盛岡タイムス Web News 2011年 10月 18日 (火)

       

■ 〈イタリアンチロルの昼下がり〉133 及川彩子 マーブル紙のある生活

     
   
     
  イタリア土産の定番と言えば、ワインや生ハム類またセンスの良いモード製品等、数ある中でも、ファッショナブルなマーブル紙製品も人気の一つです。

  イタリア人家庭なら、マーブル紙で作られた文具、アルバム、本カバー、写真立てなど、一つ二つはどの家にもある定番品。先日、本場フィレンツエの販売所「パピロ」で実演を見る機会がありました。「パピロ」は、エジプトの古代紙パピルスのイタリア語名です。

  実演してくれたのは日本人女性のSさん。イタリア生活十数年、この地で出会ったマーブル紙に魅せられ、その伝統技術を紹介すべく毎日店頭に立っているのだそうです。

  作業は、凝固剤入りの蒸留水の表面に、数色の絵の具を垂らし、専用の筆や櫛(くし)を入れるだけ。あっという間に孔雀(くじゃく)の羽や魚の鱗模様の出来上がり。浮かべた紙上にその模様が映り、カラフルなマーブル紙の完成です〔写真〕。

  「流動的液体の作業なので、同じ模様を再現するのが最高の技術。逆に魅力は、同じものが二つとないこと。オリジナル好きなイタリア人には打ってつけですね」とSさん。

  古代から、人々はパピルス・羊皮紙・竹等を使い、文字を記録する術を探ってきました。現在の紙製法が中国から西方に伝わり、イタリアがヨーロッパの供給地になったのは12世紀。13世紀には、ボローニャで初めて、切手や公文書偽造を防ぐ目的で透かしの技術が開発されました。イタリア人は、昔から「紙」に独自の目を向けてきたのです。

  17世紀には、日本の墨流しが源流だと言われるマーブル模様が、フランスの技術者によって生まれ変わり、「製本になくてはならない技術」と持てはやされましたが、その後衰退。現在ヨーロッパで、その伝統を守っているのはイタリアだけなそうです。

  ファッションばかりでなく、ささやかな紙にもこだわりを持ち続けるイタリア人気質に、また気付かされました。

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