2017年 7月の天窓


 2017年  7月  22日  ― 夏の甲子園まであと1勝 ―
 高校野球岩手大会はきょう盛岡大附と久慈の間で決勝が行われる。今年は8強入りの私学が1校だけと、近年の大会ではあまり見られなかった公立の上位進出が目に付いた。その中で盛岡大附は第1シードにたがわぬ力で決勝まで勝ち上がった。一方の久慈は11年の盛岡三以来6年ぶりの公立高進出。勝った方が夏の甲子園行きの切符を手にする
▼高校野球は近年、岩手に限らず野球王国と呼ばれた地方以外にも全国で戦える強豪校が育ち勢力図は流動的。野球一筋に懸ける15歳の少年が生まれ育った土地を離れ単身で遠方の強豪校に進学する。そんな強豪校への批判も聞くが、彼らの覚悟をくみ取りたいと思う
▼一方で例年初戦敗退の学校もある。須賀しのぶさんの小説「エースナンバー 雲は湧き、光あふれて」は弱小公立高で高校野球経験ゼロで就任した監督が「うちは甲子園を目指すようなチームではない」と分析しながら「せめて夏には、(県大会で)一勝ぐらいさせてあげたい」と願う。ところがいつの間にか部員の中に甲子園に行きたい気持ちが強まる
▼選手なら誰しも甲子園に憧れる。そこから信念を持って本気で臨めるかで憧れから脱皮する。甲子園まであと1勝。決勝進出校はさらに行きたい思いが強くなっているはず。信念と本気度の戦いにも注目したい。
  

 2017年  7月  21日  ― お〜いお茶新俳句大賞 ―
 お茶の伊藤園が主催し広い世代から俳句を公募する「お〜いお茶新俳句大賞」が盛況だ
▼芭蕉が奥の細道へ出発してから300年目の平成元年に公募を開始。以来毎年恒例の催事として進展し昨年11月から今年2月までの応募作を対象とする第28回コンテストには、海外も含め187万3374句が寄せられ過去最多を記録。今月初旬には各部門賞など入賞2000句を発表した
▼最高賞の文科大臣賞を射止めたのは東京の女子中学生で14歳の宮下青生さんだ。夏のキャンプで飲み物を忘れた友に水筒を貸した時の光景を詠む。「水筒を垂直にして飲んだ夏」と。天を仰ぎ水筒を垂直にしゴクゴクと飲む友。私の分がなくなるという焦りが伝わってくる
▼愛知の42歳の男性は「汐干狩家族平行四辺形」と一家4人の海辺の立ち位置を面白く詠み一般の部大賞に輝く。ここで都道府県賞を受けた岩手の5人の句を紹介しておく
▼「ファッションショー紅葉した木がきどってる」(川畑美紗希さん14歳)。「満月が僕に突き刺す光の矢」(三条琉月君14歳)。「秋の色レンズをのぞけば見えてくる」(松田響さん17歳)。「縁側の障子の穴から子の笑顔」(菊地美穂さん22歳)。「折り鶴の折り目の数だけ子が笑う」(奥寺英文さん31歳)
▼川柳風もあるが若い世代の感性の練磨に期待しよう。

 2017年  7月  20日  ― 安倍と鴎外 ―
 連載のため安倍総理の曾祖父の本堂恒次郎の人物像を調べ、明治までの住まいを探したら、そこは自民党県連の近所だった。軍医の本堂の上官は陸軍軍人としての森鴎外だったとか、縁は実に異なものだ。
▼鴎外は「栗山大膳」執筆の前に、盛岡を訪れたことがある。代表作「阿部一族」は江戸時代の九州肥後が舞台。「阿部」の字の違いはともかく、逆命のかどで討ち死にする武士の姿は、平安の前九年の史話とどこか重なる。鴎外も一度は盛岡の水を飲んだ以上、部下の本堂と「もりおかいいとこ」と話したろう。作品の着想に何かあったかも。
▼総理と安倍宗任の縁もよく聞かれる。ほこを交えた源義家は、神様にもまつられる名将だ。10年ごしの好敵手に、なにがしか感じるものがあったのか、貞任は討ち、降った弟の宗任は許し、伊予、今の愛媛県に流した。
▼あとは千年近く前の話で、はっきりしたことは分からない。ただ九州と山口県には安倍姓が大勢いて、総理もその1人であることは確か。時代は下り、安倍家や岸家と因縁のある東条英機は、母親と妻が北九州あたりの出身。日本列島の人脈は、あちこち意外な地下茎でこんがらがってる。
▼安倍家の過去をさかのぼれば、森さんと友達だったり、話が愛媛県に飛んだりして、昔からいろいろあるんだなと。

 2017年  7月  19日  ― 老人会で夏の歌楽しむ ―
 「海の日」の祝日に地元町内では「老人の集い」を催した
▼今回は町内で中学生らにピアノ演奏やコーラスを教える音楽教室経営者が協力。「夏の歌を楽しむ集い」と銘打つ老人会となった。会場の公民館にはピアノを運びその演奏と司会を兼ねる女性教師と、コーラスをする中学生ら15人が勢ぞろいし高齢者を出迎えた
▼冒頭に司会者が夏の歌を楽しむという趣旨を説明。「きょうは『海の日』ですから懐かしい海の歌から始めます。分かる方はどうぞご一緒に歌ってください」と言いピアノに向かう。奏でる前奏に耳を傾ける会場から「お、それ歌える」という声が飛び交う
▼「♪海は広いな大きいな」と歌う少年少女のコーラスに重ね、多くの高齢者が「月がのぼるし日が沈む」と歌い継ぐ。遠い昔が胸によみがえるのか、そこここで涙を光らせる人がいる。「ささの葉さらさらのきばに揺れる」と歌う「たなばたさま」も場内を懐旧の情で包む
▼八幡平市にある母の実家で幼少期を過ごした作詞家江間章子さんの代表作「夏の思い出」は、「夏がくれば思い出すはるかな尾瀬遠い空」と始まる。この歌も反響があり「尾瀬に行き歌いながら木道を歩いたよ」などと数人が思い出を語った
▼「花火」「ほたるこい」など計8曲だったが皆さんが喜び秋の敬老期開催も決まった。

 2017年  7月  17日  ― 核兵器廃絶へ前進したか  ―
 72年前の7月17日、米英ソ三国首脳が第二次世界大戦の戦後処理を話し合う会談が始まった。ベルリン郊外のポツダム会談で、日本に対する無条件降伏勧告と戦後処理構想も決められる
▼同日、トルーマン米大統領らに伝えられたのは米の原爆実験成功。大統領が国外にいた同時期の米国では、かつて原爆開発を大統領に進言したシラードらの科学者が日本への原爆投下に反対する嘆願書を軍に出したが塩漬けされ、人類最初の原爆が広島に、続いて長崎にと投下された。嘆願書が大統領に届いていたとしても、開発に巨費を投じて実験に成功した原爆の実戦投下を思いとどまれなかっただろう
▼核拡散防止条約(NPT)とは異なる核兵器禁止条約が7日、国連本部で開かれていた交渉会議で採択された。122カ国・地域が賛成、1カ国が反対の賛成多数という結果。9月から署名が始まり50カ国の批准手続きから90日後に発効する。100カ国以上が批准する見通しだが、米ロはじめ核保有国などは不参加が確実
▼採択には戦争被爆者の働きも大きかった。唯一の戦争被爆国と強調する日本政府は米の核抑止力の下、国連大使が署名を否定し初日以外の交渉に参加せず。被爆国と被爆者の違いが表れた。拡散防止と禁止とは大きく違う。防止は使用を全面否定しない。

 2017年  7月  16日  ― 閉会中審査疑惑解明に期待 ―
 安倍総理は「来月早々に人心を一新する」と語った
▼「人心」は辞書では「人の心、民衆の心」などと説明しているが、総理は時期も限定しているのでここでは、一部大臣を入れ替える内閣改造や党役員人事の実施を示唆したのだろう。広く国民の気分刷新になればいいが、既に続落する内閣支持率に人心は反映しているのかもしれない
▼総理は森友や加計問題をめぐる疑念には、国会でも丁寧に説明すると言いながら、先の閉会中審査には外遊を優先して欠席。帰国後に世論の不信を感じたのか、野党の求めに応じ衆院予算委員会閉会中審査への出席を約束した。真相の解明に期待したい
▼疑獄かとの声も出る加計問題に対し森友はあらぬ方向へ展開していく。森友は当初価格から8億円超も安く国有地を買収。その後、世論の目は値を下げた側に向き追及された財務省理財局長は「資料は破棄し面会記録もない」などと答弁
▼真相は闇の中で巨額値下げの血税浪費に人々の憤慨が高まる。その渦中の今月5日には無責任にも見えたその局長が国税庁長官に昇進。怒りは森友を超え政府に向かう。総理は審査でこの人事も問われよう
▼加計の獣医学部新設に尽力した内閣の官僚が、加計の要職に就いている癒着の構造も論及されよう。総理からは人心を一新させる回答がほしい。

 2017年  7月  15日  ― 政治家も福祉で進退  ―
 県議の渡辺幸貫さんが任期途中の6月議会で引退した。6期の最古参で、22年前の工藤県政までを知る唯一の議員だった。家族の介護のため政治家を続けられなくなり、後ろ髪の思いで議席を去った。
▼この前は横田綾二さんと佐藤正春さんの武士道ならぬ「節道」を懐かしんだが、対照的に渡辺さんは弁舌爽やか、県議会きっての政策通だった。農政はじめ大局的な政見で討論し、県政に質疑を実らせた。地元選挙区で江刺市長選に転じようとして1期ブランクはあったが、「こうかんさん」の見識は、言論の場にあって貴重なものだった。
▼ショックだったのは議長を務めたベテランさえ、福祉上の困難で職務を続けられなくなったこと。県議だけでない。昨年は参院議員だった主浜了さんも、家族を介護するため続投を断念した。およそ政治家なら福祉を優先公約に挙げない人はないのに、議員自身暮らしが行き詰まるほど、高齢化社会の課題は深刻化しているのだ。
▼高知県大川村では高齢化で村議のなり手がなく、議会に代わり村総会を設置する動きにある。あまり遠くてよく分からぬが、身内の事情で議員などできぬ人も多いのでは。県内でも住田町議補選で立候補者がおらず、困ったという。
▼とりあえず渡辺さんの長年の労をねぎらいたい。好漢惜しむべし。

 2017年  7月  14日  ― 文豪らのラブレター ―
 30余年も前のことだが首都圏のある展示館で、文豪たちのラブレター展を見たことがある
▼本来は私的に秘匿(ひとく)すべきだが関係者も了承されたのだろう。原文のまま展示されていた。太宰治が恋人宛てに書いた「コヒシイ」と4文字だけの書状には、「日本一短いラブレター」とタイトルが付いていた。だが4文字以外に待ち合わせ駅名なども事務的に書き添えられていたことも思い出す
▼表現がリアルで面白くその場で覚えてしまったのは、芥川龍之介が後に妻に迎える橋本文に宛てた恋文の次のくだりである。「この頃ボクは文ちゃんがお菓子なら、頭から食べてしまいたい位可愛い気がします。嘘じゃありません」―。こう書いた人も愛妻を残し「ぼんやりした不安」を理由に自死している
▼夏目漱石は国派遣留学先のロンドンから鏡子夫人に「俺のような不人情な者でもしきりにお前が恋しい」と無骨なラブレターを贈っている。ところで文豪ではなく時代もさかのぼるが豊臣秀吉が、側室の茶々に宛てた愛情込めた書状が発見されたことにも触れておく
▼昨年兵庫の民家から見付かった書状で、過日専門家が真筆と判定。今秋10月に一般公開される。文面では茶々の高熱平癒を喜んだ秀吉が、サンマも用意したので食事をしっかり取るようにといたわっている。

 2017年  7月  13日  ― 災害対策は最善の努力を ―
 「さよならと梅雨の車窓に指で書く」。終戦の翌年に40歳で没した長谷川素逝が詠んだのは、どんな別れの情景だったのか。岩手のような気候なら梅雨を雪と置き換えてもよさそうだ
▼しかし、さよならしたいのは梅雨のしとしと降る長雨ではなく、九州や中国地方を襲ったような豪雨だ。異常気象なる言葉が飛ぶが、もはや異常とはいえなくなったのではないか。昨年の台風10号被害も生々しい記憶の本県ゆえに、今年は豪雨被害のないことを祈っていたが起きてしまった。尊い人命も失われている。梅雨前線が日本列島に居座り、予断を許さない。被害のあった地域では二次災害の心配もある
▼素逝のいう車窓とは列車の窓だろう。マイカー中心の現代でも自動車には無理がある。バスは許容範囲かもしれないが、大型バスでは目線に差がありすぎる
▼JR山田線は東日本大震災で沿岸部の施設が流され、15年には土砂崩れ、昨年の台風でも被災した。今も復旧途上で区間運転が続いている。三陸鉄道への移管区間を除く盛岡〜宮古間は10月の全線運行を目指して復旧工事が進む
▼異常ではないと思考を切り替えて、過去の被害を越える規模を想定して防災対策を練り直すことも必要ではなかろうか。災害でさよならを言えぬまま家族と永遠の別れとなる悲しみは欲しくない。

 2017年  7月  12日  ― 岩手発の「黄色い羽根」 ―
 街でも「黄色い羽根」を胸に付けている人がいる。「あれは何だろう」との声も聞く。毎年7月実施で現在も続く「社会を明るくする運動」は1950年に始まったが、「黄色い羽根」はこの運動で6年前からシンボルとして用いられている
▼運動の原型は戦災孤児があふれ犯罪や非行が激増した敗戦直後の街から起きた。国も対処法として49年7月に「犯罪者予防更生法」を施行する。これを機に同じ意識を持つ東京銀座の商店街有志も、新法施行記念行事を催すなど活動の輪を広げていく
▼《皆で協力して犯罪や非行を防ごう。罪を犯した人も温かく支え立ち直らせよう》と合言葉のように目的を確かめ合う人たちもいたが、当時はまだ昭和20年代で運動の草創期である。平成23年の「黄色い羽根」との出会いははるかな未来だ
▼それに比べ岩手は「黄色い羽根」活用の先駆者なのだが痛ましい背景がある。昭和30年5月に県南のY小学校6年生の修学旅行バスが帰路の国道で運転を誤り橋を突き破り転落。児童や付き添い保護者ら12人が落命する
▼当時の県交通安全協会長が慰霊後に、交通安全に役立つ手軽なシンボルを作ろうと提案。そこから「黄色い羽根」が誕生。現在も県内では春・秋全国交通安全運動で計5万枚を配布。先述の運動をはじめ全国にも普及している。

 2017年  7月  11日  ― 南部の殿様を知ろう ―
 盛岡築城420年特集で、最近の子どもは南部の殿さまをさっぱり知らぬと嘆かわしい話を聞いた。
▼戦国や江戸時代はあまり分からないので、偉そうに言えないが、少なくとも自分が小学生の昭和50年頃は、授業で「南部藩は信直、盛岡は利直が作った」とだけは覚えさせられた。
▼次に子ども向けの歴史の本で、伊達政宗の話を読む。独眼竜、支倉常長、大航海とけんらんたるドラマだ。仙台にはこんな面白い話があるのに、盛岡には何でと、ちと寂しい思いもしたが、それこそ子どもの浅知恵というもの。南部の波乱も諸大名の中で実に興味深く、大きな教訓をくみ取れる。
▼歴史好きの子なら信玄、謙信、信長、秀吉、家康などビッグネームに夢中になるのはよろしい。ただそればかりではなく、次は各地を固める諸侯に目を向けよう。全国どこでも、うちとこの殿さまは2軍3軍だからみたいに卑下していたら、郷土愛は育たない。
▼せっかく達増知事が「コミックいわて」と言っているから、信直と九戸政実、方長老と栗山大膳、三閉伊一揆、戊辰の楢山佐渡や宮古湾海戦まで、南部の歴史教育漫画を誰か描かないものか。伊達側と平泉も入れて古代中世、近現代を前後に含めば、立派な劇画岩手史の出来上がり。それこそ盛岡ファース殿、考え方でよきにはからえば。

 2017年  7月  10日  ― 加計問題真相解明を ―
 「公平・中立・簡素」は政府が掲げる税金の集め方と使い方の三原則だ。特に血税の使い方については簡素で分かりやすいことは当然だが、私情を介在させて不公平にしたり特定の人や事業所を厚遇し、中立を欠くことなどはあってはならない
▼きょう10日には国会で閉会中審査が行われる。ここでは前国会で森友学園に次いで、安倍総理が「腹心の友」と呼ぶ人物が理事長を務める加計学園に、四国今治市に建設する獣医学部新設大学の経営を託す形となった問題が論議の焦点になろう
▼総理は関与を否定するがこの事案を主導した内閣幹部が、加計が経営する大学の要職に就いた事実もあり、総理の公私混同や癒着が疑惑を深めている。それが自民党の都議選惨敗の一因ともされているから深刻だ
▼総理は外遊で欠席だが参考人として出席する前川喜平前文科事務次官との、真相に迫る論及に期待したい。総理が疑惑の的とは残念だが自業自得かもしれない。言い古された格言を思う。中国の古典「古楽府」にある「君子行(上に立つ人の振る舞い)」への訓戒だ
▼「瓜(か)田に履(くつ)をいれず李下(りか)に冠を正さず」と。ウリ畑に足を入れスモモ(李)の木の下で冠のズレを直すと盗みと疑われる。指導者は疑惑を招く行為はするなと諭す古くて新しい格言である。

 2017年  7月  9日  ― 「問題ない」はノープロブレム? ―
 ジャズ・ピアニストのデューク・ジョーダンは優れた楽曲を残した。仏映画「危険な関係」でヒットした「ノー・プロブレム」も代表作の一つだが映画に彼のクレジットが出ないばかりか別人の作曲とされた。ノー・プロブレムの直訳は問題ないだが、ミスした仲間を「大丈夫」の意味で励ます際も使われる
▼一時期不遇だった彼には大問題で、後年には自作の曲として公式アルバムに吹き込んだ。今ではジャズ・ファンに彼の作品と認知されている
▼この「問題ない」を今年は頻繁に見聞きする。安倍内閣を支え続ける菅官房長官の記者会見だ。森友学園や加計学園、閣僚の発言や疑惑報道など、マスコミの質問に「まったく問題ない」と追加質問を断ち切るような対応を繰り返してきた。首相側近としての官房長官は隙を見せないのが重要な役回りとは理解する。歴代内閣でも首相が口を滑らせ、官房長官が冷静に火消しを図ることは何度もあった
▼ところが「問題ない」の心象は、不誠実と感じる視聴者もいてマイナス面もある。その後に事が発展して発言が否定されるような事態になることも見受けられた。その可能性を承知で言い続ける責任感と覚悟があるためか
▼ジョーダンは自作自演で印税も得たが、映画サントラでは印税収入がなく、うやむやにされて損を被った。

 2017年  7月  8日  ― 男児と強く生きる俵万智さん ―
 近所に大人たちからクイズ魔と言われる愉快な高2の少年がいる
▼一昨日は拙宅に来た。彼は「クイズですがきょう7月6日は何の日でしょうか」と問う。今風のひねりがあるなと感じ、彼からそれを聞こうと「頭が堅くて浮かばないよ」と早々に降参。彼は勝ち誇るように「正解は『サラダ記念日』なんです」と言う
▼当方は「やられた」と大笑いし「『この味がいいね』と君が言ったから七月六日はサラダ記念日」と俵万智さん作の有名な一首を暗唱。これをクイズにする着想に感心しつつ将棋の敗者をまね「負けました」と頭を下げた
▼俵さんが1987年に河出書房新社から出版した第一歌集の題名も「サラダ記念日」だ。ところでシングルマザーの道を選んだ俵さんは3・11大震災当時は7歳の男児と仙台で居住。福島原発事故の放射能汚染を恐れた彼女は、愛児を連れて西へ向かい沖縄の石垣島へ移住する
▼その逃避行も「子を連れて西へ西へと逃げてゆく愚かな母と言うならば言え」と詠む。「危ないことしていないかと子を見れば危ないことしかしておらぬなり」と子もおおらかに育つ。これらを収めた第五歌集の「オレがマリオ」(文藝春秋13年刊)も男児の父らしき人にも触れ読み応えがある
▼俵さんは牧水短歌甲子園審査員で今は開催地宮崎県に住んでいる。  

 2017年  7月  7日  ― 「よど号」からICBM ―
 親は県人にあらず、もう係累はおらぬようだが、1970年の「よど号」事件で主犯格の赤軍派の田宮高麿は岩手に生まれ、盛岡に育ち、平壌で95年客死した。
▼ハイジャックが成功して人質を解放する際、「風蕭々トシテ易水寒シ、壮士ヒトタビ去ッテマタ還ラズ」と、日本刀を手にうなったという。「史記」の「刺客列伝」にある荊軻(けいか)の故事で、始皇帝暗殺に赴く悲壮を気取った。
▼北朝鮮がICBMの実験に成功した。欧米を射程に収める大陸間弾道弾。テレビの軍事パレードに映る陸海空の兵器はポンコツなのにミサイルだけは、日本の技術力をあざ笑う。米国を倒そうと高楊枝のやせ我慢で、あい口を研ぐ妄執なのか。
▼荊軻はすんでのところで始皇帝を倒せず、討たれた。刺客に差し向けた燕の国は今の北朝鮮のそばにあり、始皇帝の報復に滅んだ。このままでは北も同じ運命だろうが、核で日本も道連れになるのはご免こうむる。1万`飛翔するICBMは現代の万里の長城。人類を破滅させるだけなら、防衛に役立たぬ無用の長物だ。
▼長城を築いた始皇帝の秦は「焚書坑儒」の圧政がもとで短命に終わった。金正恩に手を焼く米中まで、秦にならうべからず。ここは日韓ロとも呉越同舟で、北のはた迷惑を何とかせねば。先哲の知恵でも、拝借したい。

 2017年  7月  6日  ― 「こんな人たち」と見下す総理 ―
 先の都議選で安倍総理が最終日に、秋葉原で実施した街頭演説が波紋を呼んでいる
▼既報の通り聴衆からは「うそつきィ!」「安倍辞めろ!」などと罵声が飛び、「帰れ!帰れ!」のコールがうねり寄せる。国会でも野党の野次に感情を高ぶらせ、野次で応酬してしまう安倍さんは、ここでも強い語調で切り返したのだ。問題化しているのはそのせりふである
▼総理は野次やコールに激高して「憎悪や誹謗(ひぼう)中傷からは何も生まれない!」と反撃。さらに野次を叫びコールを繰り返す人たちを指さし「こんな人たちに私たちは、負けるわけにはいかないのです」と、自身の立場を忘れ人を見下すようなせりふを言い放ったのだ
▼「こんな人たち」と指を向けた人たちも大切な国民である。なぜ「厳しいご指摘に感謝します。今後もご意見を聞かせてください」と言えないのか。自ら敵対感情をあおるなど情けない。選挙も「こんな人たち」を他党支持に追い込み総理が演説しても「私たち」は増えず惨敗をしている
▼韓国新任の文大統領は「私を支持しなかった人にも大切な国民として奉仕していきます」(趣旨)と宣誓したが見習うといい。総理は脱皮できるのか。国会閉会中審査を実施するというが、自民党は総理出席を拒否したという。まだ目を覚まさないらしい。

 2017年  7月  5日  ― 「都民ファ」のオクターブ ―
 東京都議選は小池知事の都民ファーストの会が圧勝し、政権に大打撃となった。1年前の都知事選で自民党の増田寛也氏を破った勢いはいや増し、小池旋風が安倍総理を脅かしている。勝負勘の鋭い政治家だ。都知事選の取材でドキリとさせられた。
▼品川駅前の街頭演説で、群衆に混じり取材していたのに、マイクを持った小池氏が、こちらをジーッとにらんでいる。その目は明らかに、「お前は増田側の人間か」と。女性に見詰められて悪い気はしないが、あのときは炎天下を走り回って汗だくの背筋が寒くなった。恐るべき勘だ。
▼しかし何のことはない。小池氏からは、こちらのプレス腕章の「盛岡」の2字だけ見えていたのだ。「タイムス」の方だけだったら、米国でも注目と思い、にっこりしてくれたかな。
▼豊洲移転や五輪問題で抵抗勢力を作り出し、黒白を付けようとする手法は小沢式にも小泉流にも映るが、ふたりより言語感覚は鋭い。キャスター経験に加え、アラビア語に堪能の異才のなせるわざだろう。
▼新聞見出しに「都民ファ」の略称が踊る。マスコミ出身だけに、これも計算づくなのか、「ドミファ」と聞こえる。音階で印象づける党は初耳。ただ「レ」がないのが気になる。女性らしくもうちょっと礼を尽くせば、さらにオクターブは上がるだろう。

 2017年  7月  4日  ― 都議選自民惨敗と総理の責務 ―
 地方にいても首都東京の動きは気になる。防衛、環境の大臣などを歴任した小池百合子氏が昨年7月の東京都知事選で圧勝。知事に就任した時も多くの県民が注目したことだろう
▼一昨日は小池知事体制下で初の都議選(定数127)投票があり、最大会派として君臨してきた自民党は、60人を擁立したが当選は過去最低の23人と大惨敗する。それに対して小池知事が率いる地域政党「都民ファーストの会」は50人を公認し49人が当選、快勝した
▼ほかに無所属など13人を推薦。その中から7人が当選。今後は「都民フ」系として小池知事に協調する公明党などと共に、総勢79人の勢力が小池都政を支えていくことになろう。「都民フ」メンバーの国政進出もささやかれている
▼ところで投票日の前日には安倍総理が、告示以来反発を恐れ避けてきた街頭演説をしている。場所は秋葉原駅前だ。やはり聴衆が浴びせたのは拍手の嵐ではなく、「うそつきィ!」「安倍辞めろ!」の罵声である。「帰れ!帰れ!」の激しいコールも続いた。
▼総理の親友が経営する加計学園への政治的厚遇など、罪深い癒着をしながら関与を否定した不誠実への怒りの爆発だろう。都議会自民を惨敗させた逆風を起こしたのは誰か。総理は都民の不信を招いたのは「私自身」だと猛省すべきであろう。

 2017年  7月  3日  ― 宗像・沖ノ島群の世界遺産審査 ―
 日露戦争の帰すうを決した日本海海戦の場となった玄界灘の周囲わずか4`の島が、日本時間で3日開幕のユネスコ世界遺産委員会で審議される。日本が提案した「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」の中核である沖ノ島(福岡県宗像市)だ
▼平泉の登録で記憶に残る諮問機関イコモスが構成資産のうち4件を除外し沖ノ島と周辺の岩礁の4件での登録を勧告した中、8件の一括登録がなるか
▼藤原新也さんの沖ノ島の写真集を開くと島の神秘性が伝わってくる。沖ノ島は島自体がご神体で4世紀から祭祀(さいし)が行われてきた。純金製の指輪やサザン朝ペルシャ伝来とされるカットグラス碗(わん)片など多数の遺物があり、海の正倉院とも称される
▼古代から長く残されてきたのには禁忌の島という性格が大きい。島が女神という信仰から女人禁制なばかりか、特別な許可以外に一般上陸が許されるのは日本海海戦を記念した現地大祭の年一日のみ。一方で宗像大社の神職が交代で常駐し祈りを捧げている
▼信仰の巨岩はどだい無理だが草木一本の持ち出しも禁じてきたことが古代の空気を保ってきた要因か
▼世界遺産は登録ブームで人が集まるのが通例。沖ノ島は逆に規制がさらに厳しくなるかもしれない。人を避ける島の宿命をいかに守るかが大切になろうか。

 2017年  7月  2日 ―  稲田大臣の違法舌禍  ―
 稲田朋美防衛相は夫も自身も弁護士で森友学園に絡み、国会で森友が起こした裁判に弁護士として出廷したかと追及されたことがある
▼司法のプロだから出廷の有無を忘れることはなかろうが、防衛相は森友訴訟への関与を否定し続けた。国有地を8億円超も値下げされた森友と官邸との癒着が話題になっていた頃だから、意図的に無関係を装ったのかもしれない
▼だが一部報道で朋美弁護士が森友の訴訟で、原告側弁護士として出廷していたとする地裁作成の記録があると伝えたので観念したらしい。今年3月には関与否定は勘違いで夫の代わりに出廷していたと釈明。国会でも謝罪している
▼経緯から感じたのは閣僚としての危うさだ。安倍総理が秘蔵っ子として要職で遇し将来の総理だと持ち上げてきたが、過保護は人を駄目にするのだろう。防衛相は今度は都議選終盤の自民党候補応援集会で、法に触れる演説をしてしまう
▼「防衛省、自衛隊、防衛相、自民党としても応援したい」と。「私も党も防衛省も自衛隊も組織の総力を挙げ応援したい」と語っている。自衛隊法は自衛隊員の選挙権行使以外の政治的行為を制限。公職選挙法では公務員の地位を利用した選挙運動を禁じている。防衛相発言は先の法に反している
▼辞職必至の舌禍に総理は裁断を急ぐべきだろう。

 2017年  7月  1日 ―盛岡を水の都に  ―
 祭りの夏がやってきた。チャグ馬、さんさ、舟っこ流し、八幡の山車と四つ並べると、舟っこ流しは少し風情が違う。他の祭りはどこか土着的で、みやびだが、舟っこにはなぜか西海の潮風が吹くようで、ドンパチと男気熱い。内陸の盛岡では珍しく船に親しみを感じるときだ。
▼鉄道が開通するまで北上川の舟運は県内の大動脈で、明治橋あたりから船が盛んに出入りした。鉈屋町近辺には船宿や蔵が建ち並び、新山河岸と呼ばれた。当時の船乗りと波止場の気っぷが、舟っこ流しに受け継がれているのかも知れない。
▼「北上川に舟っこを運航する盛岡の会」が、水運をデモンストレーションするフェスタを開いた。ボートで川を下り、復元した小繰船を展示し、イベントでにぎわった。北上川のゴムボート大会や、高松の池の遊覧など、もっぱら休日に親しむばかりの船が日常の足になったら、盛岡の市民生活は大きく変わる。
▼北大橋から不来方橋、南大橋、都南大橋あたりまで通勤通学の船便があれば、渋滞の道路を走るより速く快適だろう。帰りにさかのぼるときはエンジンの出力を上げる。大阪の水上バスのような公共交通機関ができたら盛岡は水の都。夢は広がる。
▼休日のOFFな船から、日常にONの便になったら面白いが、まだちょっと話はイフね。

2017年 6月の天窓へ