盛岡タイムス Web News 2011年 11月 26日 (土)

       

■ 〈昆虫パワーをあなたにも〉14 鈴木幸一 ローヤルゼリーを食べて女王様

 

女性の食べ物が違うだけで、結婚してたくさんの子どもを産み長生きする人生を送るか、それとも結婚せず子どもも産むことなくひたすら働きづめで短命の人生を送るかと問われたら、言わずと知れたことです。

  西洋ミツバチの卵から孵化した幼虫が、食事としてローヤルゼリー(王乳)を与えられてそれだけを食べて成虫になると、女王蜂になり交尾して100万の卵を産みながら2〜3年の寿命を送ります。

  ところが幼虫期に、花粉と蜂蜜の食事を与えられて成虫になったメスは、2週間ほど巣の中でせっせと掃除や幼虫の食事の世話をした後で、今度は花粉や蜜の採取のために外勤の働きへとシフトします。こんなに働いて、寿命は1カ月足らずです。

  女王蜂も働き蜂も同じメスでありながら、食べ物で雲泥の差のライフスタイルを送るので、この違いをヒトに当てはめてみようと、ローヤルゼリーの魅力的な機能を明らかにするために世界中の研究者がやっきになってきました。

  ローヤルゼリーの成分に女王蜂を誘導する本体があるに違いないと、岩手大学も15年以上前からこのテーマに限り学会発表や論文発表には目もくれず、ほとんど秘密裏に研究を進めてきました。

  2000年にはローヤルゼリー成分で小さなタンパク質(ペプチド)が本体に違いないと確信をもって構造を明らかにしたのですが、まったく同じものがスロバキアとドイツの共同研究によって発表されました。

  この時、顔が青ざめる瞬間を味わいました。その後も、この物質が本体かどうか分からないまま年月が経過したままでしたが、科学ジャーナルとして一流誌のネーチャー(Nature)の今年の5月26日号に、日本人で若い研究者の鎌倉昌樹博士(富山県立大学)が、その本体が特殊なタンパク質(ロイヤラクチン)であると発表しました。

  この発表により、岩手大学が耽々と狙ってきた研究は完全に打ち砕かれましたが、一人で偉大なテーマに挑戦し成功を収めた鎌倉先生にエールを送りたいという気持ちが強くなり、岩手大学で開催された学術シンポジウムに招待しました。先生の研究者としての人柄と今後の活躍が期待される充実したシンポジウムになりました。

  ローヤルゼリーの本体であるロイヤラクチンをヒトが摂取したら、たとえ女王様にならなくとも長寿やアンチエイジングの効果があると、もし実証されればノーベル医学生理学賞の有力候補になるのでないかと楽しみにしています。

(岩手大学地域連携推進センター長)


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