2014年 10月の天窓


 2014年  10月  31日 ―中国の人口と家族生活―
 10月初旬に中国の山西省を訪れた。山西省は寺院や石窟などの歴史遺産を多く抱えているが、石炭の埋蔵量が多く、農業の盛んな省だ。省の人口は3300万人を超し、山西省には省都の太原市、それに次ぐ長治市が、それぞれに400万人、300万人を超す大きな都市である。
▼中国は「市」の周りには「県」が置かれていて、人口は30万規模が多い。今回は、山西省第二の都市、長治市とその隣の長子県(人口32万人)を訪れたのだが、市と県の政府主催夕食会にお招きを頂いた。中国では土地と許認可の権限は国のものとしているが、運営は資本主義の考え方が多く取り入れられている。
▼近年、農村でも塀を回した一族の住宅を離れてアパートに移って子ども家族が暮らしている。親子が別棟の家で生活している例もある。
▼長治市の招待夕食会は老頂山近くの山荘で催され、地場で収穫された食べ物が振る舞われた。そこの農園の責任者は岩手山西会で農業技術研修を積まれた方で、減農薬、鶏の放し飼いなどの農法で運営していた。私の考えとして「八十にしてくわを持つ」といったことを述べたが、中国には何と理解されただろう。
▼年を重ねても働くことに生きがいを感じる日本をどのように理解したのだろうか。日中ともに高齢化社会を迎えている。

 2014年  10月  30日 ―面白く生きた赤瀬川氏―
 喜寿で旅立った赤瀬川原平氏は、人生や世の中のあれこれを面白がって生きた人だった
▼仏典には「この世は衆生が遊楽するところ」とあるが、故人にはそれを地で行く逸話がたくさんある。好奇心が旺盛だからだろう。街を歩いていても妙なものを見付ける。東京の四谷では仲間と散策中に上ると入り口も通路もなく、どこにも行けない階段を発見する
▼作家で前衛芸術家でもあった赤瀬川氏は、上って降りるだけのこの階段は純粋芸術に似ていると面白がり、「四谷純粋階段」と命名。さらに四谷怪談に重ね「四谷階段」と呼ぶなど仲間と大いにはしゃいだという。コンクリートでふさがれ開かない門や銭湯跡に残る煙突など無用となった類似構造物も発見。それらを超芸術と遇し「路上観察学会」まで創設
▼無用の長物と見られているものに光を当て楽しんでいる。その優しいまなざしは人間界も直視。認知症などで冷遇されがちな高齢者にも向けられる。著書「老人力」は例えば物忘れも《宵越しの情報は持たない老いの能力》だと説く。自身を無用の存在と見てはいけないという優しい励ましだろう
▼書評集「赤瀬川原平の今月のタイトルマッチ」も着想が愉快だ。本を読まずに題名だけを比べて論評している。未読書評の試みを自ら面白がる在りし日の姿がしのばれる。

 2014年  10月  29日 ―秋酣(あきたけなわ)に思う―
 秋酣(あきたけなわ)のシーズンに入っている。「酣・闌」という字は、「たけなわ」であり、「もっとも盛んなとき」や最中、真っ盛りの意味を持っている。従って春秋や宴という字が頭についたりする。
▼今まさに「あきたけなわ」の枕ことばが氾濫し、宴たけなわといっても良い季節となった。特にも土曜、日曜日にかけては「産業まつり」「道の駅まつり」「文化祭」「芸術祭」などと名の付く催しが、イベント欄にずらりと並んでいる。週末には都南、雫石、紫波、神子田、材木町、盛農とあらゆる名を頭に、盛岡市の動物公園、盛岡競馬場、県民会館や各地の公民館などでもさまざまな行事が開催されている。今年は農産品も豊作で、盛岡市周辺の農村部では野菜や果物が豊富に出そろっている。
▼戦後は地区の学校などで物産展が開催され、大豆、小豆などの穀物などはガラスケースに入れられて1等賞から3等賞、金・銀・銅といったような生産者の名札のところに入賞の札が付けられ、それが名誉であった。野菜や果物などにも入賞の札が付けられ、最終日の午後には市民に販売された。
▼いつの頃からかスーパーが消費者に幅を利かせ、農協や生産者が表には出なくなった。生産する喜び、競う喜びや誇りといったものが後退しているのは寂しい限りだ。

 2014年  10月  28日 ―おかあさんの詩―
 詩人サトーハチローは母をたたえる詩をたくさん創作している
▼「ちいさい母のうた」ではほんとに小さい母だがきれいな声の人で話のじょうずな人と褒め、「この世の中で一番」では、「この世の中で一番美しい名前 それはおかあさん この世の中で一番やさしい心 それはおかあさん」と称賛している
▼生涯の作品は約2万編でそのうち約3千編は母に関する詩だという。この人の記念館は前は東京にあったが子息で館長継承者の佐藤四郎氏らが、詩情豊かで交通の便も良い北上市への移転を決断し市当局も尽力。1996年に同市展勝地にサトーハチロー記念館が開館する
▼母をうたう詩人の偉業にちなみ同館や北上市などが、心の豊かさを育もうと97年から公募で始めたのが「おかあさんの詩」全国コンクールだ
▼18回目となる本年の審査結果は先頃公表され、愛知の小学1年・樋渡凪(なぎ)さんの「おかあさんのみみはじごくみみ」が最優秀賞に輝く。父と小声でお菓子を食べる相談をしていると隣室の母から「ダメ!」の声が。「じごくみみだねぇ」という父に地獄耳の素敵な意味を教えてもらったことを書いている
▼優秀賞2編には北上のいわさき小2年・千田心春さんの作品「夏休みのさいごの日」と北上北中2年・川村悠斗君の「僕のお母さん」が選ばれた。

 2014年  10月  27日 ―あすで創刊45周年―
 盛岡タイムスは1969(昭和44)年10月28日に創刊され、あす創刊45周年を迎える。
▼当時、岩手国体を翌年に控えて、花巻空港が開港し、東北自動車道の整備など、高速交通体系の整備や社会基盤の強化に向けた公共事業が盛んに行われていた。創刊時の企業理念は、「郷土を愛し、地域と共に歩み、時代の先を読み、地域の発展に向けた提言をする」ことである。地域に溶け込んで、確かな視点で、的確な情報を迅速に提供することにある。
▼最初の岩手国体開催から44年を経ているが、本県、特にも盛岡広域圏はどのように変わったのか。北東北の拠点都市を標ぼうして、さまざまな課題に取り組み、拠点化、産業配置、広域合併の推進などを進めてきた。
▼2011年3月11日には、前代未聞の東日本大震災津波によって大災害に見舞われた。被災地での仮設住宅、内陸への移住は3年から4年に延伸され、三陸沿岸の復興に全力を挙げているところだが、発災から3年7カ月を経て、用地問題、技能工の不足や建設資材の高騰などで復興は遅れている。16年には2巡目、希望郷いわて国体、希望郷いわて大会が開催される。
▼三陸沿岸の復興と合わせ、内陸と沿岸の格差解消、地方創生が叫ばれている時代。愛読者の皆さんの期待に応えていきたい。

 2014年  10月  26日 ―オレオレ詐欺ゼロ地域を―
 高齢者をだますオレオレ詐欺が、県内でも後を絶たない。今年5月にはそこまでやるかという詐欺が起きた
▼花巻市の70代女性宅に弁護士事務所を名乗る男から電話。お宅の息子さんが会社の金に手を出したと告げられる。さらに「あなたのところに2千万円の請求書が届いていますね」と言われる。翌日は息子の実名を名乗る別の男から投資に失敗し会社の金を使い込んだ。2千万円を用立ててほしいと電話が入る
▼女性は携帯電話番号も教えている。750万円を用意した老母は指示されるまま新幹線で上京。都内指定駅で事前に通知された名前の男に現金を手渡す。冷静さが戻った母はそこで初めて息子に電話。詐欺と気付き花巻署に被害届を出す
▼同市内では事件が報道でも口コミでも伝わったが、今月22日には同種事件が起きている。高齢女性が株で失敗した息子をかたる男にだまされ500万円を用意。指示通り新幹線に乗り仙台駅で下車。ところが息子が現れず本人の携帯に電話して詐欺と判明する
▼犯人側が代理受け取り人の手配に失敗したのだろうが、先例のように事前に代理人を老母に伝えていたらだまし取られていたかもしれない。ともかく家族で近隣で職場で互いに実例を語り合い助言をし合って、県内の全域が「オレオレ詐欺ゼロ地域」を目指したい。

 2014年  10月  25日 ―TPP閣僚会議―
 25日からオーストラリアでTPP(環太平洋連携協定)に関し、12カ国の閣僚会合が開かれる。
▼日本が大幅譲歩を強いられている牛肉、豚肉、乳製品といった農産物や自動車部品の貿易をめぐって、大きな隔たりを抱えたまま交渉に臨むことになろう。だが、簡単に譲歩をしたものならば、将来に禍根を残すことになる。日本の農業の将来は一体、どのようになっていくのか。
▼アメリカのオバマ大統領は11月末までの交渉合意を目標に置いているようだ。というのは、11月4日の中間選挙では通商面での成果を挙げておきたいからだろう。TPP交渉の進展がない中で米国の中間選挙をめぐる情勢は共和党優勢の情報がある。
▼一方、11月10、11日には中国でAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会合が開催される。この首脳会合を念頭に、日米ではTPPの大筋合意を目指してきた経緯がある。
▼また、APECの機会を捉えて日中間の首脳会談が開催されるのかについても期待されているところである。北朝鮮の拉致問題についても27日から大きな山場に差し掛かっている。国内では女性大臣が二人も一緒に辞任して混乱しているとき、外交では大きな交渉ごとが相次ぎ控えている。国会審議の遅滞に、外交が歩調を合わせてはならないだろう。

 2014年  10月  24日 ―エスカレーターは歩行禁止―
 消防庁の調査によると、駅などのエスカレーターで起こる事故の95%は転倒だという
▼混雑時に詰め込むように乗り込んだ過重積載などで、急停止や逆回転が発生。その衝撃による将棋倒しのような集団の事故もまれに起こるが、大半の事故は利用者個々の動作に起因する。乗降口でつまづいたり昇降中に体の向きを変える際、バランスを崩して転んだり倒れたりしている
▼さらに鉄道など関係各社が着目したのは、全国的にエスカレ―タ―利用時には片側を空ける習慣があることだ。おおむねは東日本が右を西日本は左を空けるとされる。それはいいのだが空いた片側を歩行したり駆け上がり駆け下りるという慣習も定着。それが転倒事故を引き起こすとして問題視したのだ
▼最近の発生事例には駅のエスカレーターに松葉づえで乗っていた男性に、脇を走り抜けようとした人がぶつかり男性が転倒。頭部打撲という弱者が危険な目に遭う事故もあった。一方同じく駅のエスカレーターを急ぎ足で降りていた高齢男性が途中で転び、下まで落ち大けがをする自爆的事故も起きている
▼エスカレーターは当初から昇降中の歩行は想定していない。関係各社は今、事故防止のため利用の基本である「歩行禁止」を丁寧に呼び掛けている。ステッカーやポスターなどでも啓発している。

 2014年  10月  23日 ―自生、野生に果実―
 23日は霜降(そうこう)で、いよいよ秋も深まったというか、早朝など、ところによっては霜を見るようになる。朝の通勤時、前九年の辺りを通ると柿の実が色よくなってきているのを見掛ける。岩手大学の構内には樹木の落ち葉が舞い飛んで晩秋に入っていることを感じる。
▼今月初め、中国の山西省を訪れたが、訪問先の学校や役所の応接室のテーブルにはナツメの果実が出されていた。1、2個食べてみたが自然の味でとてもおいしく、懐かしく思った。そうだ、終戦直後に小学校の校庭に植えられていたナツメの木によじ登って食べたことを思い出した。辞書をひもといてみたら、ナツメは中国原産で、白色の花をつけ、花後、核果を結び、暗赤色に熟し、食用や強壮剤に用いられると記されていた。
▼珍しいので、日本へ土産にと思って山西省長治市のスーパーで探し、ナツメの果実を乾燥させたものを多めに買って来た。ところが周りの誰もナツメを知っていなかった。
▼本県では、リンゴやブドウなど、栽培型の果実の収穫が最盛期を迎えている。それに比べて、アケビやヤマブドウを食べることがなくなっているし、クリやクルミを拾って食べるといったこともまれになっている。漢方薬のもととなっている薬草についても、見掛けることがめっきり減った。

 2014年  10月  22日 ―TOTOのトイレ川柳―
 衛生陶器の大手・TOTOの社名は、創業時の名称「東洋陶器」を略した「東陶」に由来する
▼好評のウォシュレット(温水洗浄便座)は同社の商品名で商標登録している。1980年代に流れたテレビCM(コマーシャル)の「人のおしりを洗いたい」などのせりふが知名度を上げ、普及の背を押して10年前には2千万台を突破したという
▼これを記念しTOTO社は毎年公募の「トイレ川柳」を始めた。酷評も想定したろうがCMで世の嫌悪感を克服した経験から踏み切ったらしい。CMも当初は「品がない。やめろ」などと反発の声が寄せられたというが、温水洗浄の便利さが評判を広げ批判を消去できたのだ
▼「トイレ川柳」も順調で先週は第10回となる今年の受賞作を発表。応募数も数年続いた2万台を超え過去最高の3万3042句となった。入賞作品には味わい深い句が並ぶ。「不思議だねきれいなトイレは汚せない」と素直に詠んだ句が最優秀賞に輝く
▼子ども対象のキッズ賞には「いっしょにね仲良しだけどそれはムリ」とのほほ笑ましい句も選ばれた。過去と未来を詠む各10句に贈る10・10賞受賞句も楽しい。「ぶっちゃけて和式が苦手日本人」は過去詠。「行きやすいトイレが増えて生きやすい」と発音を重ねた句は、願望も込め未来の生活を夢見ている。

 2014年  10月  21日 ―小中学校のいじめ―
 全国の小学校が2013年度に把握したいじめは、11万8805件で 過去最多になっていることが文科省から16日に発表された。これは、文科省の問題行動調査で分かったものだが、前年度より1421件の増となっている。
▼いじめ件数は小学校で過去最多になっているのに対して、中学・高校は減少している。文科省では「小学校と中高で傾向が違う理由は不明だが、いじめの発生が急に増減するとは考えにくく、把握は学校の取り組みに左右される。今後も積極的に掘り起こすことが必要だ」と分析している。
▼1997年度から調査を開始しているが、小中学校のいじめ認知件数からみて、この2、3年間というものは小学生のいじめが急激に増加している。しかし、いわゆるいじめ件数は、各県の数値に高低差があり、学校ごとの把握の方法によって異なった結果が出ているのではないか。この傾向は本県においても同じような状況に置かれているのだろうか。その理由を早急に調査して対策を急ぐ必要があるのではないか。
▼内容として児童生徒の「暴力行為」は深刻な事態だが、「パソコンや携帯電話での誹謗(ひぼう)・中傷」、「からかいや悪口」が最も多くなっている。これが不登校と関係しているのかについても、しっかりとした調査と対策が求められる。

 2014年  10月  20日 ―小渕氏の能天気金銭管理―
 衆院議員5期目の小渕優子経産相は、代議士の祖父と元総理の父に続く3世で現在40歳
▼自民党内では将来の総理総裁候補との声もあり若手のホープだ。麻生内閣で特命大臣として初入閣したのは34歳の時。37歳で党幹事長代理に就任したがこれも期待の表れだろう。12年末の第2次安倍内閣発足時には入閣要請を固辞。財務副大臣を受けたがこの時に逸話がある
▼副総理に内定していた麻生元総理が、前に大臣をやって副大臣というのはいかがなものかと注文をつけると、彼女は切り返す。「総理をやってから副総理をやっている人もいる」と。この突っ込みと回転の速さ。鋭さを持つ女史がなぜ金銭管理が能天気でずさんなのか
▼「できる人」も「できた人」とは言えないケースなのか。自身が関与する政治団体が支持者向けに催した2010年、11年の明治座観劇会で参加者から受領した会費総額より、団体が会場などへ支払った総額の方が約2642万円も多いことが指摘されている
▼参加者が支払うべき費用を政治団体が負担すれば、有権者への利益供与を禁じた公選法違反となるがその疑惑が浮上。それは他年度でも露見。ほかに親族業者からの物品購入も問題化している。小渕大臣辞職は不可避の情勢だ。ルール違反法相の処遇もある。任命責任追及も炎上しよう。

 2014年  10月  19日 ―御嶽山噴火災害の捜索―
 長野県と岐阜県にまたがる御嶽山の噴火は戦後最悪の火山災害となった。各社の報道によると、死者56人、行方不明者7人となっているが、16日で今季の大規模な捜索活動は打ち切られた。山頂付近は15日に初冠雪を記録し、雨、雪、雪崩などによる二次災害の恐れもあり、捜索隊の安全確保が必要であると判断された。
▼捜索再開は雪解けを待って来春以降になるものとみられている。秋登山シーズンの9月27日土曜、昼前に噴火して以来、警察、消防、自衛隊など、延べ約1万5千人を投入して犠牲者の捜索や救援等に当たったが、悪天候と高地での活動に捜索活動は難渋を極めた。
▼16日は、行方不明者の家族約20人が自衛隊のヘリコプターに乗り、山頂付近の状況を上空から確認した。阿部守一長野県知事は同夜の記者会見で「断腸の思いだが、大規模な捜索活動を本日を持って終えることを決めた」と述べた。これを受けて、山谷えり子防災相も政府の非常災害対策本部の会合で「家族の心情を思うと心苦しいが、知事は苦渋の判断をした」として、大掛かりな捜索活動は同日で打ち切られた。
▼帰りを待ち続けている行方不明者の家族や関係者にとっては、無念であり、無情な現実を思うと気の毒でならない。山は魅力いっぱいだが、険しくて厳しい。

 2014年  10月  18日 ―新聞週間標語と配達員随筆―
 かつて転勤で盛岡に居住した知人は、今は退職し神奈川に住んでいる
▼昨春懇談した際、本紙を見せると読みながら「懐かしい」を連発し「購読したい」と言い出す。実際に3カ月ほど郵送で購読。「読むたびに盛岡は心のふるさとだと思う」とよく電話があった。15日から始まった新聞週間が「ふるさとが元気と知った今日の記事」を代表標語に掲げたことで知人の顔が浮かんだ
▼現実は書くのもつらい報道もある。標語はそれを承知で一つの記事から故郷が元気であることが伝わり、安どする読者の姿を表現したのだろう。新聞週間では配達員エッセー入賞作品も話題になる。今回は大学生・社会人部門最優秀賞に元出雲市長、前衆院議員の岩國哲人氏(78)の随筆が選ばれた
▼家が貧しく少年時代に新聞を読みたくて配達をした頃の回想記だ。小学5年の時に牛乳配達に加え新聞配達を始める。家は新聞購読の余裕がなく彼は下校後に配達先の老夫妻宅で、おじいさんの読了後に新聞を読ませてもらう。その老父亡き後は老母がお茶まで出して読ませてくれた
▼やがて老母も死去。葬儀の場で少年は隣席の人からおばあさんはお前が来るのがうれしくて、字も読めないのに新聞をとっていたと教えられ涙するという内容だ。作品はおばあさんへの感謝として応募したという。

 2014年  10月  17日 ―FIT見直しの検討開始―
 ここ岩手で木質バイオマスが再び注目されるようになったのは14年前。石油危機の折、ペレットなどの固形燃料を作り出したが、数年後には原油価格が安定し、細々と生産と利用が継続する程度だった
▼それが地球温暖化で97年に採択された京都議定書で再生エネルギーへの関心を呼び、官民の枠を越えた岩手・木質バイオマス研究会が2000年に発足。岩手は国内における先進地となったが、その後の足取りは当初の予測より鈍かった
▼そこへ東日本大震災での大規模な停電、福島第一原発事故。国民の関心も向き、なかなか進まなかった再生エネの固定価格買い取り制度(FIT)が12年に導入された
▼ところが今月、電力5社が新規事業者の再生エネ発電電力の買い取りを中断する事態となった。これは送配電網の機能が特に大きい。そもそも再生エネに関しては、電力事業者が地域で独占的に運営している日本の現状の変更が提唱されてきた。発電と送電の事業を分離し、新規参入を容易にして利用者が電力種類を選択可能な自由化が普及の環境に必要との観点からだ
▼FIT見直しについて、経産省は15日から小委員会での検討を始めた。よもや再生エネ全体の縮小とはならないだろうが、地球温暖化防止など長期展望に立って方向性を示す機会ではなかろうか。

 2014年  10月  16日 ―ルール守れない法相―
 先月初旬のこと、居酒屋の隣席に熱く語るにわか評論家がいた
▼内閣改造で安倍総理が5人の女性閣僚を任命したことも論評。安倍さんは数をそろえただけで胸を張らない方がいいと指摘。問題は彼女らの大臣としての資質の有無だと言い遠からず器にあらずと国民を失望させる女性閣僚が出るかもしれないぞと息巻く
▼その人が案じた通り就任から1カ月余の段階で、松島みどり法相の身辺から国民を落胆させる諸問題が浮上したのだから驚く。しかも法務大臣というルールをつかさどる人が、それを軽視した幾つもの事例が露見したのだから穏やかではない
▼一つは都内に住む松島法相が「都内在住議員は基本的に使用できない」と規定した衆院赤坂議員宿舎に警備事情を理由に入居。ところが週末は自宅に帰っていた件。ほかに自身の選挙区内でうちわを配布。物品配布を禁じた公選法違反だと責められると、あれは政策記載の討議資料だと強弁
▼さらに議場内禁止のストール着用もあり規則破りは常習と映る。08年3月には国交副大臣として参院予算委で答弁。長々としゃべり「簡潔に」と委員長が何度注意しても無視。委員長が答弁の打ち切りを命じて、今後予算委出席を禁じると言い渡す一幕もあった
▼ルールを守れない法務大臣。これだけでも改造は改悪に見える。

 2014年  10月  15日 ―訪中に思うこと―
 3年ぶりに中国を訪問した。幸運にも台風18号と19号の間をくぐって秋晴れに恵まれた。前回は羽田から北京経由で山西省に行ったが、今回は仙台空港から上海経由で山西省長治市に行った。
▼中国は2008年の北京五輪、10年の上海万博と過去7年間に二つの大イベントが開催されたのを契機に大きな変化を遂げている。ガイドの話から察すると中国では「世界一」にならなければ気が済まないといった意識が高まっている。それは、五輪のメダル数のみならず、GDPや軍備力にまで目標がおかれていると感じられた。現在も、中心都市のほか、地方都市でもインフラ、特にも道路やビルの建設ラッシュが続いている。
▼経済はもとより、教育や農業の近代化などにも大変な力を入れている。上海市が世界一の人口と思っていたら、重慶がトップで、上海、北京の順位であることを知った。人口では3千万、2千万規模を抱えて、東京の比ではない。それは、北京や上海の空港の規模を見ればうなずける。市内を走っている自動車はベンツが大半を占めている。山西省は石炭の産地だが、その収益が大規模なモデル農業にも使われている。上海では電動のバイクが普及している。
▼日本人の中国を見る目というか、在来からの認識を変えなければならないと感じた。

 2014年  10月  13日 ―マララさんの覚悟―
 インドの児童人権活動家カイラシュさん(60)と並び、今年のノーベル平和賞に輝いたパキスタンの教育活動家マララ・ユスフザイさんは1997年7月12日生まれ
▼国連は7・12を「マララ・デー」と定め、昨年のこの日に彼女を招き演説の場を用意した。一昨年の10月に女子教育の壊滅を狙うタリバンに銃撃され、生死をさまよったが自国病院と搬送された英国病院の尽力で回復。国連演説ではそこから決意を新たにする心境も語っている
▼16歳になった少女はピンクの民族衣装で登壇。本題に入る前にピンクのショールは、かつて女性でパキスタンの首相を務め、07年にテロで暗殺されたブットさんの衣装にあやかっていることを明かしている。それは死を恐れぬ覚悟の表明であろう
▼演説の中でも「タリバンは私の頭部の左側を撃ち抜きました」と述べ、彼らは銃弾で黙らせようとし大きな志を阻止しようとしたが、私は何一つ変わっていないと断言。「弱気と恐怖、絶望は死にましたが強さ、力、勇気が生まれました」と言い切っている
▼さらに教育第一を掲げ「一人の子ども、一人の教師、一冊の本、一本のペンでも世界を変えられます」との名言も残す。平和賞は昨年も最有力だったが年齢で見送られたという。今年は選考陣も器の大きさに頭を垂れたのであろう。

 2014年  10月  12日 ―10月14日は鉄道の日―
 10月14日は「鉄道の日」である。1872(明治5)年10月14日に新橋(汐留、現廃止)│横浜(現在の桜木町)間が開業した日で142年を迎えている。この日をもって鉄道の日としているが、国鉄民営化後は10月14日を中心にした「鉄道旬間」として、鉄道関係が一緒になった活動を展開している。
▼鉄道の歴史を振り返ってみると、1765年、英国人ジェームズ・ワットが蒸気機関を世界で初めて発明した。1802年、同じ英国のリチャード・トレビシックが蒸気機関車を発明。やはり同国のジョージ・スチーブンソンが実用化に成功し、「鉄道の父」と呼ばれる。1825年、イギリスのストックトン│ダーリントン間でロコモーション号が走行。世界初の蒸気機関を用いる公共鉄道となる。
▼わが国では、それから47年遅れての鉄道開通であった。欧米の近代化から遅れてようやく明治維新を迎え、日本の鉄道の父、井上勝が携わった。1870(明治3)年、新橋│横浜間の測量を開始していることからみれば、ものすごい速さでの鉄道開業であったと思う。それだけ明治日本の近代化熱はすごいものがあった。
▼東日本大震災津波では沿岸地域の鉄道施設が大災害を被ったが、すでに3年半が過ぎていることと比較すれば復興がものすごく遅いと感じる。

 2014年  10月  11日 ―「祝婚歌」との出会い―
 若い人の縁結びに関わり披露宴で媒酌人を務めるのは、場数を踏んでも気が重くなる
▼宴の冒頭には媒酌人あいさつがある。2人を紹介しつつ贈る言葉も織り込む習わしがあり、これが苦痛なのだ。でも顧みると10余年前にそこから解き放たれたことを思い出す。詩人の故吉野弘氏がめいの結婚式に出られず新郎新婦に贈った「祝婚歌」と題する詩に出会えたからだ
▼以来、あいさつ後半はそれを借用。30行ほどのこの詩を朗読して締めくくることにしている。かなり普及しているが一部を紹介したい。詩は「二人が睦まじくいるためには愚かでいるほうがいい 立派過ぎないほうがいい 立派過ぎることは長持ちしないことだと気づいているほうがいい」と始まる
▼ここだけでも新郎新婦はじめ皆がうなずきほほ笑みが広がる。次いで「完璧なんて不自然〜ずっこけているほうがいい」と諭す。共感の笑いも起こる。「正しいことを言うときは 相手を傷つけやすいものだと気づいているほうがいい」との助言もある。祝婚の歌は「生きていることのなつかしさに ふと胸が熱くなる〜なぜ胸が熱くなるのか 黙っていてもふたりにはわかるのであってほしい」と結ぶ
▼吉野氏はこの詩は民謡だと言う。民謡には著作権料がないから、引用もコピーもご自由にと言い残している。

 2014年  10月  10日 ―近づく雫石町長と滝沢市長の選挙―
 雫石町長選と滝沢市長選が迫ってきている。住民らが注目し、期待し、関心を寄せている選挙である。
▼盛岡市の西方に位置し、屏風の役割を果たす両市町は、大陸のような存在であり、地元住民にとってはもちろんのこと、県都盛岡市にとっても関わりの深い大事な選挙である。奥羽山系の岩手山・秋田駒ケ岳や八幡平を背にして向こうは秋田県となる。東の太平洋と西の日本海を結ぶ横軸連携の中継点として昔から重要な役割を果たしてきている。そのことは、向こう側の秋田県側にとっても同じ意味を持っている。
▼お互いに切っても切れない強い絆を持っているが、大きな山裾にひらかれた雫石・滝沢の里には山岳資源としての森林はもとより、生命の営みを育む清涼な水資源、また、積雪や雨水を蓄えて、営々として自然環境が育まれてきた。農産物を潤す肥よくな土壌は同時に豊かな動植物を生み出してもいる。そして、人間の疲れを癒やしてくれる温泉、悠久の歴史、よき伝統、観光資源などにも恵まれて、21世紀の発展の可能性を所持している。
▼雫石町民約1万8千人、滝沢市民約5万5千人、県庁所在地に隣接し、好条件を具備した地域であり、県内陸の中枢を担っている。持てる資源、人材、好立地を生かしていくリーダーの選択に万全を期してほしい。

 2014年  10月  9日 ―「蜩の記」が描く生き方―
 仏典は「ただ今を臨終と心得ると良い生き方ができる」と説く
▼当方など俗人はなかなかその境地が開けない。ところが死刑判決確定者の中には、そう心得ている人がいるという。いつ刑執行の知らせが来るか分からない事態そのものが、「ただ今臨終」の覚悟をもたらすのだろう。では処刑日が10年前に告げられたら人はどう日々を生きるだろう
▼今、公開中の映画「蜩(ひぐらし)ノ記」の原作は葉室麟さんの直木賞受賞作品で、その問いに答えるような展開が受賞当時から注目された。映画で役所広司が熱演する主人公の戸田秋谷は、10年後の切腹を命じられた武士である
▼文武に優れ郡奉行も務めた秋谷は藩主の側室同士の暗闘を背景に、よく命を狙われた一人の側室を救う。彼はその側室との不義密通などを疑われ「10年後の切腹」と「藩主家の歴史(家譜)編さん」を命じられ辺境の村へ妻子と共に幽閉される
▼切腹まで3年という時に監視役として岡田准一が好演する藩士・庄三郎が常駐する。彼は次第に秋谷の清廉な人格に魅了され、えん罪を確信する。夫を信じ支える妻(原田美枝子)や父を誇る娘(堀北真希)に、父の事情に気付き悲しむ10歳の息子と、切腹の日が迫る家族の情愛が切なく描かれる
▼多くが遠野市で撮影され美しい山村の風景も映し出される。

 2014年  10月  8日 ―新幹線50年に思う―
 10月1日、東海道新幹線が開業して50周年を迎えた。昭和39年(1964)最初の東京オリンピック開催を目前にしての開業であった。開業を前にしたその年の夏の試運転列車に、東京から静岡まで試乗させて頂いたが、車内に表示される最高時速210`のスピードや英語での車内放送の試行などに驚いたものであった。新横浜駅周辺はまだ開発途上であったと記憶している。
▼国鉄が赤字に転落する最初の頃であったから、鉄道の再生を懸けての「切り札」としてスタートしたものであったと思う。新幹線は、世界に先駆けての高速鉄道の試みであった。十河信二前国鉄総裁と島秀雄前技師長(いずれも当時)の悲願でもあった。
▼出発式では、部外から招聘された石田礼助国鉄総裁がテープカットし、東海道での成功が世界に冠たる「シンカンセン」という新たな言葉を作り出した。開業以来地球を5万周に当たる約20億`を走り、延べ56億人が乗ったと報告されている。
▼今後、世界の高速鉄道プロジェクトにJRが参画できるのか。米国のサンフランシスコ―ロサンゼルス間やワシントン―ボルティモア間、ブラジルのリオデジヤネイロ―サンパウロ間、インドのムンバイ―アーメダバード間、マレーシアからシンガポールの間などに「高速鉄道」計画がある。

 2014年  10月  7日 ―9条は最高の武器かも―
 14年のノーベル平和賞は今月10日に発表される。今回は日本の一主婦が提唱し賛同署名を集めた「憲法9条を保持している日本国民」案を、4月にノルウェーのノーベル委員会が候補として受理しているから、成り行きが注目される
▼毎年、直前まで受賞予測をしている民間機関のオスロ国際平和研究所は、今月3日にウェブサイトの予測一覧を更新し最新判断を公表。それによると従来の一覧で欄外だった「憲法9条〜」が急浮上し、何と従来1位のローマ法王を抜いてトップに躍り出ている
▼同研究所の予測的中事例はなくはないが率は低い。今回の浮上も願望表明かもしれない。研究所長は「中立や不可侵、平和主義につながる原則を掲げる憲法9条は、軍事的な紛争解決が多用される昨今において重要にもかかわらず、十分に光が当てられていない」(朝日紙4日)とコメントしている
▼わくわくしてもいいのだが肝心の日本国内には浮かない人もいる。「ありがた迷惑」との声も聞く。一方には武力で殺し合う野蛮世紀にへきえきする時流がある。幼い理想論に見える9条が、やがて次代を開く最強の武器に見える時が来るかもしれない
▼9条信奉は時代遅れなのか最先端なのか。ノーベル平和賞の受賞有無も気になるが10日が、9条を論議するきっかけになるといい。

 2014年  10月  6日 ―岩手山西会の日中友好―
 岩手県と中国山西省の交流を深めあってから今年で28周年を迎える。30周年の記念の年には、それに見合ったイベントなどを開催したいと考えているところである。
▼今年で開港50周年を迎えた花巻空港を活性化し、新幹線、東北道と併せた高速交通時代に向かい、臨空岩手を目指す狙いもあった。昭和63年頃から岩手山西会は20回にわたり、花巻からのチャーター便「日中友好の翼」を運航させた実績を持つ。1回に100人以上の県民が参加されたから、合計2千人規模の県民が中国山西省を訪問されたことになる。そのほか国内の定期便を利用した訪問団を5回派遣している。山西省の長治市郊外には県民有志が「日中友好農場」を寄付した。
▼今年は「第26回日中友好の翼」として7人の団員が10月8日から山西省を訪れる。28年前から数年間、農業技術研修として本県に約半年間受け入れて、ホームステイで農業技術を習得した人たちがいる。その後は教育交流の一環として、盛岡中央高校が山西省長治二中と姉妹提携して日本語学科に生徒を迎え、岩手大学などに留学してきた。その教育交流も今年で10周年を迎えた。
▼現在、政府間の日中関係は芳しいとは言えないが、地方都市間では息の長い地道な交流を継続して、日中関係の改善に貢献していきたいものだ。

 2014年  10月  5日 ―少年俳人が第2句集出す―
 少年俳人の小林凛君はひ弱で、小学校入学時からいじめを受ける
▼殴られ突き飛ばされののしられる日々が続く。家族が学校側に頼んでも取り合ってくれず不登校も増える。凛君はNHK教育番組などで俳句に興味を持つ。句作も覚えいじめられるたびに5・7・5に没頭し耐えた。「春の虫踏むなせっかく生きてきた」と叫ぶような句もある
▼もちろん四季の景観もつづる。「紅葉で神が染めたる天地かな」は、朝日俳壇に初投稿し秀句と評され入選する。昨春は11歳で第1句集「ランドセル俳人の五・七・五」(ブックマン社)を発刊。これには当時百一歳の医師・日野原重明氏が称賛の一文を寄せた。前年に凛君が「百歳は僕の十倍天高し」と献呈しご縁が深まる
▼先月は第2句集「冬の薔薇(ばら)立ち向かうこと恐れずに」を同社から刊行。彼は今春中学生になり表題が示すように、全編から成長する姿が迫ってくる。日野原先生との往復書簡も収められ彼が先生を師と仰ぐ句が目立つ。「吾の肩に師の手感じて蝉時雨」には寸景写真も添えている
▼第1句集を読んだ三重県のある小学校教諭が6年生のクラスでそれを紹介。クラス一同に招かれ授業も共にした凛君が給食時に、こんなに楽しい給食は初めてだと涙する場面もある。新句集は読む側も安心感に包まれる。

 2014年  10月  4日 ―地元食材の掘り起こしと商品化―
 INS地元食研究会というのがあって、月1回程度の例会が、盛岡市のプラザおでってで開かれている。これからどのような活動を展開していこうかと手探りの状態ではあるが、地元で生産される食材の掘り起こしや商品化の研究、地元に埋もれている手料理や地酒などの商品化に向けた取り組みをしていく方向性を確認している。
▼例会の開催に当たっては、すぐに会食懇談に入るのではなくて、先進的な活動を行っているグループや企業などから30分ほどの講話を頂いている。9月28日の第3回例会では「四万十川方式・地元発着型産業づくり」と題して、株式会社四万十ドラマの畦地履正代表取締役の講演があった。
▼同社では、クリ、お茶、紅茶、シイタケ、米、ユズなどの地元一次産品を使い、地域と手作りにこだわった商品開発をしているという。米は80c入りの小袋で販売している。道の駅「四万十とおわ」の運営や観光事業、人材育成など、四万十の人と風景を残すための事業にも力を入れている。
▼講演された内容で驚いたのは「四万十新聞ばっぐ」として、古新聞をバッグや包装紙に加工していることであった。この新聞エコ袋は米国ニューヨークでギフトフェアに選ばれるほどの人気で、「モノ」と言うより「脳みその開発」に重点が置かれている。

 2014年  10月  3日 ―民意に応えない所信表明―
 安倍政権は従来5%の消費税を、今春4月から8%にアップした
▼それを決めた国会議員諸氏のような高額所得者は、わずか3%の増という感覚だろうが、夕方の値引きタイムにスーパーへ駆け込む庶民層には3%も痛い。政府はさらに来年10月から2%加算し10%に上げようとしている
▼ただ諸情勢を見ながら導入か延期かを年内には決めると明言してきたから、円安物価高騰に悲鳴を上げる人々からは導入も延期もダメ。これ以上の増税は反対という声が渦巻いている。それだけに注目していたのが今国会冒頭の安倍総理の所信表明だ
▼いずれかの意向を示唆するだろうと多くの国民は期待と不安を交差させていたが、総理が述べたのは「慎重に目配りをしていく」との一言だけ。年内は3カ月もあるからと深入りを避けたのだろうが、しょせんは庶民から遠い殿上の人。不安に揺れる民心の琴線に触れる言葉など用意できないのだろう
▼あれほど国民的大議論になった集団的自衛権の行使容認問題も、総理としては7月の閣議決定で山は越えたという思いなのだろう。所信表明では安全保障法制見直しの「準備を進めている」との報告にとどめ、目は既に容認後に移っている。地方創生問題は多弁で際立つが先の2題は物足りない
▼国会論戦では民意に応える展開がほしい。

 2014年  10月  2日 ―10月2日は豆腐の日―
 鉢植えにしていたニラの花がこの秋に咲いた。20〜30aに伸びたニラをそのままにしていたら、茎が5本に分かれてその上に白い花を咲かせた。その花がやがては実を付けるのだろう。それほどきれいではないが、とても優しい花である。来春に実をまいておけば芽が生えるのだろうか。
▼秋たけなわ、黄金彩る稲の刈り取りが始まっている。盛岡南部の流通センターから矢巾、紫波を経て花巻温泉に行く道路を通ったら、とても良い田園風景であった。今年は稲穂の黄金色が特段に素晴らしい。
▼その稲を刈り取るのはもったいないと思うが、収穫しなければ収益にならない。米余りの時代になっているが、米に替わる収益性の高い作物はないものかと思う。そんなことを考えながら車を運転したが、ニラやニンニクなどの健康食品はどうだろう。水田の転作としては大豆が多く植えられている。広々とした黄金色の中に大豆が青々と枝葉を伸ばしている。
▼10月2日は豆腐の日。本県は豆腐の消費量が全国一と伺った。大豆を増産し、豆腐や納豆などに加工して採算が合うのか。農村の肥よくな土地を有効に活用して、地方創生の柱にしたい。
▼抽象論ではなくて、地域別に産業の立地計画、農産品の流通、財務などを具体化させて、地域に若者を定着させる基礎にしたい。

 2014年  10月  1日 ―「風の電話」が歌に―
 御嶽山(おんたけさん)噴火による犠牲者の近親者も、せめてもう一度声をとの思いは募るばかりだろう
▼3・11大震災でも遺族らは同じ思いに襲われた。多くの町民が犠牲になった大槌町の庭園デザイナー・佐々木挌(いたる)氏は、遺族を癒やす方法はないかと熟考する。同氏は前年にいとこをがんで亡くす。その時に家族が安らげるようにと不要電話ボックスを譲り受け自宅庭園に設置
▼通じない受話器でも手にすれば慰めにならないかと考えたらしい。それが2010年の末。明けて11年3月。津波の惨劇を目にした氏はボックスを「風の電話」と命名し、自由に使うよう町民に解放。通じないことを承知で受話器を手にする人が相次ぎ訪れる
▼各自が亡きわが子へ父母へ夫へ妻へ恋人へと心で語り掛け、傍らにあるノートにも思いを書く。3年半がすぎた先日、「風の電話」と題する歌も誕生しCDもでき庭園窓口で販売している。歌は佐々木氏が作詞、同町出身の音楽家大久保正人氏が作曲。復興コンサートなどで活躍中のさちさんが歌う
▼彼女が澄んだ声で「人は皆 思い出す」と歌い、平凡な日常なら風の電話で誰と話すかを問う。さらに突如最愛の人を失う遺族の悲しみを歌い、「何時もあなたのそばにいます」と亡き人の心情も織り込む。曲調も心に染み入る。

2014年 9月の天窓へ