかについては、これまでの実践でいろいろなノウハウがある。ニーズがあれば、それを事業としてNPOが取り組むこともあり得る。

  ―今年度、力を入れることは。

「あすくら盛岡」としては残り1年なので新事業に取り組むのは難しい。しかし、足りない地域資源を見つけ出し、それにどう対応していくべきかは考えていきたい。

  例えば、相談者の地域での居場所、役割を確保する上で、中間的就労の場は、まだまだ必要。本格就労は無理でも、自立を目指して社会参加したい、働きたいけれども子どもの体が弱いなど自分の都合に合わせて働きたい人は、世の中にあふれている。一方で、職種によっては人手不足が甚だしい。そこをマッチングしていく仕組みまでは、多機関によるネットワークの中で考えている。それをどう実行していくか。

  保証人がいないために、アパートに入れない、入院できない、施設に入れない、就職できない人が大勢いる。この問題も社会システムの中で解決策を考えていく必要がある。

  地域を巻き込み、制度の枠も超えて関係を作っていくコミュニティーワークは、行政にはやりづらい。先に必要性に気付いた民間団体が率先してやるべきで、そこにNPOの役割や存在意義があると思う。

■複合的な課題に対応

  同法人によると、2017年度の活動数の内訳は、面接相談982件、電話相談1927件、訪問相談265件、関係機関との連携3111件。相談室訪問者は1001人、うち新規相談者は143人だった。

  相談事例を見ると、▽児童養護施設を退所後に親元に戻ったが虐待と経済搾取があり家出(10代女性)▽パワハラのため、派遣会社を退職。寮の退去を求められているが行き先がない。あてになる親族はいない。カードローンなどの借金もある。娘は障害があり児童養護施設に入所(40代男性)―など。病気や障害、DV、経済困窮など複合的な問題を抱えているケースがほとんど。

  個別の相談に加え、孤立しがちな利用者の交流を促し、社会参加のきっかけを作る「あすくら・つながるサロン」、地域でより良く生きていくためのコミュニティーの先進事例などを学ぶ「あすくらセミナー」にも取り組む。


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