2009年 4月 30日 (木)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉9 望月善次 はらはらと友禅染に

 はらはらと友禅染に桜散る、力はなく
  て友七の上に
 
  〔現代語訳〕はらはらと友禅染に桜が散るのです。(その散り方は、)力なく、(友禅染師)友七の上にはらはらと散っているのです。

  〔評釈〕「春日哀愁篇」十七首〔『アザリア』第1号〕の七首目。六首に続いて、芝居の一幕を作品化したらしい作品。〔演劇面に暗いので、前回に引き続いて、岡本綺堂の「京の友禅」などを念頭に置くことにする。綺堂は、「修善寺物語」で認められ、「半七捕物帖」などでも知られた作家。余談ながら、「半七捕物帖」は、野村胡堂の「銭形平次」にも影響を与えた作品であることも、読者各位のよくご存じのところ。〕「はらはら」は、「花びら・木の葉・雪など、小さくて薄いものが間断なく空から散ったり降ったりする様子。」〔『暮らしのことば擬音語・擬態語辞典』(講談社)〕を示すオノマトペ。このオノマトペがよく知られたオノマトペであるだけに、作品を一首として自立させるためには、他の部分にそれに見合う表現がなければならないのだが、そうしたレベルには達していないというのが、評者の解釈。しかし、いずれにしても、嘉内の芝居好きという条件を除いては成立しない一首。

  (盛岡大学長)


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