盛岡タイムス Web News 2011年 7月 17日 (日)

       

■ 〈詩人のポスト〉藤野なほ子 海の墓

  海の墓   藤野なほ子(盛岡市)

 
墓は海に向かい
東をむいて並んでいた
朝日がさし 潮の香りが漂い 静かに
ここに眠っていた
 
みんな海を愛し海に生き海にかかわり
育てられ 生きていた人たち
 
往き来する船 空を舞うかもめ
すぐ下の道を忙しく車も走って
まちの息這いも漂ってくる
海はどこまでも続いていた
 
そのまちを津波が襲った
震源地に近い巨大地震と津波
海は壁を作り唸りを上げて地をたたき
家も人も まちも村ものみこみ
墓も根こそぎ抉りとっていった
 
抉りとられた跡に
住処を失った魂がさまよっていく
誰もふりむかない
遠い生まれ故郷のまち
若い時 この海を越えて渡った大陸で
敗戦の曠野を家族たちとさまよい
時を越えて
やっと得たこのまちの安住の遂の住処
 
住処を失った魂が海に向かって佇んでいる
海底につまっている沢山の記憶と
ゆらめく透明な生命の破片の間で
あの墓は今どの辺りにいるのだろう
 
海は荒々しく 生きていた土ごとかきむしっていった
流れ漂う 塩辛い波
還る場所がみあたらない永遠の中に
まぎれこんでしまった
海に眠る墓


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