2014年 11月の天窓


 2014年  11月  30日 ―犬猫を器物扱いする法律―
 先月末から今月にかけて栃木県の河川敷などで、95匹の犬の死骸が見つかる。前後して群馬11匹、埼玉46匹、山梨39匹、長崎7匹と各地で同様の遺棄が発見された
▼餓死か殺処分か死因は定かではない。大半が繁殖に使えなくなった成犬で業者が捨てたらしい。今月18日には栃木で元ペットショップ従業員が「廃棄物処理法」違反容疑で逮捕された。捜査・逮捕は当然の成り行きだが犬たちが「廃棄物」の扱いを受けていることには違和感を覚える
▼法律では犬や猫などの動物は「器物・物」とされている。だから政府が「動物愛護」をうたい上げても、点睛を欠いているようで歯がゆい。動物愛護の前提としてせめて処罰法の表記にも「命ある生き物」との視点を明示できないものか
▼連続した犬の不法遺棄事件の背景には、昨年9月施行の「改正動物愛護法」の影響もある。ちぐはぐ感があるが改正法は《動物が命を終えるまで適切に飼う》ことを求め「終生飼養の徹底」を掲げる。個人も業者も殺処分が待つ保健所に運び込めなくなったのだ
▼頭数の少ない個人は寿命まで飼育できても多数を扱う業者の中には、合法的処分の道を失い違法行為に走る人もあるのだろう。「廃棄物」思想に背を押され「単なる器物の処理さ」と法律用語を用い自分に言い聞かせるのだろうか。

 2014年  11月  29日 ―活気の感じられる矢巾町―
 1億円創生事業が施行されたのは1990年ごろで、竹下内閣の時代であったと思う。
▼矢巾町では水田地帯の中に田園ホールなる立派なホールが建てられて注目された。当時、人口2万人規模の町に音楽の殿堂が建てられるとはユニークな発想であった。その功があってか、不来方高の音楽の取り組みでは、合唱を柱とした音楽活動が全国の最高レベルに至っている。音楽のみならず県内の市町村で一番活気がみなぎっているのは矢巾町ではないかと思う。
▼それは、岩手医大が移転することでの関連事業も含めてのこともあるが、とにかく、元気のある町といえる。先日、町を一回りしてみたが、人口が2万7千人を超え、矢幅駅周辺や西口工業団地では盛んに開発の工事が進められている。
▼平成の大合併がなされたのは2005年ごろだったが、それから来年は10周年を迎える。合併がなされた地域では学校の統廃合や診療所の縮小などがなされて、医師が消え、小学校がなくなっている地域が出てきた。
▼少子高齢化が現実の姿として現れているのだが、効率化された地域に入っていくと「合併は失敗だった」とした声が聞こえてくる。限られた予算では中心地のみならず、バランスのとれた行政が課題となる。かといって規模の小さな自治体も課題は山積している。

 2014年  11月  28日 ―遺産略奪狙う後妻稼業―
 高齢化が進む昨今。各地の結婚相談所には妻に先立たれた老齢者も訪れ、会員登録をしていくという。相談所はどこも良識的だがごくまれに悪徳者がいる。後妻願望を装う悪女と組んで孤独老人の資産を奪う事件も起きている
▼今年上半期の直木賞受賞者・黒川博行さんの新著「後妻業」(文藝春秋)は、そんな犯罪を稼業とする悪女を描いている。著者が知人の実体験をモデルにし脚色した虚構の小説である(初出は別冊文藝春秋12年3月号〜13年11月号の連載)
▼物語では69歳の自称元看護師の小夜子が元高校教師で91歳の資産家・耕造に優しく接近。住民票も移し同居を始める場面がある。近所に婚姻あいさつをするなど既成事実化も図る。やがて耕造は脳梗塞で倒れ死ぬ。彼女は耕造の娘に「財産を小夜子に譲る」と書いた公正証書遺言状を見せる
▼預貯金も遺産も奪われ不審を抱く娘らが託した弁護士や興信所が小夜子の過去を暴く。相談所所長が偽装を仕組んだことや、彼女が資産略奪常習犯であることも明かされる。過去にも複数の婚姻や交際の相手が不自然な病死や事故死で財産を奪われたことも判明。小夜子は法的に追い詰められていく
▼近年は国内各地で後妻稼業的連続不審死事件が相次ぐ。今月は京都で逮捕者が出ている。著者は警鐘を鳴らしたのだろう。

 2014年  11月  27日 ―秋の観光あれこれ―
 秋の紅葉シーズンの観光入り込み客は順調に増加したのだろうか。夏暑く、秋は例年よりも早く冷え込んだせいか、今年の紅葉は美しかった。のみならず水稲の黄金色も格別であった。県内の観光地は夏のお盆が天候に恵まれず、小岩井農場など屋外は低調であった。秋から初冬にかけて取り戻せるか。
▼平泉が世界遺産に登録されてから3年を経て、もう観光客は減っている。「あまちゃん」効果の持続で三陸の入り込み客は膨らんでいるが、冬まで持ちこたえられるのかどうか。好調な入り込みを持続させたいものである。
▼政府観光局が19日に発表した今年1月から10月に日本を訪れた外国人旅行者は推計1100万9千人を超えて、年間の訪日客数で過去最高だった昨年の1036万3904人を上回り、通年で1300万人前後となる見込みである。特に10月が127万1700人で月間過去最高となった。円安を追い風に、消費税免税品目の拡大が買い物目的の中国人などが増えた。
▼訪日外国人向けの消費税の免税品目は家電製品、衣料やバッグなどに限られていたが、10月1日から食料品、化粧品などが加わった。訪日観光客が増えたのは、台湾が前期比26・4%増で238万人、韓国6・8%増で224万人、中国80・3%増で201万人となっている。

 2014年  11月  26日 ―大鵬を師と慕う白鵬―
 師は弟子の人格と力量を磨く。弟子の最大の恩返しは、師のレベルに達しそれを超えることだと言われる
▼大相撲九州場所で優勝したモンゴル出身の横綱白鵬は、昨年1月に他界した昭和の名横綱大鵬を師父と仰いできた。07年に69代横綱を拝命した時に指導を求めて大鵬の自宅を訪問。大先輩は4時間もかけて己に勝つという体験的勝負哲学や、後輩育成の心構えなどを語ってくれたという
▼以後も交流は続き白鵬は大鵬が亡くなる2日前にも訪ね、「横綱らしくな」と激励されている。逝去後初となる昨年の春場所は恩返しに燃えたのだろう。白鵬は9回目となる全勝優勝を果たす。それは大横綱双葉山と師父大鵬の8回を一つ超える快挙となった
▼その賜杯授与後のインタビューの結びに白鵬は、「この優勝を大鵬さんにささげたい」と心情を吐露。満員の観客に「1分でいいですから」と起立と黙とうを懇願する。思いは伝わり観客は一斉に起立し黙とうをささげた。テレビが映す白鵬の目に涙が光っていたことを覚えている方もおられよう
▼先の九州場所で白鵬の優勝は32回目。これは師・大鵬と並ぶ大記録だ。大鵬さんも草葉の陰で恩返しの奮闘を喜んでいよう。「技も体も心で決まる。土俵で心をつくれ」と師は諭したというが弟子は精進し33回優勝に挑むだろう。

 2014年  11月  25日 ―山田線復旧に係る沿岸市町村首長会議―
 東日本大震災で被災し、不通となっているJR山田線の宮古―釜石間(55・4`)の復興の在り方などについて県、市町村長、三陸鉄道などが出席して復旧に係る沿岸市町村首長会議が25日に開催される。
▼三陸沿岸を縦走する路線はわが国にとって重要である。三陸漁場という資源を抱えている本県にとっても大きな意義を持っている。
▼大災害から3年8カ月が過ぎ、あまりにも甚大な災害であったことや用地問題などから復興は当初の計画から数年遅れているが、復興工事は道路・港湾・河川などの公共事業が先行している。今年度初めから、大掛かりなかさ上げ工事が本格的に始まっている。
▼各市町村の復興計画に基づいて、住宅や産業の再生、市街地の復興などを進めているが、その中でJR山田線の復旧を急がなければならない。特にも山田町、大槌町などの復興・防災対策は山田線の復旧とセットになっている。
▼今年2月、JRは山田線を復旧させた上で運行を三鉄に移管し、鉄道施設を自治体に譲渡する案を提示した。赤字や運賃差額の補填(ほてん)として10年分5億円などが提示され、8月の首長会議時点では移管を有力としつつも、さらに条件面でJRとの協議が必要とされた。今回、条件面に進展が見られ、復興が前進していくことになるのか。

 2014年  11月  24日 ―「健さん」の死に思う―
 話す側はとつとつと語っても、聞く側が感動することがある。逆に語り手が能弁でも心に響かないこともある。政治家にもいえることだが安倍総理の演説は能弁の部類だろう。だが解散絡みの演説も高揚感のせいか早口で聞きにくく、呼び覚ます説得力もない
▼解散趣旨も当初は消費税10%導入時期延期の審判と語っていたが、解散当日には「アベノミクス」を問うと表明。本音が見えない。既に賢い有権者は集団的自衛権の解釈変更など、安倍政治の是非を見極める好機として採点を始めている。公示に向けその輪は広がるだろう
▼ところで解散風が吹く中で名優・高倉健さんが他界した。「自分、不器用ですから」のCMで知られるが、実際は大人は当然だが少年少女にも誠実に向き合う器用な人だった。特攻隊について涙を浮かべて質問した女子高生に「聞いてくれてありがとう」と頭を下げ、礼を言う場面もあった
▼大震災後には大きなボトルを両手に下げ歯をくいしばり、水を運ぶ気仙沼の少年の姿を報道写真で目撃。被災地の苦労を心に刻むため写真を切り抜き、撮影中の映画「あなたへ」の台本に張り毎日見詰めた。自分の魂を揺さぶるものが必要だったと述懐。昨春は少年にお礼と励ましの手紙を送っている
▼誰にも誠実を貫く故人のような政治家を輩出したい。

 2014年  11月  23日 ―勤労感謝の日に思う―
 きょうは勤労感謝の日。勤労を尊び、生産を祝い、国民が互いに感謝しあう日。
▼盛岡市内の庭園ではまだモミジの紅葉が美しい。百年前からこんな秋を見せたくて、モミジの公園を造成したものだろうか。
▼モミジも種類があり、さまざまな色映えがあり、苗を京都などから取り寄せた古木は1本だけでも飽きることがない。盛岡市中央公民館、盛岡城跡公園、岩手大構内、青山の国立病院機構盛岡病院の後ろには銘木がある。早く見ておかないとみな散ってしまう。
▼まだ新米を食べていないが、勤労感謝の日をめどにして玄米を精米するところが多いように思う。2年前のコメを抱えている家庭もあろう。豊作が続いたことや家族が少なくなっていることで、わが家でもコメ余りになっている。古いコメから食べているが、コメ不足よりはましだ。
▼きのうは小雪(しょうせつ)で、青空の下に白銀の岩手山がそびえていた。改めて山に向かって拝礼をした。朝夕はことのほか冷え込んできて、こたつとストーブを用意したが、盛岡は13日に初雪があった。
▼盛岡地方気象台によれば、平年よりも5日、昨年よりも2日遅かったという。奥羽山系の方から次第に冬が到来しているように感じられる。世は木枯らしより先の解散風で、急きょ総選挙に突入した。

 2014年  11月  22日 ―川柳で詠むいい夫婦―
 11・22の語呂合わせできょうは「いい夫婦の日」。1988年に夫婦のゆとりある生き方を進めていた旧余暇開発センターが提唱し定着した記念日である
▼同年設立の「いい夫婦の日をすすめる会」が、06年から毎年公募で始めた「いい夫婦」川柳コンテストも人気を呼んでいる。先日は14年度入選作品が発表された。入選句には意表を突くような技巧的なものでなく、素直な表現であるべき夫婦像をつづった作品が目立つ
▼最高賞の大賞に選ばれた句も「いい親であるより先にいい夫婦」と詠む。良い親になろうと無理をしなくてもいい夫婦になるなら、おのずと良い親になっていくという真理が伝わってくる。大賞に次ぐ優秀賞作品にはそのいい夫婦の一端を紡いだ句が並ぶ
▼「いざという時は夫が前に出る」には日常雑事は妻が背負うが、という伏線も浮かびほほ笑ましい。「空気ほど軽くないわと笑う妻」の句も、互いを空気のような大切な存在と感じる絆の深さを物語る
▼佳作句も味わい深い。「オレよりも先に死んだら離婚だぞ」は愉快な愛情表現。「満点より平均点のあなたが好き」はいい夫婦への大事な視点だろう。「花好きの妻が育てた二輪草」には夫婦の幸の花を育んだ妻への万感の思いがにじむ。「茶柱の立ってる方を妻に出す」も奥ゆかしさが胸を打つ。

 2014年  11月  21日 ―南部と黒田の縁―
 NHKの大河ドラマ「軍師官兵衛」も終盤に入り、世は秀吉の時代から家康の時代に入ろうとしている。
▼17日に盛岡城跡公園のもりおか歴史文化館の運営審議会が開催された中で、盛岡の秘宝であった黒田官兵衛所用の兜といわれる「銀白壇塗合子形兜」の実物が、24日まで盛岡で展示されると知らされた。「赤合子」と敵に恐れられた黒田官兵衛のシンボルといえるこの兜は、官兵衛の筆頭家老である栗山利安が拝領し、栗山家の家宝となっていた。
▼寛永9年(1632)年の世にいう「黒田騒動」により、利安の子、福岡藩筆頭家老である栗山大膳は、幕府の裁量により南部藩にお預けとなり、文化面で南部藩に大いに貢献したといわれている。その際にこの兜を持参し、後に栗山家子孫から南部家へ献上されたと考えられる。一門は南部藩士となりながら、黒田の士道を脈々と受け継いでいた。この機会に盛岡の秘史に光が当たった。
▼兜の実物展示はドラマ放映を機に全国から注目を集めており、盛岡と福岡の意外に深い縁を認識する機会でもある。あやかって歴史文化館では特製の「黒田官兵衛の兜まんじゅう」を販売開始した。6個入り1箱が800円と値段も手頃。栗入りでなかなかの味わい。アイデアと工夫で入場者も11月で80万人を超えている。

 2014年  11月  20日 ―物語秘める未年の賀状―
 机上の15年用年賀はがきの分厚い束。無地のインクジェット用だが、封を解きつつ切手欄のデザインに目が止まる
▼来年はえとの未(ひつじ)の年だからこの動物が描かれている。それもマフラーを首に巻いた未なので気持ちも和む。絵柄には子どもも喜びそうなあどけなさもある。おのずと好感が沸く。一方、ネット上では「マフラーを巻いた年賀状の未にはドラマが隠されている」との秘話で盛り上がっている
▼えとでは同じ生き物が12年に1度登場する。この決まり事から賀状を制作する担当者がひらめいたのであろう。実は12年前の03年賀状にも未が描かれている。当方も保存している03年賀状の束で確認したが、切手欄は何と未がせっせと編み物に励むような絵柄になっている
▼そこで03年版はマフラーを編み続ける姿とし、15年版はそれが12年越しに完成した情景という物語が想定できる。担当者が03年当時からシナリオを組み込んでいたかどうかは定かではない。だがそんなドラマに仕立てて15年版には、首にマフラーを巻いた未を登場させた着想には感服する
▼制作側のサイトにも「編みかけだったマフラーが完成したデザイン」とのコメントが載っている。メール時代の波に押され気味の賀状だが、このようなキラリと光る工夫を見ると応援したくなってくる。

 2014年  11月  19日 ―業種を問わない女性の就業推進―
 政治や行政のみならず、土木事業の職場などでも女性の台頭が叫ばれてきている。特にも建設業の女性技術者・技能者数は約10万人といわれ、全体に占める割合では約3%という低さになっている。
▼まさに建設業は男社会であったのだが、こういった状態を2018(平成30)年度までに18万人と倍増にする計画を国土交通省が示している。
▼この数年前から、土木現場などにも女性の活躍が見られるようになってきている。建設業界では、これまで「ドボジョ」といった表現で女性の活躍ぶりをたたえてきたが、これに代わる新たな愛称を日本建設業連合会で募集してきていた。女性技術者や技能者の表現としてどのような呼び方がふさわしいのか。先日の選考結果では「けんせつ小町」が選ばれたようで、国や日本建設業連合会などでは、そのような呼び方で女性の台頭を進めていくことにした。
▼何せ、そうはいっても、これまで女性の活躍が少なかった建設業のほか、運輸業や造船業などで、その活躍を期待するには女性の就業を定着させる支援として、出産などでの配慮や男性が育児・家事などに責任を持たなければならない。
▼建設業に限ったことではないが、男社会の変革と併せ、優秀な人材の雇用も欠かせない。常態の人手不足も解消しなければならない。

 2014年  11月  18日 ―25億人がトイレのない生活―
 あす19日は国連が昨年7月に制定した「世界トイレの日」である
▼世界では全人口の3分の1強に当たる約25億人がトイレがなく、アジアやサハラ以南のアフリカなどでは、人々が屋外排せつを余儀なくされているという。温水洗浄や温風乾燥機能を備えた先端便座が普及しつつある日本からは、想像できない向きもあろう
▼トイレのない生活…。この人としての尊厳に関わる深刻な状況をどう改善するか。この問題意識を背景に01年11月19日にシンガポールで「世界トイレ機関」が創設されている。先の「世界トイレの日」はこの創設日にちなむ。屋外排せつの根絶などトイレ事情改善促進を確認し合う日でもある
▼1990年の時点でトイレのない人の割合は世界全人口の51%。約2人に1人だったが国連は21世紀に向けてこれを、2015年までに25%の4人に1人にするとの目標を掲げていた。だが現状は先述の通り3分の1強で達成は程遠い。全人口比ではおよそ36%の人々がトイレのない生活をしているのだ
▼裏山や野原、川辺などでの排せつは思春期の少女たちをはじめ、大人でも耐え難いことだろう。不衛生から多発する下痢性疾患も深刻だ。その意味でも世界的支援で各家のトイレ設置を急ぎたい。日本でもユニセフを中心に啓発・支援の輪が広がりつつある。

 2014年  11月  17日 ―サンゴ密漁問題に思う―
 地方都市間の交流とはいえ、岩手と中国の山西省との友好交流は、28年前から始められている。中国の山西省は農産品の生産と石炭の埋蔵量が多いことで知られる。首都の太原市や第二の都市、長治市などの人たちは岩手県民と似通ったものがあって、心の通った交流が続けられてきている。
▼ところが小笠原諸島周辺の海域に、200隻を超すサンゴ密漁漁船団が入って不法操業しているのは、どうしたことか。その船団は、福建省などに籍を置いている船団のようであるが、連日のようにテレビで放映されているのを見るにつけ、その人たちの道徳欠如にはあきれてしまう。
▼台風20号の接近の際には、大半の中国漁船は南東の海域に退避したが、逃げ遅れた12隻が父島沖合の領海に緊急入域した。そんなことをあらかじめ予測したのか、中国紙は、日本は人道主義に基づき安全を確保すべきだ、と報道したというから全くあきれてしまう。領海侵犯というルール破りをして、平然としている相手に保護をせよというのは、「泥棒にも三分の理」ということだろうか。
▼こういった場合に海上保安部などはどのように対処すべきだったのか。わが国の政府の甘い対応が、結果的にルール破りを放任することにつながっている。それが領海侵犯になっているのではないか。

 2014年  11月  16日 ―安倍総理を採点する好機―
 多くの国民に「なぜ歳末に選挙を?」と疑念を抱かせながら解散風が吹き募る
▼安倍総理は「私は言及したことはない」とおとぼけを演じていたが、自公与党が臨戦態勢を強め演技は通用しなくなる。14日にはNHKが「安倍総理は景気回復の遅滞を考慮し消費税率10%導入を、17年4月まで延期するとしこの判断の是非を問うため衆院解散の意向を固めた」(要旨)と報道した
▼総理は18日にも解散を表明するという。消費増税10%延期を解散の理由にしているがこじつけというほかない。法的にも判断が分かれることは織り込み済みなのだから、是非を問う必要もない。本音は閣僚不祥事などを予兆に政権がじり貧に向かう前に、新たな任期4年を手中にしたいという延命策なのだろう
▼賢明な国民はそれを見抜いている。師走の総選挙を強行するなら、有権者も安倍晋三という政治家への採点の好機として臨むといい。この政治家が垣間見せる危うさを案じる人は多い。日本を託していいのかどうか。この見極めなら解散の大義にもなる
▼祖父の岸信介元総理は先の大戦を聖戦と称し、その正しさを語り残したいと歌に詠んだが、安倍総理がこの聖戦観の継承者か否かも知りたい。師走の街頭で真意を語ってほしい。誤解があればそれを解くのも解散の意義を深めるだろう。

 2014年  11月  15日 ―あす投開票の滝沢市長選―
 任期満了に伴う滝沢市長選の投票日があすに迫っている。新生滝沢市は、県内7番目の人口5万5千人を擁し、県都盛岡市の西北に位置する立地条件や交通体系などから発展の可能性を秘めている。本格的な市制運営という面からも市政トップを選ぶ大事な選挙で、4万4千人余りの有権者がどのような判断を下すかが注目されている。
▼同市長選は9日に告示され、現職、元職、新人の3氏が立候補して、1週間の舌戦が繰り広げられている。3氏ともに無所属で、政党の公認や推薦を受けずに全方位的な運動を展開している。3人が旧村の村長や村役場(市役所)の職員を経験していることなどで滝沢行政の事情には詳しいだろう。
▼そんなことで8年ぶりの選挙戦となったが、有権者の側から見ると選択に戸惑ってしまうものがある。本紙の政策アンケートに対する回答内容などから見ても、似通った回答が多いのはそのためだろうか。
▼市民の側からは大胆な市勢の発展も望まれている。盛岡広域圏を構成する中で盛岡市とは異なった独自性、内容によっては歩調を合わせた北東北の拠点都市としての施策の推進も必要であろう。
▼新住民ら無党派層70%余りが結果を左右しそうだが、新たな発想と持てる有為な資源を駆使して、強力な執行体制を確立してほしい。

 2014年  11月  14日 ―活況呈する九州場所―
 大相撲人気はかつて続いた不祥事のあおりなどで、低迷が憂慮されていたが有力若手の台頭もあり活気が戻りつつあるようだ
▼9日に開幕した九州場所も従来は「不人気場所」などと酷評されることもあったが、今場所は初日に17年ぶりに「満員御礼」の垂れ幕が出るなど活況を呈している。チケットの売れ行きも快調であす7日目も、中日の明後8日目も千秋楽当日と前日も既に完売したという
▼今場所には横綱白鵬が優勝すれば、昭和の名横綱大鵬が残した32回の優勝記録に並ぶという期待感もあるのだろう。それに若手の先頭に立ち快進撃を見せ短期間にスピーディーな出世を果たした、モンゴル出身の逸ノ城も注目され誘客の力になっていよう
▼彼が入門前の成績が優秀で序の口など下位を経ず、初めから幕下で処遇する付け出しとして初土俵を踏んだのは今年の1月場所だ。6勝1敗の好成績で3月場所は幕下3枚目に躍進。再び6勝1敗で5月場所は新十両に昇進し優勝。7月場所も13勝2敗と快勝で新入幕が決まる
▼幕内初の9月場所は大関の稀勢の里と豪栄道、横綱の鶴竜も破り13勝2敗。殊勲・敢闘の両賞に輝き関脇昇進を決めた。並外れた戦績を背にする今場所は期待の風圧に耐え、得手も不得手も研究されて苦しむが彼はそれをも滋養にしてしまうだろう。

 2014年  11月  13日 ―地方創生の手段は―
 限界集落を分かりやすく言えば、65歳以上の人口が過半数ということか。そのように考えれば、市街地にもそのようなところがいっぱい出てくるのではないか。少子高齢化が進んでいけばどのようなことが起こるのか。
▼同年配の高齢者が集中していれば、子どもの出生数が著しく減って、他界する人が多くなっていく。やがては空き家が多くなっていくだろう。そして、田畑や山林、商店街が荒れ果ててしまう。そのような現象に移っていくと止めようがなくなってしまう。
▼そのような試算を出したのは、日本創生会議の人口減少問題検討分科会であったと思う。増田寛也編著「地方消滅│東京一極集中が招く人口急減」というタイトルの本が中公新書として出ている。
▼日本は1970年代前半から日本列島改造論が叫ばれ、企業誘致やインフラ整備が強力に進められた。郊外には住宅団地が造成され、大型ショッピングセンターなどの建設が盛んになった。
▼来年は地方創生が叫ばれる年になるだろう。どのようなことができるのか。地域民の意識改革がどのようにして進められるのか。そのような基礎ができなければ予算を配布しても効果が生まれてこないのではないか。近年、コンパクトシティーが主力になっているが、どうすれば地方はよみがえっていくのか。

 2014年  11月  12日 ―村上春樹氏の「壁」―
 作家の村上春樹氏は09年に、イスラエルのエルサレム文学賞を受賞している。空爆で多くのガザ地区住民を殺傷したイスラエルへの反発から、授賞式不参加を求める声も出たが氏はあえて出席
▼記念スピーチではイスラエル首脳の前で同国の戦闘システムを壁に例え、それに破壊され殺傷されるガザ住民を壁にぶつかり割れる卵に例えてイスラエルを厳しく批判。「壁と壁にぶつかり割れてしまう卵があるとき、私は常に卵の側に立つ」と宣言もしている
▼その村上氏は今月7日にはドイツのベルリンで、日刊紙が主宰する権威のあるウェルト文学賞を受賞している。氏は東西ベルリンを分断していた壁の崩壊から、9日で25年になることにちなみここでも再び「壁」をテーマにしたスピーチをしている
▼今も世界には不寛容の壁など他者を排除する種々の壁があると指摘。壁に囲まれていても壁のない世界を想像し語ることはできるし、それが大切な何かを始める出発点になるかもしれないと述懐する。結びには今、壁と闘っている香港の若者たちにこのメッセージを送りたいとも語っている
▼スピーチでは「壁は突き破れる。読者がそう感じられる物語をたくさん書きたい」と作家としての思いも吐露する。その心情が読む人の胸を打つから共感の輪が世界に広がるのだろう。

 2014年  11月  11日 ―予測不能なこと―
 東日本大震災から3年8カ月を迎えた。被災地の復興はまだまだで、今春から浸水地域のかさ上げ工事が本格化しているものの、その土地に復興住宅を建てるのは2、3年先になるのではないか。ましてや、そこに引っ越して住まいとするのはその先になり、被災後6年以上も過ぎて、家族の年齢構成や生活環境なども大きく変わってしまう。
▼9月27日に御嶽山の噴火に見舞われた。あの災害も突然のことで、全く想像すらしていなかった。想定外の災害に、山は紅葉シーズンで土曜日のお昼前に噴火したために犠牲者が多く出た。また、いつ、どこで噴火が起きるのかは全く想定できない。
▼東日本大震災のような大災害が二度と起こらないように願っても、自然が相手では約束ができるものではない。
▼そのような自然災害とは別に、今、日本が抱えている大きな懸案が幾つかある。一つは、九州電力川内原子力発電所の再稼働である。そのほかには今月16日投開票の沖縄県知事選挙がどうなるのかには、米軍基地の移設問題が根を張っている。さらには消費税10%の決断だろう。政治とカネの問題も片付いていない。まさか、さらなる辞任ドミノが起こることとは、安倍首相も予測していないだろう。
▼ただ、世間の風当たりは厳しく、予測できないことがある。

 2014年  11月  9日 ―三鉄が草野球球団を結成―
 「草野球」と聞くだけで戦後間もない頃に、それを教えてくれた野球好きのおじさんを思い出す。バットなどの入手にも苦労した時代だった
▼そんな往時とは比較にならない規模と展望を掲げ、宮古市に本社を置く三陸鉄道が6日に草野球球団結成を発表した。それは戦後への感懐とは別に津波被災地復興の象徴として画期的であり、沿岸被災者はじめ県民の間に喜びを広げている
▼球団名称は「三陸鉄道キットDreams(ドリームス)」で、望月三鉄社長がオーナーになる。強力な助っ人として米大リーグ・マリナーズで活躍中の岩隈投手が、ゼネラルマネジャー(GM=総監督)に就任し、チームを指揮する監督は山本宮古市長が務める
▼三鉄は津波で駅や線路を破壊されるなど被害甚大だったが、今春4月に約3年ぶりに全線が復旧。地域密着型を志向する同社は、宮古市が進める田老野球場の再建計画から球団設立を着想。ネスカフェで知られるネスレ日本の協力も得て大綱を練り上げてきた
▼全線復旧を機に29人の選手登用なども具体化。6日の発表となったのである。チームが目指すのは「草野球日本一!」だ。そのため来年3月に全国各方面の地方大会、5月に決勝大会と腹案を決めこのPRも進めていく。わくわくするこのプラン。実現するよう応援したい。

 2014年  11月  8日 ―東日本大震災の日制定の動き―
 自民党の有志国会議員が5日、東日本大震災が発生した3月11日を「東日本大震災の日」と定める法案の骨子をまとめた。来年の3月11日に間に合わせるため、今国会での成立を目指している。議員立法で法案を提出し、各党に賛同を求める方針のようだ。
▼呼び掛けたのは、本県選出の鈴木俊一元環境相、小野寺五典前防衛相、大島理森前自民党副総裁ら東北地方選出の議員を中心とする14人。骨子には「東日本大震災の教訓の伝承を図るとともに、国民に広く災害対策についての関心と理解を深める」などと明記されている。
▼未曽有の大災害であっても年数を経るに従って風化されていくのを防いでいかなければならないとした考えからである。
▼9月10日現在、警察庁のまとめによると、東日本大震災被害状況は、死者1万5889人、行方不明者2601人となっている。このほかに、震災関連死3097人、避難者24万5622人、倒壊家屋全壊12万7367戸、半壊27万3335戸、漁船1822億円、漁港8230億円、養殖施設738億円、養殖物597億円、農地の損壊4006億円、農作物・家畜被害142億円―となっている。
▼関東大震災や阪神淡路大震災と比較しても同等かそれ以上の大災害であったことを考えれば当然であろう。

 2014年  11月  7日 ―マッサン、日本初に活躍―
 NHKの連続ドラマ「マッサン」は、実在したモデルを人情喜劇風に描いていて面白い
▼現在は主人公マッサンが目指すウイスキー造りには程遠い段階。留学したスコットランドで知り合った妻・エリーと二人三脚で、食うや食わずの困窮場面も見せはらはらさせる。先頃はドラマとは別に海外から主人公ゆかりのウイスキーに関する朗報が届く
▼大阪のサントリー山崎蒸溜所で生産された、シングルモルトウイスキー「山崎シェリーカスク2013」が、世界的に権威のある英国のウイスキーガイドブック「ワールド・ウイスキー・バイブル」2015年版で最高得点を獲得。世界最高のウイスキーに選出されたのだ
▼1923年に洋酒会社寿屋(現サントリー)はウイスキー国内製造を企画。当時の社長が有能技術者を求め本場のスコットランドに問い合わせると、「日本には当地で技術を体得した竹鶴という男がいるはず」との回答。この男こそドラマのマッサン(本名・竹鶴政孝)だ
▼経緯は朝ドラに譲るが寿屋は竹鶴を高給で採用し新事業を託す。大阪の山崎は利休が茶室を設けた名水の地。竹鶴も当地を蒸溜所に選ぶ。彼は所長を拝命し日本初のウイスキーを製造し出荷。やがてここから山崎ブランドの名が発信されていく
▼竹鶴は後にニッカウヰスキーも創業する。

 2014年  11月  6日 ―「本のまち八戸」構想―
 読書の秋、皆さんの中にも読書量の増している方がいらっしゃるに違いない。
▼新聞関係の業界紙である「文化通信」の記事によると、青森県八戸市では「本のまち八戸」構想でさまざまな施策を展開している。
▼八戸市は人口約24万人の青森県第二の都市であるが、14年度からブックスタートとマイブッククーポンとして、市の学校図書館購入費とほぼ同額の予算を計上して、市内の全小学生に一人2千円分のクーポン券を学校を通じて配布している。児童が保護者と書店に行って自分で本を選び購入するという経験を通じて、読書に親しむ素地を育むのが狙いという。
▼この事業は、全国にも例をみない思い切ったことと興味深く記事を読んだ。小林眞市長は八戸ブックセンター構想も掲げている。本のまち八戸の構想は、昨年の市長選公約で、自分自身が本好きだったことと、電子機器があふれている中で紙の本で読書するきっかけがつかめなくなっている子どもたちがいるのではないかと着想したとのこと。
▼八戸は産業のまちだが、「文化の薫り高いまち」が願望という。市中心部の商業ビルにはブックセンター設置を検討し、書店のない集落には書店の協力を得て図書館の整備も検討されているとか。子どもと良書との出合いは人づくりにつながる。

 2014年  11月  5日 ―米の29歳女性が安楽死―
 病状が重篤な場合、患者が苦しんでも延命治療を続けるべきか。早く楽になるよう配慮をすべきか。選択は難しい
▼今、いわゆる「安楽死」をめぐる是非論が世界に波紋を広げている。米国で安楽死を認めている州の一つであるアリゾナへ、他州から移転した結婚して間もない29歳の女性が、予告通り今月1日に医師の処方した薬を服用し安楽死を実行したからである
▼彼女は前の州の医師から今年4月に悪性脳腫瘍で余命半年と告げられ、安楽死を選択し移転。先月は世界に向け死の決断を公表し、実行日まで明かしていたのだ。ただ死の2日前には「11月1日は正しい時期ではない〜私はまだ十分気分が良いし…」と心の揺れも吐露している
▼心境を語る映像でも顔の表情はふっくらとして笑顔も見せ衰弱の影もない。それでも余命はわずかと察知したのか、命の火を消してしまう。安楽死容認の拡大が遺言だったが釈然としないものが残る。身近に40歳の時に余命3カ月宣告から生還した76歳の友もいる
▼出産時の大量出血で脳中枢がまひし、意識不明のまま入院が8年余も続く妻の病床へ勤務後に連日通い語り掛け、マッサージを欠かさない40代の知人もいる。彼から意識のない妻の目に涙があふれることがよくあると聞くと、安易な安楽死拡大論にはたじろいでしまう。

 2014年  11月  4日 ―大切な近代化遺産―
 今年は東京駅が1914(大正3)年の開業から100年。岩手銀行の赤れんがと同じく辰野金吾・葛西萬司の設計で、ドーム屋根の荘厳な意匠が、首都の歴史的景観を形作ってきた。盛岡出身の葛西は辰野とコンビで明治大正の建築界に活躍し、日本銀行、両国国技館、地元では盛岡劇場、岩手県農工銀行などの設計も手掛けた。
▼岩手県農工銀行は1916年(大正5)年、現在の本町通1丁目に建築され、戦後は第一勧業銀行盛岡支店となった。赤れんがとともに昭和の街のランドマークだったが、76(昭和51)年に取り壊された。
▼当時の支店長だった叔父の手引きで、解体直前の建物を見学したことがある。幼い目に建築的な真価など分かろうはずはなく、富貴の失せた店内は底冷えして、「次は新宿の高層ビルみたいなのができないかな」と無邪気に思うだけだった。無くなった風景の大切さに気づくには長い時間がいった。
▼赤れんがの方は岩手銀行の支店として本来の機能のまま生きながらえ、国の重要文化財として公開されることが決まった。10月末には市教委の案内で補修中の内部の見学会があった。熱心に保存状況を学ぶ市民の姿に、早く近代化遺産への関心が高まっていれば、もっと多くの文化財を残すことができたのに―と思わざるをえない。

 2014年  11月  3日 ―文化の意味と家族農業―
 「文化」には訳語のカルチャー(Culture)にちなみ「耕す」の意味がある
▼それは田畑を耕すという苦労の多い農作業にあやかり、心を耕すという至難な精神作業の反映が文化なのだと示唆しているのかもしれない。「文化の日」にそんなことを思索しながら農家に嫁入りした看護師さんのことを思い起こす
▼農業を営む知人から「一人息子に嫁がほしい。農作業は一切しないでもいい、という条件でいいから探してほしい」と頼まれた時に候補にしたお嬢さんのことだ。条件も伝えた見合いで双方が好感し交際を重ね婚約。その時に彼女は予想外のことを言う
▼「嫁ぐ以上は退職します。農作業をさせてください。未経験ですから教えてください」と、知人が感涙を抑えられないことを述懐したのだ。晩秋に挙式。翌春には彼女は田んぼに入った。白衣の天使を忘れたように泥にまみれ耕運機の操作にも挑む
▼2児の母となった今も農家の嫁で奮闘中だ。作業体験をよく聞いたがつらく涙したこともある彼女が、深い覚悟で心を耕していることが伝わってくる。農業の大型化が時流だが国連は今年を「国際家族農業年」と定め、家族農業の可能性を宣揚中だ
▼それを先取りし物心両面を耕し続ける知人一家は、きょうの「文化の日」も晴れやかに迎えていることだろう。

 2014年  11月  2日 ―大震災から4回目の冬近く―
 早いもので「霜月(しもつき)」11月に入った。
▼月初めは秋晴れのすっきりとした日が多いのだが、次第に北の方から寒冷前線が下がってきて、天候が悪化したり、霜の降りる日が多くなっていく。里の木々は落ち葉が盛んで身軽になっていき、立冬が過ぎると駆け足で冬がやってくる。軒下には漬物用の大根がつるされるなどで、初冬の風物詩が見られるようになる。
▼あす3日は文化の日である。2日には各界に業績をあげられた人たちが国から褒章、3日には叙勲の方々が発表される。まずはお祝いを申し上げたい。戦前は四大節の一つで明治節といい、明治天皇の誕生日である。その遺徳をたたえて、文明・文化の記念日として各地でいろいろな文化事業の催しが行われるようになった。戦後、名称が変わった。それぞれ、一人ひとりが文明や文化の向上に努力し、貢献されてきていることに感謝の気持ちを表したいものだ。
▼東日本大震災から今月で3年8カ月を迎えるが、被災地の三陸では復興が進んでいるのだろうか。被災地域のかさ上げ工事が本格化していて、大型のダンプなどの往来が盛んだ。しかし、住宅地の造成には今しばらくかかりそうだ。
▼4回目の本格的な冬が近づいているが、仮設生活はまだ解消されず、住宅の補修が課題となっている。

 2014年  11月  1日 ―民のかまどへの視線―

 安倍政権の閣僚に相次ぐ政治と金の疑惑は、民主党幹部にも飛び火。寒々しい不信の風が吹き募る中、月が改まり季節も初冬に向かう
▼乱脈な金遣いやずさんな金銭管理は他党にも潜在していよう。この状況下でも血税から毎年約320億円が政党助成名目で各党に分配される。疑惑連鎖を機にこれは撤廃した方がいい。清廉自負の党は廃止を先導すべきだ
▼一方、消費増税に加え嗜好(しこう)品の税率アップや、年金生活高齢者の医療・介護保険料値上げなどの動きもある。民に負担を強いるなら先に国会議員が身を切るのが筋だ。政治家もよく引用する仁徳天皇の歌がある。「高き屋に登りて見れば煙立つ民のかまどは賑わひにけり」
▼天皇が人々の暮らしを案じ高台に立ち、家々のかまどから煙が上がるかどうかをご覧になったという伝説的故事に由来する歌だ。煙が見えなかった3年前に天皇は民の困窮を察知して「3年間は税を免ず」と発表。天皇自ら衣の新調もせず、宮廷に破損があっても修理を延期したという
▼税を免除された人々は次第に生活力を回復。3年後には先の歌の光景となる。今、日本の財政は厳しい。血税で暮らす国会議員が身を切る時だ。まずは使途自由のお小遣いとやゆされる月額百万円支給の文書通信交通滞在費の全廃を願い出てはどうか。

2014年 10月の天窓へ