2009年 4月 21日 (火)

       

■ 〈イタリアンチロルの昼下がり〉68 及川彩子 サラミと生サラミ

     
   
     
  わたしの住むアジアゴの町は、アルプスの裾野が、なだらかに広がる高原にあります。方々に牧場があって、特産は、フレッシュなチーズ、それにサラミとサルシッチャ(ソーセージ)です。

  サルシッチャは、マスタードやケチャップをかけて食べるホットドックソーセージとは違う生サラミで、細かく切った豚肉に塩やハーブをまぶし、腸詰めにしたものです。これを炭火焼きにし、その熱々の香ばしい焼き立てを食べるのです。

  腸詰めをつるして作るサラミは、どの肉屋や市場でも、スダレのようにつるして売っています〔写真〕。丸太サイズから小さいもの、白カビや黒コショウで覆ったものなど、風味も硬さも、干す期間によってさまざまです。

  サラミは、前菜やパニーニ(サンドイッチ)によく合います。伝統的なパニーニは、無塩パンに、サラミだけを挟んだもので、レタスやトマトなどを一緒に挟むと風味を損ないます。小麦粉の甘みとサラミの塩味だけで味わうのがイタリア風なのです。

  わが家では、日本からの来客があると、真っ先に、親しい大農家のパガニン家に案内します。旧家を守るアントニアおばさんのもてなしも、やはりパニーニ。

  台所の隅につるしてある大きなサラミを厚く切り、ワインに添えてくれるのです。気取らないイタリア人の温かさと、本場のパニーニに、誰もが「おいしい!」と感激してくれるのです。

  残ったサラミは、元の場所へつるして置きます。産地の風土に育まれたサラミは、冷蔵庫に入れたりはしません。「人の傷口が自然に治るように、食べかけもつるしておけば大丈夫。生きているんだから」とアントニアおばさん。

  チーズの保存も同じ。野菜も果物も暗がりに、ごろごろ置いている農家。湿気の少ない風土を生かした保存法なのです。

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします