盛岡タイムス Web News 2011年 2月 3日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉344 岩橋淳 はだかの王さま

     
   
     
  前回挙げ連ねた「赤ずきん、白雪姫、ヘンゼルとグレーテル」は、グリム兄弟の収集したおはなしたち。いずれ劣らぬ名作ぞろいですが、一方の雄、アンデルセンを忘れてはいけません。みにくいアヒルの子、人魚姫、マッチ売りの少女など、西洋童話の基本の「き」と言っていい創作童話が目白押しです。

  主人公が死んでしまう悲しい(苦からの解放、ということではあるにしても)結末が目立つ中、「陽気」な部類に属するのが、今週の一冊、「はだかの王さま」です。

  明治21年に「不思議の新衣装」という題名で本邦初訳されたというこの物語、実のところ、陽気、の2文字で片付けるには、なかなか苦しいものがあります。国政を顧みずわがまま気ままな王さま、それをいさめることのできない役人たち、そこにつけこんだ詐欺師たち、そして最後も「人を嗤(わら)う」ことでの幕切れ。

  昨今では「王さまは裸だ」と声をあげたくだんの少年の「権力におもねらず、正直に声をあげること」と「勇気」に焦点が合わされがちですが、むしろそれは「後付け」で、実際はかなり辛辣な風刺劇であり、だからこそ1837年発表以来の命脈を保ち続けてきたのかもしれません。

  再話、とされた本作では、結末に手が加えられていて、事態を「収拾」してしまっているのですが、みなさんは…、どうお読みになりますか?

  【今週の絵本】『はだかの王さま』アンデルセン/話、中井貴恵/再話、colobockle/絵、ブロンズ新社/刊、1575円(2005年)。

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