2009年 11月 17日 (火)

       

■ 〈イタリアンチロルの昼下がり〉83 及川彩子 晩秋のナトリウム光

     
   
     
  11月に入り、アルプスのすそ野、ここアジアゴ高原も紅葉真っ盛り。でも日本と違い、モミジなどをめでる習慣はありません。

  10月の最終日曜日にサマータイムが終わり、イタリアと日本の時差は8時間。一気に日が短くなり、冬支度へ向かうこの時期、心を和ませてくれるのが、夜道を照らす橙(だいだい)色のナトリウム灯です。

  景観を守るため、ギラギラとしたネオンのないイタリアでは、夕暮れになると、道筋にポッツポッツとナトリウム灯が灯(とも)り始めます。橙色の灯(ともしび)は、ミラノのような大都会、ベネチアの水辺、ローマの遺跡群と、どの街並みにもよく似合います。また幻想的な風景を醸し出すだけでなく、霧の多い冬のイタリアでは、交通安全に欠かせない灯なのです。

  イタリア人の街灯好きは、日の短い冬ばかりではありません。夏は夜9時過ぎ、周辺が橙色の明かりに包まれると、家族でピザ店に繰り出し、屋外のテーブルを囲みます〔写真〕。

  本来、青い目の西洋人は、光に弱いと言われ、サングラスは必需品。ファッション性だけでなく、身体的理由も兼ねているのです。家の明かりも日本に比べて暗く、蛍光灯はほとんど使われていません。

  イタリアに住み始めた当初、部屋の薄明かりが気になりましたが、今は間接照明を利用して、ぬくもりさえ演出するイタリア人のセンスに教えられることばかりです。

  先日「日本の国旗の赤は何を表わすの」と近所の子供たちに聞かれ、「太陽よ」と答えたものの、当たり前に思っていた色彩感覚の違いに気づかされました。

  ヨーロッパ各国の国旗に使われている赤のほとんどは、建国のために犠牲になった人々の血と情熱。特にキリスト教では、赤はキリストの贖(しょく)罪、神の愛を表わします。イタリア国旗の緑・白・赤の「赤」も然(しか)り。

  この国にとって、暗闇に灯る赤い灯は「永遠の癒やし」そのものなのです。


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