2009年 4月 12日 (日)

       

■ 〈胡堂の父からの手紙〉211 八重嶋勲 要求の金遅延するは気の毒であるが

     
  紫波町大巻屋号「小清水」佐藤順友氏宅  
 
紫波町大巻屋号「小清水」佐藤順友氏宅
 
  ■279半紙 明治41年6月15日付
宛 東京市麹町區飯田町四丁目三十一、               日松館発 岩手縣紫波郡彦部村

前畧曽テ金五十円送金スヘキコトヲ電報ニ接シタルモ、未タ送金之運ヒニ不至、定メテ困難シツゝアルナラン、目下ハ田植最中、家内ニ人ナキ為メ繁忙ヲ極メ殊ニ例之農銀払込ミタメ、種馬費借受利子六十円(□□ニテ)払込期ニ相成、加之去ル十二日馬匹出産セシニ乳呑コト不出来、母馬初産ノ為メ子ヲ愛スル気ノナキ為メ二晝夜近所ノ人ヲ助合受、苦心ノ上昨日ノ朝ヨリ乳ノム様ニ相成先安心致候、本日漸ク役場ニ詰メ高橋ヲ以テ小清水ニ交渉シテ金五十円借入ルコト申込シ居リ、多分明日頃確定スルコトナラン、右様心得ラレ度候、

一受験ハ在ル科目丈受験シ、在ル(科)目ヲ来ル九月ニ残シ、受験スル方可然候、全体不受ルモ帰村ノ上ニ語ルモ気ノ毒ノ様ニ被思候、其邊ハ篤ト考慮セラレ度候、右用事迄、早々

    六月十五日     野村長四郎

     野村長一殿

(本文右側から下へ、右下から左下までL字型に細かく書きつづっている)

  如斯金策ニ困難スルコトハ豫期セシコトニ候故、今更心痛スルニ不及候、併シ要求ノ金遅延スルハ気ノ毒ナリ、如何共不止得次第ニ候、
 
  【解説】「前略、かつて50円送金せよとの電報があったが、いまだ送金の運びになっていない。きっと困難していることであろう。目下田植え最中、家族人手がないため繁忙を極め、ことに例の農銀の払い込みを溜め、種馬費借り受け利子60円(□□ニテ)の払込期になっている。これに加え、さる12日に馬が出産したが、乳を仔馬が飲むことが出来ず、母馬が初産のために仔馬を愛する気がないため、2昼夜近所の人を頼み、苦心の上、昨日の朝から乳を飲むようになり、先ずは安心している。

  本日ようやく役場に出勤。高橋をもって大巻の屋号小清水(佐藤氏)に交渉して50円を借り入れることになった。多分明日頃確定することであろう。右の様なことを心得てほしい。

  一つ受験はある科目だけ受験し、ある科目は来る9月に残して、受験する方がよい。全体を受けないで帰村するのも気の毒に思われる。その辺はとくと考慮してもらいたい。右用事迄、早々

  (追伸を、本文の右側から下へ、右
    下から左下までL字型に細かく書
    きつづっている)

  かくのごとく金策に困難することは予期していたことなので、今更心痛するにはおよばない。しかし要求の金遅延するのは気の毒である。いかんともやむを得ざる次第である。」という内容。

  田植え最中であるのに、野村家には長四郎夫婦以外人手がない。農工銀行借入金の利子60円の払い込みの金策、長一の学費の金策送金。馬が出産して仔馬が乳を飲まないなど目が廻るほどの繁忙と心痛である。

  期末試験の受験の仕方について、先日、野村亀治の易断に沿って、今回は出来る科目のみを受け、後は3か月後の9月に受験するようにと勧めているのも親心のあらわれである。

(県歌人クラブ副会長兼事務局長)

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