2014年 12月の天窓


 2014年  12月  31日 ―三浦哲郎氏の大みそか回想―
 八戸出身の作家三浦哲郎氏は、岩手県北にもゆかりがある。一戸町には一家の菩提寺・廣全寺があり、今は亡き氏もここに眠っている
▼一戸は母と姉が長く住み氏の少年時代には一家が、父の郷里である二戸市金田一で暮らしている。作家として中央で活躍していた頃に菩提寺住職から「たまには大みそかに帰っていらっしゃい。除夜の鐘を撞(つ)きにいらっしゃい」とよく誘われたという
▼氏は今年の暮れこそ帰ろう、除夜の鐘を撞こう、と毎年のように計画を立てるが、不都合ができてなかなか帰れない。そんな事情を毎日新聞社1973年刊「笹舟日記」所収の随筆「除夜の鐘まで」に書いている。随筆には金田一時代の大みそかも登場する
▼当時は元日を基準に年齢を数える「数え年」の時代だ。生まれた年を1歳とし新年を迎えるごとに1歳ずつ加える。だから大みそかは「齢(とし)とりの日」と言ったと氏は回想している。さて今も昔も盆暮れには郷里を離れた身内が実家に帰ってくる
▼大みそかの日、末っ子の哲郎少年は東京で働く15歳上の次兄が帰郷するので駅へ迎えに出る。改札で兄を見つけたが声が出ない。後を追い帰宅後にやっと「おんであんした」とあいさつ。そんな場面もほのぼのとさせる筆致で描く
▼平成の里帰りの皆さまもどうぞ良いお年を!

 2014年  12月  30日 ―年金増抑制を怒る忘年会―
 景気が良くても悪くても歳末には、さまざまな仲間が忘年会を催す
▼当方周辺の各グループもここ数日、例年通り盛り上がっている。先夜は町内の「ことぶき会」と称する高齢者の酒宴に参加した。酒類を出さない昼の懇談会でもよくしゃべる常連がいて、この酒席でもその中の一人が「老人は政府にばかにされている」と口火を切った
▼老人党員を名乗る人である。老人党は昨年他界した精神科医のなだいなだ氏が、03年にネット上に立ち上げた仮想政党だ。党員には処遇改善などを投稿などで自発的に表明するよう促す。会費も入党手続きも不要で周囲に「私は老人党員です」と言うだけで党員になれる
▼老齢勝手連のようだが宴席の彼は「私たちは年金生活者ですが政府は、年金増額抑制に着手しています。来年4月から物価比例で支給額が増えそうですが、その上げ率を抑え読売紙の試算では標準世帯で、月額約3400円減額すると予測しています」と指摘。再び老人をばかにしていると憤慨する
▼同調した80代長老が叫ぶ。「国は抑制理由に財政負担増を挙げるが、ではなぜ国会議員に高額給与以外に毎月百万円を小遣いみたいに与えるのか。老人冷遇の前にこの巨額浪費を廃止せよ」と。確かにこれが圧勝安倍内閣の初仕事かと嘆息が出る。忘れ得ぬ忘年会となる。

 2014年  12月  29日 ―鐘を突いて新年を―
 2014年も残りわずかとなった。今年も予期せぬこと、想定外のことなどがあった。今年こそはと目標を立てて過ごしてこられたのか。それとも、あまり肩ひじを張らずに自然体で過ごすことにしてきたのかである。
▼定年退職をされた方は、それなりに新たな目標を立てられただろうし、働き盛りの人たちは大きな夢に向かっておられる人もあろう。それは、自分のためであり、社会のためであり、また家族のためにでもある。
▼一人ひとりの努力や頑張りというものが、わが家、わが職場、わが町のために大切な要素になっていると考えると、一人ひとりの目標がいかに大切なことかが分かってくる。
▼さまざまな問題を乗り越えて生きていける知恵を持っているのは人間であるといわれている。まさに、複雑な社会になっているが、それらの課題を一つ一つ処理しながら新たな目標にチャレンジしていかなければ発展しない。そういった気力体力を身に付け、鍛錬を繰り返していかなければならない。
▼年末の除夜の鐘は108回突かれると言われているが、人間の愚かさ、怒り、生老病死、食欲などの煩悩が108種あることの説にちなむ。四苦八苦に由来して、4×9が36、八苦が8×9で72、計108になってくる。みんなで鐘を突いて新年を迎えよう。

 2014年  12月  28日 ―孤児ら励ます昭和天皇の巡幸―
 天皇誕生日に寄せて所感を載せたばかりだが、今回は先帝昭和天皇の巡幸のひとこまを紹介したい。戦後、天皇は全国を歩き戦災で苦しむ人々を励まそうと決意されたという
▼巡幸は1946年2月に始め以後9年間で、米軍統治下の沖縄を除く都府県を歩かれる。炭鉱の地下1`まで足を運び働く人を慰問されたこともある。岩手には47年8月に来訪。4日間で和賀、奥中山、宮古、釜石、盛岡、小岩井、一関などを巡幸されている
▼49年5月に訪ねた佐賀県ではドラマも起こる。ある寺院が併設した戦災孤児寮を慰問した陛下は、腰をかがめ子らに会釈。一人の少女が二つの位牌(いはい)を抱いている。「お父さん、お母さん?」と陛下が問う。「はい」と少女。「どこで?」と陛下。彼女は父は満ソ国境で戦死し母は引き揚げ途中で病死したと答える
▼「お寂しい?」と陛下が尋ねると少女は言う。「いいえ。会いたい時は仏様の前でそっと父母を呼ぶと、そばに来て抱いてくれますから、寂しいことはありません」と。少女の頭をなでて「これからも立派に育っておくれよ」と励ます天皇は涙していたという。「お父さん」とささやく少女に陛下はうなずく
▼同寺元住職・調寛雅著「天皇さまが泣いてござった」(教育社刊)が詳述する。先帝の優しさに心が洗われる。

 2014年  12月  27日 ―第3次安倍内閣―
 特別国会が24日召集され、衆参両院の首相指名選挙で安倍晋三自民党総裁が第97代首相に選出された。安倍首相は直ちに組閣を行い、第3次安倍内閣を組閣。政策の継続性を重視して、防衛相を除いて残りの閣僚を再任させた。
▼政権が3次以上に及んだのは戦後、吉田茂、鳩山一郎、池田勇人、佐藤栄作、中曽根康弘、小泉純一郎の各首相で、安倍首相は7人目となり、盤石の態勢になって長期政権に向かったとみられる。体調を崩すようなことでもない限り、来年9月の任期切れでも再選は揺るがないとみられる。
▼しかし、自民党一強といっても衆知を集めて直面している難題に的確に対応できるのかは未知数であり、いつどんな事態が起きるのかは分からない。
▼第三次安倍内閣は経済最優先で政権運営に当たることを強調している一方で、集団的自衛権の行使容認や憲法改正など、自民党結党以来の主張を打ち出している。与党が3分の2を超える体制が築かれたといっても、憲法改正、安保などで国民的な支持を得られたのかということではない。従って、野党の意見を封じるような強引な進め方をしていくならば思わぬところに落とし穴が待ち構えているだろう。
▼アベノミクスについても評価は一様ではない。きちんとした政策論争が求められている。

 2014年  12月  26日 ―勇気づける天皇の言葉と行動―
 天皇陛下が81歳の誕生日を迎えられ、常に皇后さまと共に悲しみや苦悩を抱く国民に心を寄せられるお姿が改めて思い起こされる
▼大戦下のサイパンで敵軍に追い詰められた多くの邦人が、80b下の海に身を投げた断崖にも足を運ばれ霊を慰められている。大震災津波で甚大な被害を受けた東北3県にも何度も慰問された。とりわけ発災年5月初めの釜石、宮古の避難所訪問は、現地が陛下のお心遣いに驚嘆する慰問となった
▼何よりもご高齢の両陛下がいち早く来訪されたことに、地元の多くは驚き涙してお迎えしたのだ。両陛下はひざ詰めで不自由な避難所生活をいたわり、被災者の声に耳を傾け励まされた。避難者たちはそこここで感涙を光らせ「陛下が来てくださったのだ。頑張っぺし!」と声を掛け合ったという
▼一方23日の天皇誕生日に先立つ会見の中で陛下は、雪国にも触れ高齢者の雪下しをいつも心配していると述べられている。国内昨冬の雪による死者は95人と数値も示し「私自身高齢になって転びやすくなっていることを感じている」と心情も明かされる
▼さらに高齢者の屋根の上の作業などに配慮が行き届き、多雪地域で高齢者が安全に住める道が開けるよう願われている。多くの国民は陛下の慈愛がにじむ言葉と行動に、いつも勇気づけられるのである。

 2014年  12月  25日 ―仙北小に絵を贈った菊池如水さん―
 筆を用いずに手で絵を描いている菊池如水さん(92)が、20日の仙北小学校創立100周年の記念として、大勢の児童の前で「岩手山」の絵を描き、それを額装して同校に寄贈した。
▼如水さん自身も仙北小の卒業生であり、15歳の時に夢を描いて旧満州に渡って満鉄に勤務。そして、太平洋戦争で南方の島々の各地を転戦した経験がある。そうした並々ならぬ経験をされたにもかかわらず、健康に恵まれ、また、運も良く、終戦で日本に帰還し、仕事の傍らに絵に親しみ、今日まで元気で画業を続けられ、自称「アトリエのない画伯」として、主に屋外で作品の制作に励んでいる。
▼如水さんは、ヨーロッパ、アメリカはもとより、信州の北アルプスの槍ケ岳などにも出掛けて絵を描き続けてきた。20年ほど前からは三鉄の「お絵かき列車」の指導にも当たられ、三陸各地の写生会を指導された。
▼昨年の個展では岩手公園の絵も描かれていた。絵は、藍色一色の濃淡、オイルスティックで大胆に描いていく。仙北小では、自分が幼い頃から思い続けてきた岩手山を約30分で仕上げていく速さである。
▼まさに母校への感謝を下地にし、幼い頃に見た岩手山であり、自分が満州や中国大陸などでも思い描いた長い人生の岩手山であろう。これからも元気で絵を描いてほしい。

 2014年  12月  24日 ―猿の惑星より奇なり―
 「猿の惑星」はフランスの作家ピェール・ブールが、半世紀前に発表した空想科学小説だ
▼恒星間飛行に挑んだ宇宙船の3人の飛行士が到着した惑星は、知能が人間より上だと自負する猿が支配。人類は知的に劣るとし狩りの対象にされ、3人も襲われ1人だけが生き残る。物語はそんな設定で進むが猿側は知能の優劣が逆転すると、立場が入れ替わることもあるとの思考も持っている
▼だから残る1人も警戒。彼は猿の言葉を覚え誤解を解き仲良くなるが、それも危険視される。彼は隙を見て猿が打ち上げる衛星に潜入し飛び立つ。周回軌道では地球に戻れる宇宙船に乗り移り無事帰還する。だが彼は地球も猿の支配下になっていることに気付く
▼人間のごう慢を風刺した話題作を思い出させたのは、意識不明の猿を仲間が知力を尽くし助けるインド発の先日の映像だ。同国北部の駅で猿が感電し意識を失い倒れた時、そこへ2匹の猿が駆け寄り気付かせようと倒れた猿の頭などをかみ、体を揺すり持ち上げ側溝の水に何度も付けた。しばらくして意識が戻ると仲間はその背をさすり続ける
▼猿のヒューマン(人間的)な救助劇は示唆に富む。人間界全般が入れ替わることはないが残忍な殺りくや虐待、いじめなどを見たら、救助役の猿が気の毒にと人的涙を流すかもしれない。

 2014年  12月  23日 ―冬至過ぎて年末―
 きのうが冬至(とうじ)、きょうは天皇誕生日で祝日となっている。23日が祝日ということで、お正月前に休日が入って、こたつでゆっくりと休むか、年賀状の書き込みもできるからありがたい。
▼冬至は、北半球では太陽の高さが1年中で最も低くなり、昼が一番短く、夜が一番長くなり、この日から徐々に日脚(ひあし)が伸びていく。これを一陽来復(いちようらいふく)と呼んでいる。
▼昔から冬至カボチャを食べれば風邪防止になると言われているが、それは栄養学的な根拠があるのだろう。軒下につるしている干し柿が甘くなっておいしい季節になった。渋柿は渋いほどおいしくなると言われているが、今どきは干し柿を食べる子どもたちが少なくなっている。
▼今年の12月は早くから寒波が来て、関節や腰が痛む。山には月初めに大量の降雪があって、スキー場が計画通りに営業できて何よりであった。例年、根雪となるのはクリスマス前後の気がするが、12月早々に氷点下5度を下回るような寒さと雪に見舞われた。水道の凍結対策を早めに行った家庭も多かろう。
▼曜日並びで年末の仕事納めが26日になり、年末年始の準備で忙しくなっている。また、受験生にとっては最後の追い込みに入っている。風邪など引き寄せないようにして頑張ってほしい。

 2014年  12月  22日 ―創作四字熟語で顧みる―
 恒例の住友生命主催「創作四字熟語」が面白い。優秀・入選作でこの年を振り返ってみる
▼「五八至十」は選者の歌人俵万智さんも褒めたという。消費増税を巧みに表現した。5%だった税率を今春から8%に上げ庶民の財布を直撃。消費は冷え込む。10%導入は延期したものの17年4月実施は確定。ダブル増税必至の様相を読み込んでいる
▼一方、政府は株高、円安を誘導。大手輸出業者は喜ぶが輸入原材料の高騰で食糧品などは値上げ続出。これを「日本低円」と書く。そんな推移を承知で安倍総理がオバマ大統領と優雅に高級すし店で語り合う「鮨屋会談」
▼世情では危ない麻薬・危険ドラック服用者が車などで暴走。死傷者も出ている。許しがたい「危草千害」だ。デング熱を運ぶ蚊も出現。「蚊無(かない)安全」を誰もが願う。自然界の急変も怖い。「安山祈願」は多くの犠牲者を出した御嶽山噴火への祈りだ
▼「雪歌繚乱」は幼児も歌う「アナ雪」大ヒットの姿。「笑っていいとも」終了の「放送笑了」は少し寂しい。金メダルに輝いた羽生選手の氷上の舞いは「金覇銀盤」と称賛。「青光褒祝」は研究者3人の青色LED開発によるノーベル物理学賞受賞への祝辞だ
▼皆が悲喜こもごもの自分史をつづったであろうこの年。「優秋乃美」(入選熟語)を飾りたい。

 2014年  12月  21日 ―東京駅開業100周年―
 20日で東京駅が開業して100周年を迎えた。辰野金吾博士の設計による、赤れんが造りの東京駅が誕生して東海道線の始終着駅となった。1914(大正3)年12月20日であり、この年は第1次世界大戦が開戦した年でもあった。
▼当時、山手線を環状鉄道にしようとした計画の下、中央停車場・東京駅建設が進められた。開業時は東京―新橋間のみが開通し、東京―上野間はその11年後となった。予算の関係などから東京駅以北の路線工事は先送りされた。
▼高架線の計画、設計から技術指導はまだドイツ人の鉄道技師によって行われていたが、日本銀行本店など、数々の重要文化財を設計した日本人の建築家・辰野金吾に東京駅舎の設計が引き継がれたのは、首都のシンボルだったから。開業当時の東京駅は、鉄筋れんが造りの3階建てで、正面に皇室専用玄関を設け、南側のドームを乗車口、北側のドームを降車口として使用した。
▼丸の内側の赤れんが駅舎は、南北の全長は約335b。空襲で消失した3階部分などの復元工事がなされ、2012年10月に保存復元工事が完了した。本県では、前年の1913(大正2)年に岩手軽便鉄道が花巻―土沢間が開業し、翌年には土沢―遠野間、そして遠野―仙人間が相次いで開業している。新幹線時代を思えば隔世の感がある。

 2014年  12月  20日 ―女子教育普及へマララさん闘う―
 パキスタンのイスラム過激派集団は女子教育不要論で知られる。これまでにも武力で多くの学校を破壊。女児らを標的に殺りくを繰り返してきた。非難されると「女が教育を受けることは死に値する」と暴論を吐き世界が眉をひそめている
▼彼らに狙い撃ちされてきたのがパキスタン北西部。そこに生まれた一人の少女が立ち上がる。女子教育の必要性と権利を訴え続けるマララ・ユスフザイさんだ。今年17歳の世界最年少でノーベル平和賞を受けている
▼受賞演説では「私には二つの選択肢がありました」と述べ@沈黙したまま殺されるのを待つA声を上げ主張し殺される、と2点を挙げて「私は後者を選びました」と語った。11歳の頃から死を覚悟して女子教育を宣揚。12年10月、下校バスに乗り込んだ過激派の銃が彼女の頭と首を狙い撃ちする
▼医術を尽くし奇跡的に生還。今は英国に居住し学業と活動に励んでいる。今月16日には過激派集団が彼女の母国の学校を襲撃。児童ら148人が殺害された。この惨事には共闘関係の集団が「教えに反する」と諫言している。ほかの路線対立もあり組織は弱体化しつつあるという
▼マララさんは演説で「終わりにすることを始めましょう」とも訴えたが彼女は始動の先頭に立つ。故国に女子教育普及の日はきっと訪れるであろう。

 2014年  12月  19日 ―解散総選挙を終えて―
 衆院選が終わった。今回の選挙ほど新聞の切り抜きをしたことがない。各紙の社説や論説、地方の記事に至るまで、コピーしたり、切り抜いてはカラーペンで色を付けるなど、各党、各候補者の政見などについての情報集めに努めた。
▼安倍政権が発足してからわずか2年余での解散であった。当初「消費税率10%の1年半延伸」が解散の大義とされたが、時間の経過と共に冷静に考えてみると分からなくなってしまった。
▼日本はいま大事なことが抜けているのではないか。経済や政治の問題ばかりではなく、生活そのものである。改善どころか悪化しているのではないか、このままでよいのかといった漠然とした疑問が湧いた。具体的には、東日本大震災の復興問題、年金や医療の問題、著しく深刻化している。地方の過疎化、農漁村の後継ぎの問題などもそうだが、それ以上に、自分たちの身の回りがおかしくなっていることに気付いた。
▼特にも年配者は、世の中に尽くしてきたが、振り返ってみると、肝心の自分のことには全く力を入れずに過ごしてきている。日本の良き伝統が失われている。自分の身の回りが手遅れになっている。マンション暮らし、核家族、勝手な生活、集落の絆が維持できない自治体の崩壊、これから、自分の老後の生活は大丈夫なのかと。

 2014年  12月  18日 ―冬至前に柚子談義弾む―
 陰が極まり再び陽に向かう一陽来復の日が冬至。この日には薬効も香りもある柚子(ゆず)湯に入る習わしがある
▼冬至は4日後だが拙宅では10日前から柚子湯に入り続けている。例年のことだが共に机を並べた青春時代からの旧友が、大きな竹かごいっぱいの柚子の実を早々と届けてくれたからだ。彼の縁故の家に広い果樹園がありその一角は、柚子の木が林立する庭園で毎年10月末には収穫を始めているという
▼園のご当主は気前がいいのだろう。親類縁者に贈るだけでなく庭園入り口には、「たくさん取れましたので、どうぞご自由にお持ち帰りください」と大書し、大棚に柚子の実をたくさん並べているというのだ。気前というより心が豊かなのだろう
▼巡りめぐって当方まで恩恵に浴している。「貰(もら)ひたる柚子ありがたき柚子湯かな」(木下洋子第一句集「初戎(えびす)」花神社)という句がある。わが家の小さな湯船に黄金色の柚子を浮かべ身を沈めていると、俳人のうたう「柚子ありがたき」との情感が心に染みわたってくる
▼柚子のでこぼこした表面に傷を付けると養分がにじみ出る。昔から柚子湯で風邪知らずに冬を越せるとの言い伝えもある。近隣の人たちにもお裾分けしたが「風邪にも寒さにも負けずだな」と皆の笑顔の柚子談義が弾んでいる。

 2014年  12月  17日 ―北海道新幹線開通に向けて―
 北海道と青森県を結ぶ青函トンネルが開通する前は、青函連絡船で3時間50分の航行であった。連絡船、青函トンネル、それぞれに持ち味があって良いが、2016年3月には北海道新幹線新青森│新函館北斗間が開業して、1時間余りで結ばれる。
▼既に、北海道新幹線用の車両H5系が函館総合車両基地に搬入され、1日から試験走行が開始された。7日には青函トンネルを初めて通り抜け、来年の3月1日までの60日間程度、奥津軽いまべつ―新函館北斗間を1日1〜3往復運行する計画となっている。
▼試験走行は時速30`から始め、10〜20`刻みで速度を上げ、年末には最高の時速260`で走らせる計画。青函トンネルを含む約82`の共用区間では在来線とすれ違うことから、スピードと風圧の関係などについての調査がなされているのではなかろうか。
▼7日には奥津軽いまべつにH5系の雄姿が初めて到着し、町主催の歓迎の式典が開催されて走行を祝い合った。過疎の町、津軽半島の北端今別町や三厩町にとっては待ちに待った北海道新幹線である。
▼1年半後には函館までが開通して、北海道観光の時代が到来する。世界的にも北海道の知名度が高いので、これまでの岩手の観光施策を練り直して「東北・北海道」にしなければならないのではないか。

 2014年  12月  16日 ―禊のような総選挙終わる―
 解散権を持つ側は不利な戦いはしない
▼任期2年を残し多忙な寒冷期への不満も承知で仕掛けた師走総選挙は、安倍総理のもくろみ通り与党大勝に終わる。自民は追加公認1議席も含め公示前勢力から微減の291。公明は4議席増やす健闘で35。合わせて326議席となる
▼総定数5減の中で公示前議席を維持したわけで、衆院3分の2超の議席確保は不気味なほどだ。今後も法案採決などで威力を発揮しよう。ただ大山鳴動して現状維持なのも確か。なぜ総理は予算も労力も使う解散を強行したのか。勝って6年に及ぶ長期政権を担う野望もあったのか
▼それに禊(みそぎ)を狙う計算もあったのだろう。先夜の開票速報でそう思わせる光景もあった。政治と金をめぐる疑惑を晴らせず10月に大臣を辞した小渕優子、松島みどりの両女史が当選と決まった時に、選挙が罪やけがれを洗い清める禊の役目を果たすことに気付かされた
▼今後は両氏の疑惑以外にも「禊は終わった」と言い張る場面が予想される。今月施行された特定秘密法や法整備を待つ集団的自衛権にも、禊に似た「総選挙で信任された」とのせりふが乱発されるかもしれない
▼さて県内も比例復活も含めほぼ前回並みの構図となった。一方海江田民主代表落選辞任は国政健全化を担う野党に教訓を残している。

 2014年  12月  15日 ―今年の漢字「税」―
 2014年の世相を1字で表す今年の漢字が「税」に決まり、日本漢字検定協会から12日、京都市東山区の清水寺で発表された。例年のように森清範貫主(かんす)が「清水の舞台」で縦1・5b、横1・3bの越前和紙に特大の筆で揮毫(きごう)した。
▼同協会によると、応募総数は16万7613票で、1位が「税」で8679票、2位が「熱」の6007票、3位が「嘘」の5979票であった。その次は、災、雪、泣、噴、増、偽、妖と続いている。
▼4月1日に消費税率が5%から8%に引き上げられて、さまざまな消費者物価に跳ね返った影響で家計への負担が増加したことによるものだろう。さらに消費税の10%への引き上げをめぐっては衆院の解散に至ったことなどを意味しているのだろう。
▼2位の熱は、ソチ冬季五輪やサッカー世界選手権などでのスポーツ熱、さらには、エボラ出血熱などからだろう。税金の使い道に絡んで、国会議員や県議会議員などの「政治とカネ」の問題が頻繁に取りざたされた。女性大臣の起用にからんでは、二人の大臣が同時に引責辞任する騒ぎになったが、その二人の議員は今回の衆院選で当選している。ある作曲家の著作が「嘘」であったことは、多くを驚かせた。今年の漢字は、1995年に始まり今年で20回目を迎えた。

 2014年  12月  14日 ―投票は最良の意志表示―
 大震災から3年9カ月が過ぎ、きょうは総選挙の投票日だ
▼県内でも被災者の多くが今も仮設住宅で暮らす。福島ではおよそ12万人が原発事故で追われたまま避難生活をしている。復興に程遠い状況下で被災者は、投票日をどんな思いで迎えているだろう
▼詩集「原発難民の詩(うた)」(佐藤紫華子著・朝日新聞出版12年7月刊)に叫ぶような一節がある。「国会は自分の事に無我夢中 ドタバタ劇はもう澤山(たくさん) いつまで避難させとけばいゝの〜大人しくなんてしていられない 皆で津波のように押し寄せようかしら」と
▼著者の佐藤さんは発災当時は83歳の平凡な主婦だった。だが転々とした逃避行と《仮の暮らし》はさながら「難民」だと痛感。その難行苦行の中で詩心が燃えそれを書き連ねたという。いつ安住の家に移れるのかという欲求は、著者だけでなく今も難民的生活が続く被災者に共通の感情だろう
▼それを問うた詩集の刊行からも2年余が経過。復興遅滞下の突然の解散も師走の総選挙も「自分の事に無我夢中」の姿と映ろう。でも反発し津波のように国会に押し寄せる必要はない。冷静に投票することが最良の意志表示になる。被災者をはじめ「国民の事」に真剣な候補もいるし党もあろう
▼きょうはより良い選択のために投票所へ足を運びたい。

 2014年  12月  13日 ―あすは投票に行こう―
 衆院選もあすが投票日。各党各候補者の選挙戦は1日限りになったが、有権者の中には複数の政党、複数の候補者の中からどこの誰に投じたらよいのか考えを絞り込んでいる人も多いかもしれない。
▼経済や社会保障に重点を置くのか、農林水産や地方創生に絞っておられるのか、東日本大震災復興の取り組みに注視しておられるのか。ところが、今回の選挙は一体に何が狙いだったのかと迷ってしまうことがある。
▼特定の政党や特定の候補者にいつも迷うことなく決めておられる有権者はともかく、多くの人たちはそのときの政治情勢や景気の動向などを分析しながら、人物本位で投票先を決めるのではないか。解散された当初、税と社会保障の一体改革がメーンであった。それはそれとして、国政選挙は「おらが代表」を送り込むことでもあるから、その1票が大事になる。
▼各種世論調査の結果によると、今回の衆院選への関心は低いとみられているようで、最終的な投票率が過去最低になるのではないかと危惧されている。2012年は小選挙区投票率が戦後最低の59.32%だった。今回これを下回るとの見方もなされている。期日前投票は好調なようだ。04年参院選から導入された制度として利用者が増えているが、投票率の向上につなげなくてはならない。

 2014年  12月  12日 ―麻生氏がまた失言連発―
 失言が多い麻生太郎副総理だが、選挙と風について語った先月の会見は、いつになく内容が確かで過日は当欄も引用した
▼だが財務大臣も兼務しているのに舌禍はこの人の習性らしい。「憲法改定にはナチスが当時の憲法を骨抜きにした手口に学ぶといい」(要旨)などと、辞職を強いられそうなことを放言したこともある。今回の師走総選挙には周囲の忠告もあって慎重なのかなと、先の引用時には気を許したがそうではなかった
▼またも各地の遊説でこの失言居士から、話題の該当者たちを傷つけるような発言が相次ぎ飛び出している。6日の長野県松本の街頭演説では、株価が1万7千円まで上がり円安も進んだと景気回復を強調。企業は大利益を出しているとし「出していないのは運が悪いか経営者に能力がないかだ」と言い放つ
▼3日の香川や5日の神奈川でも同趣旨で演説。苦闘中の経営者らから怒りが噴出したという。円安で材料輸入価格が高騰し圧迫される企業も多い。地方や零細業、庶民家庭なども恩恵はない。今は政治こそ無能を戒める時だろう
▼麻生氏は7日の札幌遊説では少子高齢化に関し「(高齢者側の問題もあるが)子どもを産まないのが問題だ」と発言。女性個々の事情を顧みない無礼千万な言葉だ。麻生氏自身も1強自民も浮かれてはいないか。

 2014年  12月  11日 ―北上山系への広い視点―
 日本列島の北端を支える北上山系は、奥羽山系と互いに向き合い、その谷底には縦に北上川が形成されている。奥羽山系は日本海の壁となり、北上山系は太平洋の壁を成している。
▼北上山系の東には広大な太平洋があって三陸は世界の三大漁場となっているが、その源は北上山系の森林が栄養源を生み出していることによる。
▼北上山系は天然資源に覆われて、開発の手が遅れをとってきた。三陸は数十年ごとに大津波が襲来して、災害復興を繰り返してきた。
▼近年、北上山系に目が向けられている。国際リニアコライダー(ILC)の誘致、JR山田線の一部区間の経営移管の話などだ。言うまでもなく、北上山地は「国防」の上から重要な山脈である。単に地下資源の活用とか、道路や鉄道の利便性のことが叫ばれているが、それ以上に日本列島を形成し日本国を保持していく上で重要な山である。それは軍備の上での防衛ではなくて、国土保全はもとより、人命や農漁資源などのあらゆる産業を保護するといったことを意味している。
▼日本海から太平洋に横断する間の二つの重要な山脈である。断崖絶壁やリアス式海岸といった古い地質はそれなりの意味を持つ。太古からの地層の意義を踏まえて、北上山系に対する広い視点で物事を考えなければならない。

 2014年  12月  10日 ―南国徳島を大雪が襲う―
 この時節、北国では降雪との戦いが始まっている。だが今冬は温暖化による世界的な気象異変の一環なのか、南国の四国方面でも白魔に襲われている。徳島では死者まで出ているのだ
▼5日未明には徳島県西部の国道で降雪のため、130台ほどの車が走行不能となる。除雪作業も不慣れだろうから気の毒なほど手間取り、走行可能となったのは約17時間後の22時だ。除雪中は完了時刻も不明で立ち往生したドライバーの中には、車を放置し立ち去った人もいる
▼復旧後にはその放置車が走行を妨げ、これを撤去移動するにも法的裏付けが整っていないため、急きょ国交省が該当区間を「放置車移動可能区間」に指定する場面もあったのである。後手の対応だがこれで放置車を路肩などに移し待機車が走り出す
▼このトラブルは雪害には南国も北国並みの措置が急務であることを物語る。チェーン常備意識徹底も必須だろう。一方、立ち往生の車には近隣の住民がおにぎりや温かいお茶を届けたという。被害者もその真心に物心両面でどれほど救われたことか
▼国道以外でも多くの山間集落住民が大雪と倒木などで孤立。道は埋まり停電も重なり炊飯もできず、電話も不通。自衛隊などの孤立住民救出は今も続く。異変は南も北も季節も問わず襲う時代が来ていることを痛感する。

 2014年  12月  9日 ―戦後世代が平和な新しい時代を―
 太平洋戦争が始まったのが1941年12月8日。第二次世界大戦のうち、主として太平洋における日本とアメリカ、イギリス、オランダなどの連合軍との戦争を指している。
▼満州事変から15年戦争の第三段階で中国戦線を含んでいるが、日中戦争の長期化と日本の南方進出が連合国との摩擦を強め、種々の外交交渉が続けられた。41年12月8日、日本のハワイ真珠湾攻撃によって太平洋戦争が開戦となった。
▼戦争初期、日本軍は優勢であったが、42年半ばごろから連合軍が反撃に転じ、ミッドウェー、ラバウル、ガタルカナル、ニューギニア、フィリピン、サイパン、硫黄島、沖縄本島などで日本軍は致命的打撃を受け、そして、本土空襲、原子爆弾が投下され、ソ連参戦に及んで、45年8月14日に連合国のポツダム宣言を受諾し、同15日には国民に終戦宣言が発せられた。玉音放送である。9月2日に無条件降伏文書に調印した。
▼戦争中、日本では大東亜戦争と公称していた。こうした悲惨な太平洋戦争の開戦から73年が過ぎた。来年は終戦70周年を迎える。そして、日本人は来年、戦後生まれの世代が半数を超えると言われている。既に戦争を知らない世代が過半数になっているが、戦後世代が表に立って、平和な新しい時代を築いていくことになろう。

 2014年  12月  8日 ―潜む重要争点が浮上―
 名門出身の麻生太郎さんは「生まれはいいが育ちが悪い」とよくおっしゃる
▼舌禍が多く失言居士とも言われその言い訳にも聞こえるせりふだ。元総理で現在の安倍内閣では副総理兼財務相を務める。今回の突然の師走総選挙について語った先月25日の記者会見では、周囲が案じた言葉の滑りすぎもなく、むしろ興味深い見通しを披露している
▼「追い風でもなければ向かい風でもない。簡単に言えばたこは揚がらないということだ。風頼りの選挙でない人が当選するだろう」と。選挙時には大きな割合を占める無党派の人たちを、特定党派支持へと背を押し投票所に向かわせる風がしばしば吹く。それが戦勢を左右する
▼風を頼らず勝てるのは自民党のように後援組織が強い党派だろう。麻生発言はそれを示唆する。総理も野党に追い風が吹く暇を与えない頃合いで解散に打って出た。先週は全国紙などが世論調査を基に序盤情勢を報道。「自民300議席超か」「共産は倍増も」などの記述は、党の組織力を映し出す
▼解散権を持つ側が攻防を主導する構図で、師走選挙は後半に向かう。戦勢はなお動く。序盤報道のように自民圧勝なら安倍総理は、宿願の憲法改定に動くと懸念する国民は多い。潜む重要争点の浮上だ。アクセルかブレーキかを冷静に見極めた選択をしたい。

 2014年  12月  7日 ―岩手山麓の開拓魂―
 滝沢市の岩手山麓開拓、花平酪農農業協同組合は1964年の創立から50周年を迎え、11月27日記念式典が開催された。花平、臨安、沼森、鬼越の四つの開拓農業協同組合が合併して、夜蚊平開拓酪農農業協同組合として発足し、83年に名称を変えて現在の協同組合になったという。
▼戦後の開拓事業から度重なる冷害や自然災害、強酸性火山灰土壌の改良など、幾多の困難を乗り越えて50周年を迎えられた。これまでの並々ならぬご労苦に、心からのお祝いを申し上げたい。
▼春から秋にかけて、晴天の休日には岩手山の雄姿を見るのと、網張温泉か「お山の湯」に入る目的で日帰りで出掛けている。滝沢市役所の裏のカーブのきつい道路を上っていくと、広々とした牧草地にたどり着く。その途中には、姥屋敷小中学校があって、周りには開拓地の広大な畑や採草地が開けてくる。相の沢牧野では道路脇に車を止めて放牧されている牛の群れを眺めるのも楽しみのひとつ。
▼本県の内陸では見られないスケールの大きな開拓農家や周りの畑の大型機械での耕作、デントコーンの刈り取り、長いもや大根の栽培などを車を降りて見学させて頂いている。
▼総理大臣表彰を受けたモデル農家、岩手山西会の中国からの留学生を引き受けていただいた農家もある。

 2014年  12月  6日 ―痛くない注射器が誕生―
 皮膚に鋭利な針を刺される注射が好きな人はいないだろう
▼当方も敗戦から数年後の小学生の頃に、初めて感染症予防の注射を経験。痛さに泣きそうになったことを覚えている。以来、注射大嫌い人間になったのだが70代の今に至るまで、五臓六腑(ろっぷ)のどこかが間隔を置いて故障。その治療で注射には付きまとわれている
▼還暦の年には手術も体験。事前に輸血用自己血採取が数回あり、そのたびに太い針をズブッと刺し込まれる瞬間を気合で耐えたことも忘れられない。一昨日、「痛みのない『針なし注射器』を開発」との報道を見て、隔世の感に打たれながら注射の自分史を顧みてしまった
▼それにしても「針のない注射器」が登場するとは夢のようである。開発したのは芝浦工大の山西陽子准教授だ。この注射器は皮膚に押し当てると気泡が高速発射してはじけ、その力で細胞に微細な穴が空き、そこから薬剤をまとった微細気泡を注入。気泡は収縮し薬剤だけが吸収され患部に届くという
▼以前にも「針なし注射器」開発事例はあったが、神経を傷つけたり痛みがあるなど課題が克服されないでいた。山西さんは試行錯誤を重ね神経にも触れずに、幼児も大人も夢に見た「痛くない注射器」を誕生させたのである。今後は構造の最適化などを詰め実用化を目指す。

 2014年  12月  5日 ―集落の体力的限界―
 11月末に、県南地域のロータリークラブ例会で30分ほどの講話の依頼を受け、出掛けた。
▼10年ほど前に鳴り物入りで市町村合併をしたのだが、以来、病院や学校などの統廃合が大胆に進められて、街には役場がなくなり、学校がなくなり、診療所には医者がいなくなった。合併10年を経て、集落では「これから、将来はどのようになるのか」といった不安が募り、集落の希望をまとめるリーダーが現れてほしいといった望みや、むずむずしたものがたまっていた。
▼確かに、役場や学校は昔から集落の中心の役割を果たしてきている。それが合併でなくなって、活動センターや公民館が近代的な施設に建て替えられても、地域民の心が次第にまとまらなくなってしまう。地区の運動会や盆踊りもできなくなってきた。集落には小学生が1人か2人で、スクールバスで学校に通う。集落は昭和一桁生まれの人たちが守ってきたが、それも体力的に限界に来ている。伝統のある地元食も途絶え始めているため、子や孫が里帰りしなくなってきた。子牛や鶏といった家畜も見えなくなって、納屋が荒れ放題になった。
▼合併の利点が生かせず、恵まれた地域の資源を生かす力が弱くなっていることを感じた。理屈ではなく、てこ入れをしなければ集落が間もなく消えてしまう。

 2014年  12月  4日 ―名優菅原文太さん逝く―
 亡き高倉健さんを追うように、同じく存在感のある名優・菅原文太さんが81歳で他界した
▼「仁義なき戦い」や一部は本県もロケ地になった「トラック野郎」のシリーズも文太さんが主演。実際に起きた裏世界抗争を映画化した「仁義なき〜」の中で、文太さん演じるワル役が拳銃を手にして「弾はまだ残っとるがよう」とすごむ場面がなぜかよみがえってくる
▼文太さんは堅いNHKの大河ドラマ「獅子の時代」(1980年)でも主役を務めている。明治維新で敗れた会津藩の下級武士役だ。架空の物語だが彼は藩閥政府に激しく抵抗し「自由自治元年」の旗を掲げ、同志と共に政府軍に突入していく…。あの好演も懐かしい
▼歌手、声優も経験したこの人が芸能人生から離れる時が訪れる。3・11大震災だ。文太さんは仙台出身。映画を撮っている場合ではないと故郷へ被災県へと足を運ぶ。本県奥州市でも励ましの講演を開催。一方、演技で見せた鋭い眼光を環境にも向け、発災の年に居を山梨に移し有機農業を始めている
▼12年春には震災で殉職した消防団員の遺児169人への応援を約束。同年11月には市民グループ「いのちの党」の結成を発表し、仲間に本格的に国の大掃除をしようと呼び掛けた。今年9月に盛岡で講演をしたことを思うと訃報が一層悲しくなる。

 2014年  12月  3日 ―社会保障への対応策―
 安倍首相は来年10月に予定していた消費税率引き上げの延期を表明して衆院を解散し、きのう総選挙が公示された。
▼民主党政権時代、民主党と野党の自・公が増税は年金や医療、介護、少子化対策等社会保障の財源を確保するためと同意して解散に踏み切った経緯がある。社会補償制度として、国民に給付している金額は110兆円を超え、この60%は年金や健康保険などの社会保険料で賄い、40%は国と地方が投入する税金で賄われている。
▼自民、公明、民主の3党が合意した「社会保障と税の一体改革」では、5%の消費税率を10%にまで引き上げる際、「4%分は現行の社会保障制度の財源に充て、1%分は少子化対策や低所得の人への年金額加算など制度の充実に充てる」という計画であった。10%に引き上げたとしても、社会保障に費やす費用の全てを賄うことはできないが、とりあえずは財源確保に向けた対応策であった。
▼しかし、税収が落ち込み、景気が伸びなければ、際限なく膨らむ社会保障費をどのようにして工面するのか。費用の効率化策として、重装備の病院や介護施設のコストを削るために、健康で在宅の人を多くする具体策を練らなければならない。
▼格好の良いことばかり述べるのではなくて、もっと現実的な対応策を論じるべきである。

 2014年  12月  2日 ―地方や庶民に届かぬ恩恵―
 安倍総理の解散表明からまだ2週間。きょうは公示で14日が投開票と慌ただしい師走総選挙が始まる
▼説得力ある大義も示せないでいた総理は、「アベノミクスの是非を問う」と自らの経済政策を争点に挙げている。そのせいかちまたでは今、1年前の報道で目にした3段重ねのワイングラスの図による経済政策批判を耳にする
▼地方や庶民に恩恵が届かないことへのいら立ちでもあろう。図はワイングラスを上から1個→2個→3個とピラミッド型に3段に重ね描く。頂上の1個のグラスにワインをあふれるほど注ぐ。あふれた分は中段の2個のグラスに流れ、そこもあふれて3段目の3個のグラスにも滴り落ちるという構図だ
▼頂上の1個のグラスを大企業や投資家とし中段の2個は大手社員や中規模業者、最下段3個は零細企業や地方、庶民の家庭に例えている。図の傍らで解説者は総理の意を受けた日銀がお札を大量に刷り発行した金融緩和策を、あふれるワインに例えて次のように言う
▼あふれるほどのお金はワインのように3段目までは流れず、2段目も少々で大半は頂上の大企業や投資家が吸収していると。経済失策で格差拡大は否定できず「安倍のミスだ」とも指摘する。さて地方や庶民のグラスに待てばワインは届くのか。重要争点として見極め採点をしたい。

 2014年  12月  1日 ―師走の総選挙に思う―

 12月に入った。師走の名のいわれは「師匠までも走り出す忙しさ」だからとされている。2014年は早くも年の瀬。さまざまな行事、祭礼、納めや供養などで多忙を極める月であり、1年を締めくくる大事な月、総仕上げの月でもある。来年に向かって方針を固める1カ月でもある。
▼そんな中に突如、11月18日に安倍首相が衆院解散を表明した。野党の虚を突くような形で与党によって仕掛けられたが、師走の総選挙はどのような結末を迎えるのか、今回は予測すら付けにくい。2日公示、14日投開票といった日程が入り込み、一層せわしくなってきた。前回の総選挙も師走の日程だった。
▼700億円がかかると言われる総選挙で、どのような勢力図が出来上がるのか、小選挙区295、比例代表180、前回よりも5議席減って併せて475の議席を争い、日本列島は投票日まで12日間の選挙戦となる。
▼本県は山田町で今回から岩手2区から3区に選挙区が編入される。それがどのように影響するのだろうか。
▼東日本大震災から3年9カ月。復興が思うように進まない中で、投票率にどのように影響するのかが気にかかる。選挙後は組閣が急がれ、来年度予算編成やさまざまな課題を抱えているだけに、しっかりとした考えで大事な一票を投じて欲しい。

2014年 11月の天窓へ