2017年11月の天窓


 2017年 11月  22日  ― コンビネーションストア ―
 盛岡市渋民にローソンと盛岡市民福祉バンクが併設した新しい店ができた。昨年から、コンビニエンスストアならぬ「コンビネーションストア」とも言うべき店構えが増えている。盛南地区には郵便局や北日本銀行が、コンビニと併設で営業している。
▼もしコンビニと地元の一般の店がくっつけば、相乗的な集客を見込めるのはもちろん、互いに得るものは多いはず。コンビニは大手スーパーや総合商社を親に系列化しているので、接客や商品の陳列は全てマニュアル化されている。
▼コンビニと同じ屋根に隣り合えば、中小零細の従業員も毎日、大企業のビジネス感覚に接するだろう。コンビニ側も常に全国画一の品ぞろえではすくいきれない、土地ごとのニーズを隣の店から会得できる。業種や商品構成を住み分ければ、顧客はとても便利になる。
▼コンビニに入ってほっとするのは、棚の隅に10円単位のガムやチョコが置いてあること。昔はあちこちの街角に駄菓子屋があり、「一銭店」と言って子どもの金銭教育を担っていた。今のコンビニにそこまでデリケートなことは難しいだろうが、顔なじみの経営の店が、すぐ脇にあればできるのでは。
▼近所のおばちゃんが、「コンビニ寄ってったらあど、こんびりおあげって」と、おやつをくれる店があったら。

 2017年 11月  21日  ― インスリン命名の由来 ―
 インスリンはすい臓から分泌され、血液中の糖をエネルギーに変える
▼そんな働きをするが分泌量が少ないと、糖のエネルギー化も弱くなり血液中の糖の濃度を高くしてしまう。これが糖尿病だ。もしすい臓が十分なインスリンを分泌するなら、余分な糖はエネルギーに変えてしまうから糖尿にはならない
▼カナダの医学者・FGバンテイング博士は、既に世界に糖尿病がまん延していた1920年代初頭にこのすい臓の分泌物に着目。純粋な分泌物を期待し健康な犬のすい臓を切除。これを糖尿の犬に投与する。この犬の血糖は日を追って下がりやがて牛でも実験をした
▼手法もすい臓の切除でなく、すい臓の分泌物を抽出するという残忍さのない医療的対応に改めている。この一連の経過の中で彼が「抽出物」に命名したのが「インスリン」なのだ。動物実験で医療的手法による糖尿改善が功を奏した後は、世界で待つ糖尿患者に応えている
▼間もなくインスリン剤の大量生産が始まり、血糖値の改善治療は世界同時進行で現在も続く。バンテイング博士と協力者には1923年にノーベル生理学・医学賞が授与された。同博士の誕生日である11月14日は「世界糖尿病デー」となる
▼日本でもこの日を挟んだ7日間を「全国糖尿病週間」として各地で記念行事を実施している。

 2017年 11月  20日  ― サッカーW杯の出場国決まる ―
 来年6月からのサッカーW杯ロシア大会に出場する32カ国が決まった。日本も6大会連続6回目の出場をつかんだ
▼32カ国中、国際サッカー連盟(FIFA)の10月15日現在のランキングが32位以上なのは20カ国にとどまる。最も下位が自国開催で予選免除ロシアの65位。アジアの5カ国はイランの34位が最上位に対し、欧州と南米は合わせて19のうちわずか2カ国と世界サッカーの現状を示している。9位チリ、14位ウェールズ、15位イタリアなど上位が出場を逃した
▼FIFAは今年初め、26年大会から出場枠を48カ国に拡大することを決定した。試合数の増加により収益増が見込めるが、本大会の日程は現状よりハードになるのではとも推察できる。予選の各地域の出場枠がまんべんなく増えると見込まれる中、果たして地域間の実力格差は縮まるであろうか、広がるであろうか
▼18年大会出場国で50位以下はロシアを除けば62位韓国、63位サウジアラビアとアジアの国のみ。日本も44位で下から数えて6番目。過去も日本が上位にいたことはなかったはずだが2度、決勝トーナメント(T)進出の16チームに残った。4チームで争うグループステージでグループ2位までに入れば決勝Tに進める。日本と同じグループに入る国はどこか。来月1日の抽選会で決まる。

 2017年 11月  19日  ― 議員諸氏に品格回復望む ―
 麻生副総理は失言居士と言われるほど舌禍が多い
▼今夏も戦時下で数百万人ものユダヤ人などを虐殺した、ドイツナチス党を率いるヒトラーも「動機は正しかった」と発言。ひんしゅくを買った。憲法改定に力こぶを入れる安倍総理の姿を見ると、4年前の麻生失言も思い出す
▼それは改憲するなら同じくヒトラーによる「憲法骨抜きの手法」に学べというものだった。往時のドイツには民主的制度を導入した1919年成立の「ワイマール憲法」があった。独裁者ヒトラーは同憲法には触れず、他党の付け火を装い国会議事堂放火事件を起こす
▼彼は非常事態を理由に時限立法として、ナチスへの「全権委任法」を成立させてしまう。後はやりたい放題で憲法も骨抜きとなる。安倍総理は麻生氏と親族の仲だが、ナチス手法など蹴り返し失言居士に辞任引退を勧めるといい。それができれば自身も延命できよう
▼それにしても国会審議も質が落ちている。15日の衆院文科委員会で質問に立った日本維新の会の足立康史議員は、石破茂自民元幹事長、福山哲郎立憲民主幹事長、玉木雄一郎希望の党代表の3人を名指しして、理由らしきことは述べたが確証を示さず「犯罪者だと思っている」と発言。異様な空気が場を包む
▼議事堂を職場とする議員諸氏にはまず品格の回復を望む。
  

 2017年 11月  18日  ― 小池百合子さん原点に ―
 小池百合子氏が総選挙の結果に引責し、希望の党代表を降りた。例の「排除」発言以前に、やはり国政と1300万都政の掛け持ちは無理だ。
▼都知事選で競り合った増田寛也氏は自民党色が強すぎ、鳥越俊太郎氏は都政と無関係の安倍政権打倒を持ち出して、必要な支持を得られなかった。小池氏は無党派の草の根選挙で当選した初心に立ち返るべし。
▼以前、病気で入院していたとき、相部屋は県北のある町の人だった。このあいだ町長選があり、大政党の国会議員が大勢介入してきたとか。実直な人だったので、「なしてあの人だち出でくんの。国会は国会、役場は役場だ」とプンプンしていた。マスコミ側からすると、国政と地方選挙が連動した方が書きやすいことがあるし、何か意味深な報道をしたような気になるが、一般の人の感覚はそうではないと思った。
▼公選法で議員選は次点者の繰り上げ当選があるのに、首長選は当選者が事件事故や死亡傷病で任に就けないと、選挙をやり直す。それほどトップの椅子は法律上重い。
▼小池氏は前から小沢一郎氏に近く、後藤新平を尊敬し、たびたび本県に足を運んでくれて親しみやすいけれど、なんかいつも党が違うような気がする。そろそろ政界渡世には見切りを付けて五輪成功へ、東京都政に専念してください。

 2017年 11月  17日  ― 賞金当選詐欺メールに注意 ―
 後期高齢の今に至るまでのわが人生を顧みると、極端に悪いことにも遭わず、飛び抜けて良いことに出会うこともなく生きて来たことに気付く
▼平々凡々だったわけで今もそれが続く。大きく幸運が開くかなと宝くじを買ったこともあるが、3百円以上を当てたことはない。そんな金運のない当方の携帯に先日、携帯販売系列を装う社名で、高額賞金当選を知らせる詐欺メールが届いたのだから笑ってしまう
▼メールは花柄で祝意を示した囲みの中に「ご当選!おめでとうございます」と大書し次のような趣旨が続く。《皆様の携帯電話番号下4桁による抽選で、特賞1億円ほか6位までの当選者を決める「携帯宝くじ」であなた様が「2位・9700万円に当選しました》と
▼さらに下記の「受け取り手続きについて」をクリックし必要事項を記入して「ご返送を」と念を押している。ここに手数料などの名目で大金を奪うからくりがあるのだ。当欄でもこの種の悪質詐欺を何度か取り上げてきたから、メールは一読後に削除した
▼だが全国的には申請手数料やら当選賞金送料やらと請求されるまま、高額のお金をだまし取られる事例が多発している。これから年末に向かう時期も注意を要する。特に詐欺犯が狙う老齢の人には周囲から声を掛け、見守りの目を向けていきたい。

 2017年 11月  16日  ― サッカー代表のユニホーム ―
 サッカー日本代表の新しいユニホームで、さっそく強化試合がヨーロッパで行われた。第1ユニホームが青を基調としている点は変わらない中で毎回、意味を込めデザインされる
▼今回は日本の伝統色である深い藍色を意味する勝色(かちいろ)をコンセプトに基調の色とした。刺し子柄が日本らしい。次の2018年ワールドカップ(W杯)ロシア大会に向けた新調となるが、20年の東京五輪を意識したデザインということだろう
▼Jリーグ誕生の目的の一つだった日本のW杯初出場が決まったのは97年11月16日。ロスタイムの失点で手中から初出場の切符がこぼれ落ちたドーハの悲劇から4年後のこの日は、ジョホールバールの歓喜と呼ばれた。フランス大会で世界の壁を思い知らされたが、次の2002年日韓大会では自国とはいえ決勝トーナメントに進出
▼以後の代表は10年南ア大会で16強となったことはあるが、決勝トーナメント進出が容易でないことが現実なのだろう
▼14年ブラジル大会の惨敗から再出発した現日本代表もすぐに監督交代でつまずいた。これまでの主力の何人かが今回の強化試合には未招集。半年余りに迫った段階でチームの骨格はいまだ流動的だが、本物の刺し子は模様だけでなく強さにもなる。長年の間に糸を通してきた人々の魂を宿したい。

 2017年 11月  15日  ― 地球史背に「チバニアン」提唱 ―
 地球はおよそ46億年前に誕生したという
▼その長遠な歴史を区分した時代の呼称がある。古い方から冥王代・始生代・原生代と続きさらに、古生代・中生代・新生代と大きな区分けをしている。新生代など大きな区分のそれぞれを細分化し、個別に呼称を設けることもある
▼例えば新生代の第四紀「更新世」と称する時代は、さらに細分化し4区分けをしている。そのうち古い時代の2区分は命名が済んでいるが、残る2区分は「中期」「後期」という暫定的な呼称である。このうち「中期」時代は今から約77万年前に始まり、約12万6千年前に閉幕している
▼この年代に注目した日本の研究者チームは「中期」を改め「チバニアン」(千葉時代)と命名することを提唱している。根拠は昭和初期に活躍した松山基範旧京都帝大教授など、国内外の研究者らの調査や分析により、地球の磁気の南北の向きが過去に11回も逆転していることが判明
▼11度目の逆転の時期が先の「中期」と重なる約77万年前と分かり、それを裏付ける地層が千葉県市原市で確認されたからである。日本チームは年代の基準地として「千葉の地層」を国際学会に申請。一次審査で競合するイタリアを退けた。まだ審査は続くが「チバニアン」命名有力は変わらない
▼77万年を背にした夢の実現が迫っている。

 2017年 11月  14日  ― 横田めぐみさん拉致から40年 ―
 中学1年の横田めぐみさんが新潟県から北朝鮮に拉致されたのは、40年前の1977年11月15日のことだった。会ったことはなくても自分と同い年なので、他人事に思えない。先日のトランプ大統領と拉致被害者家族との面談で、前進があるよう願うばかりだ。
▼自分は中学生の頃、東洋史にとても興味があった。当時はシルクロードブームで、中国の歴史の本はたくさん出ており、「三国志」の漫画や「水滸伝」のテレビ番組もあった。
▼清まで読んだら次は朝鮮の歴史も知りたくなったが、これが大変だった。子どもが読める水準の本は皆無だったから。盛岡で一番大きい書店の難しい本棚の隅に、朝鮮史の本が2冊だけあった。
▼どちらも北寄りの本だったのだろう。「地主を懲らしめ日本をやっつけ米国と戦い」など延々で、よく分からない。読んでみたかった新羅や高麗の時代は、「昔は悪い王様の封建の世だった」とか冒頭数ページのみ。しかも値段は2千円近い。中学生の財布では諦めた。
▼だから今のように韓流ドラマで李朝の歴史を楽しんだり、ワイドショーで金一族の権力闘争を眺めたりしていると、隔世の感がある。しかしそれは横田さんらの苦しみと望郷の歳月に重なる。北朝鮮の不埒(ふらち)な所業を許さぬためにも、彼の国の歴史から学ぶものはある。

 2017年 11月  12日  ― 米人レスラーも叙勲受章 ―
 今年も各分野で日本社会のため功労のあった人に、国が11月3日付で勲章を授与する秋の叙勲が行われている
▼外国人も日本在住者だけでなく母国在住者も対象になり、今回は149人が受章している。先日、老齢の友人と外人受章者名簿を見ていた時、彼が「おっ」と声を上げて、年配者なら誰もが懐かしがるであろう人物の名を指さした。本名は「リチャード・ジョン・ベイヤー」とある
▼これだけではピンとこない人も多かろうが名簿は通称も添えている。「ザ・デストロイヤー」と。そう、あの昭和の一時期に力道山らと勝負して、日本人ファンの心をわしづかみにした白覆面のプロレスラーである。所属した「全日本プロレス」を離れアメリカに帰国した後も日本とは交流を重ねている
▼米国の子どもたちを連れて来日し、日本の子らと親睦を図る活動も20年以上も続けている。かつて自身が味わった日本の良さを米国の子らにも体感させたいのだという。現在87歳。ニューヨーク州アクロン村で妻と余生を楽しんでいる
▼今回の叙勲では旭日双光章を受章した。授与に際して日本政府は「わが国のスポーツ界の発展および日本・アメリカ合衆国間の友好親善に寄与」と、長期にわたる氏の功労をたたえている。白覆面を回想しつつ祝意を込め日々のご健勝を祈りたい。

 2017年 11月  11日  ― なくならない人種差別 ―
 黒人ミュージシャンのチャールズ・ミンガス(1922〜79)はジャズの巨人の1人。名ベーシストだったが、怒れるミンガスと時に形容された。メンバーを殴って歯を折ったとの直情ぶりの説話も伝わる。今と比較にならないほど人種差別がひどくマルコムXらブラックパワーの提唱運動が盛んな時代を中心に、社会的な問題の表現者として自身の音楽活動に投影した。象徴的な作品が60年に録音したアルバム「ミンガス・プレゼンス・ミンガス」中の自作曲「フォーバス知事の寓話」
▼フォーバスとは実在したアーカンソー州知事。ミンガスはこの権力者を曲中、自身のせりふで「ばか」「ファシスト」などと、ば倒している。当の知事は57年に白人の生徒だけだった高校に9人の黒人が初めて入学するのを州兵を動員して阻止しようとしてリトルロック高校事件を引き起こした。白人と黒人の分離教育は違憲とされていたが、南部ではなお差別が根強かった。入学を容認した市長は知事の行動に対抗するため大統領に軍派遣を要請したが、大統領の決断が遅れたため暴動に発展した
▼知事と大統領に対する怒りで皮肉ったのがこの曲。こっけいさを感じさせる演奏も、せりふは痛烈。取り上げられたクークラックスクランには、半世紀以上たった今も若者の加入があるようだ。

 2017年 11月  10日  ― 拉致解決願う老母の情 ―
 横田めぐみさんは小学6年の時、母・早紀江さんが育てたコスモスを見て言う
▼「コスモスってふわふわと揺れている花なのに、お母さんが育てたコスモスって、茎が太く花も大きくって風にも揺れないよ」と。母は「肥料をやりすぎたせいかな」などと言い2人で笑い合う。今も老いた母の目にはその光景が浮かぶという
▼めぐみさんは母とそんな思い出を刻んだ翌年には中学生になり、同年10月の誕生日で13歳となる。基本教科のほか歌も絵を描くことも大好きで、書道やクラシックバレエも習う。将来への夢が膨らむ日々だったのだろう
▼そんな彼女の夢も人生そのものも破壊する事件が起きたのは、13歳誕生日の翌月(1977年11月)の15日だ。その日めぐみさんはクラブ活動を終え下校途中で行方不明となる。後に北朝鮮に拉致されたことが判明するが、当初は親族らが連日連夜探し回っては泣き暮れたという
▼以来02年と04年に当時の小泉総理が訪朝し交渉。拉致被害者とその家族計10人の帰国が実現する。だがめぐみさんら多くは今も北の管理下にある。待ちわびる早紀江さんは小6の娘との思い出も織り込み歌詞を作成。それを歌手が作曲し歌う「コスモスのように」と題するCDを08年に発売した
▼娘に届けと願う老母の情がにじむ歌を今改めて聞いている。

 2017年 11月  9日  ― ブレードランナーとドラえもん ―
 SY内丸があった昔に、「ブレードランナー」という映画を見た。高校生だった。封切りの1982年に、2019年の未来を想像したSF。環境汚染で暗黒の西海岸。ロスは日本の経済進出が飽和し、漢字のネオンきらめく「ハイテク魔都」だ。ビル・ゲイツのような社長の巨大企業製、人間そっくりのロボットたちが背き、無差別殺人に走る。ロス市警のすご腕刑事が、地上千階の摩天楼の谷間に非情の追跡をする。
▼映画を見たとき、自分が50代になる頃はこんな悪夢の世かと、特撮とサスペンスに陶然としながら暗然とした。その続編で上映中の「ブレードランナー2049」を、53歳の自分が見た。
▼18歳の頃の衝撃はなく、前作よりさらに荒涼とした世界がもの悲しい。もう空想にあらず、そこに描かれたのは現実のアメリカにしか見えない。ひとりの独善的な企業家が支配し、テクノロジーは暴走し、分断した階層と憎悪に満ちた都市。
▼救いは今の日本が映画のような未来でなく、80年代の世相がちんたら続いていること。凶悪なレプリカントなんかいない。盛岡の高校生や大学生が、手作りのロボットコンテストに頑張っているくらいだ。
▼わが国ではブレードランナーの「ドラ」は善良なロボット。のび太の夢を見よう。ドラン、いやトランプさんも。

 2017年 11月  8日  ― 国会質問与野党の割合 ―
 国会の本会議や各委員会の質問時間は従来は「与党2対野党8」の割合で配分してきた
▼だが安倍総理は野党時間を削減、与党時間拡大の意向を固め特別国会に臨んでいる。自民党内からは議席数の割合で配分との極論も出ている。だが数の多さで押し切る一強主義を国民は嫌う。その意味でも現行8割の時間を使う野党質疑は、与党の懐の深さを示すためにも残すべきだろう
▼政権側も時には厳しい追及を浴びおごりに気付き、口先だけでない謙虚さに徹するなら国民も見直してくれるであろう。総理の与党時間拡大志向そのものに、慢心を見た人が少なくないことを付言しておく。この稿が紙面に載る頃に野党削減に暴走しないことを祈る
▼与党は議員が多いのに質問時間が少ないため、若手や新人が登壇できず力が付かないという声も聞く。だが委員会などでは与党事前了承の事案が論議の対象となる。若手らの訓練は与党内議論の段階でもできよう。どうしてもテレビに映る場に立たせたいのなら、先輩が交代するといい
▼昨年11月末の内閣委でカジノ法案審議の際、40分の持ち時間で質問した谷川弥一元文科副大臣は、28分で語り尽くし「時間が余ったので」と議題と無関係の般若心経を唱え出し解説も加え時間をつぶした。人選の際若手3〜4人にする知恵がほしい。

 2017年 11月  7日  ― イチョウが教える個性 ―
 盛岡市本町通の岩手医大教養部前にはイチョウの街路樹が並ぶ。大木の多い樹種だが、今のところは程良い高さと幹回りに管理されている
▼このイチョウたちも葉が黄色に変わり、風のあおりも向けてだいぶ落ち葉となった。ところが不思議なことに、一方ではまだ緑色を多く残している木も数本見受けられる。高層ビルがあって日照時間が極端に違う、あるいは樹齢にずいぶん差があるといった条件の差異が出る環境ではないのに黄葉の進行は一目瞭然だ
▼イチョウ科は古来樹種の一つで氷河期に絶滅する中、今日に命をつないだのがイチョウ。1科1属1種で、生きている化石と呼ばれる。落葉するが葉脈が平行している特徴がある。中国で再発見され日本には室町時代ごろ渡来したようだ
▼東京の街路樹が有名で都のシンボルとしているが、個人的には青森県深浦町の垂乳根(たらちね)のイチョウに圧倒された思い出が鮮明だ。近づいていくと林と間違えそうで幹回りが22aを超え高さも30b以上。縦横に広げた枝に葉を付けている時期は壮観だが、木の下に行くとさらに驚く。幾つもの気根・垂乳は樹齢1千年以上の歳月が織り成した造形美と感じ入る
▼これほどの個性ある木に出合うことは少ないが、他もよく見れば個性はある。その違いこそ生き物らしさだろう。

 2017年 11月  6日  ― 仏典が説く等活地獄 ―
 仏教の開祖釈迦も殺人行為を何度も戒めている
▼殺生罪を犯した者は「等活地獄」に落ちると説いた仏典もある。死後にこの地獄に落ちた人々は生前の殺意が消えず、鉄の爪を備え刀剣も持ち互いに殺し合う。獄卒(地獄の役人)も彼ら罪人を切り裂いて殺す
▼だがこの地獄では罪が消滅するまで死を許さない。獄卒が死者に「活(い)きよ」と叫ぶと皆が等しく、元の罪深い身体に活き返ってしまうのだ。その意味で「等活地獄」といわれる。他者の命の尊さを大事にするよう強い決意で自己変革をしないと、永久にこの殺意地獄から脱出できないのだ
▼釈迦は弟子や一般大衆にそれを教えたかったのだろう。現代の日本でも「命の尊さ」に目を開くことができず、地上にいながら地獄に絡め取られたままの人がいる。27歳の男が9人を殺害した神奈川座間の事件もそれを物語る
▼彼は1日に1人殺害と決め毎回目当ての1人に甘い言葉を掛け、アパートの自宅へ誘い込み巧みに睡眠薬や酒を飲ませて襲ったという。金銭を奪い女性には性的暴行も加えその場で殺害。遺体を切り裂いて頭部と骨だけを箱に残し内臓などはごみで出したという
▼見えない内面の殺意を誰かが見破れないものだろうか。犠牲者は皆若い。当人もご遺族も無念だろう。心から哀悼の祈りをささげたい。

 2017年 11月  5日  ― 盛岡手づくり村の夢 ―
 今年の盛岡市勢振興功労者の中に県南部鉄器協同組合連合会長の岩清水晃さんがいた。以前、米独のバイヤーらが岩鋳を訪れたとき、南部鉄瓶は世界ブランドだと感じた。「あなたがたの製品を買いたい」ではなく、「うちの店で売らせてもらえないだろうか」という口調だったから。
▼欧米人は日本の伝統の完成度に、機械製と思うらしい。見本市で実演すると手わざに二度、驚くという。アジアも熱い視線を注ぐ。盛岡手づくり村では中韓語の案内が流れ、岩手県は鉄器を縁に、中国雲南省に事務所を出そうとしている。
▼2000年に盛岡市で伝統的工芸品全国大会が開かれた際、小学生が大勢詰めかけ、名匠の技に触れた。あまりの行列に会場の床がへこんでしまい、大会関係者の語りぐさになっているという。当時の小学生はもう30歳近いだろうから、感動を胸に工芸界で活躍しているかもしれない。
▼盛岡手づくり村で先頃開かれた工芸品フォーラムでは、経産省に働きかけて全国大会をまた呼ぼうと声が上がった。手づくり村はどの観光客にも喜ばれる、まさに工芸品の迎賓館。来年は福岡県が全国大会に手を挙げているので、盛岡では再来年開催なら間に合う。
▼コンベンション効果で観光物産への波及は大きい。鉄と同じく気持ちが熱いうちに、打ち上げたい。

 2017年 11月  4日  ― 隣県住民参加の国盗り合戦 ―
 さながら戦国時代のようだが隣接する二つの県の住民有志が、勝てば県域を拡大できるというルールで年に1度、県境をまたぐ峠の道路などで綱引き大会を楽しむ県が増えている
▼岩手・秋田両県も西和賀町から横手市に及ぶ湯田温泉・巣郷で09年に初開催。今年も「いわて・あきた県境国取り合戦2017」と銘打ち先月1日に実施した。今回も双方が30人ずつのチームを結成。3本勝負で勝った方が県境の位置を示す「標柱」を相手側に50a移動する取り決めで臨んだ
▼好天に恵まれたこの日の結果は岩手が奮闘。09年出場以来初の3本全勝の壮挙に沸いた。全員が歓声を上げ標柱を秋田側へ移したのである。国取りが進んだわけだが占領ではないし、どちらかといえば学校の運動会を連想させる光景だろう。何よりも隣接住民の親睦が深まる意味は大きい
▼このイベントを他県に先駆けて1987年に始めたのは、静岡と長野で両県の県境にある兵越峠で毎年10月に、「峠の国盗り綱引き合戦」を開催してきた。静岡チームは「遠州軍」と称し浜松市民が集う。一方、長野の「信州軍」チームは飯田市民が支える
▼今年の合戦は先月22日だったが、衆院投票に台風襲来も重なり中止となる。昨年まで30回の成績は長野が17勝13敗とやや優勢だ。次回ゲームを楽しみに待とう。
  

 2017年 11月  3日  ― 強国路線は「もうたくさん」 ―
 中国の人権活動家の陳光誠氏が来日し、視覚障害の立場から盛岡市の福祉施設を訪れた。アジアのノーベル平和賞と言われるマグサイサイ賞の人。中国政府の迫害を逃れて米国へ。盛岡の関係者に、福祉をないがしろにする母国を憂えた。障害者団体はあっても名ばかりで、党の意に染まぬ組織はいらぬのだという。
▼中国共産党大会で第2期習近平政権が発足した。「強国路線」とか言っても、弱い者いじめでは大国の威信もあるまいが、欧米や日本は、ちょっと勘違いしている。中国は後進的で人権が踏みにじられているのではなく、むしろ先進性を誇って人権を軽んじている節があるから。
▼中国の指導者にすれば、言論の自由?議会制民主主義?だろう。「そんなの君らに説教されんでも、紀元前の『諸子百家』であらゆる思想はもう折り込み済み。そのうえで選んだ一党独裁だ。欧米人よ日本人よ、も少し大人になれば分かるからね」
▼会社の友好事業で1993年に中国取材したとき、しかるべき立場の人が、「功罪相なかば」と文革がらみで毛沢東を批判し、記事に名前もOKと言われ驚いたものだ。言論の開放が進んだ江沢民時代だった。
▼建国の父を超えようと野心満々の習近平だが、あのとき出会った親日的な人々にしたら「もう沢山」だよ、きっと。
  

 2017年 11月  2日  ― 将棋に文学に若い才能開花 ―
 各分野で少年少女世代のみずみずしい活躍が目立つ
▼棋界では史上最多の29連勝を達成した最年少プロ棋士・藤井聡太四段も中学生だ。午前10時に始めた対局が22時53分に終了したこともある。若いとはいえ体力も精神力もすり減らしたことだろう
▼でもその日の終局が深夜になっても、翌日が休日でない場合は学校へ行く。中卒で将棋に専念する道もあるが彼は熟慮し来春の高校進学も決めている。そんな私事にも駒裁きに似た冷静さを見せる
▼一方、文学界でも中学生作家がデビューしている。小学館が主催する小学生対象の公募企画に恒例の「12歳の文学賞」がある。鈴木るりかさん(東京)は小学4年生の時に、その第8回目の公募に「Dランドは遠い」と題する小説を応募。それが最高賞の大賞に輝く
▼物語はディズニーランドをモデルにしたテーマパークに、卒業前に親友と遊びに行きたいのにお金がない。そんな少女の気持ちを陰湿さもなくさらりと描き上げている。小4の初挑戦だったが筆力、構想力が秀逸と評価されたのである
▼彼女は翌年の第9回は小説「マイワールド」で、翌々年の第10回は「いつかどこかで」でいずれも最高賞を受賞。先月17日の14歳の誕生日には、3年連続大賞作品に書き下ろし3編を加えた短編集を刊行。晴れやかにデビューしたのだ。

 2017年 11月  1日  ― 下克上と「成りあがり」 ―

 下克(剋)上は日本では鎌倉時代から使われ始め室町から戦国の世で多く使われた
▼下位の者が上位の者を打ち倒して上に立つ意味で、剋の?(りっとう)は刀の意で克はかつ。武家社会の誕生とともに用いられ、戦国時代に散見されるのも当然だろう
▼メジャーリーグにならいプロ野球も日本シリーズ進出を決めるプレ試合の制度がセパ両リーグで導入されている。リーグ優勝してもここで敗れれば日本シリーズに出られない。今年はセ3位の横浜とパ優勝の福岡との間でシリーズが行われている。セ3位球団のシリーズ進出は初。2位、1位を短期決戦で破りマスコミでは下克上の言葉が叫ばれ活字が躍った
▼シリーズは今、福岡が先行し、横浜スタジアムに舞台を移している。球場前に6年前まであった洋食「梅香亭」はハヤシライスが特に人気の老舗だった。この店の2階で練習していたのがアマチュア時代の矢沢永吉さん。矢沢さんが好んで食べていたのはカレーライスで、学生時代に初めて行った時にまねてカレーを注文した
▼矢沢さんは広島で生まれ恵まれない幼少期を過ごして上京。「勝ち組とか負け組とか流行(はや)っているけど、スタート切っているかどうかが僕は大事だと思う」とは矢沢さん。他人とではなく自分と戦った「成りあがり」の説得力がある。
  

2017年 10月の天窓へ