2017年 4月の天窓


 2017年  4月  26日 ― トランプ米大統領の矛先 ―
 トランプ米大統領が入国制限命令、オバマケア撤廃と矢継ぎ早に大統領令を出すも、司法や議会の賛意を得られず今のところ不発弾になっている
▼そのせいもあるのかと思ってしまうが、アサド政権が化学兵器を用いて空爆したとしてシリアの空軍基地を巡航ミサイルで空爆、アフガニスタンではナンガルハル州の過激派組織ISの拠点として大規模爆風爆弾で空爆した
▼空爆ニュースを聞いて思い浮かべるのはピカソの「ゲルニカ」、丸木位里、俊夫妻の「原爆の図」。内戦、戦時下の軍事作戦だが銃後の大量の命を奪う無差別殺りくとなった
▼内戦中だったスペイン・バスク地方のゲルニカがフランコ将軍支持のドイツに空爆されたのは80年前の4月26日。フランスにいて万博のスペイン館用に反フランコの立場で作品を制作中だったピカソは報を受け「ゲルニカ」に取りかかる。ピカソ作品で最も美術愛好者以外にも知られ、社会に影響力ある絵となった
▼原田マハさんは03年2月のイラク空爆の前夜、国連本部で米国務長官が会見した際、会見場所に常時掲げられている「ゲルニカ」のタペストリーが暗幕で隠されていたこと知り、小説「暗幕のゲルニカ」を生んだ
▼「ゲルニカ」を見た人は空爆が非戦闘の市民を巻き添えにする悲劇を考えないはずはないのと思うのだが。

 2017年  4月  25日 ― 核ミサイルの飛来 ―
 「神と野獣の日」(角川文庫)は、松本清張が1963年に書いた空想科学小説だ。前年には核ミサイル基地をめぐり米ソが対立したキューバ危機が起きている
▼この物語も核ミサイル飛来情報から始まる。ある日、官邸の総理に緊急電話が入る。「重大事態発生です」と。Z国が東京を目標に誤射した核搭載ミサイル5基が飛来、43分後に着弾するという。総理は核ミサイル誤射をテレビなどで全国民に告げる
▼米軍の観測ミスで着弾が54分延びたが、首都破滅は不可避で総理らは東京を離れ大阪府庁に移る。一方都民は狂乱し多くが略奪など野獣と化す。恋人2人だけで挙式をし最期の時を共にすごすカップルなど、強く破滅に立ち向かう人もいるが、普段は神のような人でも極限状態では野獣化する
▼小説を離れ平成の今を直視すると、核ミサイル飛来は現実の恐怖になりつつある。宮城の大崎市では19日朝、防災無線で「当地域にミサイルが着弾する可能性があります」と避難を促す放送をしてしまう
▼発射を繰り返す北朝鮮の動きを受け録音しておいた警告情報を、誤って放送したもので職員が気付き6分後に訂正放送をしたという。だが北の暴走は続き同趣旨の警告放送を用意している自治体は多い。きょうは北朝鮮の軍創建85周年の記念日。平穏に終わるかどうか。

 2017年  4月  24日 ― 「花巻城の夜討ち」わくわく ―
 「夜討ち朝駆け」といえば、昔気質の記者の習わしで、深夜早朝に押し掛けてコメントや裏付けを取ること。相手はきっとうるさくて申し訳ないが、取材合戦の中ではときに必要になる。
▼4月から新連載「花巻城の夜討ち」が始まった。著者は東京都北区の民部田久さん。盛岡出身で、うれしいことに銀座のいわて銀河プラザで本紙をめくり、松田十刻さんや早坂昇龍さんの歴史小説に刺激されて書いてみたという。花巻の祖、南部藩初代家老となった北信愛の物語だ。
▼信愛は「怪僧」北松斎として登場する。刀もろくに持たぬ娘や農民を少しばかり集め、何やら含めるあたりから、神算鬼謀をほのめかす。こちらはあんまり昔の話に詳しくないが、安国寺恵瓊とか本紙連載の宮部継潤とか、いくら戦国の世とは言え、坊さんが殺生の先陣を切るのはどんなものかと思っていた。
▼しかし当時の僧侶はあらゆる階層に接して伝聞を集め、故事になぞらえて解釈してみせる、報道機関的な役割があったのでは。古戦場に軍師として名をはせた高僧たちは、現代ならジャーナリストや作家出身の政治家のようなもので、情報力や言語力を武器にしていたのだろう。
▼いずれ民部田さん筆、村井康文さん描く戦国ドラマが楽しみ。「快僧」松斎の、夜討ち袈裟(けさ)懸けで。

 2017年  4月  23日 ― きょうは歴史的な「本の日」 ―
 還暦を超えた頃からうず高く積んでいる本が気になり、世界文学全集など百冊ほどを、読書好きの学生にプレゼントした。とても喜んでくれ折々に読後感想を聞かせてくれる。以来若い人への贈本を続けている
▼スペインのカタルーニャ地方に贈本の歴史的な先駆例がある。きょう4月23日は同地方が20世紀初頭に本を贈り合う文化的慣習をたたえ定めた「サン・ジョルディの日」(本の日)でもある
▼サン・ジョルディは同地方の人々が聖人と仰ぐ宗教者で、悪獣のいけにえに差し出された王女を救ったという伝説もある勇者だ。4月23日はこの人が殉教した命日で、同地方ではこの日を贈本と読書推進の「本の日」とし、そこに聖人の名を冠したのだという
▼この記念日はやがて世界に普及していく。ユネスコ(国連教育科学文化機関)は1995年の総会で、この日を「世界本の日」と制定した。日本はそれよりも早く86年に日本・カタルーニャ友好親善協会などが、この記念日をそのまま「サン・ジョルディの日」と定めている
▼スペイン先駆地の書店ではプレゼントに本を買う人には、バラの花を添える伝統もあるという。バラは本とともに贈呈されこれも世界に普及。4・23に華やぎを添えている。当方も贈本花添えをしているが、贈呈は古書だからひときわ華やぐ。

 2017年  4月  22日 ― コンビニと小選挙区 ―
 衆院区割り審勧告で岩手県の小選挙区が4から3に減る。現行制度施行の1994年以来23年ぶりの再編。
▼小選挙区制の時代、はからずも急成長したお店がある。コンビニだ。堺屋太一氏は76年の予測小説「団塊の世代」に、「コンビニエンスストア」なる章を書いた。90年代初めの近未来を描いてみせ、米国流の業態は日本の商慣行になじまぬ、コンビニなんてやめとけ、との示唆を込めて。小説の出来はともかく、堺屋作品は霞ケ関の論法で緻密に分析しながらも、的を外すことが多い。
▼小渕内閣では、民間から経済企画庁長官を務めた。かつての自由党と連立で。中選挙区での与党の派閥抗争を排し、政策論争を唱え、小選挙区制を柱に政治改革を実現した小沢一郎氏。
▼結果、確かに派閥の力は弱まり、ときに政権交代は可能になったが、代議士は「コンビニ化」した。うつわの大小ではなく、1人当選の小選挙区では全方位の総花で政策を論じがちになる。老舗百貨店や高級専門店タイプの政治家は少なくなった。
▼これから岩手2区は本州一の広さに、小さな店構えでは手に余る。現3、4区は大きく組み替わり、小沢氏の地元だけに政局的にも焦点。すぐそこの3区と4区で足せば、はたしてラッキーセブンになるのやら。コンビニの業界再編じゃないけれど。
  

 2017年  4月  21日 ― 大臣らの暴言、失態続く ―
 国政の中枢を担う大臣や政務官は、配慮した言葉遣いや振る舞いを心掛けてほしい。今は安倍政権が「一強」と言われ、そこから気が緩むのか閣僚らの暴言や失態が相次ぐ
▼国は福島原発事故による自主避難者が避難解除で帰還する際、費用負担は「本人の責任」とし支援しないことにした。自主避難とはいえ冷酷な措置である。今月4日の閣議後会見である記者が「国は責任を取らないのか」と問う
▼ところが今村復興大臣はこれに逆上。《無礼な、出て行きなさい。許さんよ》などと声を荒げる。数時間後に感情的発言だったと謝罪したが、こんな復興大臣では被災者の苦労は報われない
▼昨年9月に豪雨被災地の岩泉町を視察した務台復興政務官は、冠水地なのに長靴を持参しないから同行の職員が背負う始末。死者も出た町をどう立て直すかという真剣さはゼロ。「おんぶ視察」と報道され失笑を誘う
▼山本地方創生大臣も先日、暴言を吐く。博物館や美術館には法律が定めた資料収集保管や、調査研究の専門職員である学芸員がいる。大臣はその専門性が観光客案内を妨げているとして「学芸員は一番のがんだ。連中を一掃しなければ」と発言。後に撤回謝罪したが学芸員にもがんを病む人にも失礼千万だ
▼18日には中川経産政務官が不倫スキャンダルで辞任している。

 2017年  4月  20日 ― ジャガイモの不足 ―
 ポテチことポテトチップスはスナック菓子の王道に定着。かつてはカウチポテト族なる流行語も生まれた。食べたことのない日本人は極めて少数派だろう
▼その人気商品の発売を製造メーカーが休止したり縮小するニュースを昨年後半以来、たびたび目にする。理由は原材料の不足。ジャガイモの国内生産の7割以上を占める北海道が昨年、相次いで豪雨水害に見舞われ、農作物に甚大な被害を及ぼしたことは記憶に新しい。道産ジャガイモも例にもれず被災地は出来秋を喜べなかった。種々のスナック菓子の原料となるばかりではなく、特に冬の煮物、煮込み料理にありがたい野菜の品薄は皆さんの家庭にも影響を及ぼしたに違いない
▼盛岡にも17日、ソメイヨシノの開花宣言が出され、観桜しなくても自然に気分が高揚し、待たされた春を楽しんでいることだろう。きょう4月20日は二十四節気の「穀雨」。穀物を育てる雨から来ているが桜が散れば次は新緑がまぶしい、これもまた心弾ませる光景が街や里、野山を包み込む
▼それは春耕の到来でもあり、土の起こされた田に水鏡の輝く日も遠くない。「天耕の峯に達して峯を越す」(山口誓子)。山岳丘陵地ばかりでなく、北海道も寒冷の条件下で人が血と汗を流し耕地をひらいた。今年は恵みの雨ばかりであってほしい。

 2017年  4月  19日 ― トランプ流世界の警察官 ―
 超大国の米国には「世界の警察官」という自負がある。実際に各国各地の紛争処理に介入してきた
▼ただ国民からは「世界の問題処理は国連に委ね、国政は国民第一に集中せよ」などと異論も出ている。99年に旧ユーゴで起きたコソボ紛争には当時のクリントン政権が、国連の承諾を得ずに米国・カナダ・欧州諸国による軍事同盟(北大西洋条約機構)と連携しコソボ空爆に踏み切っている
▼この事例だけでも国民感情を逆なでしていることが分かる。米政権は今、本年1月に大統領に就任した不動産王のトランプ氏が担う。商売人で計算高いと評されるこの人は、国民の心理も熟知。既に大統領選挙中から「世界の警察官をやめる」と宣言していた。これも支持を押し上げた一因とされる
▼ところが新大統領は早くも「世界の警察官」に復活しているのだからあ然とする。今月7日には攻撃に化学兵器を用いたとしてシリア空軍基地爆撃を指示。米軍は巡航ミサイルトマホーク59発を基地に撃ち込む
▼13日にはアフガンのトンネルに潜む過激派集団「イスラム国」爆破を指示。現地米軍は核兵器以外では最大級の破壊力を持つ精密誘導「大規模爆風爆弾」を実戦では初めて投下している
▼北朝鮮への戒めという効果を思えば「世界の警察官」への移り気を米国民も許すだろうか。

 2017年  4月  18日 ― 山田線の将来図 ―
 山田線の盛岡駅と上米内駅間で行われていた増発の社会実験が3月末で終わった。乗車200人増の目標に届かず、正式なダイヤ編成に至らなかったのは残念。
▼東日本大震災から脱線事故、台風10号被災など、山田線は寸断され厳しい状況にある。岩泉線同様に廃線などとささやく人がいるが、原敬の代から続く幹線を、そんな軽々しく取り扱うべきではない。いくら国道106号が整備されようが、鉄路が断たれれば宮古地方の孤立感はいや増し、復興を妨げる。
▼山田線活性化の一案として、鉄道運賃の原則である遠距離逓減より、むしろ近距離逓減とし、盛岡市内と宮古市内にワンコインで乗れるような区間を設け、3セクの車両を乗り入れる経営はどうだろう。
▼盛岡なら下米内、岩大付近、夕顔瀬などに新駅を設け、盛岡駅間とピストン輸送すれば、上下30分間隔のダイヤは可能。車両は都会的に、つり革とベンチシートにする。東京の電車のようにはいかずとも、宮城県の仙石線程度には、日常の市民の足になるのでは。
▼今の路線では使い勝手が悪いなら、山岸あたりからBRTで自動車に早変わりし、つつじが丘、遊園地、動物園、競馬場まで、盛岡東部の住民のアクセスを改善すれば、子どもや高齢者のニーズにもかなう山田線になる。まさに岩山運転だ。

 2017年  4月  17日 ― 女児遺棄容疑者の二面性 ―
 人が別の姿に身を変える「変身」といえば、四半世紀前の「美少女戦士セーラームーン」などアニメドラマのヒロインを懐かしむ人も多かろう
▼中高年世代ならさらに時代をさかのぼり、チェコ出身のドイツ語作家カフカが、1915年に刊行した中編小説「変身」も思い起こすだろう。邦訳本は52年刊の「新潮文庫」「角川文庫」を皮切りに58年刊「岩波文庫」など数社が出版している
▼当方は58年刊「変身他一編」(山下肇訳岩波文庫)を読んだが、物語は以下のようにおどろおどろしい描写から始まる。主人公で布地店販売員の青年がある朝、自室で目覚めたら自分が巨大な毒虫に変身していたことに気付くのだ
▼家族は驚き恐れ食事は運ぶが人間の食べ物が合わなくなりやがて彼は絶命する。カフカは物語で閉塞感にこもる小市民の異様化を象徴的に描いたという。千葉で起きたベトナム国籍小3女児遺棄事件で逮捕された容疑者の男の異様さがなぜか「変身」に重なる
▼46歳の男は1男1女の子を持つ親で、受難女児が通う小学校の保護者会会長を務め、通学路で子らに声を掛け見守り活動もしてきた。女児遺体と両親の帰国旅費募金活動もしている。善意を装うこれらの顔。凶暴な裏の顔への変身があったとすれば許し難い二面相だ
▼黙秘中というが毒虫よりひどい。

 2017年  4月  16日 ― 老舗は県民の財産 ―
 盛岡市内丸のフランス料理の公会堂多賀が、3月で約90年の営業を終えた。昭和天皇や新渡戸稲造が召し上がった老舗で、県公会堂のハートのようなレストランだった。突然の店じまいが惜しまれている。
▼と言っても、公会堂多賀で食事したのは4年前が最後だった。かつて閉店した大通の書店や家電店も、子どものころからいつも行っていたのに、だんだん買わなくなり、不意の幕引きに驚いたものだ。日本の流通を席巻したダイエーすら、そうだった。顧客が離れるから左前になるのか、店が傾くから客足が遠のくのか、時の流れには逆らえぬのか。
▼公会堂多賀は味もさることながら、壁を飾った素晴らしい美術がどうなったのか、文化財として関心を寄せる市民が多い。消えゆく歴史の遺産。これは新聞見出しにぴったりの、マスコミが食指を動かしやすいネタ。
▼しかし過去の経験から、こちらが文化の話題として取材を申し込んでも、「それはうちの財産の話。あれこれ言われたくない」と、強い拒絶に遭うことが多い。
▼今度の場合はどうなのか分からないが、やはり岩手の財産と思う店なら、常連でなくても折に触れ、みんなで利用するようにしなければ。店側もそれに甘えず、古いのれんに新しい風を吹き込もう。公会堂に慌てて行って、後悔したが。

 2017年  4月  15日 ― 高校生が賢治の落雷地豊作説証明 ―
 創作童話の大家宮沢賢治は今、教育者としても注目されている
▼盛岡高等農林学校(現岩大農学部)卒業後も研究生として残り土性調査などを経験。24歳で稗貫農学校(翌年県立花巻農学校と改称)の教師になってからも農業改善に意欲を燃やす。生徒と営農現場へ行き土壌学、肥料学なども指導
▼そこで生まれた逸話は農作業の心得として人々に伝えられていく。こんな事例もある。生徒同行のあぜ道で農夫に会うと賢治は「今年は米は何ぼとれましたか」と問う。そこが農夫の田と知り賢治は泥を手に取り「この田んぼに窒素肥料をやれば来年は一俵多くとれますよ」と教える
▼生徒たちにはその意味を教室で話す。《雲と雷と雨は豊作のために欠かせない。雲から発生した雷が空中の窒素を分解する。それを雨が地中に溶かし込むと栄養豊かな土地となり豊作になる。窒素は植物の大事な栄養素なのだ》と。この後、賢治は雷がよく落ちるという変電所一帯の田んぼを収穫時に見せる
▼そこは毎年豊作だが肥料不要なのだ。この説を知った島根の池田圭佑君(大学1年)が高3の夏までに、貝割れ大根と放電装置を使い実験。賢治説の正しさを証明し昨夏開催の28年度高校生シンポジウムで発表。最優秀賞に輝く。研究成果は学会誌にも掲載され専門家も高く評価している。  

 2017年  4月  14日 ― 熊本地震から1年 ―
 西加奈子さんの小説「i(アイ)」は主人公の名。シリアに生まれ、米国人と日本人の夫妻に養子として引き取られ米国で成長する。彼女は日本の大学で数学を専攻するが、災害や虐殺、戦闘、テロで犠牲になった人の数を黒いノートに記録していく
▼混迷の中にあるシリアが母国なことと無縁ではない。世界中で大量に命が奪われている事象を書きとめることで、自分がシリアで死んだり悲惨な状況に置かれていたかもしれない│罪悪感に似たものを克服したいとの意識が働いていたようだ
▼10代のアイの思考に大きな影響を与えたのは、数学教師が教室で言った「この世にアイは存在しません」。数式の話なのにアイには呪いだった。その結果が犠牲者数の記録だ。だがアイは成長し人々と出会うことで克服。iは数学の仮の数字ではなく私という個であることと思えるようになり数の記録を止める
▼マスコミの一人として数字情報を重視してきた。3・11の犠牲者数の多さは惨劇を語る重要な1ファクターとして、離れた地域に暮らす人にも未来の人にも惨禍が伝わりやすい。アイが見つけたのは、数字ではなく離れた地域の一人ひとりを思うこと。想像し痛みを感じること
▼熊本地震が始まったのは1年前。3・11の人を思うように熊本の人を思う想像力を働かせたい。

 2017年  4月  13日 ― 詐欺見抜く目を啓発 ―
 老齢者などから大金をだまし取る特殊詐欺は、今も全国各地に出没している
▼岩手も昨年は件数が統計開始以来最多の110件、被害額も1億9910万円に上る。県警はじめ各自治体も地域組織も金融機関も知恵を絞り、防止を呼び掛け続けているが、許しがたい犯行が静まる気配はない。今年も3月までに18件で989万円の被害が確認されている
▼さらに今月も6日には大船渡市の70代の女性が、現金1千万円をだまし取られる事件が起きている。女性宅に電話をした弁護士を名乗る男は「息子さんが東京で犯罪に関わり、弁済金として1千万円を私が立て替えている」と言ったという
▼女性は驚き慌て「息子に確認」という基本など飛んでしまう。男は追い打ちを掛けるように「JR一ノ関駅に現金1千万円を持参するように」と指示。女性は言われるままに現金を用意し紙袋に入れ一ノ関駅に行き、指定場所に現れた弁護士事務所関係者を名乗る男に手渡す
▼翌日、何も知らない息子から電話があり詐欺だったことに気付く。電話段階で見抜くよう啓発は急務だ。県警は今年も委託したプロの担当者が県民に電話で手口や注意事項などを直接語り掛ける「特殊詐欺被害防止広報センター」を今月10日から運用している
▼地域でも高齢者への啓発に取り組もう。

 2017年  4月  12日 ― 寺山修司の石川啄木 ―
 昭和の奇才・寺山修司は60〜70年代サブカルチャーを代表する1人。劇団天井桟敷の実験的な芝居は他者ではできない寺山ワールドをつくり出していた。劇団のイメージが強烈だが、青森での中学時代から文学にのめり込み、俳句、短歌、詩、エッセーなど生涯の文筆分野は広範囲にわたった
▼公営競馬出身のオグリキャップが中央競馬で活躍しファン層が拡大していく以前、競馬を愛する寺山は多くの競馬エッセーを残している。その頃の日本の競馬場には大歓声と手拍子で揺らす雰囲気はなく、ギャンブル好きや陰のありそうな人々の多く集まる場所だった。そのため競馬エッセーにはホステスや板前、あるいは日の当たらない仕事や場末の男女が登場し、かげりある世界が魅力となっていた
▼一方で著書名となった「書を捨てよ、町に出よう」に表れているように多感な万年少年ともいえた寺山。若者の文学的才能の開花にも助力し、若者のカリスマ的な存在でもあった
▼時代を超え若者に愛読される石川啄木を詠んだ寺山の句「便所より青空見えて啄木忌」を初見した時は衝撃を覚えた。早世の啄木もまたどこか大人になりきれなかったようだが、啄木の薄幸な私生活を思う時、競馬エッセーの人物と同様、寺山はシンパシーを感じていたに違いない。あすは啄木忌。

 2017年  4月  11日 ― 原発に警戒の目 ―
 期待されてきた原子力発電も近年は警戒の目を注がれる。3・11福島原発事故が放射能汚染の怖さを露呈したからだ
▼特に相馬市で38頭の乳牛を飼う54歳の男性の自死は、衝撃を広げ反原発の世論を高めた。彼は発災前年末に堆肥も売ろうと堆肥舎を新築。年明け後も準備を重ねていた時に原発事故が発生。直後に汚染により原乳出荷が停止となる
▼原乳を捨てる日が1カ月続き、事業拡大を期した堆肥までが汚染のうわさで売れない。絶望した彼は命を絶つ。フィリピン生まれの妻が子らの汚染を恐れ、6歳と5歳の男児を連れ故国に避難していた時だ。堆肥舎の壁に白いチョークで書いた遺言があった
▼妻と子に「ごめんなさい」とわび酪農仲間などに別れの言葉を残し「原発さえなければ」とも書く。この悲憤の一言は人々の原発への幻想を覚ましていく。だが今も原発擁護の動きがある。先ごろは気になる司法の判断もあった
▼福井県高浜原発3、4号機は昨年3月に大津地裁が、住民の訴えに応え福島事故を前提に運転差し止めの判決を下し稼働中の原発を止めた。だが1年後の先日、大阪高裁は絶対安全の根拠も示さず、懸念される大揺れは「ほぼあり得ない」と危険性をぼかした表現で地裁判定を覆した
▼この奇妙な判決で原発2基は今月下旬に再稼働するという。

 2017年  4月  9日 ― 東ローマ帝国とアメリカ ―
 盛岡市山岸の薬師社脇遺跡からローマガラスが発見された。5世紀後半の遺跡で、東ローマ帝国領の地中海のガラスというから、まさにシルクロードのロマンだが今、爆撃のシリアかもしれない。
▼東ローマ帝国に発祥するロシア正教は世界に広がり、高松の池のほとりにハリストス正教会がある。岩大で教授を務めた福井正明さんは、東ローマを舞台にした小説「モザイク画の女たち」を書いた。その本を読むと実に不思議な国であった。
▼西ローマ帝国滅亡後の欧州は都市文明が消え、暗黒時代に転落したと思われている。しかし東ローマ帝国はユスチニアヌス帝時代の6世紀、再び地中海全体を征服し、世界帝国によみがえった。その後また衰え、領土は縮小し約1千年続いて滅亡した。
▼こんなことから、西洋史にひとつの法則を見る説がある。大国が凋落し始め、「もうだめか」と思っていると、一時的な回復期がやってくる。「やっぱりさすがだ」と感心させるが、それが終わったとき、底なしの衰退が始まるという。スペイン、ポルトガル、蘭英仏も。
▼ソ連が崩壊し、米国一強時代が約30年続いたが、それが次の「底なし」の序曲だったとしたら…受験勉強で東ローマ帝国滅亡は1453年「石とごみ」でした。今はとりあえず、盛岡の発掘の話にしておきましょう。

 2017年  4月  8日 ― 歓送迎会を詠む川柳 ―
 職場の歓送迎会シーズンがまだ続く。別れを惜しむ送別会。歓迎会は新採用者を祝い出会いを喜び合う
▼毎年、この歓送迎会をテーマに川柳を公募している会社がある。首都圏や大阪などで「手羽先唐揚専門店・鳥良」を展開するSFPダイニング社だ。今年も3月1日から2週間の公募で、28日には受賞作品を発表している。送別関連優秀作品では送られる側の句が目立つ
▼昭和生まれの人が「平成が昭和を送る送別会」と互いの立ち位置を詠んだ句もある。70歳の人は「時の言葉」にもなったアニメ映画の題名を巧みに使う。「君の名は?覚えぬうちに送別会」と。年だなあ、というおかしみがにじむ。「あゝ無情デキる人から辞めていく」は33歳の送る側の嘆きである
▼歓迎宴関連では「注文をインスタ映えで選ぶ部下」が、全応募句中の最高賞である金賞を受けた。インスタはインスタグラムの略で、スマホから投稿できるネットの写真共有サービスだ。新人は注文料理を投稿仲間に見せたくて、味より見栄えを基準にカメラを向ける。30歳、先輩の句だ
▼銀賞句も63歳の目が光る。「新世代会費と敬意はらわない」と。優秀作にも「宴会は残業なのかと聞く新人」と57歳の上司が慨嘆する句がある。川柳は老いの課題にも若さの未熟にも容赦なく迫る。それがまた面白い。

 2017年  4月  7日 ― ファーストレディーの「仕事」 ―
 今は安倍首相の昭恵夫人が旬だが、史上最も有名なファーストレディーは米国のジョン・F・ケネディー元大統領のジャクリーン夫人というのには多くの方の賛意が得られるかと思う。彼女がこれほどまで有名になったのは、残念にも暗殺された現役大統領の妻で惨劇を最も近くで経験し、映像がテレビ中継されたことだった
▼彼女を取り上げた映画「ジャッキー」では暗殺から数日間が描かれる。そこには「もうファーストレディーじゃないわ」と言いつつ志半ばに凶弾にたおれた夫を大統領として名を残すため最善策を求めて最後の「仕事」に忙殺される姿が描かれる
▼象徴的なのはリンカーンの葬儀資料を取り寄せ、沿道を国民が埋める中、ひつぎに伴い国賓と一緒に歩いてホワイトハウスと大統領府を往復した先例を選択したこと。反対も多かったがファーストレディーへの忖度(そんたく)を覚えないでもない。現職中から華があったが、この数日間がジャクリーン夫人までも語り継がれる存在に押し上げた
▼暗殺から1週間後に訪ねてきた新聞記者は「あなたはすべての中心にいた。客観的には語れない」と彼女に立場を説く。自身も人が「ファーストレディーのすべてに注目していた」と、公人への自覚が浮かぶ。公人だからこそ私事さえ語る仕事もありはしないか。

 2017年  4月  6日 ― 効力喪失の教育勅語 ―
 森友学園騒動で浮上した「教育勅語」は、1890(明治23)年に発布された天皇を絶対と仰ぐ時代の教育理念だ
▼「勅語」とあるように内容は天皇が語る形でつづられ署名捺印もされている。前段では親孝行や人への博愛などに励み徳を磨くよう教え諭す。その上で危急(戦争)の事態には勇敢に国に奉仕し、連綿と続く皇室を助けなさいと命じている
▼大戦後に制定された現行憲法の第98条には、憲法は国の最高法規でありその条項に反する法律、命令、詔勅などは効力を失うと明記している。「教育勅語」は失効対象の「詔勅」に該当する。そのため1948年に衆参両院は「教育勅語」の排除・失効確認を議決している
▼菅官房長官は3日の記者会見で「効力は喪失」と述べたが「唯一根本の指導」は不適切だが適切な配慮の下に教材として用いることは問題ないと語っている。「親を大切に」などもあるからと例示したが歯切れが悪い
▼日常に戒め合う親孝行問題になぜ「勅語」を用いるのか。固執する背景がほかにあるのではないか。「勅語」は天皇を象徴とする現憲法下では錯誤も甚だしい。もしや戦前回帰色が濃い安倍総理が3期9年の任期を想定。憲法改正で「勅語」復活を狙っているのだろうか
▼そうなら昭恵夫人が右傾化学園を称賛したことにも符号する。

 2017年  4月  5日 ― 朴前大統領の逮捕 ―
 青森県の南部と津軽ほどではないが、岩手県にも伊達と南部の対立がある。東京の人に、「まだそんなことやってんの」とあきれられるが、韓国はもっとすごい。いまだ高句麗(北朝鮮)、新羅と百済(韓国の与野党)の風土で争っているというのだ。
▼取り巻きがらみの事件で、朴前大統領がついに逮捕された。側近に謀殺された父親の朴正煕以来、韓国の大統領の多くが、疑獄の中で悲惨な末路をたどっている。韓国初の女性元首も、そのわなを逃れることはできなかった。
▼古来から日本国内は戦乱に明け暮れ、閉じられた世界で政治、経済、技術、文化がゆっくり発達してきた。しかし朝鮮半島は歴代王朝がそれなりの国をつくっても中国や北方民族が常に侵略し、ぶちこわしにする。南からは日本も。経済や技術はわが国ほど発展するいとまがなく、地政学上は気の毒な位置にある。
▼その代わり「党争」という権謀術数の政治文化だけが、異様に栄えた。北朝鮮の金一族の争いもそうだ。時代劇なら、悪奉行と悪徳商人が「おぬしもワルよのう」と含み笑いして、印籠が出てくるくらいの日本より、韓流が断然面白いのはそのせいだ。
▼しかしもう21世紀。高句麗はもとより、新羅と百済の争いもほどほどに。大統領、あんまりシラ切ってくだらないことになった。

 2017年  4月  4日 ― 寂しいマッチの衰退 ―
 今春の彼岸に墓参をした時も、当然のようにろうそくに百円ライターで火を付けた。同行の年配者が「昔はマッチだったなあ」と感慨深そうに言う
▼それがきっかけで帰路の車中でも、戦後しばらく続くマッチ着火の思い出話に花が咲く。電気炊飯器もガスレンジもなくご飯を炊きみそ汁を作るのも、風呂を沸かすのも燃料は薪だった。かまどや風呂釜に枯れ葉などを添えた薪を入れ、着火させるためにマッチは欠かせなかった、と
▼細く短い軸の先端に発火性のある頭薬を付けたマッチ。これを英国の化学者が世界で初めて考案したのは1827年だ。そこから欧米各国でも研究開発が進み、特にマッチに適した軟らかい木材に恵まれたスウェーデンは、自国の関連諸発明もあってマッチ生産大国になっていく
▼日本ではフランス留学者の清水誠が1875(明治8)年に、元老院議官でマッチ国産提唱者の吉井友実の支援を受けマッチ製造を開始。事業は成功する。大手各社も後続し日本はアジア地域などへも輸出。スウェーデン、米国と並び世界三大生産国となる
▼ところが製造開始から142年が経過した先月31日、最大手の兼松日産農林が製造販売から撤退した。簡便な使い捨てライターの普及で需要が激減。新旧流転の定めだし当方も移り気の一人だがなぜか寂しい。

 2017年  4月  3日 ― いわて国体に寄せた陛下の御製 ―
 「大いなる災害受けし岩手県に人ら集ひて国体開く」。昨年10月の希望郷いわて国体総合開会式に皇后さまとご臨席なさった天皇陛下が詠まれた御製の記念碑が、式典会場となった北上総合運動公園に建立、3月14日に序幕された
▼両陛下は異例の長期滞在となり、東日本大震災で特に甚大な被害を受け復旧・復興途上の三陸沿岸などをお訪ねになり、被災地をはじめ県民には多くの勇気や元気となった。両陛下のご様子のみならず、迎える県民の喜びの表情が今も忘れられない
▼発災から6年以上経過し風化を痛感することが多くなった。しかし、災害と国体が並立する陛下の御製に触れるとき困難と逆境の中で開催した県民へのねぎらいや長く人々に継承させようとするお心遣いを感じる。震災ではなく災害の言葉を選ばれたのは、直前の8月に岩手を襲った台風10号をも含んだ深甚さの表れに他ならない
▼大震災からの復旧・復興を除けば、いわて国体・大会は16年度の岩手にとって最大の事業だった。3月23日の大会実行委員会は事実上の解散総会で、国体・大会のレガシー(遺産)を未来に!と宣言された。ここには復興への決意も示された
▼両陛下には着実に復興している様子をご覧いただけたが、この決意が届き力強い歩みを見守っていただけることを願う。

 2017年  4月  2日 ― 福島原発事故現地の桜花 ―
 今春も福島第一原発事故の現場にも、桜の開花シーズンが到来する
▼放射能汚染で避難を強いられた地域にも桜の名所がある。昨日、避難指示が解除された富岡町にも「桜のトンネル」と呼ばれる「桜並木」がある。原発事故以前は満開の桜の並木が、文字通りトンネルと化す光景に魅了されて、県内外から多くの花見客が訪れていた
▼だが富岡町は福島原発に近い。事故後は放射能汚染に追われ町民は遠方に避難。花見客も近寄らない。その6年間の空白を経て避難が解除され町民が帰りつつある。今、花はつぼみを膨らませ桜並木は昨日から、7年ぶりにライトアップされている。待ちわびた県外客も安心して再訪するだろう
▼現地のお花見といえば文字通りの現場である福島第一原発構内にも、事故以前にはおよそ1200本の桜があり、満開時には地域の住民を招き社員がもてなす「お花見会」を開いた歴史がある。桜花の隠れた名所だったのだが、事故後は花見どころではなくなる
▼日々発生する汚染水用タンクを設置するため、桜は原発入り口からの並木など約400本を残しほかは全て伐採。そこにタンクを千基も置いたのだ。タンクは今も増え続けている。桜をめでる楽しみも奪う原発事故の罪深さを思う一方で、命がけで廃炉作業を担う人たちには頭が下がる。

 2017年  4月  1日 ― 日英の戦争責任 ―
 EU離脱で注目の英国。盛岡市の駒井修さんは太平洋戦争後に戦犯で処刑された父を語り継ぎ、遺族として英国との和解に尽くした。先頃、滝沢市で日英の戦争責任のドキュメンタリーが上映され、駒井さんが講演した。
▼この手の話をある英国人としたとき、「われわれは米国にも、わだかまりがある」と明かされた。連合国側にも勝ち組と負け組があり、英国は後者だというのだ。強大な日本軍の前に、既に国力衰えていた英国とオランダは総崩れになり、フランスは戦わずして降った。
▼それを見た米国は「助けに行こう」と言いながら、実はほくそ笑んでいたのではと、欧州には陰謀史観があるという。「日本が邪魔な3人の先輩をうまく片付けてくれた。そのあと日本を倒せばアジアはそっくり手の内だ」。米国は日本を斬った剣で、英国を後ろから刺したのではと。
▼史実はそれほど単純な筋書きで運ばなかったが、ときに同盟国が敵国以上に危険な存在になる外交のジレンマは、枢軸国側も同じだった。現在の日米同盟、中国と北朝鮮の血盟、ロシアと両陣営の関係なども、歴史の苦い教訓をくみとらねば。
▼駒井さんは英国で父を戦犯に問うた元将校を訪ねて話し合い、困難な贖罪に半生を捧げた。国家の論理を離れた一個人として、英断を見習いたい。

2017年 3月の天窓へ