2017年 9月の天窓


 2017年  9月  25日  ― 清宮幸太郎選手プロ表明 ―
 プロ野球ドラフト今年一番の注目は清宮幸太郎選手となりそうだ。清宮選手は22日、記者会見でプロ志望を表明した。高校生野手では松井秀喜さんに匹敵する評価ではないだろうか
▼清宮選手はおととしの夏の甲子園に出場した早稲田実業で1年生ながら主軸打者として活躍。以後、春夏の甲子園に出場すれば注目されたが、ついに優勝はかなわなかった。しかし、地方大会レベルでも前代未聞の観客動員を引き寄せた。スーパースターになる素養を十分備えるとみる
▼清宮選手の父親は清宮克幸さん。ラグビーファンにはおなじみで高校日本代表の主将を務め早大、社会人でも活躍した。監督としても指導力を発揮、今もトップリーグのチームで監督を務める
▼ラグビーは2019年にW杯日本開催を控える。20日で開幕まで2年だった。前回大会で強豪南アフリカから大金星を挙げるなどジャパンの躍動にラグビーへの関心も高まり日本大会に向けて上昇一途となってほしかったが、2年の間に熱も冷めてしまったようで寂しい。釜石でも試合が行われるだけに、岩手からも盛り上げを図るのは当然だろう
▼3年前は清宮の息子と言われることが多かっただろうが、今は清宮の父親と言われるのも多いはず。親子の相乗効果でラグビー人気にもというのは飛躍しすぎか。

 2017年  9月  24日  ― 新聞週間標語決まる ―
 日本新聞協会は、来月15日から始まる17年度新聞週間の「標語」を全国公募していたが、先ごろ代表標語1編と佳作10編の入選作が決まり公表された
▼何分にも「新聞」に関わる標語だから一部には戒めの言葉もあろうかと、携わる身としては入選作品を神妙な構えで拝見した。代表標語を射止めたのは横浜市の女性で、相反する意味のカタカナ語を織り込み「新聞で見分けるフェイク知るファクト」と表現している
▼フェイクは「偽り」をファクトは「本当のこと」をそれぞれ意味する。世の中には真偽不明のさまざまな情報が飛び交う。新聞記事は例えば「いつ、どこで、誰が何を、どうした」などの取材に裏付けられた事実を書いているので作者は、新聞で世評の真偽を見分けられ何が真実かを知ることができると評している
▼新聞はそうあるべきだとの願望も込めたのかもしれない。佳作の中にも編集者や記者を励ますような作品がある。幾つかを標語のみ取り上げておく。子どもでもスマホを離さない昨今だが、「スマホ置きこっちへ向かせる記事がある」とつづった新聞愛読者がいる。こういう奇跡も起こしてみたい
▼難題だが新聞のだいご味を提示した標語もある。「人生を変えたあの記事あのコラム」と。この夢と理想故に記者は新聞週間標語に発奮を促される。
  

 2017年  9月  23日  ― ロックバンドと解散 ―
 「いしがきミュージックフェス」が盛り上がった日を、台風18号が襲った。フェス開催が危ぶまれ、県内に被害が出る中、政界からは突然の解散風。まさに嵐を呼んだ日だった。
▼ロックバンドの解散理由に、よく「音楽性の違い」という言いぐさがある。ほとんど口実で、実際はメンバー同士もめる次のどれかに尽きるという。まず第1にお金、第2に恋愛沙汰、第3にリーダー格のボーカルやギターの酒乱や錯乱。
▼ロックバンドはオーケストラの最小形態と言われる。ある世界観を表現するユニットとしては、大所帯の交響楽団でなくて、4人ほどいればよしとしても、人間3人集まりゃ必ず政治が始まるもの。バンド活動や歌詞のメッセージ性はさておき、仲違いで「メンバー内政局」が起これば、やってられない。
▼先のバンド解散の3要因をうがってみると、最近の永田町でも聞いたような聞かないような…安倍総理は解散の大義をいろいろこじつけているが、北朝鮮の風雲急な時局に、与党内にも不安があるらしい。
▼前回の総選挙では安倍総理がサザンオールスターズの公演に足を運び、桑田佳祐に「衆院解散なんて無茶」とマイクで茶化された。また唐突な解散。「みんなでさんざん降ろすたず」とならぬように。野党側も勝手に新党はバッドじゃないの。

 2017年  9月  22日  ― 都民に焼きサンマ振る舞う ―
 サンマがおいしい季節なのに、今年は水揚げ不振で食膳も寂しい
▼今月初旬に東京の友からきた電話もサンマ不漁を案じるものだった。本県の宮古・大船渡の両市と宮城の気仙沼市が、毎年この時期に都内で焼きたてのサンマを無料で都民に振る舞う祭事を催している
▼先の友は宮古会場の常連で不漁で中止にならないかと心配していたのだ。そんな都民の心情が分かる宮古市は、それに応えようと水揚げのあった北海道と交渉。7千匹を買い付けて今月10日に品川区の会場で恒例の「さんま祭り」を実現させた
▼都民も喜び午前10時開始だったが午前4時に来た人もいて、行列が1`に及び30分早めて開始。参加者は次々と炭火焼きサンマを頬張ったという。先の友からも「サンマ入手の経過を聞き食べながら涙が出た」と電話があった
▼一週間後の17日に目黒区の公園で「〜祭り」を開いた気仙沼市も、深刻な不漁で5千匹の生サンマを用意できず、解凍ものを焼き振る舞った。ここでも参加者の一人は「実においしい。形でなく気仙沼市民の心がうれしい」と語っている
▼あす23日は大船渡市が東京タワーで「〜祭り」を行う。一時は不漁だったが自港水揚げが復活。タワーの高さ333メートルにちなむ3333匹を確保。都民は新鮮なサンマを頬張り味わうことになる。

 2017年  9月  21日  ― 衆議院解散が急浮上 ―
 首相自らの思惑からか、あるいは周囲の進言からか、突如という印象で衆議院解散が浮上し政局が慌ただしくなってきた。安倍首相の口ぶりからは、任期が1年余りになり、ついに来るかという思いがする
▼解散は時の内閣が決められることで、死んだふり解散とか寝たふり解散の呼び名があるように不意を突いて踏み切ることも多い。だが、政権与党に有利かどうかも重要な判断材料なため、時期の予測も出るのが常で、まったくの唐突というのは難しい
▼「さびしさは秋の彼岸のみづすまし」(飯田龍太)。きのうから秋の彼岸に入り、ミズスマシを見ることすら珍しい時期だが、見かけても夏の快活さはない。都議選の時に活発だった都民ファーストの会の産物である日本ファーストの会は10月の総選挙となれば勢いづくのが間に合うのか。民進党の代表が代わったばかりで野党共闘問題の帰結も不透明だ
▼与党の勝敗予測が優先されると「大義」が二の次になり、いま有権者に何を問おうとしているのかよく分からない。有権者にも投票への準備期間が短いと言えまいか
▼ようやく28日に臨時国会が召集されても解散となれば、通常国会で消化不良だった加計学園などの問題を野党は批判するだろう。季節は移っても水に流すこと、すまし顔で通すことは難しそうだが。

 2017年  9月  20日  ― 「敬老会」参加の感慨 ―
 心が温まる「敬老会」は何度も経験してきたが、一昨日の会では加齢のせいか心が幾度も熱くなった
▼2部形式で表彰や顕彰が続く第1部でも、最高齢者顕彰で百一歳の男性が立った時には、当地でもと感慨を覚え心の温度が上昇した。長寿夫妻表彰でもこれまでは結婚以来60年が最長だったが、今回は70年の夫妻が並んで登壇。大拍手に包まれた
▼昔から70歳まで生きるのは「古来まれ(希)」という意味で「古希」と表現されてきた。それが独身期間を除き結婚年数だけで70年に達した夫妻を眼前にした時も、偉大だなあと熱くなった。第2部の若い世代による余興でも当方ら老齢者が熱涙を光らせた
▼地元の幼稚園児が勢ぞろいし歌や踊りの後に「おじいちゃん、おばあちゃん、いつまでも元気でいてね」と声を合わせエールを送った時も、多くが拍手で応じながら涙腺を緩めていた。学校で吹奏楽部に所属しコーラスも得意な中学生男女が舞台に並び、演じた時間も感涙タイムとなる
▼若者が「水戸黄門」の主題歌を演奏し「人生楽ありゃ苦もあるさ涙の後には虹も出る」と合唱を始めると、場内にはまず笑顔が広がる。やがて「人生涙と笑顔ありそんなに悪くはないもんだ」の辺りでは、孫世代への感謝やわが人生の回想が交じるのか感極まる表情が広がったのである。

 2017年  9月  19日  ― 電気自動車時代の危機 ―
 中国がガソリン車の製造と販売禁止を検討しているニュースがあった。もはや世界最大の自動車市場である中国の動向により、ガソリンから電気に動力がシフトすれば、日本経済に大きな影響が及ぶ。
▼電気主流論に日米欧の自動車産業は危機感を募らせてきた。先進工業国が1世紀以上にわたり蓄積した内燃機関の優位性が失われる。パーツが少なくてすむ電気自動車は中国など新興国でも開発生産しやすい。欧米メーカーは焦り、英国の脱ガソリン・ディーゼル宣言と相まって、電気側にボルテージを上げている。
▼それに比べて日本は立ち後れているという。ガソリン車が市場を失い、電気自動車に有力な車種がなければ、日本の自動車産業は衰退する。裾野の関連産業も。この20年、自動車産業を中核に工業集積を図ってきた本県はなおさらだ。
▼最近の日本車はブランドイメージ過剰で、誰が何のために乗るのか分かりにくいタイプが多い。多機能すぎてユーザーに敬遠され、中韓の製品に敗れた「黒物家電」の轍を踏むなかれ。
▼県内では岩手大、県立大、一関高専の学生による電気自動車のフォーミュラチームが頑張っている。こうした動きを産学官で支援し、電気へのシフトにもっとピリピリすべき。日本の自動車産業が、ビリになってしまわぬように。

 2017年  9月  18日  ― だれも置き去りにしない ―
 最近は国連などで「一人も置き去りにしない」というせりふが叫ばれている
▼それは「誰かが置き去りにされている」現実の反映なのだろう。その一例として「学校へ行けない子どもたち」がいる。今、世界では就学すべき子どもたちのうち約1億2千3百万人(約11・5%)が、貧困や紛争などで学校に通えないでいる(ユニセフ=国連児童基金調べ)
▼きょうは「敬老の日」で当方も後期高齢者として、自治体や町内会などから祝意を受ける喜ばしい日なのだが、そういう好意には感謝しつつも、いわば孫の世代に当たる世界の多くの子どもたちが、貧しさや戦火などのために置き去りにされ、学校へ行けないでいるという報道には胸が痛む▼世界の一部地域では女子教育不要思想に執着し、学ぼうとする女子や学ばせる大人に危害を加えている事例もある。パキスタンでは5年前に下校バスに乗っていた15歳の女子中学生マララさんが武装集団に襲撃され致命的重傷を負う
▼入院手術し回復した彼女は女子教育推進を声高く叫び続け、2014年には17歳の若さでノーベル平和賞を受賞。その平易で格調高い受賞スピーチも称賛されている。「学校に行けない子どもたちを見るのはもう終わりにしましょう。この『終わり』を始めましょう」との結びの言葉も忘れられない。
  

 2017年  9月  17日  ― 台風18号が列島縦断か ―
 盛岡八幡宮の例大祭最終日のきのう、盛岡は射るではなく絹に包まれたような日差しで風もなく穏やかな一日だった
▼「秋立ちてはや幾日ならむなにしかもかの西の風は吹き立たざらむ」は、石川啄木の最期に立ち会った若山牧水の歌。きょうは牧水忌だ。季節は秋に入っているのだが衣類は夏のまま。いつ秋の装いにしようかと考えつつも先延ばしして夜などは少し我慢している。稲刈りの時期も近づいてきた。あっという間に朝夕と冷え込む日は来る。それまで、みちのくの短い穏やかな秋を少しでも味わいたい
▼秋と言えば台風。こちらは宮沢賢治の童話「風の又三郎」が頭に浮かぶ。山間の学校に転校してきた又三郎は、あっという間に転出していく。短い間の異界の後は以前と変わらぬ日常となっていた
▼大型で強い台風18号は日本列島を縦断する可能性が出ている。岩手は17日夜から雨が強まり、18日に最接近すると予測されている。今夏は日照不足で農作物への影響が心配されているが、風雨がダメージを与えないようにと願いたい
▼賢治の命日21日も近い。賢治の没年は実り豊かだったようで、賢治の絶筆短歌として有名な「方十里稗貫のみかも稲熟れてみ祭三日そらはれわたる」は病床で20日に詠んだといわれる。賢治の詠んだ風景にできるだけ近づきたい。

 2017年  9月  16日  ― 情が厚い松山千春 ―
 歌手の松山千春さんは北海道出身で今年61歳。少年期には納豆売りをして、家計を支えた苦労人でもある
▼数々のヒット曲を出し歌手として大成していても、若い日の鍛錬のせいか情が厚く逸話もよく聞く。かつて九州でのコンサートで若い母親に抱かれた赤ちゃんが、大声で泣き出したことがある。母は泣く子を抱き締め会場を出ようとする
▼その時松山さんはマイクを握り母親に呼び掛ける。「いていいんだよ、いなさ〜い」と。さらに「子どもは泣くのが仕事なんだから」と言い観客にも「ねえ、みんな、いいだろう」と親しげな口調で同意を求める。観客席は同意を示す温かい大歓声と大拍手に沸いたという
▼先月20日には松山さんは新千歳空港で、出発待ちの伊丹行き旅客機内でここでも情に動かされ持ち歌を熱唱している。Uターン客などで混み合い出発が1時間以上も遅れ、それでも動く気配がなく乗客もピリピリ状態。待つ身の一人である松山さんは熟慮し行動を起こす
▼機長に一曲歌うことを相談。了承されマイクも借り満席の乗客に自己紹介。そこから「あ、千春だ」と名を呼ぶ人もいて空気が変わる。その千春が「果てしない大空と広い大地のその中で」とヒット曲を披露し「もう少しお待ちくださいね」と言い添える。機内は和み笑顔も広がったという。

 2017年  9月  15日  ― 東西冷戦の遺恨見る ―
 「清心尼」の単行本の売れ行きが気になり、青森の上北地方の書店をのぞいてきた。三沢市内に入ると渋滞で、基地の航空祭だ。せっかくなので見物した。
▼三沢基地を訪れるのは久しぶりだが、地元の人によると今年の航空祭は人出がやや少なめという。やはり例のミサイルの影響か。それでも大勢の家族連れや航空ファンでにぎわった。
▼北ミサイルを撃墜する「PAC3」、戦闘機「F15」「F16」のフライト、最新型の「F35」、日本国産「F2」などを見るうち、とりわけ巨大な超音速爆撃機「B1」に目を見張った。しかしその機体に触れながら、奇妙な思いが込みあげた。まるで冷戦時代の遺跡のような気がして。20世紀まで最新鋭だった機影も、使い込まれて少々ささくれ、老鳥めいていた。
▼北朝鮮ミサイルも「ノドン」「テポドン」「ムスダン」「火星何号」とか、昔の怪獣映画で聞いたような。世界は宗教テロが多発し、ポスト冷戦のさらに次代の戦火が広がっているのに、日韓だけまだ東西冷戦の怨霊にたたられている。
▼少し古い本だが、盛岡出身で東奥日報記者だった斉藤光政著「在日米軍最前線」を読めば、米国の世界戦略における三沢の位置付けがよく分かる。「夏草やつわもノドンが夢のあと」。何とか悪夢を避け、月日は百代の昔話にしたい。

 2017年  9月  14日  ― 過去最大規模の暴風の異様 ―
 松尾芭蕉は「吹き飛ばす石は浅間の野分(のわき)かな」(自著「更科紀行」所収)と詠んでいる
▼芭蕉の旅が浅間山に差し掛かると、当時は「野分」と言われていた台風が野原の草も吹き分け石まで吹き飛ばしている。句はそんな様相を詠む。同じく台風を意味しても国内外で暴風雨が荒れ狂う近年に比べて、芭蕉が生きた江戸期の野分は幾らか穏やかだったのか
▼電気や石油の使用も日常化していない往時には、「野分」という表現に秋の風情を感じたのかもしれない。ただ遠く鎌倉時代にも暴風雨大洪水や冷夏などで、被害甚大の記録もあるから一概には言えないだろう。だがそれでもなお昨今の気象は異様と感じてしまう
▼日本列島でも数十年に1度という豪雨が相次ぎ、海外でも過去最悪と言う言葉を聞く。特に深刻なのは米国で先月末には「ハービー」と命名された大型ハリケーンが同国南部を急襲。ヒューストン周辺では10万棟を超える家屋が倒壊し百万人超が路頭に迷う
▼被害総額は円換算で米国史上過去最悪の約21兆円と予測されている。地球規模の温暖化が異常気象の要因とされ、国連主導で防止の枠組み(パリ協定)を推進中だ。だが世界2位の温暖化ガス排出国アメリカはトランプ大統領が「協定」離脱を表明
▼世界が怒り、自国被災者が泣いていよう。

 2017年  9月  13日  ― 民進党に期待すること ―
 民進党政調会長に岩手1区の階猛代議士が就任した。自民党の鈴木俊一五輪相も、本県選出の政治家が要職に就くのは党派を超えて心強い。せっかく前原体制が発足したのに、のっけからゴタゴタしているが、難題山積の折、2大政党の責任を持って臨んでほしい。
▼民進党に望むのは地方議員の強化。とりわけ市町村議会が現在のような保守系無所属に大勢を占められている状態では、自民党の地力は揺るがない。都道府県議会は基本的に政党政治なので、民進党もきちんと一角を占めているが、より地域代表的な市町村議会は弱い。そこを強化しないと、政党の足腰は鍛えられない。
▼自民党とて平成大合併に伴い市町村議員勢を大きく減じた。ところが下野している隙に、民主党への反転攻勢の足がかりとして地方議会にてこ入れし、一度失脚した安倍総理を押し上げて政権を奪回した。やはり老獪(ろうかい)なのだ。
▼高知県大川村のように過疎で議員のなり手がおらず困る市町村が出てきた。民進党は組織に軸足を置く現職を先導に、NPOや無党派出身の人材などを養成し「徒手系無所属」「都市系無所属」議員を、農村部まで浸透させる努力を。無理に系列化しなくてもよいから。
▼そのためには党の県連自治を高め、しなやかなかじ取りを政調会長に期待しよう。

 2017年  9月  12日  ― 中国舞劇「朱鷺(トキ)」 ―
 今や野生の朱鷺(トキ)は乱獲や環境汚染で、絶滅が危惧されている
▼この状況を背景に中国の上海歌舞団が演じる舞劇「朱鷺」が、2年前に次いで今年も来日。今月7日から東京国際フォーラムで4日連続の公演があり最終日に足を運んだ。舞台を古代にした冒頭は一人の男が静かに立ち上がるところから始まる
▼近くで朱鷺が羽ばたき舞い落ちる白い羽根を彼は手にする。ここから千年に及ぶ朱鷺と男のドラマが展開していく。男こと青年の俊(ジュン)は羽根を手に朱鷺の群れに追い付く。水辺で羽根を休める朱鷺たち。俊はひときわ美しい朱鷺の彼女潔(ジェ)と引かれ合うようになる
▼彼の前で彼女を含む24羽の朱鷺が居並び次々と翼をはためかせる光景もある。潔は彼に朱鷺の優美な飛翔も見せる。彼は共に踊りながら潔と幸福なひとときを過ごす
▼古代には人と鳥との友愛もごく自然にあったことを示唆するような場面だ。だがこの後に別離が訪れる。潔は彼に1枚の羽根を残し去って行き彼はそれを手に空を見詰める。以後生死流転を経て結びは環境汚染の近代が舞台だが、俊はここでも汚染にまみれ衰弱した潔に出会う
▼仲間の朱鷺も次々と死に最後の朱鷺となった潔も息絶えて、博物館のケースに納められる。優雅な舞劇による文明批評に圧倒されてしまう。

 2017年  9月  10日  ― 南北軸の傾き「補正」を ―
 国立天文台水沢キャンパス内に残存し国登録有形文化財になる見通しとなった旧緯度観測所時代の建造物4棟には、臨時観測所時代の1900年に建てられた初代本館も含まれる。木造平屋の建物は何度か移築され、現在は初代所長の名を冠して木村栄記念館として公開されている
▼岩手出身の物理学者田中館愛橘にも教えられた木村は水沢在任中、観測過程で天文学史に残る「Z項」を発見したことで知られる。地球の自転軸が形状軸(南北軸)と一致しなかったため、その補正の計算式にZが用いられZ項と呼ばれる
▼第2次大戦後、東西冷戦の対立軸がアジアでは南北の分断を生む。ベトナム、朝鮮で異なる体制がぶつかり合い、ある意味で内戦の悲劇をもたらした。ベトナムは終戦し社会主義国に統一したが、朝鮮半島は1953年に成立した北緯38度線を境に休戦協定が現在も継続している。統一どころか終戦すらしていない
▼北朝鮮の実権を金正恩委員長が掌握以降、核やミサイルの開発を推し進めているのはご承知の通り。朝鮮戦争は日本の戦後復興に特需となる皮肉めいた影響もあったが、日本に戦闘の及ぶことはなかった
▼しかし、休戦が解かれれば半島だけでなく、日本にも戦禍が及ぶ可能性がある。傾きが増した南北軸を補正する計算式を編み出したい。

 2017年  9月  9日  ― 緑十字機の秘話 ―
 先日静岡で知人の回忌法要があり、列席者から思いがけず終戦直後の秘話を聞くことができた
▼天皇の玉音放送で終戦が宣言され翌日からは降伏の手続きが始まる。マニラで指揮をしていた連合軍のマッカーサーは、日本に降伏使節団をマニラへ派遣するよう命じた。その際、禁じていた航空機使用を2機のみ沖縄伊江島までの飛行を許可。沖縄〜マニラは米機で搬送するという
▼ただ日本の機体は全面を白く塗り胴体中央に緑色で十字を描くよう指示する。陸軍代表や外務省首脳ら使節団は緑十字機と呼ぶこの2機に分乗し8月19日に出発。だが伊江島到着時に1機に故障が発生する(帰路の飛行も不能)
▼一行は米軍機でマニラに到着。連合軍と会いマッカーサーから降伏要求文書を受領し連合軍日本進駐の詳細などを聞く。この重要事項を政府に伝えるため20日に米機で伊江島に飛び、1機に全員が乗り東京へ向かうが不運が続く。燃料が切れ静岡の鮫(さめ)島海岸に不時着してしまう
▼驚き駆け付けた住民らも事情を聞き通報や物品回収に協力。重要文書も全て無事でトラックも用意してくれ20日深夜に浜松飛行場へ移動。翌朝代替機で飛び無事東京に着き任務を果たす。72年後の20日には「緑十字機不時着の碑」を住民の手で鮫島海岸に建立。除幕式が行われている。
  

 2017年  9月  8日  ― 北朝鮮と中国と日本 ―
 前に盛岡上空をテポドンが飛んだとき、在日のしかるべき人に抗議した。その人は「では昔、日本が朝鮮に何をしたか」と反論してきたので、「2度も侵略したのはいけなかった」と反省したうえで、「中国も漢や唐の代から日清戦争や朝鮮戦争まで何度も半島を侵略している。そっちはどうなのですか」と問い返してみた。
▼その人は「中国はきちんとけじめを付けている。日本はそれが無いからだめだ」と。けじめはどういう意味なのか、朝鮮半島を侵略した中国が謝ったり、弁償した例はない。しかし、「親に殴られても我慢するが、弟に蹴られたのは絶対許せぬ」という民族の悲しみは分かった。
▼北朝鮮のミサイルや核が日米に向けられているのは確かだが、中国に対しても親子の杯を返すような威迫を含んでいるのでは。AIIBやBRICSのような中国のメンツがかかる外交日程にあてつける。きっと「韓国ばかりかわいがるな」とすねているのだろう。
▼残念ながら今回の事態に日本人ができることは少ない。しかしわが国には在日の人も中国人も大勢いる。本国のことはともかく、「あなたがたから仲良くして、危機の落としどころを考えてみては」と言うくらいはできよう。
▼「こりや」と怒る親に、子が「うるちゃいな」とキレるような関係でなく。

 2017年  9月  7日  ― 緑十字機不時着の秘話 ―
 元総理の麻生太郎氏は現政権では、副総理兼財務大臣を務めている
▼総理在職中から今に至るまでに、官僚が書いた答弁原稿の漢字が読めず失笑を浴びたり、深刻な問題をはらむ失言を乱発し、国民から辞職を求める声が出たこともある。それでも釈明や発言撤回程度で平然と重要ないすに座り続けている
▼そんな姿を見ていると、この人はどんな使命感で政治家を続けているのだろうと思ってしまう。答弁で「有無」を「ゆうむ」と読み「低迷」を「ていまい」と読んで笑われても、さほどショックも受けず読みを訂正して済ませてしまう。辞意表明などしおらしい着想そのものがない
▼漢字誤読はそんな対応でもいいだろうと思う。だがユダヤ人や身障者など数百万人を虐殺したナチスドイツや、その指導者ヒトラーの手法などを容認する発言は、単なる釈明や撤回などでは許されないであろう。副総理として憲法改正は「ナチス政権の手口に学んだらどうか」と提案したこともある
▼先月29日の派閥研修でも「少なくとも(政治家になる)動機は問わない。結果が大事だ。何百万人も殺しちゃったヒトラーは、いくら動機が正しくてもダメなんだ」とナチスは動機は正しいとの問題発言をしている
▼以前の許し難い人権無視発言もある。自ら総括し進退を決めるべきだろう。

 2017年  9月  6日  ― 男子サッカーW杯出場決める ―
 2018サッカーW杯ロシア大会のアジア最終予選は、本欄が読まれる頃には日本の最終戦、サウジアラビアとのアウェー戦が終わっていることと思う。日本は8月31日にオーストラリア戦にホームで勝利し6大会連続の出場を決めた
▼雌雄を決する形となった31日の試合後、代表の中からは最終予選初戦に敗戦すると出場できない、豪にW杯予選で1勝もしていないという二つのジンクスを打ち破った安堵(あんど)感が聞かれた
▼豪戦に臨んだ布陣にはこれまで代表の攻撃の核であった選手がことごとく先発から外れた。攻守をつなぐ中盤も守備的な選手ばかり。長谷部主将が戻ってきたとはいえ、負ければ解任もささやかれていたハリルホジッチ監督はこの予選中に台頭してきた選手を起用した。おそらく選手の調子の良さと豪のつなぎ重視に変化した戦術を研究した上での選択だったろうが、勝った上で次への推進力を高める意図もあったのではなかろうか
▼日本の過去5度の戦績は予選敗退と16強を繰り返している。次は決勝トーナメントに進める「ジンクス」だが、5年後には出場枠も増えるためロシア大会で過去最高を超す戦績を目指してほしい
▼豪はアジアの中のヨーロッパと言えるようなチーム。予選の勝利を特にヨーロッパと戦える自信にしなければ。

 2017年  9月  5日  ― 麻生副総理の問題発言 ―
 今年の夏は東北も7月は暑かったが、8月は一転して低温傾向が続いた。雨の日も多く秋田では7月に50年に1度という豪雨に見舞われている
▼気象庁は今月1日に夏季3カ月間の「天候まとめ」を発表した。東北の梅雨明けについても当初は「8月2日ごろ」と予測していたが、今年の夏は冷たく湿った空気が流れ込み、曇りや雨の日が多く最終的に予測を修正。東北の梅雨明けは「特定しない」と結論を出している
▼そんな情報を聞きながら秋の訪れを案じていたのだが、四季の移ろいをつかさどる天然の力は厳としているらしい。気象庁は秋季3カ月間の予報で東北の気温はやや高めと見ている。確かに吹く風にも次第に秋らしい気配が戻りつつある
▼吉田兼好は「徒然草」で《季節の移り変わりこそ、しみじみとした趣がある》と述べている。兼好は面白い人で秋を褒めたり春を持ち上げたりしている。《趣の深さは秋こそ優れている》と主張しながら、《それより心浮き立つのは春の景色だ》とも言う
▼でも読み進めると四季それぞれの趣を評価していることが分かる。夏のなまめかしい七夕祭にも触れた後に再び秋の萩や渡り鳥の声などを挙げ、冬枯れ景色はその秋に劣らずと絶賛するのだから愉快だ
▼さて今はまだ初秋。せめて平年並みの紅葉を見たいものである。

 2017年  9月  4日  ― 紺碧の友嬢 ―
 お盆の終戦企画「紺碧の友嬢」は好評いただいた。「青い目の人形」来日90周年にちなんだら、古い人形の写真に「かわいい」という声が多く寄せられた。
▼自分の母校には「シャタカちゃん」があったので、子どもの頃からなじみだった。少子化の今は城南小も桜城小も往事の千人規模ではなし、戦後の新設校に人形はおらず、見たことのない人が多いのだろう。
▼花巻市の加藤昭雄氏著「岩手に残る青い目の人形」には、戦時中の青森県の国民学校でアンケート調査した結果が載っている。米鬼の人形いかにせん。壊す焼く海に捨てる、いじめるなどの回答が多く、ぞっとするが、「送り返す」「白旗を持たせる」もかなりあった。きっと「何とか助けたい」と子どもなりに知恵を巡らしたのだろう。「スパイと思い注意する」が1名。もし、「そう答えておけば、毎日見守ってやれる」と謀ったなら、その子は一休さん並みの切れ者だ。
▼童謡「青い目の人形」では、アメリカ生まれのセルロイドが「日本の港に着いたとき、いっぱい涙を浮かべてた」と短調に。それを救うのは「優しい日本の嬢ちゃん」で、「仲良く遊んでやっとくれ」と。
▼あまりにきな臭い世界だが、日本の港にツイッターしたとき、いっぱい涙を浮かべないようトランプさんにこの歌を贈ろう。金正恩にも。

 2017年  9月  3日  ― 王貞治氏と国民栄誉賞 ―
 昭和52(1977)年の9月3日は、現在のソフトバンク会長・王貞治さんが巨人軍の現役選手時代に、756本目となるホームランを放った日でもある
▼それまで米大リーグのハンク・アーロン選手が維持していた、世界のホームラン記録755本を王さんが抜いたのだ。巨人軍の王選手が文字通りの「世界のホームラン王」に躍り出たわけで、日本中が喜びに沸きかえったことも懐かしく思い起こす
▼当時の政府も福田赳夫総理を中心にこの慶事が4日後に迫っていた8月30日の段階で、王選手に何らかの顕彰をすることを検討。今後のスポーツ選手をはじめ各界で卓越した活躍をする人も視野に入れて、新たに「国民栄誉賞」と称する顕彰制度を創設することを決定した
▼同賞の規定では授与の趣旨を「広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があった人について、その栄誉をたたえること」とうたっている。王さんは40年前に本塁打世界一の活躍で、制定されたばかりの国民栄誉賞の最初の受賞者という栄誉に輝いたのである
▼この賞は現在までに野球の長嶋茂雄・松井秀喜、レスリング吉田沙保里、マラソン高橋尚子の各氏など故人も含め23人と1団体に授与されている。なお王さんは現役時代に通算本塁打868本の大記録も樹立している。

 2017年  9月  2日  ― 食欲の秋に怪しい雲行き ―
 9月に入り、食欲の秋に心も弾む頃。しかし、今年は出来秋の方が心配な雲行きだ。盛岡地方も気温が上がらず秋本番かと疑うほど
▼夏の甲子園へ取材に行った記者は例年と同じく球場内を駆けずり回り炎天下の夏を体験したが、盛岡にいては真夏の気分は画面の中だけだった
▼思えば、高校野球の岩手大会では気温が上がり選手も脱水症状からけいれんを起こし応援団の生徒も熱中症で倒れ救急車で運ばれるケースも目立った。しかし、そんな暑い岩手の夏は一瞬で過ぎ1カ月半ほど前のこととは思えない随分昔のことのように思えてしまう
▼秋の収穫期、早い品種はすでに始まっているが、この夏の日照不足や雨、積算温度が農作物の生育に大きな影響を及ぼしている。豊作はなかなか期待できないようになっているが、稲や果物などに病気の心配が出ており、せめて市場に出せる作柄となる望みだけは断たれぬようにと願うばかり。だが、少しでも出来の良い作物が収穫できるよう、これからでも天候の好天を諦めずにいたい
▼秋を代表する魚のサンマも不漁がささやかれている。以前、本欄でスルメイカの不漁と高値を嘆いたが、サンマも同じ状況になりかねない。天候のほか周辺国の漁獲も影響しているようだ。夏にさぼったダイエットをこの秋のノルマとしてみようか。

 2017年  9月  1日  ― 日本のGPS衛星明春実用へ ―
 天空を飛ぶ人工衛星の電波を受信し、地上の現在地の位置や目的地までの最短コースなども測定できる「全地球測位システム(GPS)」は、日本でも今ではカーナビやスマホの位置測定機能など日常的に利用されている
▼米国が戦場や自軍の位置測定など軍事目的に開発したもので、戦略的にあえて誤差を大きくした側面もあるという。だが今は米国も平和利用を重視して、GPS用人工衛星利用を諸国に開放している。日本も従来は米国のGPS衛星を借用してきた
▼ただ米国システムによる測定の誤差が改善されたとはいえ、まだ10bはあるという。そこで優れた宇宙工学の実績を持つ日本は、「みちびき」と名付けた精度の高い独自のGPS衛星4機を打ち上げる事業に着手。7年前に打ち上げに成功した第1号機は、テストも兼ね今も順調に飛行中だ
▼それに応じ今年は6月1日に、みちびき第2号機の打ち上げに成功。さらに先月は天候悪化などで当初予定より遅れたが、19日に第3号機が打ち上げられ無事に軌道に乗った。この3号機には災害時に避難情報を自治体や消防などに伝えるシステムも搭載している
▼4号機打ち上げは10月の予定で成功すれば、来春から4機体制が実用化される。測定誤差も数aに圧縮され災害時避難情報など一層の便利さが期待される。

2017年 8月の天窓へ