盛岡タイムス Web News 2010年 10月 15日 (金)

       

■ 〈お父さん絵本です〉329 岩橋淳 わにわにのおおけが

     
   
     
  5年前にご紹介したシリーズ第1作「わにわにのおふろ」。人家に巣くう、いやさ住宅地の一戸建て「自宅」に棲む1匹のワニ、その名も「わにわに」の入浴顛末を描いて、おかし怖ろしの人気を博した怪作でした。以来、なぜだか幼児の絶大な支持を取り付け、作を重ねての四作目です。月刊絵本としての発表から4年、今年、待望の単行本化。

  初期作では、限りなく野生の生態に近いワニが、お風呂に浸かっておもちゃで遊ぶチグハグさがいい味を出していたのです。しかし、料理をしたり縁日にでかけたりと、少ぉしずつ人間化していくわにわにの変貌ぶりに、わたくしとしては、実はしばし傍観を決め込んでいたのです。そして、なにげに手に取った本作。

  今回、わにわには切り紙工作に挑戦。快調なテンポで切って折って張って…、と、突然にかれを襲うアクシデント! なに、「指先」をハサミでちょいと切っただけなのですが。

  うおぉ! という絶叫、ここで読者はハッと我に返る。あっ、コイツは猛獣だったのだ。

  この落差、緩急が、絶妙の間合いで爆笑を誘います。そして大袈裟に包帯ぐるぐる巻きの図は、存外の小心ぶりを露呈してしまったわにわにの居直りかもしれず、またおかしい。

  あくまで凶相、絵本界のダーティー・ヒーローとしてのわにわにの存在は、しばらくは揺るがないであろうと確信を持った次第です。

  【今週の絵本】『わにわにのおおけが』小風さち/ぶん、山口マオ/え、福音館書店/刊、840円(2006年)。

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