盛岡タイムス Web News   2018年   7月  8日 (日)

       

■  「職・育」働きやすく 県内10施設 増える企業主導型保育所 認可並みに国が運営費助成 求められる質の保障


     
  ニチイキッズ盛岡もとみや保育園でリトミックを楽しむ園児たち  
  ニチイキッズ盛岡もとみや保育園でリトミックを楽しむ園児たち
 

 企業が国から補助を受け、従業員や地域住民向けに開設する「企業主導型」の保育所が県内でも増えている。2016年4月の制度開始以来、県内では10施設(定員250人)に対する整備費助成や運営費助成が決定し、6月までに8施設が新たに開園した。待機児童が多い首都圏などに比べ、まだ数は少ないが、企業の金銭的な負担が軽減される上、保育所を併設した働きやすい職場として人材が集めやすくなるメリットもあり関心は高い。従業員だけでなく地域住民の子どもを預かる「地域枠」があり、認可保育所に入れなかった子どもの受け皿の一つにもなっている。(馬場恵)

  ■複数の企業と利用契約

  医療・介護・保育関連事業大手のニチイ学館(本社東京)は、複数の企業と共同利用の契約を結ぶ形で昨年4月、盛岡市と北上市に企業主導型の保育所を新設した。盛岡市本宮4丁目のニチイキッズ盛岡もとみや保育園(佐々木舞園長)は定員18人(ゼロ歳6人、1歳6人、2歳6人)。このうち、ニチイ学館や契約企業の従業員の子どもを預かる「従業員枠」が9人、それ以外の地域の子どもを預かる「地域枠」が9人。従業枠のうち各年齢の1定員ずつは特別契約している企業の従業員の子どもの入園申し込みがあれば、すぐに利用できるようあらかじめ席を空けてある。

  保育料金は0歳児が月3万5900円、1・2歳児が3万5700円。6月に常時預かった園児は10人で自社や契約企業の従業員の子どもの利用が5人、残りが地域枠の利用だった。

  本宮地区は盛南開発の影響で新しい住宅が増え、市内の中でも待機児童が特に多い地域。「認可保育園を落ちた後、すぐに預けられるところが見つかり助かったという親もいた。小規模保育所で先生方の目が行き届きやすい点も安心感につながっていると思う」と佐々木園長。リトミックや英語教育、アレルギーがあってもなくても園児全員が一緒に食べられる給食の提供など関連企業と連携し、特色ある保育が提供できるのも強みという。同社は企業主導型で全国100カ所の保育園新設を目標に掲げ、7月現在で68カ所が開園している。

  同社盛岡支店(橋美智代支店長)の澤藤智美保育課長補佐は「保育スタッフも100%保育士を採用しており、認可外施設であっても認可保育所と保育の質に差はないと思う。子どもを預けるだけでなく、さまざまな付加価値に対する保護者の期待は大きく、それに応えていけるような運営を目指していきたい」と話した。

  ■ 企業主導型保育事業

  企業主導型保育事業は、認可外施設ではあるが、建物や人員配置の条件を満たせば、新設の場合、国から整備費用の4分の3と施設運営費の助成が認可保育所並みに受けられる。1企業単独で事業所内に設置するだけでなく、企業が共同で設置したり、保育事業者が設置し複数の企業と利用契約を結ぶ方法もある。

  認可保育所は自治体が保育の優先度に応じて入園児を決定。これに対し、企業主導型では保育所に決定権があり、保育料も国の目安に従って独自に設定できる。県内では、事業所内などに設置される比較的、小規模な保育所の新設が目立つが、岩手医大は来年、矢巾町の附属病院移転先に、地域枠を含め100人規模の保育施設の開園を予定している。

  ■大学と銀行の共同設置

  岩手大と岩手銀行は3月に盛岡市上田3丁目の大学敷地内に「がんちゃんすくすく保育園」(佐藤秀子園長)を開所。同園の他、市内五つの保育園と学童保育を運営する社会福祉法人わかば会に業務委託し保育を開始した。

  定員は12人。現在はゼロ歳児から2歳児まで大学の教職員の子ども10人、岩銀社員の子ども2人を保育している。大学で学ぶ社会人や留学生の子どもの保育も想定。男女共同参画を推進する大学として子育て支援のモデルを示していく考えだ。大学の敷地内にある特色を生かし、学生をボランティアとして受け入れ、「次世代育成サポーター」として養成する事業にも取り組む。

  同園を利用する保護者の一人は「職場に保育所があることで送り迎えがしやすく、何かあったときすぐに迎えに行けるのがいい。大学の敷地内は緑が多く、子どもたちにとっては格好の環境」と喜ぶ。ただ、保育料については盛岡市が認可保育所利用者に実施している2人目以降の軽減措置の適用がなく「軽減がある認可園と比べると、気になる」という。それでも、保育料は世帯収入別に4段階、認可保育所とあまり変わらない料金で設定されており、学内で子どもを預けられるメリットは大きい。

  同大総務部職員支援課の清水千香子課長は「すぐに入れる保育所があったことで育休開けからスムーズに職場復帰できた保護者もいる。女性も男性も子育てをしながら働き続けられるよう力になれれば」と話した。

  ■保育の質の保障が課題

  盛岡市も4月に策定した「子ども・子育て支援事業計画」に、企業や商店街などに企業主導型保育事業の導入を働き掛ける方針を盛り込むなど新事業への期待は高い。

  ただ、市町村や県が入園児の決定や施設の点検に深く関わる認可保育所とは異なり、安全確保策など保育の質の保障は企業個々の責任によるところが大きい。全国的に、施設の急増による保育士不足や保育実態のチェックが確実に行われる体制整備が課題として挙げられており、関心を持って見守る必要がある。

  認可保育所での経験も長い、がんちゃんすくすく保育園の佐藤園長は「国として本来は認可保育所を増設していくべきで、行政の監督が十分でない保育施設が増えていく現状はいかがなものか」と懸念。「保護者が安心して預けられるよう保育の中身についても充実させていきたい」と話した。


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