盛岡タイムス Web News   2019年    1月   3日 (木)

       

■ 外国人観光客に需要 友ありゲストハウスの旅 民泊で街をまるかじり リノベで「ぶちょうほの宿」(盛岡市八幡町)など

     
  純和風の「ぶちょうほの宿」の一室。こたつやマットレス付き布団を準備している部屋も  
   純和風の「ぶちょうほの宿」の一室。こたつやマットレス付き布団を準備している部屋も
 

 全国的に外国人観光客が増える中、低料金で宿泊でき、土地の人と交流できる「ゲストハウス」や住宅の一部を有料で旅行者に貸す「民泊」が注目を集めている。盛岡地域での関心はまだ高いとは言えないが、個人旅行者の利用を見込んだ特徴ある宿が現れ始めた。(馬場恵)

 ■地域づくり団体運営のゲストハウス

  盛岡市八幡町の「ぶちょうほの宿 盛岡」は、地域住民で立ち上げた株式会社八幡創活サポートセンター(明戸均社長)が、昨年2月に開業した。まちのにぎわい創出を目指し、1950年代に建てられた木造2階の元旅館をリノベーション。部屋は2人部屋の「山車」、3人部屋の「チャグチャグ馬コ」、4人部屋の「さんさ踊り」の3室。共同の風呂、キッチン、トイレがあり、布団付きで1泊一人3500円から。1階の事務所兼談話室は地域住民にも貸し出し、交流の場として活用されている。

  最も利用が多かった昨年8月の稼働率は約45%。開業から1年足らずとあって、利益を生むまでには至っていないが、地域づくりの起爆剤の一つとして手応えを感じているという。

  利用は、ゲストハウスや民泊を対象にしたインターネット上の仲介サービスで宿を知った旅行客が中心だが、泊りがけの「女子会」や観劇後の宿泊に利用する人も。利用客の国籍は日本、米国、カナダ、オーストラリア、フランス、中国、台湾など多彩で、宿を拠点に函館や平泉まで足を伸ばす人、予定を決めずに盛岡の散策を楽しむ人など旅のスタイルもさまざまだ。冬季はスキーを目的とした予約もある。

  近所に住むスタッフが交代で受け付け業務などを担当。チェックインが済めば、自宅に戻り、利用客はチェックアウトする際に鍵を専用ポストに戻す。問題が発生した場合に限り、連絡を受けたスタッフが駆け付けるシステムで、運営が過度な負担にならないよう工夫している。

  スタッフの一人で、肴町商店街振興組合の理事長も務める豊岡卓司さん(56)は、肴町生まれ肴町育ちで、八幡町かいわいのにぎわいが原風景。空き店舗が目立つ地域を再び元気にしたいと事業に参加した。

  「ゲストハウスは、まちそのものを丸ごと楽しんでもらうのが目的。ホテルや旅館とは全く狙いが違う。近所とトラブルがあってはとか、クレーム対応が大変とか、できない理由を挙げて尻込みするのではなく、旅行客の受け入れ体制を整えるべき」と力を込める。県内の他の地域にあるゲストハウスとも情報交換し、互いに旅行客を紹介し合えるようになれば「岩手全体を見てもらうチャンスを広げることにもなる」と展望する。

  ■「ゲストハウス」「民泊」形態さまざま

  住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行が話題を呼び、地方でも「民泊」や「ゲストハウス」が注目を集めるようになったが、実際の宿の形態はさまざまだ。

  自宅の部屋の一部を有料で旅行者に貸すスタイルの他、雰囲気のある農家の蔵を丸ごと提供している例やサービス付き高齢者住宅の空室を宿として提供している例も。首都圏では遊休ビルなどを改装し
、低料金でベッドや共用のキッチン、シャワーなどを提供する、現代版「ユースホステル」のような宿が増えている。営業日数や施設設備によって、旅館業法の簡易宿所、民泊新法など営業許可の取得方法も異なる。

  世界各地への一人旅の経験が豊富で、盛岡市城西町で「盛岡ゲストハウス」を運営する栗木あかねさん(39)によると、バッグパッカーら旅慣れた人がイメージする本来のゲストハウスは戸建てで、シャワールームやキッチン、リビングなどが共用。居心地良く、他の旅人やオーナーと交流できる。部屋ではなくベッドを貸すドミトリータイプが主流という。低料金で宿泊できるため、施設設備は劣るが「人間力で勝負」といった宿が多く、豊富な地域情報が得られ、その土地ならではの旅の醍醐味(だいごみ)が味わえる。

  盛岡では自身が運営するゲストハウス以外に、そうした宿は、まだほとんどないが「世界の旅人が集まり、新しい発見や刺激があるゲストハウス中心の旅のスタイルがあることを、ぜひ知ってほしい」と語る。

  一方、県内では、主に教育旅行向けの「農林魚家民泊」は盛ん。県の取り扱い指針に基づいて、宿泊料ではなく体験指導料などを受け取る仕組みで、盛岡広域の窓口団体では雫石町グリーン・ツーリズム推進協議会や、くずまき高原宿泊体験協議会がある。

  ■民泊新法 県内届け出継続25件

  民泊新法は、外国人観光客の増加による宿泊施設不足解消の決め手として昨年6月に施行された。住宅の貸し手が都道府県知事に届け出ることで年間180日を上限に民泊を営める。

  県民暮らしの安全課によると、本県では民泊新法の届け出を29件受理し、継続しているのは昨年12月28日現在で25件。盛岡広域は盛岡市2件、八幡平市2件、滝沢市1件で、世界遺産のある平泉など県南地域からの届け出が多いという。

  トラブルの報告はないが、生活環境の悪化をあらかじめ防止するため、県は、学校や児童福祉施設の周辺や都市計画法で定められた住居専用地域での民泊営業を原則として土日、祝日や学校の休業日に限るなど、一定の制限を設ける条例を策定した(19年2月施行)。

  盛岡市観光交流課の立花恵史課長は「盛岡中心部は、もともと旅館やホテルが多い上、郊外にはつなぎ温泉もあって旅行客の需要が満たされてきた。今のところは状況を見守りたい」と話す。


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