盛岡タイムス Web News 2011年 8月 9日 (火)

       

■ 〈ここで踏ん張る〉吉里吉里中心部に海の家風仮設店舗 母ちゃんの元気は奪えない

     
   「よってったんせぇ」の開店準備を進めるマリンマザーズきりきりの芳賀紀子さん、芳賀カンナさん、笹谷ヒロ子さん、前川静子さん(左から)  
 
 「よってったんせぇ」の開店準備を進めるマリンマザーズきりきりの芳賀紀子さん、芳賀カンナさん、笹谷ヒロ子さん、前川静子さん(左から)
 
  茎ワカメを使った手作り加工品の販売で、地域おこしに一役買っていた大槌町のマリンマザーズきりきりのメンバーが、津波で壊滅した同町吉里吉里中心部に、海の家風の仮設店舗を開こうと準備を進めている。店の名前は「よってったんせぇ」。ラーメンや塩焼きそば、わかめかりんとうなど、子どもでも買える値段の軽食やおやつを販売。気軽に立ち寄って茶飲み話ができる場を作る。吉里吉里に、笑顔とにぎわいを取り戻すきっかけになればと張り切っている。(馬場恵)

  「よってったんせぇ」を立ち上げるのは笹谷ヒロ子さん(68)ら30〜60代の6人。地域資源を活用した被災地での起業などを支援する県の補助金「がんばろう!岩手・農村起業復興支援事業」を活用。仮設店舗やガスコンロ、水回りの設備などを調達した。浜の母ちゃんたちの意気込みを聞き、奥州市前沢区のフランス料理店ロレオールのシェフ伊藤勝康さんも釜や鉄板を提供した。

  店舗は吉里吉里小学校下手の商店街があった通りに面している。プレハブにウッドデッキを取り付け、通りかかった人が気軽に休めるようにした。目の前にあるのはビーチではなく、がれきだが、気分だけは「海の家」。「ここに寄った人が笑ってくれて、元気になってもらえれば、それだけでいい」とメンバーは口をそろえる。

  マリンマザーズきりきりの発足は10年ほど前。自宅で食べる以外は捨てていたワカメの茎や芯の部分を使った新商品の開発を始めた。それぞれの家庭の味を持ち寄って、売れる商品を工夫。わかめの芯を佃煮風に煮込んだ「わかめ煮」、茎を豆、キュウリ、ニンジン、ダイコンなどと一緒に漬け込んだ「ばぁーらー漬」、芯の先を使った「漁り火漬」の3品(茎わかめ三昧)で、いわて食の匠にも認定された。

  地元の朝市のほか、盛岡のカワトクなどで販売。東京の物産展にも参加し、お歳暮の季節には詰め合わせセットを作って県内外からの注文に応じた。

  3月11日。津波は自慢の養殖ワカメのいかだや、商品製造の拠点だった、おおつち郷土資源創造センターもことごとく破壊した。笹谷さんやメンバーの芳賀紀子さん(33)は自宅も流され仮設住宅で暮らす。ワカメやホタテの養殖の復活には数年を要すると言われている。

  しかし、大津波も母ちゃんたちの元気までは奪えなかった。「吉里吉里もまんざら捨てたもんじゃない、ってところを見せよう」「通りを通行止めにして、イベントをやってもいいね」と明るい。

  店は8月中旬に開店予定。「よってったんせぇ」の、オリジナルのぼりも発注した。店の開設を呼び掛けた芳賀カンナさん(43)は「今は町に何もなくて、仮設住宅で暮らす年寄りも出かけるところがない。寄れる場所ができれば、きっとみんな集まる。外から来た人に、3月11日のことを伝える場にもしたい」と語る。

  「がんばっぺしね」。吉里吉里のまちに、また一つ、希望が芽生える。

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