盛岡タイムス Web News   2018年   6月  23日 (土)

       

■ 〈体観思感〉相原礼以奈 紙のみぞ知る


 5月に盛岡市八幡町のリノベーション施設・八藝館での作品展にお邪魔した際、手織り作家のよしはらかおりさんは会場の建物自体の持つ魅力についても語ってくれた。そのとき見せていただいたのが、階段の引き出しの底に敷かれている新聞紙。1960〜70年代の紙面から、建物の持つ記憶と、今に連なる時間の濃厚さを感じた。

  日付は7月で、高校野球の詳報や水難事故などの記事が掲載されていた。活字の大きさや広告の体裁が現在の新聞と異なり、一時本題を忘れて盛り上がった。

  その後、実家で古い台所を改装することになり、偶然私も工事前の片付けに居合わせた。母と2人で引き出しの中身を全て出して廃棄と保存に分ける中で、ふと底に敷かれた新聞紙に目が留まった。日付は昭和58(1983)年11月某日。聞けば、若かりし母が嫁入りする2日前という。

  母と一緒に「急いで片付けたんだねぇ」と、祖母の当時の奮闘ぶりを想像して笑った。同じ新聞紙を30年以上敷きっぱなしだったことは、笑いごとではないと思いつつ。

  現代はウェブメディアや電子書籍が普及し、紙媒体の厳しさは多方面から突きつけられている。しかし思いがけない古新聞との出合いから、改めて紙の良さの一端を感じた。

  記事を書く立場として、内容を充実させ、読んで楽しく、正しく、役に立つものを作る努力は変わらない。いろいろな意味で、手にする人、目にする人の「使える紙」であり続けたいなと考えた。そして半世紀ぐらい後に、引き出しの底に敷かれた新聞紙を見た人が「2018年の盛岡タイムスだって!」と興味を持ってくれたら、また面白いと思う。


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