2010年 5月 13日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉308 岩橋淳 テレビがなかったころ

     
   
     
  1953年のフランス、ある街の様子を、一人の男の子の生活を通して描きます。

  第2次世界大戦の終結から8年。8歳のアランは、育ち盛りの遊び盛り。風呂なし共同便所のアパートメントに5世帯で、譲り合い、助け合って暮らしています。電気は通じているものの、熱源は石炭だし、「氷蔵庫」には毎日配達してもらう氷が欠かせません。娯楽はラジオドラマ、日曜日の一張羅、家族ででかける映画館。

  こどもや犬が駆け回わる表通りは、まだまだ車の姿は少なく、家から教会までの道のりには食料品店、肉屋、パン屋、牛乳屋、床屋、新聞屋、薬屋、居酒屋、雑貨屋……、これだけで人は暮らしていけました。

  国土が戦場となったフランスでは、その復興にまだ時間はかかりそうですが、ひとの心はのびやか、おおらか。貧富の差やいじめ、体罰はあるけれど、年中半ズボンのこどもたちは学校が大好きで、街はひとつの共同体として、それなりに機能している……。

  本作はストーリーとしての構成はありませんが、当時の雰囲気(いいことも悪いことも)を知る者が読めば、場面場面からそれぞれのストーリーがおのずと立ち上がってきます。現代っ子にはちんぷんかんぷんかもしれませんが、40〜50代のお父さん世代にとっては、国境のないタイムマシン的一冊と言えるでしょう。

 【今週の絵本】『テレビがなかったころ』Y・ボモー/作、ときありえ/訳、西村書店/刊、1995円(2002年)。



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