盛岡タイムス Web News   2018年   6月  21日 (木)

       

■  絶滅から種守る学説 福田智一教授(岩手大理工学部)グループ 個体再生に期待もウミガメの遺伝子研究で 「ネイチャー」の電子版学術誌に


     
  ウミガメに関する研究論文を発表した福田教授  
 
ウミガメに関する研究論文を発表した福田教授
 

 岩手大理工学部生命コースで細胞工学、分子遺伝学を研究する福田智一教授(49)ら研究グループが日本国内に生息するウミガメ類を対象に実施した遺伝子研究の成果が、ネイチャーグループ(イギリス)の電子版学術誌「Scientific Reports」に20日付(現地時間)で掲載された。研究が進展すれば、絶滅動物の細胞から個体を再生することも不可能ではなくなるという。(佐々木貴大)

  研究対象としたのは、国内に生息するアカウミガメ、ヒメウミガメ、タイマイ、アオウミガメの4種のウミガメ。いずれも絶滅が危惧されている。

  今回の研究で得られた成果は▽ウミガメ4種の染色体数が同数である▽ヒト由来の遺伝子を導入することでウミガメ細胞の寿命を劇的に延長できる―の2項目。中でも、ヒト由来の遺伝子により細胞の寿命が延長されることは、細胞分裂を制御する仕組みが哺乳類と爬虫(はちゅう)類で共通していることの証明となる。また、細胞が長寿命化できることにより、海中の重金属などがどのように生体内に蓄積されるのか、どのような影響を与えるのかを、生体実験を行わずに調べることも可能になるという。

  研究のきっかけは、2011年の東日本大震災だった。「人間もあしたはどうなるか分からない。研究者として、自分にしかできないことをしよう」と決意した福田教授は、絶滅危惧種の動物に関する研究に着手。その中で、ウミガメの研究に行きついた。

  熱意とは裏腹に、研究には多くの苦難が待ち構えていた。当初は細胞培養の手法が確立できなかったほか、最初に論文を投稿した14年から開始した細胞分裂の観察に4年を要した。福田教授らは根気強く乗り越え、今回の発表に至った。

  「人間が砂浜を埋め立て港とし、ウミガメの卵を壊した。人間がエベレストから南極まであふれた結果、多くの動植物をテーブルの端に追いやってしまった」と、絶滅危惧種の現状を表現する福田教授。「動物の多様性は、将来へ残すべき財産。そのことを広く気付いてもらえたら」と語った。


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