2009年 7月 22日 (水)

       

■ 〈口ずさむとき〉134 伊藤幸子 「百歳社会」

 百歳の姑のしづかに笑む顔を見つつおのづと涙のにじむ
  小原美代
 
  このほど短歌新聞社より「年刊短歌集」第31集が発刊された。登載歌人は1122人、作品総数5829首。なんといっても戦争回顧の歌が圧倒的に多い。歌壇の高齢化、不況、社会不安を思えば、悲惨な戦争を語り継ぐことにより、平和への願いが伝わってくる。

  ところで「解説」を書かれた島崎榮一氏は掲出歌とさらに二首を挙げ、「百歳」をキーワードに次のように述べられる。「その暮らし今も質素に変はりなく明治の母は百歳迎ふ・鈴木京子」「不老革命、百歳社会がやつてくる飽きない生の手だて学ばむ・伊藤幸子」を取り上げ「冒頭高齢化社会に触れたが、これらの歌はたまたまあげた。三首とも百歳である。他者の姿ではあるが、力強く頼もしくさえある。老いの愛の歌を考え、老いの文学を語る時代が来ているのかもしれない」とある。

  百歳歌人といえば、平成2年に満百歳で現役歌人のまま亡くなられた土屋文明を思う。とりまく時代、環境は変わっても、日々新しい発見があり、軸足のぶれない大樹であった。

  私の所属する短歌会でも、90代の歌人が大勢おられる。毎月新作10首を送り、翌々月の掲載なので、投稿後亡くなると2カ月間は、「故」と冠して誌面に載る。現役としてそれが望ましいのだけれど、病気高齢などで休詠されると名前が見えなくなり、その後、亡くなられたと分かることもある。この「後期高齢者」だの「会員自然減」などの言葉の無神経さにぞっとする。

  以前、米沢の古典講座のことを書いたが、その先生に新聞をお送りしたところ、「私は古稀どころか、もう傘寿を越えました」とお手紙をいただき驚いた。心の若さが実年齢をはるかに若返らせると実感する。

  「目の前で可愛いピンクの傘ひらく淑女を見れば歌会仲間」同歌集の奥田巖さんの歌。こんなかわいい仲間がいたら、「高貴」な高齢の方々も発奮して出席されることだろう。

  「ひとつやふたつ持病のあるのは息災の内といふ話に頷き合へり」磯辺美智子さんの作。近未来、万能細胞開発、百歳社会のロングランにはまだまだひと花もふた花も咲かせられそうだ。

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