2017年12月の天窓


 2017年  12月  15日  ― TPPの前途に多難 ―
 日本など11カ国でTPP(環太平洋経済連携協定)が大筋合意した。リーダー格の米国が抜け、日本がまとめる中小国だけのスタートには不安もあるようだ。
▼1世紀前の国際連盟も、言い出しっぺの米国抜きで発足した。第1次大戦の惨禍を繰り返さぬようウィルソン大統領が提唱したのに米議会が批准せず、英仏日伊の常任理事国で。共産ソ連も最初は除かれ、その後の世界を動かす両輪がそろわぬ連盟は多難だった。
▼事務次長の新渡戸稲造らの努力で小国の紛争は調整できたが、列強の利害による戦火には無力だった。日独伊ソが侵略戦争で順に脱落すると有名無実化し、第2次大戦を防げなかった。自由貿易の枠組みのTPPにそのまま重ねることはできないが、どちらも国際協調において日本に重責を求めた点は似ている。
▼トランプ大統領の米国抜きTPPなら将来、中国が加盟した場合、GDP差で日本は主導権を譲らざるを得ない。経済規模は当初の枠組みの半分以下で、各国にどれだけ日本製品の購買力がありや、輸出したがる方が多いのでは。農業や医療など賛否があった協定も、合意水準の低下で国内の危機感は薄らいでいる。
▼なおカナダはもやもやしているようだし、頼れる大国はない。日本の力が掛け値なしに試されてピーピー言わぬように。

 2017年  12月  14日  ― 被爆女性にノーベル平和賞 ―
 カナダ在住のサーロー節子さん(85)は、13歳の時に広島で被爆
▼独りぼっちでがれきの闇に閉じ込められていたら、「光の方へはい上がれ」と誰かが言う。隙間から差す光を目指しはい上がり助かる。だが姉と4歳のおいを亡くす。彼女はその悲哀を抱き成長。やがて在日カナダ人と結婚
▼カナダへ移住後も被爆体験を語り「核廃絶こそ平和への光」との心情を訴え続けてきた。近年は国際的な民間組織(NGO)の「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN=アイキャン)」にも参加。核廃絶運動に力を注いでいる。今年7月にはそれらが実を結ぶ
▼宿願の「核兵器禁止条約」が国連で採択されたのである。10月には採択に貢献したとして「ICAN」に今年のノーベル平和賞授与が決定。今月10日にノルウェーで行われた平和賞授賞式では、「ICAN」のベアトリス・フイン事務局長(女性)と、サーロー節子さんの2人にメダルと賞状が授与された
▼スピーチでは局長だけでなく被爆者の節子さんも登壇。「核兵器は必要悪でなく絶対悪だ」と指摘。禁止条約に冷淡な核保有国とその傘下にいる日本などを「共犯者」と断罪。13歳の脱出体験に重ね「今、私たちにとって核禁止条約が光です」と強調した
▼被爆者で85歳の力強い演説は世界の人々の胸を打ったことだろう。

 2017年  12月  13日  ― 今年の漢字は「北」に ―
 恒例の今年の漢字は12日、京都・清水寺で貫主が揮毫(きごう)し「北」と発表された。北からまず思い浮かべるのは北朝鮮だろう。今年の北朝鮮は核開発、ミサイル開発の度重なる実験で国際社会からかつてない非難を買い北風$ァ裁を浴びている。金正恩委員長の異母兄金正男氏がマレーシアで暗殺されたのも今年2月だった
▼毎年の流行語、新語はそのものの言葉なので想像にはさほどの苦労もいらぬが、その年を象徴する漢字1字が何になるのかの予想は難しい。今年もあれこれ考えて絞った「排」は外れだった
▼米大統領の入国制限政策、地球温暖化対策など国際協調への異議に限らず、欧州でのテロや難民、EU内の経済格差などによる保護主義と、世界では排除主義が拡大している
▼多くは自己第一(ファースト)に立脚する。都民ファーストを唱えた成功に気を良くした都知事。国政の場での勢力を伸ばそうとして希望を抱かせながら、しぼんだのはファーストと表裏の「排除」の論理だった。排除する壁は分断となり、作った側も反対側から排除される。排除されるべき排除は多そうだ
▼北朝鮮による拉致被害者増元るみ子さんの母親信子さんがこの日90歳で死去された。半島の分断がもたらした悲痛から、被害者と家族を早く解放させなくてはならない。

 2017年  12月  12日  ― 今年もジョン・レノンの歌 ―
 この時期になるとやはりジョン・レノンが歌う「ハッピー・クリスマス」がよみがえる
▼冒頭部分の「クリスマスがやってきたね 今年はどんなことをしたんだい」の一節は暗唱できる人も多かろう。ここは「行く年を顧みてごらん」と語り掛けているのかもしれない。直接的にはレノンがわが子2人に声を掛ける場面だ
▼英国でザ・ビートルズの主要メンバーとして活躍していたレノンは先妻と離婚。前衛芸術家・音楽家としてロンドンで活動していた東京生まれの小野洋子と、彼女の個展会場で出会い交際を重ね1969年に再婚する。歌詞には先の冒頭部分の前に次の1行がある
▼「ハッピークリスマスキョウコ ハッピークリスマスジュリアン」と。レノンが娘と息子に問い掛ける光景が目に浮かぶ。レノン一家は1970年のビートルズ解散後に、活動の舞台を米国に移す。当時は南北ベトナムによる内戦に米軍が介入。戦況が泥沼化していた頃だ
▼71年末発売の先の歌もそれを背景に、家庭的なぬくもりの対極にある戦争も直視。「いい年になるよう祈ろうよ 恐怖がない世の中であるように」と歌い皆が望めば「戦争は終わるよ」と繰り返す。反戦活動も展開。40歳の時に銃弾が彼の命を奪う
▼今84歳の妻ヨーコは遺志を継ぎ愛と平和を発信しつつ生き抜いている。

 2017年  12月  10日  ― 盛岡に文才の葉脈 ―
 今年の全国高校文芸コンクールは県勢が3部門最優秀賞の快挙。小説で盛岡三の佐藤風花さん、文芸部誌で同校の「黎 第十七号」、短歌で盛岡二の牛越凜さんが各部門の頂点に。夏には沼田真佑さんの芥川賞もあり、盛岡は文学の当たり年だった。
▼年を取ればとかく、「若い者はさっぱりだ」と繰り言が多くなる。自分は大したことないので、そんな偉そうな口はきけないが、新刊本をめくり、「とてもいいことを書いてる。著者はどんな人か」と略歴を見れば、ときに1980年代生まれとかで、びっくりさせられる。その若さで、よくこんな重々しいことを書けると。
▼賢治がなぜ10歳先輩の啄木にあまり触れなかったのか、ある説を聞いたことがある。当然、歌集は買って憧れていたが、怖い父にばれると、「そったな本買うため盛中さやってるんでねのだ」と叱られるので、口ごもったという。
▼文学史に権威づけられる啄木短歌も大正時代は、今でいうちょっとアブナいミュージシャンのCDみたいなものだったのかもしれない。受賞した牛越さんは、啄木と母校の先輩の歌人の大西民子に新鮮な目で敬意を払う。
▼読者の方も甲子園の野球のように、「高校生文芸だからこそ読みたい」となればいい。それが若葉の文才を光合成し、大樹に育むことだろう。

 2017年  12月  9日  ― 校則めぐる生徒の悪戦苦闘 ―
 学校の先生は教える立場だから、校則に掲げる原則を曲げない姿勢はあってもいい
▼ただ教えられる側への配慮を欠いた原則強要は生徒を困惑させてしまう。そんな事例が国内外で目立つ。生まれた時から髪が茶色だった大阪府立高の女子生徒は教諭から「茶髪はダメ。黒に染めなさい」と言われ染色を繰り返す。次第に頭髪はボロボロになる
▼染めを休み登校すると教諭は「黒染めをしないなら学校へ来る必要はない」とまた強要。度重なるその脅迫に無呼吸に陥ったこともある彼女は不登校になる。案じた母親が相談した弁護士の判断で、高3の彼女は今年10月に大阪府を相手に賠償を求め大阪地裁に提訴している。法の裁きに注目したい
▼海外でも英国デブォン州のある学校では猛暑が続いた今夏、「半ズボンで通学したい」という男子生徒に先生が言う。「校則では男子は長ズボン、女子はスカートか長ズボン。これが制服です」と。却下された男子たちは女性校長に直談判する
▼校長は「校則違反はダメよ。でもそんなに言うならスカートで来たらいいのに」と冗句でからかう。男子一同は言質を取ったとし順次、姉妹や近所などから借りたスカートをはしゃぎながらはいて、笑顔で登校する。校長はそれを見て「校則変更を考慮します」と真面目にコメントしている。
  

 2017年  12月  8日  ― 吉田類の酒蔵放浪記 ―
 テレビ番組「吉田類の酒場放浪記」は根強いファンが多い。人柄が画面からこぼれ落ちる魅力に吉田さんの代役はいない
▼国内の多くの酒場を訪ね数百あるいは千種以上の銘柄を試したはずの吉田さんが選んだ酒蔵の地酒を来年1月から毎月届ける「吉田類のにっぽん全国酒蔵巡り12カ月頒布会」の注文が受け付けられている。東北からは3蔵元が選ばれ、岩手からも酔仙の名がありうれしい。12蔵元を見ると、飲んだことのある蔵元は半分に満たない。地酒というだけに全国各地に蔵元があり、大半が地元で消費されるような製造の特徴を表している
▼以前はよく日本酒好きの内輪で地酒の会なる酒席を設けていた。旅の土産に買ってきて親しい仲間と語り合いながら飲むのも興。流通の発達した今は大手じゃなくても離れた土地の地酒を味わうことができる
▼食べ物も飲み物も流通のおかげで新鮮なもの、珍しいものが手に入れやすくなった。それはありがたいことだが、一方ではその土地で初対面したり再会のため訪れる楽しみの機会が減じられる。その土地の郷土料理に鍛えられた地酒を楽しむのが一番のぜいたくだろう。離れた土地の銘柄が気に入ったら蔵元の土地を訪ねてみるのが第2章か。酔仙を郷土料理と楽しもうと気仙を訪ねる人が増えてくれればと願う。

 2017年  12月  7日  ― 松元氏の「憲法くん」独演 ―
 芸人の松元ヒロ氏は65歳だが、舞台での演技ぶりは若々しい
▼今は憲法施行から50年目の1997年に初演し大受けした一人芝居「憲法くん」を各地で披露している。自身が憲法になり切って壇上を前後左右に動き、身振り手ぶりを交えしゃべり続けそれが人気を博している
▼かつては鋭い政治風刺が反響を呼んだコント集団「ザ・ニュースペーパー」で活躍したコメディアンでもあるこの人。憲法をネタにしたこの一人芝居でも経験が開花。政権批判の冗句も織り込んで笑いを誘う。独演冒頭では「私は姓は『日本国』で名は『憲法』と言います」と名乗る
▼次いで「だから《憲法くん》と呼んでね」と言い「でも年は70歳だからおかしいかな」と頭をかいて本題に入る。「実は憲法を作り変えるという動きがある。まずは9条に軍隊を置く根拠となる条文を加えるという」と
▼「安倍総理は現憲法は時代に合わないと言うが、憲法の重要な役目は政権の非を縛ることにある。政権が国民多数の合意もなく憲法を縛るのは邪道だ。発想があべこべだ」とも松元氏は指摘する。同氏が声高らかに憲法の前文を暗唱したことも聴衆の心を打ったろう
▼氏の過去の思想のぶれに懸念の声もあるが、憲法判断は妥当であろう。NHKも15年5月3日の報道で「憲法くん」を紹介している。

 2017年  12月  6日  ― 投票棄権者の2世、3世 ―
 県立大の齋藤俊明教授が選挙に関する大学生の意識調査をしたところ、「投票に行く」と明確な回答はわずか36・7%。県選管のまとめも似たような傾向だった。10月の総選挙後「平成デモクラシー」の見出しで、約30年間の県内衆参選の絶対得票率を計算してみたら、確かに近年は棄権者の割合が半分に迫っていた。
▼政治学者ではないので難しい分析はできないが、今の大学生の親の世代に棄権者が多いからだろう。国会の世襲議員に眉をひそめる人がいる。国民の方も棄権者の2世3世化が進んでいるのでは。
▼棄権の心理は学問的に解けば難しい。しかし意外に単純な話、家庭によって「人前で政治の話をするものでない。そういうことで大声を出すな」としつけられる人は多い。
▼投票率低下は先進国共通の問題。社会が高学歴化すれば人は抽象的な論議を好み、理論より経験知がものを言う現実政治を忌避し出す。働き盛りの職業人は専門知識の習得と人間関係のストレスに悩み、あすの仕事に無関係の政治日程など覚えていられない。この世には政治よりはるかに大事な真実があるという人も多い。例えば趣味とか。
▼ただ投票率が5割を切れば、もはや民意は反映されまい。その隙に危険な思想に次の世が襲われぬよう、18歳投票権を機にもっと対策を。

 2017年  12月  5日  ― 教育先進国スウエーデン ―
 スウェーデン王国では、6歳児までの幼児教育がほぼ無償で、義務教育も高校も大学は博士課程も含め授業料は無償だという
▼この教育先進国には「統治法」や出版・表現の自由に関する「基本法」など個別の法律はあるが、統一した憲法法典はない。王国だが王は「王位継承法」に基づき国の象徴として儀礼的職務だけを行う。今秋はこの国に魅了され国柄や歴史の解説書を読んでいた。そこへ興味深い資料が舞い込んだ
▼7月に衆院憲法審査会が、調査団(森英介団長)を欧州の英・伊・スウェーデンの3カ国に派遣。一行は10日間にわたり各国の改憲に伴う国民投票制度について、専門家と面談。現状や課題などを聞いてきた
▼森団長がまとめたその調査報告書が先月末日に発表されたのだ。スウェーデンの項には調査主題ではない「教育無償化」も詳述され参考になった。それによると同国の無償化政策には明文化した規定はないという。それが不要なほど定着しているのだろう。反対する政党もないという
▼子どもの就学が親の経済状況に左右されてはならないという考え方が、行政にも国民にも広く普及。それが無償化を支えているのだという。今は各地方が国の方針の範囲で自らの裁量で無償化を実施している。憲法法典がない国の独創的行政に今後も注目したい。

 2017年  12月  4日  ― 山本が日本代表初選出 ―
 来年のサッカーW杯ロシア大会の1次リーグ組み合わせが、日本時間の2日深夜に決まった。リーグは4カ国ごとに8組に分かれるが、2大会ぶりの決勝トーナメント進出を目指す日本がどの国と一緒かが注目だった
▼結果は欧州のポーランド、南米のコロンビア、アフリカのセネガルと同組。いずれも決定力のあるストライカーを主力に抱える強敵だ。コロンビアには14年大会で完敗。雪辱を晴らすに初戦は申し分ない
▼以前にも本欄で触れたが、W杯は強豪や格上ばかりの国が大半なことは自明。ただし、番狂わせがあるのもサッカーの面白さ。これから半年余りの間に十分な対策と戦術を練り上げてほしい。とはいえ戦うのは代表選手。個々のレベルアップがチームの向上につながる
▼今月の東アジアE│1選手権に向けた代表に盛岡商出身の山本脩斗選手が初選出された。大学卒業後にJリーグの磐田に入団も、けがにコンバートもあり主に控えに甘んじたが、14年移籍した鹿島では左サイドバックのレギュラーをつかんだ。代表入りを期待していた地元としてはようやくという思いが強い
▼代表のまだ固定しない段階だが、山本選手には32歳でめぐってきたチャンス。鹿島の小笠原満男選手(盛岡出身、大船渡高卒)以来の県人W杯となれば楽しみも増す。

 2017年  12月  3日  ― 宮古室蘭フェリー就航へ ―
 かつて北海道東部方面に5日ほど滞在する所用があり、移動に苦労したことを思い出す
▼訪問先の人に教わり花巻空港から飛行機で新千歳空港へ。そこで乗り換え女満別空港で降りて、迎えに来てくれた先方の車で現地へ向かう。だがなかなか着かない。こちらは焦る。先方は察知し「当地は広いからこの程度は普通。気にしないで」と慰めてくれる
▼70分も掛けて到着した後も所用対応で動くたびに彼の車の世話になる。詳細は省くが同じ所用で数年後に行った時は、マイカーで青森港まで走り、そこからフェリーで海峡を越え函館港へ。再びマイカーで道東へ向かう。長距離で疲労はあったが気遣いがないから心地良かった
▼さて大震災からの復興道路でもある県内三陸沿岸道路、宮古〜盛岡横断道、釜石〜秋田横断道が32年度完成を視野に整備が急ピッチで進む。南北縦断と東西横断の高規格道路が整うわけだ。車走行の距離も時間も短縮される
▼頃やよしとばかり川崎近海汽船社が昨年来準備してきた岩手宮古〜北海道室蘭を結ぶフェリーの就航が、来年6月22日と決まった。1日1往復で毎日運航(宮古港午前8時発。室蘭港20時発)。定員6百人でトラック69台乗用車20台積載可。運賃は大人が6千円からで等級がある
▼今度は所用ではなく観光旅行で船を利用したい。
  

 2017年  12月  2日  ― ミグとゼロの教訓 ―
 1950年開戦の朝鮮戦争ではプロペラ機に代わりジェット機同士初の空中戦が起きた。
▼米機の搭乗員は「のろくさいロシア人にジェット機など」とあざ笑っていたが、結果はソ連機の圧勝。先の大戦で破ったドイツの技術をものにしていたからだ。消沈する部下を古つわものがこう、たしなめた。
▼「10年前と同じだ。パールハーバーまで俺たちも『日本人にまともな飛行機など作れっこない。どうせ紙と竹製で飛ぶのがやっと、たこに毛の生えたもんさ』と鼻唄交じり。ところが戦争が始まり、あの『ゼロ』と『隼』が襲ってきた。バタバタ撃ち落とされるのは俺たち。のろくさいロシア人?お前らの方が10年間、何の進歩もねえってことよ」
▼よく日本は米国の巨大な物量を知らず無謀な戦争を始めたと言われる。しかし米国もまさか日本が自分たちより優れた飛行機を作り、空母艦隊で攻めてくると思っていなかった。最終的には米機が勝ったが、緒戦では星マークの翼が次々と散った。ちなみに朝鮮戦争でソ連製「ミグ15」にようやく勝った「F86」は、71年の雫石事故で県民の記憶に焼き付いた、あの機体。
▼現在の危機に、北朝鮮にこちらの力を見せつけろとは言わない。しかし相手の武力はよく見て知る、それが彼らの無謀な挑戦を退ける基本だ。

 2017年  12月  1日  ― ホームレス男性の善意 ―
 助け合いの歳末の月を迎えたが、先日はNHKなどが米国発の善意の逸話を報道した。それは助け合う心がにじむ実話で日本でも反響を広げている
▼今秋10月のある夜、27歳の女性Kさんは高速道路をマイカーで走り、高速の出口でガソリンが切れてしまう。ここからドラマのような現実が始まる。車は動かなくなりその上、現金も持っていない。車から降りて近くの給油スタンドに相談に行こうかと迷いながら歩き出す
▼近くにいてその経緯を見ていた34歳のホームレスの男性Jさんは、事情を察知しKさんに声を掛ける。「車に入りドアをロックして待っていて下さい」と。彼は日本円で2千円余の「最後の生活費」全額で買ったガソリンを缶に入れて戻り、車に給油してくれる。だがKさんに一円も要求しない
▼無事帰宅もできた彼女は野宿をして暮らす彼の善意に泣き、交際中の男性と共に恩返しを決意。お金も返し日用品も贈呈したほか募金サイトでJさんの生活支援のため1万ドルを目標に寄付を呼び掛ける。反響は広がり目標はすぐ突破
▼開始から2週間経過の先月下旬にはおよそ34万ドル(約3800万円)を超えている。受け取った彼は感謝しつつ人生を変えると誓う。元救急医療隊員だったことも思い出し普通に働くと決め、野宿にピリオドを打ったという。

2017年 11月の天窓へ