2009年 4月 11日 (土)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉2 望月善次 雪降らばすずろかに

 雪降らばすヾろかに降れこひひとの裳
  (もすそ)に軽くふりしきりつゝ
 
  〔現代語訳〕雪が降るのなら、何となく心が惹かれるような様子で降って欲しいものです。絶えることなく、恋人の裳に軽く降りながら。

  〔評釈〕保坂嘉内の短歌評釈を始めたい。しばらくは、嘉内が盛岡高等農林学校時代に賢治達と発行した『アザリア』掲載の作品を辿ることにしたい。抽出歌は、その創刊号に掲載された「春日哀愁篇」(十七首)の冒頭作品。「すヾろ(漫ろ)」は、本来は、物事が自身の意とは関係なくある方向に行くことを示す語であるが、ここでは「何となく心が惹かれる」意だとした。また「裳」は「も・もすそ」の訓みがあるが、短歌定型の上から「もすそ」だとして、参考のルビを加えておいた。(但し、意味の方は「裳」、「裳裾」のどちらの可能性もある。)スムーズな意味の繋がりの点からすると「雪降らばすヾろかに降れ」の前半と「こひひとの裳に軽くふりしきりつゝ」との後半の関わりが円滑ではなく、嘉内の短歌技量にも関わることになろうが、「恋人」が出てくるところなどが賢治とは対照的である。
(盛岡大学長)

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします