2009年 4月 7日 (火)

       

■ 〈イタリアンチロルの昼下がり〉67 及川彩子 ポレンタのごちそう

     
   
     
   パスタやピザ、ジェラートなどイタリアの味は日本でも大人気と聞きますが、ここ北イタリアの「ポレンタ」もお勧めの味。我が家でも、普段の食卓に欠かせない一つです。

  イタリアに来たばかりのころ、近所の昼食に招かれ、ポレンタを知りました。大皿にソーセージやチーズと一緒に盛られた「黄色いお粥(かゆ)」にためらっていると「これはポレンタといって、パンの代わりに食べるんだよ」と言われ、初めて味わったのです。

  「ポレンタ」は、トウモロコシの粉を水で練ったかゆ状の食べ物です。貧しい時代、この地方では、パン代わりだったと聞きました。

  イタリア人にトウモロコシを茹(ゆ)でて食べる習慣はありませんが、ここベネト州のあちこちにトウモロコシ畑があります。実ったまま畑で乾燥させ、収穫するとすぐ粉にします。

  調理は簡単で、大鍋に水を入れ、暖炉の火にかけ、少しずつ粉を入れます。棒でかき回すこと30〜40分。次第に固まり、粘りが出たら出来上がり。手を休めずにかき回すのがコツ。味付けは塩少々。時間をかければかけるほど、舌触りが滑らかになるのです。

  練り上がったポレンタを大皿に入れ、神に感謝の意を込め、中央に十字の切り込みを入れ、少し寝かせます。単純な味ですが、とろけるような感触は最高で、白米より弾力があり、ジャガイモよりふんわりして、肉料理の付け合わせによく合います〔写真〕。

  時間が経つと、固くなりますが、それを板状に切り、こんがり焼いたポレンタもまた、格別です。

  昔は「ポレンタ作りで主婦の一日が始まる」と言われたそうですが、今では、1分間練るだけのインスタントポレンタや、温めるだけの真空パック入りも売られています。

  人をばかにする時のイタリアの言葉は「ポレンタ野郎!」。パンもない「貧しい食事」に由来しますが、そのポレンタも、今では北イタリアの名物。手間のかかる大のごちそうです。

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