盛岡タイムス Web News 2012年 5月 16日 (水)

       

■  〈口ずさむとき〉281 伊藤幸子 春の雷鳴

 卓上にひろげし白紙かげりつつ遠ざかりゆく春の雷鳴
                              松坂弘 角川現代短歌集成より。

 「春は強風の季節。冬は北風だが春になると南風の勢力が強まり、北と南の寒暖両気団が日本付近で勢いよくぶつかり合うようになる。するとそこに前線ができ、低気圧が発達。低気圧が通ると雨や雪が降り、南風が吹き、北風が吹き返す。春の天気が変わりやすいのはこのためだ」これはお天気博士の倉嶋厚さんの「お茶の間歳時記」の一節。

 そして異常気象についても「気象の異常はよくあることで、氷河時代というのはきわめて長い周期の気候変動で現れるもので、それがきても人類の末日には決してならない」と説かれる。気象学も異常気象との戦いの中で発展し、人類は必ずこれを克服するとある。

 昨年の大震災はいうまでもなく、各地に起こる集中豪雨や大雪、竜巻、液状化現象など、未来への不安材料がいっぱいだ。この本が発刊されたのは昭和50年。45年の「万国博」にもふれていて「動く道路、電機自動車、テレビ電話、その他電子計算機を利用したさまざまの装置−70年万博に並んでいたあの中のどれがどのように育ち、またしぼんでゆくのか、未来はバラ色とばかりは限らない」と。今の世に読むと、携帯電話のおもかげもないこと、宇宙開発、医療技術、映像文化、バイオ開発、エネルギー問題等々今昔の感に打たれる。はたして未来はバラ色だったのであろうか。

 実はこんな不安感を語らいながら5月6日、「啄木祭短歌大会」にわが地区のシニア歌人たちを私の車に乗せて渋民文化会館に赴いたのだった。行きはよく晴れていて、時間通りに到着。啄木節子夫妻の写真が掲げられた会場で、百五十人余りの歌人たちと久闊を叙して盛り上がった。

 ところが、会が進行し昼ごろからだんだん暗くなり、午後には雷鳴もとどろいた。私はカミナリが何より怖い。わが家の古い梨の木は落雷で幹が裂け、その後も屋敷内に何度も落ちて電気器具を破損している。

 会は佳境に入り、啄木祭賞は「杖をつく母を疎みし遠き日よ墓のめぐりの梅つぼみもつ」(折居路子)他各賞が決まり表彰された。啄木没後百年、かくも盛大に「啄木祭」として人々が集まり、祝う日になったことを喜ばしく思う。

 さて雨の中無事帰宅して、見ると梨の木の下の秋田蕗(ふき)が散弾銃を浴びたように穴だらけになっていた。激しく雹(ひょう)が降ったという。落雷でなくてよかったと、私は思わず梨の老木を撫でた。(八幡平市、歌人)


 

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします