盛岡タイムス Web News 2010年 11月 11日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉333 岩橋淳 「ぬ〜く ぬく」

     
   
     
  『ねぎぼうずのあさたろう』をはじめ、独自の画風で数々の絵本を手がけてきた飯野さん。その作品のインパクトは、擬人化を中心としたユニークな登場人物の風貌にあります。

  それが、本作では飯野さんは絵筆を執らず、作話に専念。これだけで絵本好きの読者は「えっ!?」となるのですが、作画担当としてタッグを組むのが、これまた超個性派、本稿でも『十二支のおはなし』『たぬきのおつきみ』をご紹介した、山本孝さん! 画風は確かに異なりますが、「怪作」という意味ではどこか共通項のあるお二人、どういう分業になるのやらと、コワイモノミタサに近い期待を抱きつつ、ページをめくることになるのです。

  小春日和のある日、田舎村のお寺の境内。軒先につるされたダイコンと、縁側に干されたサツマイモの会話で、おはなしは進行。ぽかぽかの陽気の下、画面ではなにひとつ動くもののない中で、両者の会話だけがつづられます。

  「ええてんきじゃのう」と、最初はイモを見下ろすダイコンの余裕で始まった会話が、思いもかけぬイモの逆襲に遭遇して、のどかな縁側は、いつしか静かなるトークバトルへと様相を変えていく…?

  内にトゲを含みながらも抑えた会話の妙味、「枯れ」るはずが対抗意識メラメラの展開。これはぜひ、音読をお薦めしたい一作。わたくしは読んでいる内に「ダイコン=大滝秀治」「イモ=笠智衆」「和尚さん=殿山泰司」になりましたが。

  【今週の絵本】『ぬ〜く ぬく』飯野和好/さく、山本孝/え、農文協/刊、1400円、(2007年)。


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