盛岡タイムス Web News   2018年   6月  2日 (土)

       

■ 〈体感思観〉 編集局 藤澤則子 田植えの「こびるタイム」


 6月に入り、盛岡広域圏の田植えもほぼ一段落した頃かと思う。運動会に体育祭、他の行事と重ならないか気に掛けていたが、今年も家族総出で実家の田植えに加わることができた。
 
日頃、農作業の中心になっている義父母らに手順を聞きながら、子どもたちも青々とした苗がぎっしりと詰まった「苗箱」運びに精を出した。田植え機を動かす大人に手渡す動作を繰り返すと、小腹がすいてくる。

  平昌オリンピックではカーリング女子の「もぐもぐ(おやつ)タイム」が話題になったが、こちらは「こびる(小昼)タイム」。菓子パン、クッキー、バナナ…あぜ道で頬張りながら、田んぼの周りの自然に目を奪われる。生き物たちの宝庫なのだ。

  あぜにかがみ込んで子どもたちが見つけたのは、小さなタニシ。私が幼い頃は、田んぼで集めてはきれいな水で泥をはかせ、しっかりと煮付けて食卓に出してもらったりした。

  今ではほとんど見られなくなったが、義母が嫁いできた頃はドジョウが生息し、手伝いに来てくれた人たちにも「ドジョウ汁」を振る舞ったという。

  スーパーではパック入りで売られているクレソンも、きれいな水流の脇に生き生きと。以前、盛岡市玉山区(当時)の地元食材を使ったメニューを取材した際、70歳になる男性が「クレソンは子どもの頃から食べていたので懐かしい」と、材料に使われていることを喜んでいた。今は栽培が盛んだが、このような背景があったのかもしれない。

  八幡平市博物館で開催中の「近くて懐かしい 昭和の生活・生業(なりわい)写真展」(〜8月31日)は、田畑の仕事など農作業をとらえた写真も展示され、来館者に好評という。

  田んぼのある風景は、農作業に関わる人だけではなく、いろいろな人のいろいろな記憶と結び付いている。田植えの合間、きれいな水で洗って口にしたクレソンの軟らかさ、ほろ苦さが心に残った。


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