2019年5月の天窓


 2019年  5月  31日  ― 初夏のサンマに戸惑い ―
 異常な暑さからほどなくサンマの水揚げ、販売のニュースに接して、わが身の季節感覚は混乱している。旬の終期となった山菜が今、かろうじて季節の指標となる味覚か
▼サンマと言えば秋を代表する味覚。ところが通年操業を可能にする省令改正を受け北太平洋公海での操業が今年から始まった。きのうの本紙でも「復興釜石新聞」のサンマ船出漁の記事を紹介していたが、北海道では28日に水揚げが始まった。だが、安くて脂ののったサンマとは程遠いようだ。最盛期よりも初物食いにこだわった往時の江戸っ子も敬遠するかもしれない
▼通年操業は近年のサンマの不漁が背景にある。近隣アジアの漁船による沖合操業が増加し、地球温暖化の影響であろうか海水温が上昇し、以前のサンマ漁場まで群れが来なくなったことも水揚げ激減の原因とみられている
▼初夏のサンマ、希少価値が市場価格に反映されるのは当然だろうが、はたして漁業者のメリットはいかがか。小ぶりでは価格が抑えられ少量となれば船の燃料代など経費を差し引いて利益が出るものか不透明。採算ベースの操業に懐疑的な声もあるようだ。加えて先獲り≠ナ従来の沿岸漁期の漁獲量が減るのではと心配だ
▼初物でなくていい。手の出しやすい価格に落ち着き大ぶりのサンマを秋の味で楽しみたい。

 2019年  5月  30日  ― ぐらつく日本の治安 ―
 川崎市多摩区で起きた19人も死傷する通り魔的な事件が全国に衝撃を与えた。発生した登戸駅は親戚を訪ね電車でよく通過するところ。そのたび小田急線沿線は大きく変わる。
▼かつて静かなベッドタウンが、あっという間に都内と同じ景色に。そんな環境の変化で、恐ろしい考えを抱くおかしな者が出てくるのか。自殺した犯人は川崎市内の51歳の男だった。
▼盛岡市内でもここ10年ほどで幼稚園や小学校のセキュリティーはとても厳重になった。たとえ先方の要請でも、取材の許可を取り、中に入るまで大変と記者は苦労している。自分も昔通った幼稚園に取材に行き、入ろうとしたら警備でとびらが開かず、難儀したことがある。途方に暮れて本当に園児に戻った気がしたのだが、やむを得ないかと思う。
▼大阪の池田小、東京の秋葉原、神奈川のやまゆり園の事件など、罪もない人を狙う凶悪犯罪がしばしばでは、神経をとがらすだろう。来日で横須賀市にいたトランプ大統領も哀悼の意を表した。学校で銃乱射など相次ぐ米国より、治安の良さだけは依然、日本がずっと上と思っていたのに、ぐらついてくる。
▼海外には周囲が物騒で学校に行くのも大変な状況があちこちに。世界のスクールが子どもの命を救うため、邪悪を退ける知恵と意志を高めねばならない。

 2019年  5月  29日  ― トランプ大統領と岩手のイフ ―
 軍艦オタクでないと分かりにくいと思うが、トランプ大統領が視察した護衛艦「かが」には「いわて」と名が付く話があった。
▼海上自衛隊は艦艇の命名に海軍時代の艦名を踏襲することが多い。形と性能が同じ姉妹艦ができれば、その名もペアで引き継ぐ。かつて巡洋艦「出雲」の同型は「磐手」。海自も2代目「いずも」の姉妹艦を建造すれば当然、「いわて」と予想した人が多かった。しかし都道府県名ズバリは避けたのだろう。「かが」に決まった。
▼先代の空母「加賀」は戦前、「長門」「陸奥」「赤城」とともに国家の象徴として君臨し、米英ににらみを利かせた。真珠湾攻撃から連戦連勝だったが、77年前の5月28日はミッドウェー海戦へ出撃の途上にあり、撃沈されて帰らなかった。
▼令和初の国賓トランプ大統領に至れり尽くせりだった安倍総理。よもやそんなことまで因果を含め、戦後初の空母型護衛艦「かが」に招いたわけではあるまいが、仮想戦記のようにもし大統領が「いわて」に乗ったらと想像してみる。
▼「その名のイワテ・プリフェクチャーはハラ、ニトベ、ヨナイら日米関係に命を懸けた政治家が…」なんて質疑応答があっただろうか。加賀は石川県なので出身総理は林銑十郎、阿部信行そして森さん…なんて考えすぎちゃ、いかがなものか、だよね。

 2019年  5月  28日  ― 変化するテレビの見方 ―
 旧国立競技場の炬火台が盛岡市の県営運動公園陸上競技場に設置されている。21日の県高総体総合開会式と併せてお披露目となる準備が進められたが、この日は荒天で中止となり残念だった
▼五輪を取り上げたNHK大河ドラマ「いだてん」は低視聴率が話題となっている。脚本の宮藤官九郎さんは「あまちゃん」で朝ドラの常識≠破り新たな視聴者層をつかんだ。大河の持つイメージにどんな新風を吹き込んでくれるかと興味が湧き見ている
▼主人公と時代が複数の構成、落語の語りと、クドカンらしさのある脚本。せりふにも小ネタが含まれたり伏線が張られたりとサービス精神旺盛の特色が表れている。視聴率を抜きに内容の面白さを評価するドラマ評論も目にする
▼かつてのドラマは録画のないのが前提で、視聴者は1回限りというのが大半だったろうが、現代は録画して繰り返し見ることが可能。ネット配信もある。放送時間に合わせて視聴するよりも、自分の都合に合わせ録画やネットでゆっくり見られる。2度3度と見て流れが整理でき、仕掛けに気付くなどの楽しみ方が生まれた。制作者側の工夫や視聴者側の受容と需要がある
▼オリンピックで寝不足になるとはよく言われる。極論すれば放送時間に見るのはスポーツ中継だけの時代が到来するかもしれない。

 2019年  5月  27日  ― 善幸さんの日米首脳会談 ―
 1980年代、ロナルド・レーガン大統領と中曽根康弘総理が、「ロン」「ヤス」と呼び合って国民を驚かせた。
▼忠臣蔵の堀部安兵衛じゃあるまいし、日本の総理が「ヤス」ですかい。今の大勲位からはちと想像つきません。レーガン大統領は鈴木総理とも会談したので、せめて「ロン」「ゼン」くらいならまだ重みがあったのにと、県民は善幸さんの退陣を惜しがった。
▼81年5月の鈴木・レーガン会談は波乱があった。鈴木総理が初めて「日米同盟」という表現を用い、安保論議で国会が紛糾し、伊東正義外相が辞任する騒ぎに。その際の日米共同声明は、「中国との間で協力関係をそれぞれ引き続き拡大していく」と冒頭に盛り込まれていた。
▼日米中同盟さえ模索されていたのには隔世の感がある。当時は東西冷戦がクライマックスを迎え、中ソも激しく対立し、日米は「敵の敵は味方」の論理で北京を取り込もうとしていた。軍事、経済の応酬で米中新冷戦が始まったと言われる。かつての米ソはあくまで欧州が正面の対立だったが、米中となれば極東でガチンコだ。
▼「ドナルド」「シンゾー」の蜜月に惑わされ、北朝鮮の核や拉致を含め、わが国が米中間で翻弄されないよう。ロナルドがロンなら、ドナルドはドンで、だんだん牛耳られぬようお願いいたしやす。

 2019年  5月  26日  ― 違法薬物の罪と害 ―
 生誕90年となるジャズ・ピアニストのビル・エバンスの映像や交友者の証言で作られたドキュメンタリー映画「タイム・リメンバード」が盛岡でも劇場上映されている。ホットジャズのイメージとは違うが、彼の即興演奏のすばらしさや緊張感はまぎれもないジャズ。1950年代末期に帝王マイルス・デイヴィスが提示したモードジャズという革新はビルなくして生まれ得たかどうか
▼彼の編み出す音楽は美しく豊かな音色と旋律を備え、以降のピアニストに多大な影響を与え続けている。ジャズファンでなくともビルの演奏が好きな人は少なくない。映画では演奏共演者らがビルの音楽性の高さを賛辞する
▼同じように語られるのが薬物中毒者としてのビル。51歳の若さで亡くなったのはヘロインなど薬物の長年にわたる大量摂取に起因する。かつての米国の演奏家は巨人チャーリー・パーカーをはじめ常習者が多く、短命に終わった演奏家も薬物の影響も大きかったようだ。ビルもまた死後「時間をかけた自殺」と言われる
▼日本でも、また芸能人が大麻所持で逮捕された。違法となる根本には体への悪影響、反社会組織の資金源や非道の道具になる問題などがある。映画では彼の常用を知りながら止められなかった証言者の苦悩がにじみ出る。周囲を巻き込む怖さがある。
  

 2019年  5月  25日  ― トランプ米大統領2度目の来日 ―
 トランプ米大統領がきょう来日する。17年以来2度目の来日。1カ月後の大阪でのG20を前にした時期に、令和最初の国賓として今月即位された天皇陛下と会見するのは日程上の忖度(そんたく)かとは勘ぐりすぎか
▼大統領、忙しい身にもかかわらず3泊4日と長めの滞在。米国が中国や北朝鮮など日本と地理的に近い国との関係が取り沙汰されている折、蜜月アピールは日米首脳共通の思いだろう
▼25日は午後の到着で滞在中は26日に安倍首相の接待=B好きなゴルフで一緒にラウンドし、夕方は大相撲夏場所の千秋楽を観戦してトロフィーを渡す段取り。夕食会で締めくくる。27日午前に天皇陛下と会見後やっと日米首脳会談、共同記者会見、宮中晩さん会。拉致被害者家族との面談もあるという。28日は横須賀の海自基地で護衛艦「かが」に乗艦する
▼今滞在で両国トップらしい日程は首脳会談と記者会見と護衛艦乗艦そして陛下と会見など。大統領が喜ぶおもてなしとしてのゴルフだろうが、日本の首相が海外トップとゴルフを回るのは過去にも米大統領しか記憶がない。他国との差別化なのか。プレー中に両国にとってどんな有意義な話題が交わされるか知りたくなる。共同声明はないようで、せめて首脳ゴルフ会談と称してプレー後も記者会見してもらえれば。

 2019年  5月  24日  ― ポケモンと岩手 ―
 「岩手県なんて田舎で誰も知らない」とつい言いたくなるが、それは間違い。
▼47都道府県の知名度を聞いてみれば青森、岩手、秋田の3県はとても高い。理由がある。地理の勉強で北海道から津軽海峡を越えると、海岸線に特徴ある大きな3県がまとまっているので、そこまでは誰もが覚えられる。
▼ただし岩手の県庁所在地が盛岡、宮城は政令都市の仙台となってくると、西日本で地図にうとい人は嫌になる。東北の次に関東甲信越を見れば似たような形の内陸県が多く、もう覚えるのがめんどくさい。だから岩手より人口が多く発展していても存在感の薄い県はたくさんあるという。
▼めんどくさくて覚えられないといえば、ポケットモンスター。年くって頭古くて、「ピカチュウ」「ニャース」くらいしか分かりませんと思っていたら、まさに石頭みたいな「イシツブテ」なるポケモンあり。岩手応援のため達増知事と手を結んだ。今やポケモンはディズニーをしのぐ世界キャラなので、観光や復興に大活躍してくれるだろう。
▼岩に手が生え、本県の擬人化にぴったりの頼もしき助っ人モンスター。県内アーティストによるイラスト、イメージソング、動画も見られるから、みんな楽しもう。自然と世界遺産など豊かな岩手。金色堂がピカピカ中尊寺もしっかりPRを。

 2019年  5月  23日  ― 雑草魂は別な場所でも ―
 踏まれても踏まれても立ち上がる不屈の精神、それが雑草魂のイメージだろうか。ゆえに雑草生態学専攻の農学博士に「踏まれたら、立ち上がらないが本当の雑草魂なのだ」と言われたら戸惑う
▼この説の主は稲垣栄洋さん。最重要な花を咲かせ種子を残すことには踏まれて立ち上がる余分なエネルギー消費より踏まれながらどうやって花を咲かせることの方が大切だという
▼日本プロ野球と大リーグで活躍した上原浩治さんが先日、現役引退を発表した。ドラフト1位で巨人入団、同期に西武の怪物松坂大輔投手がいた。注目度で断然勝る松坂投手の存在もあり、上原さんは代名詞となった雑草魂を推進力に1年目20勝を皮切りに輝かしい投手成績を残し大リーグではワールドシリーズ優勝に貢献した。44歳の21シーズン目まで現役だったのも広く浸透する雑草魂の精神に帰するのではないか。自分の境遇などを重ね合わせてスポーツ観戦する人にとって心動かされる一人だった
▼稲垣さんは立ち上がらないのは「ずっとしたたかで、たくましいもの」であり「大切なことは見失わない生き方。これこそが雑草魂」と言い切る
▼先発から抑えや中継ぎと転向せざるを得なかったが、どこでも花を咲かすたくましさが上原さんにあるのだろう。引退後どんな場所で花を咲かせるか。

 2019年  5月  22日  ― ミスさんさの審査員 ―
 文字や意味を迷って、いつしか使わなくなった言葉がある。例えば「三々五々」。
▼20年ほど前この言葉が、ちょっと論争になった記憶がある。集まる状態を表すのか、散らばるありさまを指すのか。字も「散々伍々」が正しいと主張する人がいたりして。それぞれもっともに聞こえて迷うばかり、自分の文章にはなるべく書かないことにした。
▼迷いに迷うと言えば先日の「ミスさんさ」の選考がそう。プラザおでってで開かれ、初めて審査員を務めたら、5人に絞って投票するのにとても悩んだ。ステージにそろい踏みしたすてきな11人。皆さん内面からあふれるものがあり、まさに甲乙付けがたい。
▼自己アピールで感心したのは、さんさ踊りを世界に広めようとする夢。外国人に踊りを見せて喜ばれた経験と感激を語る人が多かった。母や姉が歴代の方がおり、かつて取材したかもしれないミスの娘さんが、こんな大きくなっていたとはびっくり。何度目かの挑戦で射止める人もあり、粘り強く応募してくださる熱意が、さんさを盛り上げる大きな力になっている。他の審査員の皆さんも迷いに悩んで選んだであろう。
▼ちなみに三々五々の意味は、「人々が散らばったり集まったりするさま」だそう。三々五々そぞろ歩きの夏祭り。盛岡さんさに今年も5輪の花が咲く。

 2019年  5月  21日  ― 早起きは三文の徳 ―
 春眠暁を覚えずの時期を過ぎたせいでもあるまいが、初夏の陽気が感じられるこの頃、目覚めがすこぶる良い。目覚まし時計が鳴るはるか前に起きてしまう
▼さすがに早すぎるだろうと、起床予定時間まで惰眠をむさぼるが、眠りには結びつかない。「早起きは三文の徳」をみすみす放棄しているとなれば、もったいないことをしているとなろうか。事実、早く床を出ていれば、これができた、あれができたと結局、損した気分になるから、かえって始末が悪い
▼一説によると、これは中国で言われた「3日続けた早起きは1人分の仕事量に相当する」という意味のことわざに由来する。早起きしただけでは駄目で、活動しなければ徳にならないと解釈できる。惰眠は論外だ。3文とは今でいう100円ぐらいの価値かもしれないが、具体金額というより中国の3日からの影響とも考えられる。しからば1度の早起きではなく続けることの意義を説いているとの解釈もよいのではないか
▼下世話なように思えるが3文の徳しかないというネガティブ解釈もある。だが、この例えの本質が金銭的な損得にないことは明白で、肝要なのは早起きで生まれた時間の余裕をいかに有意義に使えるかとなろう。毎日の早起きが徳を積むことにつながれば、ことわざを体現できると捉えたい。

 2019年  5月  20日  ― 円滑化法で企業の終活とは ―
 東京商工リサーチ盛岡支店のまとめによる、2018年に県内で休廃業や解散した企業が前年より3割弱増えたというニュースがあった。中小企業金融円滑化法が影響したという。
▼2009年施行で6年前に時限を終えた法律だが、中小企業に対して金融機関が円滑な資金供給と貸付条件の緩和に努めるという趣旨は生きているようだ。震災復興による下支えもあるだろうし、確かにここ10年ほど県内倒産件数は減った。
▼民主党政権時代の法律だから、悪夢だ何だと言われても、国の中小企業施策を方向付け、融資に新しいモラルを与えたなら良かった。企業によっては法をもっても救いきれなかったり、地銀の体力を弱めたりした面はあったろうが。
▼ただしニュースの趣旨は円滑化法以降むしろ休廃業・解散を準備しやすい環境になり、退場する企業が増えたということ。経営者の高齢化と事業承継の遅れが集計の数を押し上げた。つまり円滑化法でかつかつと一息ついてから身ぎれいにし、業界や地域に見切りを付け、子にもだれにも継がせず、自分の代でやめる経営判断に誘ってしまったのか。
▼それなら資金繰りで解決できない性質の深刻な問題が横たわっている。法の趣旨であった金融の円滑化が、いつのまにやら企業の「終活化」になっているなら寂しい。

 2019年  5月  19日  ― コンビニは転機なのか ―
 「24時間戦えますか」は栄養ドリンクのCMで流れ平成元年の流行語にもなった。バブル景気ただ中を象徴する一つ。仕事と遊びで多忙な時代、削るのは睡眠ということで世の中も栄養源を求めていた
▼24時間といえばコンビニエンスストアが今日の筆頭格。普段からよく使うが、遅い帰宅になった時や急に必要な物が生じた深夜に「開いてて良かった」し「近くて便利」を実感する。不運な時間帯に当たり弁当がゼロに等しく泣いたことも何度か経験したが
▼しかし、営業の基本はある程度の品ぞろえが常にあることになろう。ゆえに売れ残りを織り込み済みで品ぞろえされ、消費期限で陳列棚から撤去、廃棄される。ここにきて大手コンビニが食品ロスの削減を理由に対策を打ち始めた。消費期限近くの弁当の値引き販売やポイント付与、季節商品の完全予約制などを加盟店の判断ではなく本社の方針で出す。時間値引きはスーパーの総菜で当たり前なことだが、コンビニでは加盟店独自の限定的な動きだった
▼廃棄削減の食品ロス対策だが、人手不足を背景とした24時間営業への悲鳴や廃棄に伴う店の金銭負担など、一律ルールを巡って本社と加盟店の関係にぎくしゃくも生じている。拡張路線の限界が見え始めているのかもしれない。令和は24時間開けられますか?なのか。

 2019年  5月  18日  ― 腰痛の警告 ―
 よく腰を痛がる人たちに内心、「脳卒中で当たるほど頭が痛い訳じゃあるまいし、それくらいで騒いで」と思っていた。
▼しかし昨年春から本格的に腰痛を経験し大変。会社の階段で激痛が走り、立ちくらんで吐き気がしてきた。部位は違うが、キーンと金属的な頭痛に似た苦しさ。日本整形外科学会の解説によると、脊柱に由来する痛みと、腰以外に原因のある痛みがある。がん、内臓疾患、ストレスによっても起きる。
▼リサイクル屋で中古レコード探すのが趣味で、買っても別に聴くわけでないが、300円で掘り出したものが超レア盤だったりすれば、有頂天になって痛みを忘れる。だからどんなに腰が痛くてもしゃがんで、店の床の段ボール箱に入ったLPを必死にめくっていたら何もなし。「U2」なんかいらないと頭にきてしまい、もっと腰痛になり憂鬱(ゆううつ)になった。
▼それでも好きなことは痛くて泣きながらも我慢できるが、やはり限界。幸い飛び石の2日間休みで、雫石あたりの温泉につかり休憩室で日がなごろごろしていたら、かなり治った。あまり痛いと別の病気の疑い、ちゃんと病院に行けと言われた。
▼今年は痛くなったのが54歳最後の日、あすから55歳、四捨五入で60かとしみじみしていたので、54の腰が老化を見越し警告していたのやら。
  

 2019年  5月  17日  ― 衆参同日選挙論の浮上 ―
 天皇即位による一連の行事が年内続く今年。衆院の解散総選挙はないだろうと勝手に想像していたが、ここに来て7月見込みの参院選と同日選の観測が出てきた
▼衆院の解散は、時の首相が正直に予告実行して大敗した特異例もあったが、基本は唐突だ。ゆえに衆院議員が常在戦場を口にする。でも何となく解散のにおいは当事者がかぎとり、周囲に広がっていくのだろう
▼ここに来ての解散論は国会会期末が1カ月余りになってきた時期に景気動向があやしくなり、米中の貿易戦争がエスカレートしている点が大きい。13日に内閣府が発表した3月の景気動向指数速報値で、景気後退の可能性が高い「悪化」へと基調判断を引き下がった。米中の関税を武器とした応酬は日本にも悪影響が避けられない様相。景気後退の不安要素が増した
▼安倍首相は消費税引き上げ延期の判断条件としてリーマンショック級の景気悪化を挙げた。成立した新年度予算でも引き上げ対策が進められている。税率引き上げの賛否を超えて言えば、10月までに延期する状況になる可能性は低い。延期を理由の解散は考えられない。むしろ悪化が予測されるなら、対策を考え講じることが優先ではないか。そのためにも6月末のG20で世界の景気減速の様相へ対応する先導役が開催国に課せられる。

 2019年  5月  16日  ― 大言壮語の小粒ぞろい ―
 武田鉄矢さんには申し訳ないが、常々いかがなものかと思っているのは、戦国時代の信長、幕末維新の坂本龍馬、高杉晋作の3人を英雄視しすぎる風潮。
▼常識をかなぐり捨て固定観念を破り、男気でもって時代に斬り込む天下のうつけ者。お育ちの良いガリ勉にゃ分かるまい、みたいな。そんな思い違いもあって政治家の失言が多いと思います。
▼元日本維新の会の丸山穂高衆院議員の国後島訪問団で「北方領土を戦争で」発言もそうでは。酔ってくだ巻いてだから、盛岡弁でいう「ごんぼほり」なのか。いずれ大言壮語してみた方が大物ぽいと思ってなら、選良として小粒です。
▼ソ連の無法で島を占拠され、故郷を失った人たちが、最も戦争を憎んでいるのは当然。ロシアの指導者が「日本は侵略戦争したんだよ」としたり顔で言い張ることあるが、「よりによって、あんたがたにそんなの言われたくない」と、日本人には噴飯物。しかし丸山発言はロシアの言いがかりにお墨付きを与えるようなものだ。
▼森荘已池「私残記」を読んでほしい。江戸時代に盛岡人がロシアの黒船から北方領土を守るためどんなに苦労したか。国会に身を置くなら歴史や文学をもっと深く勉強しないと政治家の器量は磨けない。さすがに維新の会もカンカンで除名。改心してください。

 2019年  5月  15日  ― 引きこもりの処方せん ―
 岩手県内を含め全国の引きこもりの数が調査で判明し、改めて大きな論議に。実は10年以上前から引きこもりのご家族に、しばしば相談される。取材であちこち行くから世間知に長けていようと頼られたなら、あまりお役に立てず申し訳ない。
▼しかし引きこもりの親兄弟に、「単純労働でも何でもいい。給料の額にも何も言わない。使ってくれるところはないか」と悲鳴を上げられると、首をかしげる。どこかにそんな仕事はあるだろう。しかし若い部下を単純労働だからと安月給で5年10年も使っていたら、その上司が「管理職の資格なし」と経営者に見限られる。本人のためにもそれはあり得ない。
▼引きこもりの人に会うと、かつてよい子だったろうと思うことが多い。成績は中の上より高く学歴とプライドはある。しかし行動に責任を取るのが怖い、命じられれば熱心にやるが、小さなことでも自分の判断で仕事できない。そんなタイプが多いのでは。
▼思い切って選挙なんか手伝ってみたら。むろん職を得るわけでないが、ゴールと目標が明確で、いやが応にも正念場。浮き世のややこしさを目にするやもしれず、それも勉強だ。政治家がこの問題を生で理解するにも役立つ。
▼一票に悲喜こもごも、こもかぶりの酒を酌み交わせば、本人に大きな一歩にならないか。

 2019年  5月  14日  ― 「知らぬ」が招く大ごと ―
 一般道でも車両一方通行の道を走行中、突然、進入してきた逆走車が目の前に現れドキリとすることが過去にあった。進入禁止や一方通行の規制に気付かぬためだったと思う。だが、検挙されても交通標識の設置に気が付かないと運転者は反省するしかない。事故にならなかったことが救いだ
▼大勢が往来する東京・渋谷駅前のスクランブル交差点。12日の午後、付近の上空をドローンが飛行した。交差点の横断歩道で操縦していた外国人に警官が飛行禁止場所だと注意したという。操縦の男性外国人は旅行者で禁止場所とは知らなかった
▼ドローンが飛行したのは日曜日の午後、飛んでいた当時の映像では、普段の休日のように交差点を大勢が行き交っていた。交差点横断者らにはけがなどの被害はなかったが、自分が歩いていたり待ち合わせで立っていたりした上をドローンが飛んでいたと知って、ぞっとしたことだろう。もし上空から落下したり離発着の折に接触したら、事故が起きていたかもしれない
▼訪日外国人観光客は年々増加。今年はラグビーW杯、来年は東京五輪・パラリンピックもあり、訪日はさらに増える。事故の危険性と同時に、SNSによる個人発信で増える迷惑撮影が社会問題になっている。転ばぬ先ならぬ、落ちぬ先の網の対策が急務のようだ。

 2019年  5月  13日  ― 婚礼祝って令和婚 ―
 寒暖の差が広がる頃、慶弔欄を見て悲しくなることがある。やはり季節の山を越すのが難しいのか、弔事の多い日は。お体に気を付けて長生きしてください。
▼反対に慶事は気温に関係ない。いわゆるジューンブライドで6月に結ばれるカップルは多いが、基本的に暑いから寒いからくっつく離れるのというんじゃありませんので、おおむね日々の数はならされる。しかし今年の5月1日は大変だった。
▼令和初日を狙い入籍するカップルが役場に詰め掛け、盛岡市でも105組の男女が届け出た。当然それを慶弔欄に載せるため、市役所から名簿が送信される。若いおふたりが多くて、「キラキラネーム夫妻ばかりだったらどうしよう」と内心ドキドキしていたが、取り越し苦労。新郎新婦とも読みやすい令名を目にしてほっとした。
▼昭和末から平成初め生まれた皆さんだろう。親御さんは団塊より下、1960年前後生まれ、まさに天皇皇后両陛下と近い年代が多かろう。その人たちはまだキラキラ読みで命名しなかったのだ。「団塊ジュニア」以降が人の親になってから起きた現象らしい。先の「新人類」以前と団ジュニの世代間に、漢字に対してどんな感性の差が生まれたのやら。
▼いずれ1日成婚の皆さんおめでとうございます。婚礼祝って令和婚。新時代お幸せに。

 2019年  5月  12日  ― 米中の通商協議に覇権争い ―
 米中の通商協議は、米国が中国への追加制裁関税を10日に発動するに至った。世界1位と2位の経済大国によるパンチの出し合いは片方が死ぬまでとはならないだろうが、リングサイドの日本をはじめ各国は返り血を浴びないかと行方を案じている
▼世界チャンピオンのベルトに固執する同士の覇権争いとも映る。米国はベルト死守のため、座を脅かしている中国の勢いを封じようと攻撃する。中国も防御だけでなく反撃を繰り出す
▼両者ともに反則行為があってはならないが、パンチは受けた方も出した方にもダメージを与える。例えば中国からの輸入関税引き上げは輸出側ではなく輸入業者の負担となり、販売価格の値上げは米国の消費抑制に作用するとの懸念も出されている
▼作家橋本治さんの死去後にまとめられた著書「父権制の崩壊 あるいは指導者はもう来ない」では、もう「家」の実質的機能が失われた日本では「一人の支配者、一人の統治者であるような家長に、全体を統率する力は宿らない」と説いていた。日本という国を語りつつ「世界には、国民の考えから解離してしまった独裁的な力を持つ権力者が頻出している」現状を問題視。「代表者が複数いてもいいあり方を検討すべきではないでしょうか」と人間の成熟を夢見ていた
▼両国に世界との解離はないか。
  

 2019年  5月  11日  ― 時流への受容と主体 ―
 金ケ崎町の平谷美樹さんの「鍬ケ崎心中」は幕末から明治初頭の宮古通鍬ケ崎村を舞台にした小説。鍬ケ崎の遊郭で働く古参の千代菊と盛岡藩を脱藩し旧幕府側に付いた青年浪士和麿の悲恋物語。世の中が大きく変わる渦中、ある意味では時代を動かすことのできぬ立場の2人が時流にあらがえないゆえに負う苦悩と悲哀が浮かび上がる
▼時は1869年と明治維新の翌年、旧幕府側の榎本武揚らが新政府に抵抗した箱館戦争は、宮古でも一戦を交えた。宮古湾海戦と呼ばれる。和麿は足が不自由で戦闘は不向き。鍬ケ崎の楼閣に密かに逗留(とうりゅう)し政府軍の動きを探るのが任務だったが、上層部には彼を参戦させる気はなかったらしい。和麿にはもどかしさが募ったろう
▼箱館戦争は宮古湾海戦からさほど月日をたたず終結。新撰組副長だった土方歳三は150年前の5月11日、函館五稜郭の戦闘で銃弾にたおれた。勝てる見込みの薄い戦いは、江戸時代の武士らには新政府をよしとせず、死に場所を探していた者も多かったと想像する
▼多様な意見が飛び交うSNSでは負の問題が生じているが、言論統制の厳しい国と違い市民が権力に対抗する道具とできる。弱い者を不当におとしめるのではなく権力の不正に声を上げるなど時流に関わることが不可能ではない。
  

 2019年  5月  10日  ― 日韓友好の理で ―
 徴用工問題で韓国人が告発した日本企業の財産を差し押さえ、現金化しようとするまでにエスカレートした。
▼前も書いたように、財務的な対抗措置など強硬策より、日韓の長い交流を踏まえ、政府民間の各方面から理性的に相手を説得した方が良い。「そんなことばかりしていたら、みんな韓国と約束事したがらなくなるよ」。
▼三菱重工もやり玉に挙がる。戦時中は盛中出身で岩手県人の郷古潔が社長だった。軍需産業として連合国に戦犯扱いされたが、74年のちに蒸し返すのはおかしい。そうならないためにも54年前、朴・椎名で日韓条約を結んだのでしょう。
▼韓国は1992年に中国と国交を持った。その際、中国が朝鮮戦争に至るまで民族を踏みにじってきた責任は問わなかった。今、韓国が中国に「あのときは言い出しかね本意でなかった。中国はわが国への侵略に謝罪と賠償を」と言ったら、北京はどれほど怒り狂うことか。中国は軍事大国だから黙っているが、大したことない日本ならやりたい放題では平和を論じられまい。
▼しかし上座に向いて何も言えない分、下座には八つ当たりしたくなるほど、朝鮮半島が日中のはざまに苦しんだ歴史は日本人も省みるべき。「韓流」の親しみは「嫌韓」に転じてしまったが、相手のためにも、「韓情」には、友好の理で。

 2019年  5月  9日  ― ブラックホールの闇のごと ―
 史上初のブラックホールの撮影成功で脚光を浴びている国立天文台水沢に数年ぶりに先日訪ねると、連休中で天候にも恵まれた日だったせいもあろうが、ブラックホール効果で多くの来場者でにぎわっていた
▼地球上の八つの電波望遠鏡を結合させた国際協力プロジェクトであるイベント・ホライズン・テレスコープの銀河M87中心の巨大ブラックホールと影を撮影のニュースは、世界を駆けめぐった。アインシュタインの一般相対性理論が、アーサー・エディトンの皆既日食を利用した実験によって実証されてから100年目の今年、ブラックホールの存在が門外漢にも強く認識された
▼宇宙への関心が高まる中、宇宙ベンチャー・ISTの延期されていた小型ロケットMOMO(モモ)3号機の打ち上げが4日朝行われ、高度113・4`宇宙空間に到達した。民間単独ロケットとしては国内初の到達。小型ロケットによる衛星打ち上げへの参入を目指すISTは実用化への大きな前進と捉えている
▼同じ頃、朝鮮半島では北朝鮮が飛翔(ひしょう)体数発を発射。飛行距離が短かったとはいえ最大200`先まで到達し宇宙空間到達を超える
▼2回目の米朝首脳協議が物別れになり停滞する中で米国へのけん制と観測情報も出る。分かりにくい闇は、地上にも多く存在する。

 2019年  5月  8日  ― 朝香神社の由緒に光 ―
 盛岡市東中野町の朝香稲荷神社で、皇后雅子さまの曾祖父、山屋他人の額を見てびっくり。
▼不信心者でたまに前を通っても「神社があるな」としか思わなかった。後ろの丘に、言文一致の作家、山田美妙一族の墓があるにせよ、登るのがしんどそうで、見たことなかった。山屋と美妙の取材で関係者に詳しく話を聞き、由緒あるお稲荷さんに、あらたまってかしわ手を打った。
▼近くの天神さん、住吉さん、八幡さんほど大きな社でないから、管理の川原さん一家は存続に苦労してきたが、大事にして良かったと言っていた。山田一族の墓は浅田政典さんが祖先の藩命を守り、春夏秋と清掃してきたとは頭が下がる。令和に皇室と縁ある神社の再興を願う。
▼だから盛岡市は中野や茶畑一帯の歴史にもっと光を当ててほしい。南部氏以前の葛西氏時代のよすがあり、幕末に吉田松陰の足跡が残り、十六羅漢や孔子堂がある。それぞれきちんと手入れして、山田一族の墓も大事にすべき。社殿には山屋のほか海軍大将の栃内曾次郎、外交官の出淵勝次が額を奉納し、山田一族と藩政時代から何かゆかりがあったのだろうか。
▼まだ調査の余地があり、深い歴史が埋もれる地域。山屋他人と山田美妙。「やりたいのはやまやまですが…」なんて言わず、しっかり掘り起こしてみよう。

 2019年  5月  6日  ― 初の春の10連休最終日 ―
 10連休は長かっただろうか、短かっただろうか。改元のあった大型連休の最終日。思い切り遊んだ方もきょうぐらいは休養に充てているかもしれない
▼4月の年度初めで新しい環境となり、慣れる間もなく休みになったと感じている人も多いのではなかろうか。職場や学校が再開すると、覚えたこと、教わったことを再度確認する場面もありそうだ。でも、五月病にならず、積極的に学び成長してもらいたい
▼気が付けば花の散った桜はもちろん、木々の若葉が盛岡の主役に躍り出た。まだ小ぶりで数も少ないが、なにより色も厚みも軽やかな萌黄(もえぎ)の葉そのものが心を明るくする。その葉を五月の陽光が透過して地面を照らす風景は、成長や未来を想像させる
▼「わらんべの洟(はな)もわかばを映しけり」。あれ鼻水とは風情なきかと思いきや、室生犀星は鼻水をも一変させる若葉のエネルギーに感動したのだろうか。鼻水をたらす子どもの未来への成長エネルギーと重ね合わせたのかもしれない
▼犀星は故郷金沢を流れる犀川に由来する。里山の若葉も美しいが、アスファルトに囲まれた中の街路樹も安らぎを与えてくれる。何より市街地の中を流れる川岸の木の葉が水に映るさまは、濃くなった緑ではなく若葉の緑でこそ映える。連休明けはみずみずしい気持ちで。

 2019年  5月  5日  ― こどもの日に家族の姿 ―
 憶良らはいまは罷(まか)らむ子泣くらむそを負う母も吾(わ)を待つらむそ│高官の山上憶良は仕事一辺倒ではなく家庭を大事にしたのかと思わせる歌だ。仕事後の宴席か、はたまた残業中に先においとまする段のことわりか
▼暦の上では10連休中も商業施設は営業中。公共交通機関は休みなく、宅配便の車も走り、マスコミもまた放送は連日、日刊紙も休刊日を除き発行している。休みの多くなった医療機関は、救急や当番医以外にも入院はもとより外来診療日を設けた機関もあり、勤務の続く保護者のために受け入れしている保育園もあるが、医療や福祉がニーズに十分応えられているだろうか。一方でマンパワーの確保に苦労し、連休中の開設もぎりぎりというのが現実のようだ
▼きょうはこどもの日。企業戦士の言葉も生まれた仕事第一の時代には「家族サービス」なる、今思えば余技とも受け止められる言い回しが疑いなく使われていた。しかし、今日の日本は共働きが当たり前になり、夫や父は客体のような家族サービスなんて意識はNG
▼今こそ共助や互助の精神が重要ではなかろうか。誰もが主体者となり助け合う。夫婦でも家族でも親戚でも、ご近所付き合いの希薄が指摘されて久しいが、ご近所お隣同士であっても。社会サービスの限界も垣間見える10連休だ。

 2019年  5月  4日  ― 池田晶子さんの問う時代 ―
 改元で飛び交う時代という2文字。時代で浮かんでくるのは故池田晶子さんの「時代が悪いと言うのなら、あなたが悪いのだ」。不遇をかこう立場には冷徹に響くかもしれぬが「何もかもすぐにそうして時代のせいにしようとするあなたのそういう考え方が、時代の諸悪のモト」だという
▼哲学者と呼ばれるのを嫌い文筆家を称した池田さん。代表作「14歳の哲学」のように若者を思い、与えられる自由を疑い、根本的な自由とは何かを若い頃から考えることも説いた。批判したのは「すぐに」時代のせいにする考え方。生死にかかわる一大事でもないのに、時代が悪いと責任を押し付け、何となく安心してしまうことが、振り返れば幾度となくあった。たいした努力をせず時代のせいとぼやくことを池田さんに批判されていると自省したことも
▼元号が令和に改まった。毎年の新年がそうであるように人は節目として心を新たにする、あるいは心を改める。たった1日を境にした知恵を持っている。改心の動機になるなら錯覚であろうと使わない手はない
▼池田さんは言う。「時代とは何か。ひとりひとりの人間の生きているそこ以外のどこかに、時代という漠(ばく)とした何かが別にあるわけではない」。今の時代が良いと思えるには自分を良くする道を進む以外ないか。

 2019年  5月  3日  ― 花見シーズン最終盤 ―
 「久方のひかりのどけき春の日にしづ心なく花のちるらむ」(紀友則)。盛岡付近の桜は、米内浄水場のヤエベニシダレザクラが盛りを迎え、小岩井農場も同様のよう。里の桜は散り急ぐ。残る山の観桜でお花見も閉幕する
▼盛岡地方裁判所の石割桜はここ数年、花の付きが少なくなった感があり心配していたが、花の束がこんもりと集まったようで若返ったように見えた。長く世話をしている造園業の豊香園が2月に枯れ枝を落とす施術≠し、元気になったと思いたい。来年も見事に咲いてほしい
▼石割桜が国天然記念物に指定されたのは1923年と約100年前。指定に関連する調査報告書が盛岡市民の手元にあると4月22日の本紙で報じられた。樹齢350〜400年とされる長寿木だが、樹高も3・83b伸び、石の割れ目幅も10a前後広がっており、成長を続けてきたことが分かる
▼「しづ心なく」花を散らせる桜の潔さは、時に日本人の美意識や死生観に持ち出される。花びらではなく花ごと落ちるのも潔さだが、「のどけき」日と対照的な花弁舞うさまのはかなさが琴線に触れる
▼石割桜はエドヒガンザクラ。同樹種の山梨県北杜市の日本三大桜の一つ神代桜は樹齢2千年と言われる。まだまだ老け込ませてはならぬ石割桜。桜守の皆さん、よろしくお願いします。

 2019年  5月  2日  ― 「令和おじさん」に感謝 ―
 改元で好きな言葉や新しい時代への抱負を皆さんに聞き、きょうまで23人紹介している。
▼実はこの企画を3月中に考えていた。昭和から平成に代わるとき当時の官房長官だった小渕恵三さんが「平成」の台紙を横に掲げ、歴史的場面としてテレビで何度も目にした。これをまね、「県民の皆さんに『平成おじさん』のポーズで色紙に言葉を書いてもらい撮影する」という取材を指示した。
▼われながらなかなかいいアイデアと自己満足していたが、ふと考えた。もし菅官房長官が小渕さんのときと同じポーズを取ってくれなかったら。何しろこの31年間でITは飛躍的に進歩した。管さんが会見の場にハイテク機器を持ち出し、新しい元号を画面上で公表したらどうしよう。取材を受けてくれる皆さんのポーズが決まらなくなってしまい、申し訳ない。
▼だんだん不安になり、4月1日は新元号の2文字もさりながら、菅さんの手に何があるか、テレビの前ではらはらしていた。すると「平成おじさん」とおおむね似た格好で台紙を持ち出してくれて、「令和おじさん」ありがとう。
▼登場した皆さんの色紙にはとても素晴らしい言葉が書いてあり、令和はきっと良い時代になる。AIの時代にも、心の奥底には敷島のやまとごころもあるんだなと、色紙を見て思いました。

 2019年  5月  1日  ― 令和天皇陛下と岩手 ―
 きょうから令和時代。明治の先人の山屋他人(1866−1940)、本堂恒次郎(1865−1915)はともに幕末の盛岡に生まれ、のち山屋は海軍、本堂は陸軍の将星となった。山屋の曽孫は雅子皇后陛下、本堂のひ孫は安倍総理。19、20世紀をまたぎ2019年。大正、昭和、平成の3代を越え、盛岡人の系譜のもとに国は改元する。
▼即位される天皇陛下は1960年、昭和35年に誕生された。当時は安倍総理の祖父の岸信介内閣で、安保闘争や三池争議など騒然たる世情のうち、戦後の復興はひとまず完成を見た。高度成長が加速し、日本が大国として世界によみがえる元年であった。
▼新元号が発表された際、「令」の字に威圧感を指摘する声があった。確かに律令、法令、号令など漢語の下の字に来れば、命令的な語感だ。しかし上の字に来れば令名、令息、令夫人など、おっとり令(よ)い響きがある。
▼令和天皇皇后両陛下は共に、日本が歴史の風雪を越えた豊かな時代に成長された。ご夫妻は各国に見聞が広く、内には先の両陛下と共に天災に苦しむ国民を励まされた。
▼東日本大震災でも県民のそばにあられたことが県民の心に刻まれた。これからも国民と共に歩まれる。「れいわてんのう」と声に出してみれば、岩手の風の音も聞こえる。

2019年4月の天窓へ