盛岡タイムス Web News 2012年4月 18日 (水)

       

■ 〈夜空に夢見る星めぐり〉305 八木淳一郎 金環日食に想う

 来たる5月21日は、多くの方々がご存じのように金環日食の日です。たまたま、主として日本のいわゆる太平洋ベルト地帯にそった地域で見られ、人口集積地ですから、たくさんの人が目にする意味では大変恵まれた条件です。福島県の半分も含まれますが、もし広く大震災の被災地で見られるものであったなら、多くの人たちが訪れて復興の一助となったでしょう。

  その他の地域、例えば盛岡では90%近く欠けた太陽を観察することができます。金環の名前が示す通り、太陽が細いリング状となる珍しい現象ですが、90%であっても十分見ごたえはありましょう。

  比べるのも酷で、水をさすようですが、同じ日食でも暗くなった空に星が輝き、黒い太陽の周りにコロナが輝く。その太陽の辺縁からはプロミネンス(紅炎)が噴き出していて−といった皆既日食の感動的な光景には全くかなわないでしょう。見に行けない者の負け惜しみ半分ですが。

  ところで、太陽の光と熱は強烈です。肉眼はもちろん、まして双眼鏡、オペラグラス、さらには望遠鏡でのぞくなどは失明の恐れがあるので絶対にいけません。昔はガラスにろうそくのすすをつけて見ればいいとも言われていましたが、黒い下敷きや真っ黒に感光したフィルムなども含めてすべてだめです。

  かつて、アメリカ合衆国の広い地域で金環日食が見られ、多くの若者たちが目を傷めるという深刻な問題が起こりました。本屋さんなどで日食グラスというものが売られていますから金環であろうと、部分日食であろうと、肉眼で見るときは必ずこの専用に作られた日食グラスで見るようにしましょう。

  普段は太陽の観察といいますと、よく知られているものに黒点観察というものがあります。かつては、小さな望遠鏡の接眼レンズ(目でのぞく側の小さなレンズ)に特殊なサングラスというものを取りつけて見ることも行われましたが、熱で割れる危険があるので現在ではやりません。

  太陽黒点を見るためには投影板という白いスクリーンに映し出す方法が最も簡単で安全です。他に、対物レンズの前に太陽フィルターと呼ばれるものを装着して見る方法や、ハーシェルプリズムという装置で太陽の光を弱くしてのぞく方法などがあり、この頃ではこれにCCDカメラを付けて大勢で見ることも行われています。

  太陽望遠鏡と呼ばれるものは、こういった基本的なことに加えて、太陽の縁に噴き出しているプロミネンスやダークフィラメントといった構造を観察し、太陽の活動を知ることができるものです。学校単位や個人ではこのような高価な装置を持つことは困難で、取り扱いも注意が必要です。

  すでに全国にはたくさんの公共施設がありますが、賢治ゆかりの地盛岡の子どもたちも、いながらにして写真や教科書では得られない生きた太陽の素顔を見られる日が、一日も早く訪れてほしいと願うものです。
(盛岡天文同好会会員)


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