盛岡タイムス Web News 2011年 2月 25日 (金)

       

■ 〈胡堂の青春育んだ書簡群〜学友たちの手紙〉14 八重嶋勲 貴兄御論文、誤字脱字多く見受申候

 ■赤色夜叉

  27封筒のみ 明治32年5月24日付
宛 (盛岡市四ツ家町角猪川塾内) 野村長一
発 赤色夜叉
(封筒のみで、封筒の裏に)
「美界ニ於て、ミューズと謁見仰せ付けられたる日赤色夜叉しるす」とある。

  【解説】「赤色夜叉」が、誰なのか、またこのコメントもなんのことか分らないが、手紙の年月日がしっかりしている。
 
  ■阿部秀三

  28巻紙 明治32?年?月18日付
宛 野村長一様 書籍二部添う
発 阿部秀三〔陸中國盛岡市呉服町株式会社第九十銀行〕の封筒を使用、筆でその部分を抹消している。
拝啓永々御労里(の)本拝借致置難有御礼申上候、猶古くてもなんても宜敷御座候間、小説之別之者(物)にて御持合せしもの二、三冊御貸し被下度、実は派出處詰合中之うち聊を凌く丈に候間、御序に御尋ね置被成下度願上候、草々
二伸諸君之御編纂にかゝる六〇五御回覧済ニ相成候はゝ拝借致され間敷候哉、小生之瞥見もそれか為めには甚た利益致べき事と相信し申候、管らぬ事永々申上候、此ニ擱筆仕候、敬具
    十八日        阿部秀三
       野村長一様

  【解説】長一から、長い間借りた本を返しさらに、別の小説2、3冊を貸してほしい。派出所勤務の暇に読みたいという。また「諸君之御編纂にかゝる六〇五御回覧済ニ相成候はゝ拝借致され間敷候哉」と「六〇五」を貸してほしい旨も書いている。阿部秀三は、盛岡中学を明治32年卒業であるから、長一の3級上である。
 
  ■阿部秀三

  29半紙 明治32?年9月11日付
宛 野村長一様
発 阿部秀三
拝啓拝借之六○五差上候間御落手被下度三冊と覚え居候處左様に候哉、
貴兄御論文拝讀仕候處誤字脱字等尤も多く見受申候、特ニ御注意ありて可然と存候、これも老婆心よりにて候、
哲学大観筆記差上候、総而難有御礼申候、
もし認識論及字教学概論御遣ひ申に無之候はゞ聊か調べ度点有之候間、拝借仕度候、
キ(箕)人君へ左記御傳言被下度候、
夕月を別して御差支なく候はゞ、或る小説(澤山無之候得共なにか御望のもの)又は書籍と御交換被下まじくやと。現今之社會学御らん済に候はゞ御かし被下度候と。
右御頼み申上候、可祝
  九月十一日        阿部
    野村様
       貴下

  【解説】「拝借之六○五差上候間御落手被下度三冊と覚え居候處左様に候哉」とあり、この時点で「六〇五」は、3巻発行されていることが分かる。この後、猪川箕人(長一の1級下)が編集を引き継いでいるので、相当の号数発行されていることと思われるが、いまだ1冊も見たことがない。どこかに残っていないものであろうか。「貴兄御論文拝讀仕候處誤字脱字等尤も多く見受申候、特ニ御注意ありて可然と存候、これも老婆心よりにて候」は、父長四郎の手紙にも誤字、脱字を何度も叱責され、また字が見にくいので、山口剛介か新渡戸仙岳の手本で毛筆の勉強をせよとあって、長一は、どうもその辺そそっかしい性質だったらしい。
  (紫波町彦部公民館長)


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