2018年7月の天窓


 2018年  7月  31日  ― 生産性持ち出す差別 ―
 神奈川県相模原市の障害者施設・津久井やまゆり園に元職員の男が押し入り19人の障害者を殺害するなどの蛮行に及んだ惨劇から2年が経過した。被告の裁判はこれからだが、今月13人の死刑囚に死刑が執行されたオウム真理教の事件と同様、命を落とした方はもちろん、理不尽な被害を受けた人々の傷は時の経過だけではいえない
▼被告は「障害者なんかいなくなればいい」などと供述し、犯行前にも、障害者を皆殺しにすべきだ、多くの公金がかかっているなどといった考えを示していたという。自身の置かれた境遇も背景にある身勝手な主義主張だが、根底に障害者への強い差別があったと思わざるを得ない
▼障害者福祉には税金が投入され、多くの善意に支えられている。そのような負担が被告には無駄に見えるというのだろう。似たような話があったと思えば、自民党の杉田水脈(みお)衆院議員の月刊誌への「『LGBT(性的少数者)』支援の度が過ぎる」と題した寄稿だ。そこでは「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」「そこに税金を投入することが果たしていいのかどうか」と展開した
▼生産性をを基軸にLGBTを社会的支援が必要な立場の名詞に置き換え同様の論調を展開しかねない。人生観では済ませない危うさを感じる。

 2018年  7月  30日  ― 官僚幹部の逮捕相次ぐ ―
 文科省は教育と科学技術などの総元締めを担う
▼国民の中には最近まで《立派な人格者がそろっているお役所》と想像していた人もおられよう。ところが今月はその文科省で地位の高い人が、他者に便宜を図りお礼に賄賂をもらったという疑惑もはらんだ不祥事が続いて2件発覚。失望した人も多かろう
▼4日には同省の佐野太前科学技術局長が逮捕された。前局長は昨年5月に東京医科大首脳から懇願されて、同医大を国の補助金支援対象校にするため尽力した。一方、今春2月に前局長の子息が同医大を受験。不足点数に大学側が加点し裏口入学をさせ、受託収賄容疑で逮捕されたのである
▼さらに今月26日には同省の川端和明国際統括官(局長級)が、ここでも同医大に絡み収賄容疑で逮捕された。2016年11月の東京医大創立百周年記念式典に関し、前項の事件でも医大側の立場で口添えし有罪になった人物が発言。式典に宇宙飛行士の講演を組みその手配を川端氏に嘆願したのだ
▼口説くだけでなく飲食の接待も続く。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の理事でもある川端氏は手配に動く。この2年前の式典準備にまつわる過去の贈収賄も裁かれた7月だった。暗い話題の上に天空は大荒れ。せめて8月は暑くても夏休み中の子らが、元気にはしゃげる日々だといい。

 2018年  7月  29日  ― マルクス生誕200年 ―
 話題の映画「マルクス・エンゲルス」を見た。今年はいろんな周年があると思ったら、マルクスも生誕200年だそうな。左や右と、けんのんな話も野暮だから、日本経済にとり共産主義とは何だったのか、ひとつ思い出した。
▼盛岡にダイエーありし日、創業者の中内功氏に会う機会があった。「流通革命」を唱えた財界の巨星は、フィリピンの戦場に地獄の泥をすすったせいか、大陸での毛沢東の戦ぶりに、敵味方超えて共感していた。無論、左翼にはあらず。「わが安売り哲学」など著して関西の商魂たくましく、スーパーによる価格闘争論をぶちあげた。
▼青臭い頭にゃ理解が及ばぬ。消費者のため阪神大震災とも闘ったカリスマ経営者を前に、核心を聞いた。残念なことにモゴモゴとはっきりお答えを聞き取れず。晩年の毛沢東並みに、長期政権だなと思った。
▼今年の経済同友会の会誌には、本県の運輸に関わり深い冨山和彦副代表幹事が、マルクス主義の破たんについて論評している。「歴史の教訓は、インテリが頭で考えた特効薬的な解には懐疑的であれということだろう。智恵の源泉はやはり現場にある」として、「次の資本主義」の創造を求める。
▼栄華の大英帝国を脅かした「資本論」も今は昔。経済、思想、宗教で角が立つ世界を丸くするのは難しい。

 2018年  7月  28日  ― 夏の美味ウニを味わう ―
 ウニは漢字で海胆、雲丹とも書く。この海の美味は夏のイメージがあるが、中春に産卵が始まるからなのか、俳句の季語では「春」になっている
▼でも一般的にはおおらかに産卵ではなく美味の光景や、それに連なるウニの棘(とげ)を詠む句が多い。ネットの「俳句道場」投稿歌にも「海女小屋や海胆啜(すす)る海女眠る海女」(てまり作)「美しき海女には海胆の棘がある」(古井咲花作)とあった
▼季語論はともかくとして今夏も一昨日、わが家にもイメージ通りの美味が届いた。三陸海岸へ子どもたちを連れ海水浴に行き、ご縁があって親しくなった漁師さんとその連れの方にお会いしたのは36年前だ。以来欠かさず毎年夏にはウニの瓶詰めを、秋には岩泉産マツタケを届けてくださる
▼先方はよく「商いというのは飽きないで続けるのが大事なんです」と笑う。だが当方は何度も転居をしているし迷惑な客のはず。でもその片りんも感じさせない。その誠意百パーセントに恐縮し電話の向こうに深々と頭を下げてしまう
▼そのすがすがしいやりとりが、瓶のふたを開け皿に移したウニの味を引き立てる。まず初日夕食はとろりとした肉片のみを口に運び懇ろに味わう。ついでご飯にウニを載せてかみしめる。翌朝はごはんに焼きウニを添える。数日は工夫が楽しくなる。  

 2018年  7月  27日  ― 暑さ心配な東京五輪 ―
 夏の暑さが毎年厳しくなる気がするのは錯覚だろうか。今年の日本はずいぶん厳しく、連日のように「危険な暑さ」という注意がテレビ画面に出てくる
▼夏休みの子どもは屋外でレジャーやスポーツ、遊びに夢中になるのが定番だったが、このままでは自粛のための休暇になりかねない。高校野球の甲子園もインターハイも夏休み期間を利用して開催する日程が組まれ、炎暑との闘いを強いられるのが現実だ。高校生には夏の全国大会で競技生活を終えるアスリートは多い。すなわち、悔いを残さない全力プレーで臨む精神状態の高校生が多いということだ。無理を押してプレーする。日頃の練習で鍛錬しているとはいえ、精神的緊張感と重圧で疲れは増すはず。熱中症をはじめ暑さで倒れる悔しさは味わってほしくない
▼2020年の東京五輪開幕まで2年を切った。10月の体育の日は69年東京五輪に由来する。四季のはっきりした日本ではスポーツの秋と言われるほど、冬季スポーツを除けば大半は秋の気象条件が望ましそうだ。だが、世界各地で開催される五輪はすっかり真夏の祭典となった
▼2年後に今年のような炎暑で東京五輪が開幕したらと想像すると逆に寒気がする。アスリートは言うまでもなく大会運営関係者、観客の体調への対応に可能な限りの準備が必要だ。

 2018年  7月  26日  ― 新経済圏TPP再検討再検討を ―
 米国もオバマ政権時代には、世界に向ける融和なまなざしがあったが、トランプ大統領が進める米一国主義は荒っぽい
▼底流にあるのは不動産業で鍛えた人らしく利害得失の哲学らしい。《あの国は米国にとって利があるか、害があるか》と。日本に対しても「米国に守ってもらいたければもっと金を出せ」「米国軍隊は米国を守るためにある」と本音もさく裂させる
▼日本や欧州の自動車メーカーが米国で車を売るから、米国メーカーは苦境に陥っているとも指摘している。そのうっぷんから「海外メーカーは米国から出て行け」と言い出し「外車には高い関税を掛ける」と平然と嫌味まで添える
▼一方、21世紀に入り環太平洋諸国の中から賛同国間で、全品目の関税を段階的に無くそうという動きが始まる。06年にはシンガポール・ニュージーランド・チリ・ブルネイの4カ国が加盟国となり協定が発足。これが後のTPP(環太平洋経済連携協定)の母体となる
▼さらに米国、日本など8カ国が加盟し全12カ国が15年10月に趣意を大筋で了承。細目も練られていく。関税を気にせず人と物と金が国境を越え交流する経済圏の誕生である。だが17年1月に発足したトランプ政権はこれに反対し、TPPから離脱する
▼事が暗転して一年半。アジアから反転の旗が挙がらないか。

 2018年  7月  25日  ― カジノは鉄火場 ―
 公営ギャンブルと言えば社会通念上、別に差し支えない。岩手県はじめ全国にあり、健全に運営されている。しかし昔かたぎの鉄火場なる言葉を聞くと、どうも丁半ばくちを連想してしまう。そんな賭場は御法度だ。
▼カジノを含む統合型リゾート法案が成立した。西日本豪雨で大変なのに何やってんだと、野党の安倍さんへの不信任は分かるし、国民の反発も強いのに。
▼どこに最初できるか知らないが何やら想像つく。初めのうち、もの珍しさではやるだろう。AIを駆使する仕掛け人みたいなのが、信長や幕末の志士のつもりになる。「リスクを恐れ、したり顔の批判より、男ならでっかくあほうやったるで。汗かくヤツが偉いのよ」式に吹かし、風雲児を気取る。
▼射幸心で世間を騒がせながら、10年もたてばサプライズは薄れ、外国人は移り気、やがて経営は左前になる。運営業者はお手上げ、政財界がらみの変な話、陳腐化した施設の負債や雇用がどうの、閉鎖か存続かとか、ぞろぞろぞろ。
▼バブル期のリゾート開発の残骸を抱えた地方の苦しみが、またのしかかるか。残るは治安の悪化、人心の荒廃、空洞化した経済、廃虚にならないよう。誘致を考えている自治体は頭冷やして慎重に。かじ取りを間違うと赤字のやけどかも。カジノはやはり鉄火場だろう。

 2018年  7月  24日  ― 孤独に政治が立ち向かう ―
 テリーザ・メイ英国首相が意表を突くような「孤独担当大臣」ポストを新設。初代大臣に下院議員のトレイシー・クラウチ女史を任命したのは今年1月だ
▼日本でも話題になったがかの国では、数カ月の過程で「孤独」の意味に「煙害」を含めた事例があったという。悪ふざけの拡散だろうがいただけない。せめて新ポストの意義として《寂しげに暮らす孤独の人々に国政の場から温かな光を当てる》とでも表現してほしい
▼「孤独担当大臣」そのものが画期的なのだから、真意が人々に正しく流布し英政権が範となる実績を示すなら、導入する国も増えることだろう。この新ポスト構想は英国の労働党議員で、孤独問題に造詣が深いジョー・コックス女史が「孤独委員会」を立ち上げたことに由来する
▼だが当時の英国はEU離脱問題で、離脱派と残留派に分裂し激しい争いとなる。その渦中で残留派のコックス女史は離脱派の右翼活動家に暗殺され、新ポスト構想も棚上げになる。だが亡き女史とは政敵関係だったメイ首相は立場を超え心を開き、むしろ信念を貫き散った女史の先見的構想を評価したのだ
▼冒頭に述べた通りメイ首相は亡き女史提唱の「孤独担当大臣」を、自らの手で英国政権に誕生させたのである。「孤独」に政治が立ち向かう姿を世界が注目していよう。

 2018年  7月  23日  ― 夏の甲子園代表は花巻東 ―
 スポーツは筋書きのないドラマとは言い古された感もあるが、特に高校野球を見ていると、そんな展開を期待してしまう
▼夏は100回目となる今年の甲子園を目指した岩手の戦いはきのう決勝戦が行われ、花巻東が盛岡大附を破り3年ぶり9回目の出場を決めた。甲子園常連の強豪同士の決勝戦にふさわしい攻防を見せた
▼今年はシード校の多くが早い段階で姿を消し波乱含みの序盤だった。中盤以降も劇的な展開が何試合もあり、めまぐるしく変わる展開に勝負はまさしく下駄を履くまで分からないと見る側も実感させた
▼振り返ると準々決勝は古豪盛岡商が9回に満塁本塁打で3点リードするも、盛岡大附がその裏に粘り意表突く本盗で決勝点を引き寄せサヨナラ勝ち。盛岡市立は序盤の大量リードを黒沢尻工に追い付かれて延長戦に入り劣勢かと思われたが、37年ぶりの4強入りをつかんだ。第1シード花巻東はきわどい試合を勝負強く勝ち上がり準決勝も古豪福岡にリードを許したまま迎えた終盤8回、集中攻撃で一挙逆転するスリリングな展開を見せた
▼スポーツではデータ処理や映像処理の進化による分析力の向上で戦い方が変わってきた。だが、データ上の分析を越えた全力プレーが人々に感動を与える。決勝も今大会を象徴するドラマが最終回に待っていた。

 2018年  7月  22日  ― だまされる側との距離 ―
 特殊詐欺は巧みに誘導し大金をだまし取る
▼オレオレ詐欺が主流だった当時から「だまされないように」と繰り返し警戒され注意もしてきたのだが、詐欺犯はそれをあざ笑い策を練りながら各地に出没している。今年上半期6カ月を省みても彼らの動きはさほど衰えていない
▼岩手県内でもオレオレをはじめ架空請求、税金や保険料の還付、融資保証金貸与などの手法を使い分けた詐欺が10余件発生している。被害額は5278万円に上る。そこには1件だけで3700万円もだまし取られた悲劇も含まれている
▼誰もが自分も狙われているという意識で、掛かってくる電話には誰にも丁寧な応対を心掛けつつも、まれに混在してくる1本の悪意の電話を見破る構えは崩さないようにしたい。当方も反省を込めてその点を改めて自身に言い聞かせている
▼実はまさか自分にはそんなだましは来ないだろうという意識が潜在していたことに、つい3日前に気付かされたのである。机上に置いていたスマホにメールが着信。開いた画面には何と「2億円が当選しました。おめでとうございます」と書いてあったのだ
▼無意識にホホーと言った後「例の手口だな」と声に出すまで1分は無言だったことを恥じたのである。無言が続けば高額の手数料をだまし取られる側になるからである。

 2018年  7月  21日  ― 小泉・小沢のタッグ ―
 自由党の小沢一郎氏が政治塾に自民党元総理の小泉純一郎氏を招き、長年の宿敵が「原発ゼロ」に手を組んだ。自分は「小沢VS小泉政局」に担当者だったので、ご両人に思い入れがある。
▼いずれにも本気で向かったはいいが、あっさり一蹴されてしまい、ほうほうの体で逃げ帰った憶えがある。トホホの元番記者が、ぶっちゃけて申せば、どちらも実に良い名前をお持ち。
▼ふたりの姓名をつらつら見るに、「小」「一郎」が通じ合い、「沢」「泉 純」がはさまってる。小川のほとりに男の子がいて、さらさら、こんこんと湧く清水みたい。ライバル同士ぎらついた野心と裏腹に、ちと爽やかなお名前が、こわもてぶりを和らげる。
▼慶大卒の同い年、自民党の頃の派閥から与野党へ。不倶戴天の両雄は国民の印象において、実はコインの表裏だったのか。原発ゼロのタッグは福島の教訓を痛感したのは当然ながら、安倍総理をけん制する狙いがあるだろう。政策、政略的に思うところはあろうが、互いに長く政権党に重きをなした以上、日本の原子力政策の是非を核の問題や安全保障との関わりを含め、歴史的に語り合ってほしい。
▼ふたりのキャラは皆さんよくご存じ。何を聞いても驚かない。少々のことでは。「泉」と「沢」の間柄で一路、国民に選択を問うてみたら。
  

 2018年  7月  20日  ― 人生往復の旅をしたい ―
 7月も下旬になり暑い日が続く。気象庁は特に今夏は気温が高くなると予測。それが現実になっている
▼高い気温の中で暮らす人が熱中症になりやすいことはいうまでもない。その症状が出ても入院して治療すれば完治させることができる。素人の当方はそう思い込んでいた。ところが他県在住の友人がなぜか熱中症を伏せて、慢性頭痛で通しているというのだ
▼そんな小さなうそをつくのは、当人にはかなり重荷になるだろうに、なぜか荷下ろしできないらしい。熱中も頭痛も自分の世界だけの秘め事なのだろうが、この友のような人にも人生仕上げの頃には、小さなうそも消去したくなる時がくるような気がする
▼そう言いながら当方のように子どもの頃の小6の時に、祖父母の巧みな誘導で誰も知らない小さなうそを白状。お金でいえば今の1円玉程度の稚拙なうそを葬った日の思い出は、顧みると晴れがましく思えてくる。直後にくぐった中学校の門も懐かしい
▼70歳代に入って以来あの門前で来し方を顧みる機会はあるだろうと、それを楽しみにしながら折々の素材を思い巡らしている。住む所は面白いもので小中学時代の同級生を何度か尋ねたが、男子は長男が多く元の家に住んでいたのである
▼幼児期から今へ、今から昔へと歴史を往復しつつ新しい発見もしたい。

 2018年  7月  19日  ― スポーツの位置付け ―
 1964年の東京五輪を前に61年制定されたスポーツ振興法は施設整備などが担保される内容だったが、全面改正する形で2011年に制定されたスポーツ振興法は総合的な施策を唱えるものになった
▼サッカーW杯が閉幕したが、五輪や競技別世界大会での日本勢の活躍につながる強化、プロスポーツの人気は分かりやすい一方で、健康増進という観点ではスポーツ人口の底辺からの拡大が振興に欠かせない。中高年の運動は健康面から関心が高まる
▼小学校からの保健体育は学校の教科として健やかな成長を求めて行われている。さらに部活動に励む子どもたちは多い。日本の中高生スポーツは学校活動への比重が大きいというのが特徴といえる。だが、指導する教員の負担軽減に問題提起があり見直しが始まっている。地域型クラブへの移行や指導者の外部登用などが考えられており、子どものスポーツ環境は変わっていくだろう
▼日大アメフト部の悪質タックルに端を発し、大学での運動部の在り方を問う声も出ている。学生の課外活動ながら、職員が関わることが多いだけでなく、ブランド力として運動部の強化に熱心な大学も増えているようだ
▼子どもたちの競技スポーツについて近年の変化と将来を見据え、組織整備を含めた在り方を検討する時期ではなかろうか。

 2018年  7月  18日  ― 若い人と献血談義 ―
 加齢とともに体力は衰えると自戒し、ここ数年は極力歩くことと自分に言い聞かせ実行している
▼マンション5階に住んでいるのでまずは毎朝、階段を往復するようにしている。その直後に最寄り駅まで往復30分を歩くことも習慣になった。先の日曜日には駅前広場にテントを張って献血車が停まっていたが、一瞬年齢を考えたじろぐ
▼でも、と再考。歩けるし体力もある。周囲からも「元気ですね」とよく言われるからと発心し、何年ぶりかの献血をした。厚労省などの提案で7月は「愛の血液助け合い運動」月間だと、新聞に載っていたことも思い出す
▼その記事の見出しには「若者の献血協力者増やそう」とあり、「10〜30代 この20年で半減」との添え書きも目に留まった。駅前で顔見知りの青年3人がおしゃべりをしていたので、「献血したの?」と尋ねると「いえ、まだです」と言う
▼そこで「今すいているからどうぞ」と言うと「はい、します」と3人が素直に献血車に入ってくれた。終わった青年の一人が「自分も交通事故で病院に運ばれ輸血で救われたことを思い出しました。これからは若い仲間に自分が声を掛けます」と、にっこりしながら語ってくれた
▼彼には当方が貧血状態が治まらず病院で4時間輸血をした経験を伝え、温かい握手を交わして別れた。

 2018年  7月  17日  ― 伊能忠敬への忖度 ―
 先月の日本技術士会の講演会で、盛岡市の菱和建設の大矢喜久男さんに伊能忠敬の南部入りの話を聞いた。
▼寡聞にして盛岡に伊能来たるとは知らなかった。海岸線を描きに三陸は歩いたろうが、盛岡で本格的に測量していたとはびっくり。大矢さんは県職員時代の土木畑の知見で、先人の偉大な足跡を業界や市民に広める。素晴らしいライフワークだ。
▼面白いことを聞いた。伊能が1801(享和元)年に現在の大船渡から釜石に入るとき、仙台藩と盛岡藩の引き継ぎが悪く、一行をわずらわせた。怒って江戸に報告されてはまずいと、盛岡藩の役人が城下の宿で、伊能に金子を差し出した。幕府の公務で来ておるゆえと伊能は断った。では目録だけでも受け取りを、幕府には妙な金でないと江戸屋敷から申告するとか、その場を収めてむにゃむにゃ。
▼これぞ忖度(そんたく)だ。分かりにくいことしている。伊能には不手際を謝り、うんとごちそうするくらいにして、今後の測量は全面協力、何でも仰せにと言えば良かったのに。昔も何だか聞いたようなことしている。
▼しかしどこかの官庁ではないが、国と地元の板挟みになった宮仕えの胸の内も、いささか察し申す。藩の役人に酔狂あらば、清廉な伊能を前に「まずいのう ただより 高いものはなし」とひねり。

 2018年  7月  16日  ― 「海の日」の回想 ―
 日本国は海に囲まれている。だから面積は世界で61位と小ぶりだが、沿岸から200海里の排他的経済水域は国土面積の12倍で、世界で6位という広さを持つ
▼この水域では開発や管理などを主権的に進めることができるわけだ。7月第3月曜のきょうは「海の日」である。1995(平成7)年に「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国家日本の繁栄を願う」との趣旨で、祝日に制定されたのだ
▼45年8月の「終戦の日」を6歳で迎えた同窓生2人と、過日は久しぶりに会い懇談をした。一人の友の父親が軍に召集される前に毎年夏には、13`離れた海に連れて行ってくれたことも話題になった。数年後に戦地から帰った父に真っ先に「海へ行こう」と頼んだという笑い話も出た
▼今は都会生活で海に行く機会が少ないから、余計に遠い昔の海遊びが恋しくなる。父に背を押され波の向こうに投げ飛ばされた光景もありありと浮かぶ。波を怖がらない根性も身についた。食膳の魚料理からも海の恩を感じ有り難くなる
▼船旅で北海道に行った回数は数えられない。船上から初めて見た東北陸地の景観も忘れがたい。車で山田町を走行中に満月が海面で揺れる光景を見て、日帰りをやめて近くの民宿に泊めていただいたことも懐かしく思い出す。「海の日」に種々回想が浮かぶ。
  

 2018年  7月  15日  ― 定数増と特定枠の自民案 ―
 アメリカ大統領選の本選挙は有権者を代表する形の選挙人の投票で行われる。州の人口によって選挙人数が割り振られる。以前から指摘されているのが「勝者総取り方式」という選挙人の配分。ある州で最多得票となった候補は、他候補との得票差に関わりなく州内の全選挙人を獲得できる方式で、全体では得票数と選挙人の獲得数が逆転するケースが発生する。1票という数字は絶対ではなく、ルールで変わる一例だろう
▼日本では議員の国政選挙で一票の格差がいわれ、判決判断が是正を促している。昨年の衆院選で岩手の選挙区は4から3に減り、2区が広大な面積になったことは記憶に新しい。有権者の少ない地域は議員数の減も一票の格差が優先され、比例のある現制度を是認せざるを得ない
▼参院も同様に一票の格差の抜本改革が指摘された。そこに出てきたのが自民党の公選法改正案。参院本会議で可決され、17日にも衆院で可決の見通しとなった。ところが抜本改革とは程遠く、定数6増に一瞬耳を疑った。1票が軽い埼玉の定数2増までには理解が及ぶが、比例4増とはなぜか。しかも特定候補に手心可能な特定枠を設け制度を複雑化させる。自民が現職の救済と批判も上がる。数式の美しさに数学の魅力を語る数学者には、美しくない数式と言われそうだ。

 2018年  7月  14日  ― 豪雨禍に陰の救済 ―
 かつて独身時代には東京以西には、親族がいなかった
▼それが世帯を持つと家人の母が岡山県人で、その係累も同県に住んでいる。当家長男の嫁は四国の愛媛県出身で、同じく係累の多くが四国に居住している。今回の西日本豪雨はそんなことをいまさらのように思い出させてくれた
▼岡山県倉敷からも愛媛県からも豪雨禍で犠牲者が相次ぐ中、懸命に展開した救出活動の模様が伝えられている。倉敷市真備では高梁川の支流小田川の堤防が決壊。孤立した2千人超の住民救済のため、複数のボートが出動。文字通り人々を助け続けた
▼親族宅に避難していた78歳の男性は、同行者に病人がいるためこれ以上の避難をやめることにし、7日午後にボートを待つ。やがて乗務員3人のボートが近づく。男性は助けを請い手を振る。だが見渡せば近隣にも救助を待つ高齢者がいる
▼男性は「あちらを先に」と頼む。乗務員が「見捨てないから心配なく」と笑う。高齢者救済を終えてボートが来て男性一行が救出される。男性はボートによる救済に対し「感謝しきれない」と心境を語っている
▼土砂崩れで断水した愛媛の宇和島では水のない暮らしに困り果てていた。だがオカザキとだけ名乗る漁師が8日夕に、大型漁船に真水の水槽を載せ宇和島浦へ届けると、船は立ち去ったという。 

 2018年  7月  13日  ― 西日本豪雨と東北 ―
 出身は広島県とされる松本清張の「砂の器」に、東北弁の耳ざわりの「カメダ」なる地名を追うくだりがある。岩手県か秋田県かと探るうち盲点が浮かぶ。方言が東北そっくりの地域が中国地方にあったのだ。
▼綿密な取材を身上とした作家によるこの説話を思えば、中国地方と岩手の風土は決して遠くない。四国九州もしかり。東日本大震災では、西日本豪雨の被災地からも大勢の派遣職員が県民を救い、義援に助けられた。地異から天変。今回の各県の被害に驚き、判明する遺体の数に言葉を失う。山河が牙をむき、津波に匹敵する巨大な水圧が人里を襲ったのだろう。いまだ不明の人々の安否が気遣われる。
▼2013年は盛岡地方に集中豪雨と台風が被害をもたらした。時は流れ、天災は常に風化が叫ばれる。おととしの台風10号では岩泉町でお年寄りが亡くなった。風水害に備え、改めて本県の防災をしっかり。
▼西日本豪雨と時同じく、国民的名優の加藤剛さんの訃報にも接した。映画「砂の器」が代表作だった。あらゆる命の尊厳を刻むべき夏来たる。しかしそれが、被災地に過酷な季節となってはなるまい。
▼東日本大震災で全国に支援を受けた本県として、西日本の被災地の復興に力を出そう。土砂に覆われた街が、一日も早く平穏な日を取り戻すように。

 2018年  7月  12日  ― 無情すぎる豪雨災害 ―
 東日本大震災の時もそうだったが、今回の西日本豪雨犠牲者続出の際も、思わず天を仰ぎつぶやいた。やはり天神も地神もいないのか、と
▼7年前の大津波で親友を亡くした時も深い喪失感に襲われた。祖父母らの慣習を継承した程度の地神や天神への敬意すらも、絶望のあまり意識的に消去してしまった。大津波襲来から3カ月後に三陸海岸の現場に行ったことも忘れられない
▼案内してくれた人から当方の親友W氏の遺体は「この辺で見付かったんです」と、指さされた時も地神不在論を繰り返したことを覚えている
▼今回の豪雨で6日夜に土砂崩れが起き、甚大な被害があった広島県熊野町在住の71歳の男性は、自分は無事だったが嫁いだ娘の家は激しい土砂崩れ地域にあるので連日、捜索を見守った。娘夫婦には中2と小6の孫息子がいて、2階建ての自宅に一家4人で暮らしていた
▼最初に発見されたのは土砂の激しい崩れで、足首切断の大けがをした婿で、7日午前2時に病院に搬送されている。義父になる男性の元へもその一報が入り、重傷でも生存できたと胸をなでおろしたが、娘ら3人は安否不明だと身を引き締める
▼だが3人は心肺停止で発見され死去と悲報が届く。無情すぎる現実に改めて全ての犠牲者の冥福を祈り、老父の健康長寿を願うばかりである。

 2018年  7月  11日  ― 繰り返される水の惨事 ―
 西日本で起きた梅雨前線活発化による豪雨は130人を超す犠牲者を出し、行方不明の方がまだ多数いる。毎年のように日本のどこかで繰り返される大雨、豪雨被害。そのたびに対策の見直しが図られているはずだが、自然の力に人知は及ばないのだろうかと思わされる
▼今回は瀬戸内海を挟んだ中国・四国と近畿など西日本に大きな被害をもたらした。前線の移動で長時間見舞われた大雨は収まった。だが、日に照らされたわが街を目にし落胆に襲われる心情ではなかろうか。雨の収まった後の現地の映像や写真を見ると、東日本大震災による大津波の被災地がよみがえる。土砂から見える倒壊した家屋などがれき、あり得ない場所にも濁った水が広く残っている
▼山田太一さん原作、脚本のドラマ「岸辺のアルバム」は41年前になるが、現実の災害で水に流されている家屋の映像が記憶に残る。壊されるのは一瞬で、固いと信じていたもののもろさを教えられた
▼被災地では警察や消防、自衛隊、自治体を中心にボランティアも加勢し、行方不明者の捜索やがれきや土砂の撤去が続けられる。並行してライフラインの復旧も急ぐ。自分がその場に立たされたなら、どこから何をすればいいのかと戸惑うに違いない。だが、救助の人たちは一刻も早くと懸命の捜索を続けている。

 2018年  7月  10日  ― 文科局長が収賄容疑 ―
 その息子が目指していた医科大学は私立だが、レベルが高く彼も苦労して勉強した
▼父親もはらはらしながらも励ましつつそれを見守った。父は秀才だったらしく早稲田大学大学院に進み、修士課程在学中に国家公務員1種試験に合格。科学技術庁に入庁。文科省では局長を務めてきた。一部では省トップの事務次官有力候補とまでいわれたこの人が、受託収賄容疑で今月4日に逮捕された
▼事件は冒頭の息子が今春受験し、合格したとして入学した東京医科大学を舞台に起きている。文科省は私立大学に補助金を出す支援事業も担当している。昨年5月には東京医科大の関係者が同大学が補助金支援の対象校になるよう、息子の父である局長に懇願したという
▼その願いはかなえられ同大学は支援対象校となり、約3500万円の支援金が届いたという。そこまでの経過のどこかで、息子の合否を案じた父が「息子をよろしく」と言ったかどうかはわからない。だが以心伝心なのか息子は合格した
▼捜査当局も抜かりなく取り調べをしているらしい。息子の受験の際、大学側の理事長と学長が入試の点数加算に関与していたことも判明。理事長は関与を認める発言をしたという。この国の教育の元締めが演じた裏口入学とは情けない
▼つらい荷を背負う息子さんが気の毒である。

 2018年  7月  8日  ― オウムの長き影を消そう ―
 オウム真理教の麻原死刑囚らに刑が執行された。世界を震撼させた地下鉄サリン事件から23年にもなる。
▼平成の初め盛岡市内の大きな橋に、オウムのビラが張られていた。べったり接着剤でこすりつけ、はがれなくて汚らしい。一連の事件で日本中大騒ぎだった頃、盛岡講演の告知だったと聞いた。たまたま行った人が「麻原は見なかったが弟子が説教して、精神世界に行けばどうのこうのいかがわしく、変な臭いの水を飲まされた」と顔をしかめていた。
▼「そんなこと盛岡あたりにあんの」という言い回しがある。自分は盛岡から出て暮らしたことないのでピンとこないが一度、東京の住人になり帰郷すると、県都とて何もない田舎町にしか見えないからだろう。
▼それはそれで構わないし、地方も悪くはないが、犯罪や事件に都会と田舎はあまり関係ない。生き馬の目を抜く大都会の事件は凶悪で、地方都市は軽微な犯罪ばかり、町村は毎日が平穏なんてことはありえない。
▼ドーナツ現象の東京や大阪の都心部は人口比で犯罪は少なく、社会の矛盾がしわ寄せされる過疎地こそ、現代的な事件が起こりうるとの見方もある。オウムは地方でも悪事を働いた。今は海外にテロが頻発する。どこに暮らしても防犯意識はしっかり。人々に心の闇を生むことのないよう。

 2018年  7月  7日  ― 読み聞かせ運動の気脈 ―
 今、日本では子どもたちにパパやママやよその大人が、家庭や地域で本の読み聞かせ運動をしている
▼時代をさかのぼると明治大正期に児童文学者として活躍した巌谷小波は、その運動の先駆者だった。巌谷は昔話や名著を平易なおとぎ話に書き改め、それらの読み聞かせである口演を全国各地で実施している
▼一方、少年対象の物語を自ら編集する雑誌「少年世界」に掲載。加えて少女と幼年の育成も考えこれも自ら主筆となり「少女世界」「幼年画報」を発行している。幼児らの未来をも見詰めた巌谷の慈愛と行動には頭が下がる。そんな気脈を継ぐような米国発の動きもある
▼昨年11月に子ども向け絵本の日本版「えがない えほん」(B・J・ノヴァク原作、大友剛訳、早川書房刊)が発売され、日本の子らをとりこにしているのだ。題名通りこの絵本には絵がなく文字だけで原文は英文だ。訳者は幼い読者も念頭に創作に近い翻訳をしたという
▼親が真顔で読み聞かせると子らは吹き出すらしい。邦訳にはそんな仕掛けが組まれているのだ。例えば親が「ぶりぶりぶ〜」と訳文通り読むと、誰かが「おならだあ」と言い親子が皆で爆笑となる。「人類の歴史の中で一番素晴らしい子どもである」との訳文もあり、これには子らも「いえーい」とVサインで歓声を上げる。
  

 2018年  7月  6日  ― 3代目の優勝旗を岩手・東北に ―
 100回目の全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)を目指した岩手大会はきょう開幕する。前身の全国中等学校優勝野球大会から103年、戦局による中断を経て戦後復活し節目を迎える
▼優勝校に授与される深紅の大優勝旗。その年の夏の過酷な試合を1度も負けることなく勝ち上がった1校だけが手にすることができる。優勝旗は1年間、優勝校の手元にあり、翌年の大会で返還される。メダルや甲子園の土と違い、歴代優勝校が継承してきた優勝旗。今年の大会から新調された3代目に替わる
▼準々決勝に入るサッカーW杯の優勝国に授けられるのはトロフィー。W杯を企画した当時のFIFA会長が寄贈したことからジュール・リメ杯と呼ばれ、1970年に3回目の優勝をしたブラジルに永久譲渡された。トロフィーは第二次世界大戦で略奪の危機を免れるも66年に盗難。この時は見つかったが、ブラジルで83年に盗難後は発見されていない。永久譲渡後の2代目は06年に3代目へ継承された。4年に1度の過去20回でトロフィーを手にしたのは8カ国にすぎない
▼夏の甲子園99回では岩手はおろか東北は1度も優勝旗を手にしていない。白河の関越えをと渇望しているうちに空路で北海道に渡った。優勝地域の偏在を打破し、3代目の優勝旗を東北、岩手へと願う。

 2018年  7月  5日  ― 「万引き家族」とスイミー ―
 先日、是枝裕和監督の最新映画「万引き家族」を見てきた
▼街の壊れそうな平屋に治(おさむ)と信代の夫婦と息子の祥太、信代の妹・亜紀の4人が転がり込み暮らしている。彼らは家主の老婦・初枝の年金を当てにし、足りない生活費は万引きで稼ぐというならず者一家なのだ
▼だが互いに口は悪いが仲はいい。さらに治が近くの団地で泣き震えていた幼女を見かねて連れて帰るという珍事もあり、万引きという犯罪を主業にした一家の危うい物語が展開していく。DVDを含め今後映画鑑賞を予定している方もおられようから、詳細は略させていただく
▼ただ是枝監督がこの映画を制作する動機の一つにもなったといわれている「スイミー」と題する絵本については触れておきたい。これはオランダ出身で米国の絵本作家レオ・レオニが、1963年に出版した絵本で、日本語版の題名は「スイミーちいさなかしこいさかなのはなし」となっている
▼映画「万引き家族」でも学校に行かず父親と万引きをして暮らす少年が、国語の教科書に載っている「スイミー」を音読する場面がある。是枝監督は以前に訪問した養護施設で、女児が「スイミー」を懸命に朗読してくれた姿に心打たれ、映画もその子に向けて制作したのだという
▼絵本には魚がカラーで大きく描かれている。

 2018年  7月  4日  ― 「終わった人」の泣き笑い ―
 盛岡が舞台の映画「終わった人」が好評だ。父親が盛岡出身の内舘牧子さん原作。名門の南部高校から東大卒の大手行員が、不運で出世街道を外れ、しみじみ定年の男の悲喜劇。試写会で「身につまされる」とぼやきが聞こえた。
▼クランクインのとき盛岡広域フィルムコミッションに、エキストラが必要だから中田秀夫監督のオーディションを受けてと言われた。主演の舘ひろしさんの高校時代の父の役。息子自慢の実直な教師像を演じよと。
▼映画の設定をもとに計算すると、1975年ころの盛岡の市井人の役柄。自分が小学5年生のときの恩師たちは今の中高年より老成していて、60歳くらいの校長先生など、まさに「終わる人」の威厳があった。今は還暦過ぎても若い。だから映画のように、皆さんなかなか終われない。
▼団塊が後期高齢化するのは2025年問題。1980年代「新人類」と呼ばれた世代の頭さえ、あと2年で定年。非常識だ軽薄だと、けちょんけちょんだったぼくらも、そんな馬齢の声聞かば、柄にもなく国の行く末を案じてしまう。
▼エキストラの方は監督のお眼鏡にかなわず、無名の銀幕デビューならず。あたりほとりに自分の役作りを聞くと、どうも芝居がクサかったようで、「終わった人」より、「変わった人」に見られちゃったみたい。

 2018年  7月  3日  ― 今年のサラリーマン川柳 ―
 第一生命主催の「サラリーマン川柳」は、今年で31回目となる
▼いわゆる勤め人の日常の喜怒哀楽を、皮肉やいたわりも込めて詠む作品が多いから、目にした人は魅了されてしまうのだろう。当事者のサラリーマンだけではなく、その家族をはじめ周囲の友人知人にも愛好者が増え、ファンの裾野を広げている
▼今話題になっているのは今年のベストテン(優秀10句)だ。主催者が2月に応募作品の中から「優秀100句」を選出。さらにそこから一般投票によって1位から10位までの優秀10句を決め、これが5月下旬に公表され読まれているのだ。ここでは上位3句に触れておく
▼人は時折、意味不明な行動をする。例えば体を鍛えようとスポーツジムに通う。往復も歩くか自転車なら鍛えになるが、なぜか車で通いジムで自転車こぎをしてくる。晴れて1位を射止めた句も「スポーツジム車で行ってチャリをこぐ」と詠んでいる
▼2位の「『ちがうだろ!』妻が言うならそうだろう」の句は夫婦円満のコツも示唆している。違うだろうと妻が言うなら「そうだね」と、夫が穏やかに応じれば妻も笑顔を返す日がこよう
▼「ノーメイク会社入れぬ顔認証」は、顔認証装置の怖さを詠み3位となる。お化粧の濃淡もあろうが、登録顔面との照合機器の精密さには改めて驚いてしまう。

 2018年  7月  2日  ― 長期政権と緊急登板 ―
 サッカー日本代表がW杯で2大会ぶりに決勝トーナメント(TN)に進出した。1次リーグ最終第3戦の戦略に賛否が出ているが、薄氷の差で生き残りをつかんだ
▼第3戦の西野監督には驚かされた。ポーランド戦は過去2戦で成功した先発から6人も入れ替えた。いわゆる主力の温存だ。西野監督は、過去の日本が決勝TNに進んでも1次リーグを全力で戦った疲労が蓄積し敗退の課題を克服し、初の8強入りに挑戦するための布陣を組んだ
▼0対1で負ける選択をし、終了前の5分以上、安全なパス回しを指示。だが、同時刻の他会場の試合が動き予選敗退となれば、代表批判が最大級になって、おそらく西野監督の一身に浴びせられただろう。矢面に立つ明確な意思表示と取れた。西野監督の全責任を背負う覚悟で下した剛胆さは指導者の一つの理想像とも映る
▼今大会の一番の衝撃はドイツの敗退。3大会連続指揮のレーヴ監督は次大会までの延長が決まっていたが、辞任を示唆。逆に直前に監督交代のスペインも予選を突破した
▼優れた指揮官であっても、目標とされる立場では現状維持でトップを走ることは難しい。政治も長期政権や多選への弊害がいわれる。水の流れを止めて腐らせぬよう、刷新や進化の期待に応えられるか。継続でも交代でも求められる要素だ。

 2018年  7月  1日  ― はやぶさ2が小惑星観測 ―
 織物と裁縫が上手だという織り姫星。.青年牛飼いのけん牛星。この二つの星が最も輝いて見えるのは、二人が天の川を挟んで年に一度だけ会い、愛を語り合う7月7日の夜だという
▼そんな星物語を生んだ7月の夜空を、今月は改めて仰ぎ見たいと思う。一方、おとぎ話ではなく3年半前に打ち上げられ宇宙空間を飛行して、小惑星などの観測を進める日本の宇宙探査機「はやぶさ2」の動きからも目が離せない
▼先月下旬にはこの探査機が、地球から3億`も離れた小惑星「りゅうぐう」近くの目的地に到着している。小惑星とは地球や水星、金星など太陽系惑星が、およそ46億年前に誕生した時に惑星にならなかった小規模の天体のことだ。小さいとはいえそこに往時の物質を残している天体もあるという
▼地球には海があり水がある。生命も誕生している。それをもたらしたのは小惑星ではないかという見方もある。水を含んだ小惑星が数億年にわたって、地球への衝突を繰り返す。それによって地球に水分が吸収され、やがて沼ができ湖が形成され億単位の歴史を経て海ができた、と
▼そんな推論の裏付けをしたくて世界が日本が小惑星に探査機を飛ばす。「はやぶさ2」が撮影し送信した画像も公開されている。素人で「岩だな」という程度なのだがわくわくしてくる。
  

2018年6月の天窓へ