2009年 11月 19日 (木)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉85 望月善次 このまなざしかすかに君は

 このまなざし かすかに君はえみたれ
  ば おろかにも男は よろこび眼を伏す
 
  〔現代語訳〕この私の眼差しに対して、微かにあなたは微笑んでくれたので、男(すなわち私)は、愚かにも、喜んで眼を伏したのです。

  〔評釈〕「阿提目多伽抄」〔『アザリア』三号〕七首中の六首目。まず、節調の問題から入ると「六七五九八」と半数以上の句において「字余り」が用いられている。しかし、この作品が「短歌」として成立するのは、「六七五九八」と五つの積み重なりが認識でき第四句の「九」音というはみ出しも、(「六」は「五」に、「八」は「七」に収れんされるから)他の四句によって支えられ、結果として「五音七音を基本とする、五七五七七の五つの積み重ね」という短歌の原則に適合するからである。さて内容である。好ましく思っている相手が、「笑む」微かな動きにも反応するいじらしさは、確かに「恋する者」の一つの形。こんな内容の作品を『アザリア』の誌上に出すこと自体が一つの冒険であったろう。第四句の「おろかにも男は」は、節調の上でも注目に値することを上で述べたが、この「字余り」によって思いの丈を述べようとしたのである。また、「男」の客観的な表現も注意すべき点の一つ。
(盛岡大学学長)


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