2010年 4月 13日 (火)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉143 望月善次 駿河台、ヤクザの学生

 駿河台、ヤクザの学生歩みをるそのか
  たわらに自動車のちり。
 
  〔現代語訳〕神田・駿河台を、ヤクザの(様な)学生が歩いています。その傍らには自動車の粉塵が舞っています。(いかにも都会らしい情景です。)

  〔評釈〕「都市居住者」九首〔「東京雑信」、『アザリア』六号(大正七年六月二十六日)〕中の三首目。第四句はノートでは「そのかたわらを」であった。「やくざ」は、「3枚ガルタという博奕(ばくち)で、八(や)九(く)三(さ)の目が出ると最悪の手になること」に由来する語だという〔『広辞苑』〕。博奕打ちやヤクザ者という意味と「役に立たない者」の意味がある。そのヤクザと話者の関係は、通常では「ヤクザらしい学生」とそれを見ている話者という関係になろうが、高等専門学校を除籍処分になり、まだ進路も確定しない自分を「役に立たない者」として、話者自身を指すことも理念的には可能であろう。「自動車」は、「工業的生産は1914年の脱兎号に始まるが、第二次大戦前は軍の助成によるトラック、バス製造の域を出なかった。」〔『マイ・ペディア』〕のように一般の人には手の届かぬものの象徴的存在であった。嘉内も「ヤクザと自動車」に「都市」を見たのである。
(盛岡大学学長)


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