盛岡タイムス Web News 2011年 8月 12日 (金)

       

■ 酒造りへ盛岡で再出発 津波で工場流出、大槌の赤武酒造が第1弾

     
  「リカースイーツ」シリーズで再興を期す赤武酒造の古舘秀峰社長(右)と新入社員の谷藤さん(中央)、須田さん  
 
「リカースイーツ」シリーズで再興を期す赤武酒造の古舘秀峰社長(右)と新入社員の谷藤さん(中央)、須田さん
 
  東日本大震災津波で工場を流失した大槌町の赤武酒造(古舘秀峰社長)が、盛岡市飯岡新田1の同市新事業創出支援センターで酒類の製造を再開した。12日からオリジナルリキュールの出荷を開始する。工場設備をすべて失い、一歩を踏み出すまでには勇気が要ったが、多くの仲間や顧客の励ましで再建のスタートラインに立った。古舘社長は「おいしく楽しいお酒を造ることで皆さんの期待に応えていきたい。いつかは大槌に戻って清酒造りを再開したい」と決意を固める。

  同社は、震災からの再起を目指す被災事業者に無償提供される同センターの貸し工場に入居。古舘社長(46)は新たに雇用した須田悠介さん(33)、谷藤かおりさん(34)と3人で、オリジナルリキュールの「リカースイーツシリーズ・ミルキーヨーグルト、いわて山ぶどう、みかん(各500_g)」の3種類の製造を開始した。

  手詰めで1日700本前後を製造。古里の大槌町をはじめ、盛岡市内の生協やスーパー、小売店でも販売する予定だ。

  同社は明治29年の創業。清酒「浜娘」の蔵元として知られる。若者にも好まれる新しい酒を、とリキュール類の開発にも力を入れ、岩泉産ヨーグルトをベースにした「リカースイーツ・ミルキーヨーグルト」は2010年度いわて特産品コンクールで産業貿易振興会会長賞を受賞した。

  3月11日。大槌町役場そばにあった酒造工場や古舘社長の自宅は津波にのまれ、頼りにしていた従業員越田富士夫さんが犠牲になった。消防団員でもあった越田さんは、地震後すぐに防波堤へ。扉を閉め終えたあとも、消防屯所の鐘をたたいて避難誘導していたという。古舘社長は「面倒なこと、大変なことも嫌な顔一つせず引き受けてくれる人。年長で、何でも相談した。最期もあの人らしいが…」と言葉を詰まらせる。

  かけがえのない友人知人、酒蔵。多くのものを失った。「けれどなくなったものを惜しんでも何も出てこない。気持ちを切り替えないと」と前を向く。盛岡で最初に造った酒はまず大槌の人に届けたいという。

  力になったのは友人やこれまでの顧客だ。製造再開にあたって、酒造仲間らが冷蔵庫や机など製造再開に必要な物品を融通してくれた。「また浜娘が飲みたい」「やれる。大丈夫だ」と多くの励ましの声も寄せられた。「今まで一人で頑張ってきたように思っていたが、とんでもない。いろいろな人に助けられている。それをつくづく感じた」と、人と人とのつながりの重みをかみしめる。

  県内の酒造メーカーの工場設備を借り、清酒「浜娘」の醸造を再開させる計画もある。
将来は大槌町での醸造再開を目指す。「蔵は酒ができると雰囲気がガラッと変わる。プツプツプツと米が発酵していく音を聞くとワクワクする。もう一度、生きた蔵の中で仕事がしたい」と力を込める。

  「リカースイーツ」シリーズの販売問い合わせは同社(019-681-8895)へ。

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