盛岡タイムス Web News 2011年 11月 23日 (水)

       

■ 〈口ずさむとき〉256 伊藤幸子 大相撲九州場所

 四股を踏め裸をさらせ胸さらせ孤独をさらせ国技館の灯
  岩田正
 
  「角川現代短歌集成」より。同「抱き合ひて落下をしたりそのままにしておけばいいに軍配上がる」とも詠まれる大相撲九州場所が中日を迎えた。さまざまな記録を残して引退した魁皇(現浅香山親方)のあとを追うように、9月の秋場所後に新大関となった琴奨菊を迎え、2場所ぶりに4大関が揃った。ことにも日本人で4年ぶりに大関に昇進した琴奨菊には地元九州の熱い声援が連日寄せられる。

  ところで、女性初の「横綱審議委員」を長年つとめられ、朝青龍との軽妙なやりとりで知られた内館牧子さんの相撲の話がおもしろい。エッセイ集「きょうもいい塩梅」に笑った。曰く「大相撲の魅力は〈格差〉である。十両以下は大銀杏という髷(まげ)も結えず、化粧廻しもつけられない。国技館の照明にも差があり、下位の力士は薄暗い中で相撲をとっている。またテレビの画面に出る四股名(しこな)の書体が違う。十両力士は勘亭流だが幕下は単なる活字。廻しは木綿でさがりも吟味されない」。

  この番付、序列は「前相撲|序ノ口|序二段|三段目|幕下|十両|前頭|小結|関脇|大関|横綱」と、完ぺきに積み上げられる。折しも5日目、新十両インタビューは平成元年生まれの旭日松だった。入門から6年、化粧まわしには「夢」と美しい銀文字が輝く。「十両になって変わったことは?」の問いに「来月から給料がもらえます」とうれしそうだった。

  相撲の合間の横綱インタビューでは「夢」のテーマに白鵬は「父はモンゴル相撲の横綱なので、自分もと願い、日本にきて親子横綱の夢を達成できた」とにこやかに語られる。「夢は大きく、人生は一度」と、この大きい人に言われるとテレビさじきにも勝負の神のご託宣(たくせん)がもたらされそうで神技(しんぎ)の妙に打たれる。

  さて本日なか日。注目の全勝琴奨菊にはモンゴルの一敗力士鶴竜が組まれた。解説には浅香山親方と佐ノ山(元千代大海)親方が坐り、福岡国際センターは割れんばかりの琴奨菊コール。立ち合い、ジリッ、ジリッと土俵にめり込む足の感触まで伝わってきそう。

  速かった、熱かった。 琴奨菊の圧力をかける組み手の深さ、上手を引いてまっすぐの投げに、鶴竜の体が落ちた|。

  8戦全勝は白鵬と琴奨菊の2人だけ。内館牧子さんは「世の中でいちばんおいしい焼トリは相撲を見ながら食べるそれ」と言われる。さあ、私も早く焼トリを買いに走ろう。

(八幡平市、歌人)


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