盛岡タイムス Web News 2011年 7月 8日 (金)

       

■ 〈潮風宅配便〉55 草野悟 仮設住宅での癒し

     
   
     
  鍋とか台所用品を積んで、田老の仮設住宅の世話役「大棒さん」のところへ行きましたら、玄関の前に小箱が二つ。一つはナス、もう一つの箱にはキュウリが植えられていました。小さなキュウリの花と実が数個、ナスはごらんのように1個育っていました。

  「楽しいですよ」と大棒さん。「家庭菜園が苦手だけど、お隣のプロが手ほどきしてくれます。でもキュウリは大きくするようにと、小さな実を取ってしまって」と笑っていました。

  下のほうの花を取らないと、キュウリが大きく育たないようです。よく見ると、それぞれの通路的庭の前には、たくさんの木箱がありました。種苗会社の人が土を入れて100箱も持ってきてくれたそうです。

  「こんな小さなナスの実でも、命ですからね」と、実に重いお言葉です。仮設住宅の皆さんは、落ち着いた環境でようやく安堵(あんど)、と見えるところですが、ところが実はあちこちで深刻な問題も起きているそうです。

  元気だった方が突然意識不明になったり、仲の良かった夫婦が毎日けんかを始めたり、おしゃべりだった人が寡黙になったり、精神的な障害が増えてきているようです。

  壁が薄いのではっきりと聞こえるそうです。大棒さんがあるときに、近くの人が突然倒れ、たまたま居合わせたもので、「誰か救急車を呼んで」と叫んだそうです。この行為に猛反省していました。

  「誰か…」と言うと実は誰も動けなくなってしまうそうです。自分で救急車を呼ぶか、消防の電話番号をそばに居た人に伝え、その場で指名して電話してもらうか、具体的な行動が必要と言ってました。

  確かに「誰か…」はあいまいなのかもしれません。体験からの勉強、深いですね。一歩ずつ、着実に前進、簡単そうで難しいですね。
(岩手県中核観光コーディネーター)


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