2019年9月の天窓


 2019年  9月  20日  ― 岩手医大附属病院の移転 ―
 いよいよ岩手医大が盛岡市内丸から矢巾町に移転する。現在地には内丸メディカルセンターが外来機能を引き継ぐが、大学病院の拠点としては大きく移動する。
▼本町振興会が「長い間ありがとう岩手医大附属病院さんこれからもよろしくね。内丸メディカルセンターの充実を 医大跡地・本町・内丸地区の将来展望を早期に」という短冊を地元に貼り出している。岩手医大は盛岡の中心商店街とともに歩んできた。
▼創立120周年記念誌を開くと、「大学とともに85年 喫茶ママ」が、見開きで読める。ママは市民の美術展の取材でお世話になる店だが、1932(昭和7)年の開店から多くの医学生が憩った。昨年、創業400年を迎えた橋本屋本店も、岩手医専以来の師弟たち思い出の店である。
▼本町や大手先はまさに「医大城下町」。最高学府が創立以来の大変革で矢巾町に移転する影響はとても大きい。しかしこれは大型店の閉店や誘致企業の撤退などと違い、キャンパスの発展を期してのこと。盛岡市民は地域の都合ばかり言っていられない。
▼岩手医大には北日本の私学の雄として、世界とわが国の医学発展の一翼を担う使命がある。それがひいては県内、盛岡広域の保健医療を向上する。そんな期待とはなむけを込めた短冊で、矢巾移転を祝っていたい。

 2019年  9月  19日  ― 津波伝承館22日開館へ ―
 県が陸前高田市に整備した東日本大震災津波伝承館「愛称・いわてTSUNAMI(つなみ)メモリアル」が22日に開館する。国営の高田松原復興祈念公園内に一体的に整備された。大震災津波の甚大な被害を受けた陸前高田に造られた施設は未来へのメッセージも込められている
▼祈念公園は景勝地だった高田松原の一帯付近に整備されている。奇跡の一本松とタピック45の震災遺構が津波の証人。伝承館は犠牲者への追悼と鎮魂が込められるこの地を訪れる人々に3・11発生時のことやその後の避難生活、復旧・復興のことを語ってくれる。加えて大津波を体験していない人たちへも伝えたい教訓に重きが置かれた
▼大震災から8年半。いまだ仮設住宅生活があったりインフラ整備が途上だったりと、被災は終わっていない。被災者や関係者らには明白な現実だが、震災の風化が免れないのもまた現実だ。3・11後、この日本でどれだけの大災害が起き続けているか。3・11の支援者が被災者になった例も多い
▼だが、多くの犠牲を思い、より多くを後世のために継承することは県内外の犠牲者への追悼とも結びつく。常設展示のテーマは「命を守り、海と大地と共に生きる」。悲劇を繰り返さぬよう教訓発信に努める。教訓が生かされるかは、受信する側によるところが大きい。

 2019年  9月  18日  ― 極論の悪酔い ―
 内閣改造で五輪大臣は鈴木俊一さんから橋本聖子さんになった。橋本さんはウインタースポーツ出身で盛岡になじみ深い人だからめでたいが、韓国が東京パラリンピックのメダルを旭日旗のデザインだと抗議し、変なことに。
▼いくら何でもそれはない。扇のデザインですよ。旭日の絵柄そのものが悪いなら、日本国内に困る会社が出てくる。中にはとりわけ韓国に理解が深い社もあるだろう。徴用工問題で過去最悪の関係。そんな韓国の反日に、わが国民が同じレベルで取り合うべきでない。
▼テレビや週刊誌には感情的な嫌韓報道が見られるが、やめなさい。今回の日韓対立でも「韓国をそこまで怒らせた日本人こそ歴史を直視せよ」と、あくまで向こうの言い分に立つリベラル派がいる。日本は言論の自由がある。そういう主張も大いに認めよう。
▼しかしえてして潔癖な理想主義者が多いから、「旭日旗という軍国主義の遺物はただちにやめるべし。韓国人の心を傷つける。朝鮮の2文字も『朝が美しい国』を表す。これも旭日旗を連想させるので漢字でなくカタカナで…」なんて言い出したらどうします。
▼パラメダルのへ抗議はそれくらい冗談めいている。右であれ左であれ極論は人を悪酔いさせる。かつての日本の過ちを踏まえ、韓国に忠告申し上げたい。

 2019年  9月  17日  ― 上原康樹さんの舌戦 ―
 県議会盛岡選挙区は元NHKアナウンサーの上原康樹さんが空前の2万6千票台でトップ当選した。視聴者に「上サマ」と親しまれ、盛岡放送局の看板アナの突然の出馬に、県民はびっくり。
▼盛岡選挙区は2003年にザ・グレート・サスケさんが急に出馬し、約1万6千票の大量得票で当選したことがある。あの時はプロレスの覆面のままで波紋を広げたが、上原さんはむろん素顔、肉声でもって話題をさらった。それもマイクの音量ではなく音質で。連呼のボリュームよりトーンで勝負する候補は未聞だった。
▼あの包み込むような低音で政治への熱意を語りかけられれば、1票入れたくなる有権者は多かったろう。それ以上に長年にわたり、茶の間の画面越しに聞かされた「岩手愛」が浮動票を動かしたなら、単なる知名度やタレント性以上の訴求力があった。現職の議員の皆さんもくみ取らねば。
▼ただ以前サスケさんがどうしても議会のしきたりになじめず、1期で断念したように、議場は外部から見て分かりにくい慣例がある。そこは努めてクリアし、正攻法で論陣を張れば、上原さんに託した市民の思いはきっと届く。
▼声を意味するボイスには、英語で代弁者の意味もあるという。「あすの県政は晴れ渡るでしょう」と、いつもの声の政見が楽しみです。

 2019年  9月  16日  ― ドローンの可能性と懸念 ―
 台風15号からの復旧では、被害状況の把握にかなり手間取った印象がある。千葉県では倒木の影響が大きく送電設備の復旧が困難を極めているとのこと。ライフラインのありがたみと災害への備えの重要性を改めて感じている
▼無人機(ドローン)はさまざまな局面での活用が模索されている。人口減少と高齢化、限界集落などを背景とした物流、さまざまな災害への被害状況確認あるいは日頃の保守における現状確認なども実用普及の可能性を秘める。空撮を使った記録、観光や宣伝広告、番組制作などは特別ではなくなった
▼便利さの半面、軍事利用への懸念は大きく、現実に使われている。サウジアラビアではまたドローンを使った攻撃を受けた。内戦のイエメンの反政府武装勢力フーシが、フーシの拠点への空爆など軍事介入するサウジアラビアを敵視しており、国営石油会社の施設を攻撃。火災が発生した
▼核兵器の脅威はいまだ地球上に居座るが、国対国ではないテロ戦争≠ヘ人命を捧げる自爆テロが相次いでいる。しかし、ロボット兵士など無人兵器の開発が進められているのが現実で、ドローン攻撃はその初期段階にすぎないのではないか。もはやSFの世界ではすまない新たな恐怖が広がる
▼世界中から人が集まる東京五輪での備えは言うまでもなかろう。
  

 2019年  9月  15日  ― ラグビーW杯開幕迫る ―
 ラグビーW杯日本大会開幕まで1週間を切った。1987年に第1回のW杯は4年に1度開催され今年が9回目。アジアで初の開催が日本大会となった
▼歴史の長いサッカーの時もそうだったが、これまで興味のなかった人も関心を持つのが自国開催という特別席=B自国代表への声援はもちろん、4年に1度しか巡ってこない世界一を決める国際大会は、他代表の試合も感動を呼ぶ。スタジアムに行く人にとどまらない国民の盛り上がりは代表選手の後押しとなり、プレーやゲームに反映されるかもしれない
▼「1人はみんなのために、みんなは一つの目的(1人)のために」はラガー精神の象徴として使われている。ラグビー起源の言葉ではないが、試合の多くの局面でこの精神を教えられる。相手選手にぶつかっていき倒すタックルと集団で押し合うスクラムというプレーはそれぞれの精神を表す代表例だ。アプローチは異なれども献身性が表れている
▼国民の日本大会への関心がどれほどかは不明だが、4年前に優勝2回の強豪南アフリカに逆転勝ちした試合が国民のラグビーへの関心を高めたことは間違いない。世界を驚かせた日本だったが、決勝トーナメント進出はまたしてもかなわなかった。今年は初の8強へ最大の好機。歴史的瞬間が日本で起きることを願う。

 2019年  9月  14日  ― ベテラン県議の勇退へ ―
 県議会滝沢選挙区の自民党の柳村岩見さんが勇退した。副議長を務められ、5期20年の長きにわたりご苦労さまでした。
▼何を隠そう柳村さんはかつての上司。バブル時代バリバリの営業局長で、みんなに「やなさん」と慕われた。当時の滝沢村から村議に出ようと発起して退社。「いずれ県議へ」と聞き、やはり滝沢の先達の血を意識しているのかと思った。
▼村長の柳村純一さん、市長の柳村典秀さんに続き、ベテラン県議の岩見さんが退かれるとちょっと寂しい気もする。岩見さんは営業マン時代から人の懐に飛び込むのも、人を懐に包むのもうまかった。それは政治家としての美徳であったし、滝沢という自治体の務めでもある。
▼村政時代、盛岡市民が矢巾町も巻き込んで合併をラブコールしたが、滝沢はついに単独市制を選んだ。ベッドタウンとして県都の懐に飛び込みつつ、新住民の受け皿になって盛岡広域圏を発展させる道へ。今の盛岡・滝沢両市は共存共栄の間柄。そこに落着するまで、柳村さんら地元政治家の活発な論議や、住民合意の地道な努力があったろう。
▼残念ながら国政選挙に関しては、在任中の奮闘をもっても自民の劣勢をくつがえせず。後事は滝沢地元の新人に託した。今後もその名のごとく、岩手山のように郷土を見守ってください。
  

 2019年  9月  13日  ― 県議会6期24年に ―
 県議会盛岡選挙区の小野寺好さんが6期24年の任期を終え勇退した。長い間ご苦労様でした。
▼県議会にいれば、たまに外野から「狭い盛岡10人は多すぎない?」と選挙区定数についてやじが飛ぶ。しかし小野寺さんの公明党はじめ、少数政党の県議はどうしても都市部の大票田に組織票を動員しなければならない。この事情はどの県も同じだし、共産党や社民党もそう。当選後は各党の執行部として県下に目配りする。
▼だから盛岡選挙区には一定の「政党枠」が必然的に発生する。議席を得れば党人としては県都選出の責務を広く負うし、人口比からも定数10は決して多い数でない。小野寺さんは公明党唯一の議席、県本部代表として東奔西走してきた。
▼在任中の公明党は与野党転変し、連立の自民党がタカ派に傾くたび、強固な支持母体が揺らぐのも見た。しかし少数ながらあくまで与党として政策実現を指す路線は、政界に大きな影響を与えた。小野寺さんは正月に必ず党本部の要職を招き、盛岡駅前で年始の街宣をする律儀な議員だった。
▼党務だけではなく、選挙区の地域課題についても、市民の人間性を見つめながら誠実に当たった。おかげで今回の県議選で後継の新人も当選。その名の通り誰からも好かれた小野寺さん、今後も大局からご指導願います。

 2019年  9月  12日  ― トンボ飛ぶ季節の内閣改造 ―
 「赤とんぼ人をえらびて妻の膝」(山口青邨)。9月入りしてすぐ、自宅の外を飛ぶトンボを目にした。赤トンボではなかったが、秋の訪れを実感
▼ところが盛岡は6日から5日連続で真夏日となり、時ならぬ暑さに閉口。寝苦しい夜さえある始末だった。きのうの雨で余熱も冷め真夏日が途切れた。いよいよ本格的な秋の到来となるだろうか
▼参院選を経ても安倍自公政権は揺るがず、きのう内閣改造が行われた。留任は在位の長い2人だけで、閣内移動や再入閣は少なく、閣僚19人中13人が初入閣となった。岩手の鈴木俊一氏が五輪相を解かれたが、自民党4役の総務会長として与党の中枢で汗を流すことになる。改造内閣の話題は小泉進次郎氏の環境相就任。38歳大臣は戦後3番目の若さで男性に限れば最年少。人気が高く発信力のある小泉氏の入閣は何度か注目されてきたが、いよいよという印象か。大臣となった小泉氏の発言はこれまで以上に取り上げられるはず。過去の閣僚が舌禍で辞任というケースは何度もあり、小泉大臣の発言姿勢が従来通りか変化するのか興味深い
▼ナンセンスソング「赤とんぼの唄」は羽をとったらあぶら虫に、足を取ったら柿の種になる。柿の種になったら主体性を奪われたも同然。各大臣には選ぶための羽と足を放棄してほしくはない。

 2019年  9月  11日  ― 達増知事の4期目へ ―
 達増さん知事4期目当選おめでとうございます。達増さんとは同い年で、学校は違うが近い地域に育ったので、気持ちはよく分かります。40万票以上の圧勝は、ちと頼りなさげに見えるけど、困難から逃げず正面から当たる政治姿勢が信任されたと思います。
▼増田さん達増さんが岩手に帰り、新しい潮流を作ったのが平成7年、小沢さんの肝いりで樹立されて続く政権が、増田3期+達増4期と通算28年になります。達増さんが前任者をどう思っているか知りませんが、増田県政は政策評価だの発生主義だの、こちらの頭も悪くって、手法的な政策がさっぱり分かりませんでした。
▼でも私、増田さんをひとつ評価していることあるんです。あの人が国や他の知事と対等に渡り合い、岩手を前へ前へ押し出したことは県民意識を確実に変えました。スポーツ文化でこれだけの大スター続々は、きっとその果実。
▼だから達増さんもどんなやり方をもってでも、今期は本腰で後進を育ててください。代議士時代から、みこしに乗るのは得意だけど、候補者擁立にえらい苦労したり、人を担ぐのは不得手でしたね。でもやってほしい。
▼後進の育成は谷藤さん鈴木さん小沢さんもやってください。無風選挙は民主主義の危機。あの人が立つそうだと、そちこち風が立つように。

 2019年  9月  10日  ― 知事・県議選終わる ―
 7月の参院選から選挙続きの感が強かった。8日に知事・県議選の投票が行われ、選挙が終わったと一息つく。だが、当選者は県民の負託に応えるための許可を得ただけとも言え、与えられた任期の活動に真価が問われる
▼知事選は前回無投票当選だったため、8年ぶりの選挙戦となった。現職達増拓也氏の連続無投票当選も浮上する中で元県議の及川敦氏が7月に出馬表明し有権者に選択の機会がもたらされた。両陣営ともにビジョンなどを訴えたが、現職の強みで知名度に勝る達増氏が大勝。周到な準備期間が欲しい新人の及川氏にとり表明から短期間で浸透を図るには気の毒な面もあった
▼県議選は48人のうち15人が無投票当選。半分の8選挙区で一票を投じる機会がなかった。その中で10人の新人議員が誕生する。盛岡では元NHKアナウンサーの上原康樹氏が本番が近付いての出馬表明。組織を持たない戦いで圧倒的な得票を挙げた。政治家は人気が全てではないと承知するが、知名度の高い議員が増えることで県議会を傍聴するなど県政へ県民の関心が増すことにつながってもらいたい。関心が高まれば議員の背筋も伸びる
▼各種選挙の投票率低下は深刻。無投票は関心低下を助長しかねない。新議員が決まった今は県政への関心を高める観点を活動の中に求めたい。

 2019年  9月  8日  ― 投票箱とタニシの伝説 ―
 雫石町の広養寺に不思議な伝説がある。境内にたくさんあった池にタニシがいた。寺はタニシを大事にして、池をさらった後は一粒ずつ水に戻した。あるとき大火に見舞われ、ご本尊が焼けたと悲しんでいたらご無事。タニシがびっしり貼り付いて、火を防いでくれていた。
▼おそらく昔、民を慈しむ高僧がいたことの伝承だろう。広養寺は戦国時代にさかのぼる古刹で、多くの寺宝が眠る。その中に県内最古の投票箱がある。1890(明治23)年の初の衆院選で使われた。千両箱のように豪華な漆塗りで、黒い金具が付いている。
▼「衆議院議員投票函 岩手県 南岩手郡 雫石村 御明神村 西山村 投票所」と朱書きしてある。当時の有権者は高額納税者の25歳以上男子に限られ、県人口約68万人のうち4766人。ちなみに盛岡は市制施行したばかりで人口3万人に満たず、以来130年で県都一極集中がいかに進んだか分かる。
▼雫石では広養寺の住職が信望を買われて選挙管理にあたり、当時の岩手1区の投票所になっていたという。タニシのご利益があったわけでもなかろうが、谷河尚忠(1834〜1918)が当選した。自由民権の論陣を張り、民を重んぜよとの訴えが届いた。
▼きょうは県内約106万人の有権者で、令和初の知事・県議選の投票日です。

 2019年  9月  7日  ― 児童虐待の自虐 ―
 痛ましい児童虐待の事件が相次ぐ。10年ほど前、盛岡市内のあるアパートで毎日、小さな子をたたく親がいた。泣きわめき、かわいそうだし、周囲の住民はうるさくてたまらない。
▼隣近所で「夕べもだよ」「いやだねえ」「困ったもんだ」と顔をしかめ合うばかり。虐待の社会問題化の時勢に、ついに決心し、ある人がしかるべき機関に相談した。ありがたいことに、しばらくして悲鳴はやんだ。
▼「やっぱり通報して良かった」とみんな胸をなでおろし、やれやれ。ところがそれから数年後、住民たちは別のわめき声に悩まされる。ついこの前まで小学校低学年だった男の子が学生服を着て、変声期を迎え、カンフー映画の雄叫びのような声を上げ親に逆襲に出たのだ。
▼隣近所はまた「夕べもだよ」と顔をしかめ合うばかり。ある人が「小さい頃あんないじめ続けていたら、体の大きさが逆転したとき、ああなるよな」とため息をついた。住民たちに「いやだねえ」「困ったもんだ」の日々が戻ってきた。
▼このように児童虐待は家庭内ばかりではない、地域にも迷惑をかける。悲しい事件が起きたら「隣近所は何もしなかったのか」という世間の非難を感じ、住民も、いたたまれなくなる。子どもが大きくなって報復されれば、児童虐待はまさに「自虐」になるだけだ。
  

 2019年  9月  6日  ― 英国のEU離脱の混迷 ―
 英国のEU離脱をめぐって、ジョンソン首相就任後しばらく眠っていた国会が再開し、激しいやりとりが起きている
▼離脱強硬派のジョンソン首相は10月末の期日通りのEU離脱を推し進める考え。野党労働党を中心に「合意なき離脱」を阻むための離脱延期法案が下院に提出され、下院が賛成多数で可決した。法案は上院で審査される。対抗策としてジョンソン首相は離脱期日前の総選挙実施を提案したが、実現に必要な下院の3分の2の賛成を得られず否決。混迷からの出口は見えない
▼議院内閣制の英国でも議会解散と総選挙がある。日本人とすると首相が抜く伝家の宝刀≠フ感覚もあるが、英国の総選挙は議会承認を通過しなければ実現しない。かつて英国には首相に解散権があったが、2011年制定の議会任期固定法で解散権が廃止されたという
▼日本では「解散は首相の専権事項」との政治家の発言をよく聞く。解散権を保有するのは確かだが、過去の全ての解散に伝家の宝刀を抜くに足る大義が認められたかはあやしい。英国の廃止を分析・研究し、日本も検討してもいいのではないか
▼総選挙や国民投票の多発は害にもなりかねない。EU離脱も国民投票の尊重だったはず。議員や政府が最優先すべき立場で議論し決着しなければ国民は納得できないだろう。

 2019年  9月  5日  ― トミカと選挙 ―
 昭和時代の川徳の思い出を書き、「トミカを買ってもらった」と懐かしんだら、「腹の出たお前にそんなかわいい頃があったのか」と言われた。1970年代の最初期のトミカならアンティークの値打ちがあるだろう。玩具屋で今のシリーズを見ると作業車や重機など各種あり、思わず童心に返る。
▼これに選挙カーのモデルも加えたら。ワゴン車のルーフに小箱を乗せるだけ。白地の看板にマジックで名前を書き込めるよう、さらに小型のICレコーダーを車体に組み込み、自分で声を吹き込む仕掛けにする。
▼わが子の声で「なにとぞ、お小遣いを上げてください」と連呼するミニカーが家にあったら、親は頭が痛くなるが、主権者教育にはきっと役立つ。今は18歳選挙権で、小学生とて6・7年もしたら一票の主。トミカは大人のコレクターも大勢いるので、人気のアイテムになる。どこかの自治体や選管の関係団体がタイアップして商品化したら。
▼投票率低下は深刻な問題だが、あまりしかつめらしくなってもいけない。全国紙の参院選の報道によると、棄権の理由として「政治が分からない者は行かない方いいと思った」という回答が目立った。
▼そんなに構えず、ミニカーを走らせるように「ちょっと見に行っか」というくらいの気持ちで8日は投票に行こう。

 2019年  9月  4日  ― 無投票のヒストリー ―
 県議選は全16選挙区の半数が無投票に終わった。低投票率や地方選の無風化は全国的現象で本県だけでない。きっと今の若い人の内面に関わる世代的問題だ。彼らと話して気付いたことがある。
▼主導権争い、政局、だれが右大臣か左大臣か幹事長か事務局長かとポスト配分の話などにてんで興味がない。自分は1964年生まれで昔は若い人だけど、その手の話が三度の飯より好きだった。訳がある。子どもの頃からクラスや学年の執行部にされることが多かった。
▼学級委員長になっても愛新覚羅溥儀みたいなもん。先生方の言いなり、みんな言うこと聞かない、無力なリーダーだった。そして自分にできないからこそ余計、血みどろの抗争というやつに憧れた。歴史の本をめくり、あの時代この男はどうやってライバルを蹴落とし某国の政権を奪取したか、もう面白くて。
▼今の若い人がそういうのに本質的に白けているなら、いじめだ何だで子どもの世界にすさまじい派閥抗争があり、大人になったらまっぴらご免、議会で舌戦、集票合戦なんてやってられません。だから立候補はおろか投票権さえ放棄なら、その厭世が時代を不幸にする。
▼無投票で当選しても安心などしてられない。気付いたときにはラストエンペラーにならぬよう、あえてかぶとの緒を締めよ。

 2019年  9月  3日  ― マイナンバーの存在感 ―
 保有しているのに普段はほとんど意識していないものが数多くある。すぐに列挙できないのはその証しと言えよう。そのうちの一つがマイナンバー(個人番号)だった。国民一人ひとりに2015年指定されたが、日常的に必要としていない
▼そのせいもあろうが、マイナンバーカードなるものの交付を受けていない。先だっての市役所への証明書申請にも従来の住民カードを使った。こういう機会に未交付を意識はするが、当座の用件が済んでしまうので繰り延べを繰り返している
▼導入前後には個人情報の管理などを懸念する意見があったり、番号指定する市町村の中にはネットワークへの接続を拒否するところもあったりと、報道の量も手伝って国民の関心は高かったように思い起こす。現状はマイナンバーカードを取得していない人には特にすぐマイナンバーを示せない人も多いのではないか
▼マイナンバーへの意識が高まったのは、10月から予定されている消費税増税への対策にマイナンバーカードの活用が検討されているためだ。キャッシュレス決済へのポイント発行の仕組みが考えられているとのこと。ポイント取得のうまみがあるのだろうが、ネット購入などで個人の消費行動がデータ蓄積されることに不安も出ている折、国の情報把握の度合いが気になる。

 2019年  9月  2日  ― 防災に重要なもの ―
 防災の日の9月1日、政府は首都直下型地震を想定した総合防災訓練を実施した。首都圏は人口密集、建物密集地ならではの特性に基づいた備えが必要だ。来年の東京五輪が象徴的だが、居住者以外が多くいる中で大きな地震などが発生したら、どうやって土地不案内の人、日本語理解の難しい人たちの安全を図っていくのかなども課題とされている
▼岩手は岩手ならではの対策を考え備えなければならない。都市部、平野部、山間部、沿岸部などと、それぞれの特徴を捉えなければならない。地震や津波以外も大雨、豪雪、暴風などの災害があり、対応はそれぞれのケースで違ってくるはずだ。県内でも各地で防災の日やその前後に防災訓練が実施されている。その訓練を通じて自分たちの地域の特徴を防災面から把握したい
▼先ごろ、九州北部が豪雨災害に見舞われ、3人が亡くなられた。総雨量だけでなく、短時間に大量に降る雨も恐ろしい。列島で度々起こる豪雨災害は忘れる間もなく記憶が更新される
▼安倍首相は1日「災害に打ち勝つために大切なことは、国民一人ひとりが、自らの命は自らが守るという意識を持ち、適切な避難行動を心がけること」と訴えた。ハード面の対策、地域の共助が生かされるのは一人ひとりの自助が土台にあってこそと肝に銘じたい。

 2019年  9月  1日  ― 谷藤市政の5期目に ―
 谷藤盛岡市長の5期目がスタートする。谷藤裕明。このお名前を今まで何度書いたろう。1991年県議初当選、自民党県連幹事長、県議会議長、盛岡市長。平成、令和と地方政治家を貫き、かつての若武者も今や古希の声を聞く。
▼県議選の初陣では自分が第1声を取材に行った。写真を失敗して谷藤さんの選車を追いかけ、冷や汗で撮り直したっけ。県議会を10年担当したが、実はネタを取るためもっとこんがらがった間柄の先生方もいたので、谷藤さんとはそんなに深くお話したわけではない。
▼ただ盛岡市民の多くが谷藤さんを見たとき、官と民の中間的な程よい距離感があり、議員から首長へ役柄を変えてもそれで広範な支持を集めてきたのだろう。しかし今回の選挙は新人2人の追い上げでかつてないピンチ。多選批判の逆風にたじろいだ。
▼大接戦の果て有権者は安定と継続を選び取り、仕上げの4年を与えた。中心市街地の再開発に新機軸があるようだが、市民合意はしっかり図られているか、地元経済界や議員や職員との距離感は、よく点検して臨んでほしい。
▼谷藤裕明とお名前を書くと、谷の字が2度出てくる。政治家として長い歩みに山あり谷あり、多くの起伏を乗り越えた努力には頭が下がる。市民のため明るいゴールへと、しっかり願います。

2019年8月の天窓へ